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化学実験Ⅱ
テーマ F
蒸留(単蒸留)
作成者:篠原凜久
共同実験者:鈴木郁磨、出澤一馬
実験日:4月26日、28日
2
1. 要約
本実験では、水とメタノール混合物の単蒸留を通し、その理論と操作および物質収支の概念
の理解を高めることを目的とした。蒸留装置に原料を加え、留出液と残液を回収し、物質収
支をモル数とメタノール成分量から判断した。実験結果としては、物質収支がとれなかった
が、メタノールモル分率決定時の温度の読み取りに原因があると考察した。また、留出液組
成の実測値が理論値よりも大きくなった原因に、隙間などにより分縮が起きたと考察した。
2. 目的
メタノールと水の混合物に対し、分離操作として単蒸留を行い、物質収支の概念や単蒸留の
理論、バッチ操作についての理解を高めることを目的とする。
3. 実験方法
3-1 準備
本実験での使用器具を表 1 にまとめた。以下に、表 1 を示す。
表 1.使用器具
名称 規格 [mL] 個数 [-]
蒸留装置一式
枝付きフラスコ 300 mL 1
アダプター - 1
リービッヒ冷却器 - 1
マントルヒーター - 1
スタンド - 1
ブロック - 2
温度計 - 1
断熱材 - -
その他の器具
トールビーカー 50 mL 4
ピクノメーター 10 mL 1
共栓付きフラスコ 300 mL 1
三角フラスコ 200 mL 1
ビーカー 500 mL 1
300 mL 1
駒込ピペット 2 mL 1
ロート - 1
ピペットスタンド - -
沸石 - -
ストップウォッチ - 1
3
本実験での使用試薬について表 2 にまとめた。以下に、表 2 を示す。
表 2.使用試薬
名称 濃度 使用量
メタノール水溶液 49.996 mol% 250 mL
3-2.使用器具の空重量の測定
(1) ピクノメーターの重量を精密電子天秤で計測した。
(2) トールビーカー3 個、500 mL ビーカー、200 mL の共栓付きフラスコの重量を電子天秤で
計測した。
3-3.ピクノメーターの体積の計算
(1) ピクノメーターに純水を加え、重量を精密電子天秤で計測した。
(2) (1)の重量と 3-2(1)重量との差をとり、純水の重量を計算した。
(3) 気温と密度表から、純水の密度を決定し、密度と重量からピクノメーターの体積を求め
た。
3-4.原料メタノール水溶液の密度と液組成の計算
(1) ピクノメーターに原料メタノール水溶液を加え、重量を測定し、空のピクノメーターの
重量との差をとることで、原料メタノール水溶液の重量を求めた。
(2) (1)の重量と 3-3(3)の体積から、原料メタノール水溶液の密度を求めた。
(3) 気温と(2)の密度を用いて、組成対密度表から原料メタノール水溶液のモル分率を求めた。
3-5.蒸留実験の準備
(1) 500 mL ビーカーに約 250 mL の原料メタノール水溶液を加え、重量を測定した。
(2) (1)の重量と 3-2(2)の 500 mL ビーカーの空の重量との差をとり、原料メタノール水溶液
の重量を求めた。
(3) (2)の原料メタノール水溶液を枝付きフラスコに仕込み、マントルヒーターで加熱した。
このとき測定のために温度計を設置し、突沸を防ぐためにフラスコ内に沸石を入れた。
3-6.蒸留実験
(1) 留出液受けのトールビーカーに1滴目が落ちた時から時間と温度の測定を行った。
(2) 10 mL ごとに温度と時間を記録し、1 つのトールビーカーに 30 mL の留出を確認できた
ら、留出液受けを新しいトールビーカーに変更する。この操作を3本行い、合計で留出
液を 90 mL 得た。
(3) 留出液の入ったトールビーカーの重量を測定し、
3-2(2)のトールビーカーの空の重量との
差をとり、全留出液の重量を計算した。
(4) ピクノメーターに留出液を加え、3-4 と同様の方法で重量、密度、モル分率を求めた。3
本のトールビーカーに対し、同様の操作、計算を行った。
(5) 留出液 90 mL 得ることができたら、加熱をやめ、冷却管の下に新しいトールビーカーを
設置した。
4
(6) 三角フラスコに残液を加えて、3-4 と同様の方法で重量、密度、モル分率を求めた。
4. 実験結果
(a) 実験器具の空の重量について
3-2 で測定した実験器具の空の重量について表 3 にまとめた。以下に表 3 を示す。
表 3.使用器具の空重量の測定
実験器具名
重量 [g]
① ② ➂
トールビーカー 43.96 44.04 43.10
ピクノメーター 11.62 - -
500 mL ビーカー 182.9 - -
共栓付きフラスコ 123.6 - -
(b) ピクノメーターの体積について
3-3 で求めたピクノメーターの体積と、それを求めるために使用した純水+ピクノメータ
ーの重量、純水の重量、純水の密度について表 4 にまとめた。以下に、表 4 を示す。
表 4.ピクノメーターの体積
種類 値
純水+ピクノメーターの重量 21.42 g
純水の重量 9.803 g
純水の密度 0.9979 g/cm3
ピクノメーターの体積 9.824 cm3
表 4 のピクノメーターの体積は、純水の重量を純水の密度で割った値であり、次式によっ
て求めることができる。次式を式①とした。
ピクノメーターの体積 [cm3] =
純水の重量 [g]
純水の密度 [
g
cm3]
=
9.8032
0.99788
= 9.824 cm3
∙∙∙ ①
式①において純水の密度は密度表から決定したものであり、純水の重量は、純水+ピクノ
メーターの重量から、
3-2 で測定した空のピクノメーターの重量を引いたものに等しく、
次
式によって求めることができる。次式を式②とした。
純水の重量 [g] = 純水+ピクノメーターの重量 [g]ーピクノメータの重量 [g]
= 21.420ー11.617 = 9.803 g ∙∙∙ ②
5
以上のことから、ピクノメーターの体積は、9.824 cm3
と求めることができた。
(c) 原料、留出液 1、2、3、残液の重量、密度およびメタノールモル分率について
3-4 から 3-6 までで求めた原料、留出液、残液の重量、密度およびモル分率について表 5 に
まとめた。以下に、表 5 を示す。
表 5.原料、留出液、残液の重量、密度およびモル分率について
液体の種類 重量 [g] 密度 [g/cm3
] メタノールモル分率 [mol%]
原料 203.6 0.8847 49.996
留出液1 22.91 0.8188 85.045
留出液2 21.84 0.8224 81.983
留出液3 23.00 0.8252 80.485
残液 131.4 0.9080 39.767
 表 5 の各試料溶液の重量について
各試料溶液の重量を求めるために、使用した試料溶液+実験器具の重量の値について
表 6 にまとめた。以下に、表 6 を示す。
表 6.各試料溶液+実験器具の重量
種類 重量 [g]
原料+500 mL ビーカー 386.5
留出液 1+トールビーカー 66.87
留出液 2+トールビーカー 65.88
留出液 3+トールビーカー 66.10
残液+三角フラスコ 254.9
各試料溶液の重量は、
試料溶液+測定に使用した実験器具の重量から、
3-2 で測定した
空の実験器具の重量を引いたものに等しく、原料メタノールであれば次式によって求
めることができる。次式を式➂とした。
例)原料メタノールの場合
原料の重量 [g] = 原料+500 mL ビーカーの重量 [g] − 500 mL ビーカーの重量 [g]
= 386.50 − 182.87 = 203.6 g ∙∙∙ ➂
留出液、残液の場合も上式と同様の計算を行い求めた。
6
 表 5 の各試料溶液の密度について
各試料溶液の密度を求めるために、各試料溶液+ピクノメーターの重量、ピクノメー
ター内にあった各試料溶液の重量について表 7 にまとめた。以下に、表 7 を示す。表
7 の各試料溶液の重量の求め方は、(b)の式②と同様である。
表 7.各試料溶液+ピクノメーターの重量、各試料溶液の重量
種類 各試料液+ピクノメーターの重量 [g] 各試料液の重量 [g]
原料 20.31 8.691
留出液 1 19.66 8.044
留出液 2 19.70 8.079
留出液 3 19.72 8.107
残液 20.54 8.921
各試料溶液の密度は、表 7 の各試料溶液の重量を、3-3 で求めたピクノメーターの体
積で割った値であり、原料メタノールであれば次式によって求めることができる。次
式を式④とした。
例)原料メタノールの場合
原料の密度 [
g
cm3
] =
原料の重量 [g]
ピクノメーターの体積 [cm3]
=
8.6910
9.8240
= 0.8847
g
cm3
∙∙∙ ④
留出液、残液の場合も上式と同様の計算を行い求めた。
 表 5 のメタノールモル分率について
メタノールモル分率は組成密度表を用いて決定した。組成対密度表からモル分率を読
み取るために必要なものは、その時点での室温と、上記で求めた試料溶液の密度であ
る。温度についてはどの試料溶液の場合でも、21.5 ℃であった。
例)原料メタノールの場合
室温が 21.5 ℃、密度が 0.8847 g/cm3 であることから、メタノールモル分率を
49.996 mol%と組成対密度表から読み取ることができた。
留出液、残液の場合も同様の方法でモル分率を読み取った。
以上のことから、表5に示した原料メタノール水溶液、留出液1、2、3、残液の重
量、密度およびメタノールモル分率となった。
7
(d) 原料および留出液、残液のモル数および積算留出量について
(c)の結果より、
求められる各試料溶液のモル数および積算留出量について表 8 にまとめた。
以下に、表 8 を示す。
表 8.各試料溶液のモル数および積算留出量
溶液の種類 モル数 N [mol] 積算留出量 [mol]
原料 8.14 -
留出液 1 0.77 0.77
留出液 2 0.74 1.51
留出液 3 0.78 2.29
残液 5.57 -
 表 8 のモル数 N [mol]は、各試料液の重量を m [g]、メタノールの分子量を MMeOH
[g/mol]=32.04 g/mol、水の分子量を Mwater [g/mol]=18.02 g/mol、メタノールモル分率を
xMeOH [-]、水のモル分率を xwater [-]で表し、原料メタノールであれば次式によって求め
ることができる。次式を式⑤とした。
例)原料メタノールの場合
𝑁 [mol] =
𝑚 [g]
𝑀𝑀𝑒𝑂𝐻 [
g
mol
] × 𝑥𝑀𝑒𝑂𝐻 [−] + 𝑀𝑤𝑎𝑡𝑒𝑟 [
g
mol
] × 𝑥𝑤𝑎𝑡𝑒𝑟[−]
=
203.63
32.04 × 0.49996 + 18.02 × (1 − 0.49996)
= 8.14 mol ∙∙∙ ⑤
留出液、残液の場合も上式と同様の計算を行い求めた。
 表 8 の積算留出量 [mol]は、留出液のモル数の和である。留出液 2 時点の積算留出量
であれば、次式によって求めることができる。次式を式➅とした。
例)留出液2の場合
積算留出量 [mol] = 留出液 1 のモル数 [mol] + 留出液 2 のモル数 [mol]
= 0.765 + 0.739 = 1.51 mol ∙∙∙ ➅
留出液 1、3 の場合も上式と同様の計算を行った。
以上のことから、表 8 に示したモル数と積算留出量となった。
8
 縦軸に(c)で読み取ったメタノールモル分率、横軸に上記で求めた積算留出量をとり、
2つの関係を図 1 にグラフ化した。以下に、図 1 を示す。
図 1.メタノールモル分率と積算留出量の関係
図1から、留出液の積算留出量が増加するほど、メタノールモル分率が減少している
ことがわかった。また、当然のことだが、単蒸留を行い、メタノール成分が多い液体
が留出したため、いずれの留出液のメタノールモル分率であっても、原料のメタノー
ルモル分率よりも高い値となっていることが確認できた。
(e) 原料、留出液、残液の全物質収支とメタノール成分の成分物質収支について
(c)、(d)の結果を基に、モル数、組成、メタノール成分量の観点から物質収支がとれている
かについて表 9 にまとめた。以下に、表 9 を示す。
表 9.全物質収支とメタノール成分の成分物質収支
測定値 モル数 [mol] 組成 [mol%] メタノール成分 [mol%]
原料 8.14 49.996 4.07
全留出液 2.29 82.493 1.89
残液 5.57 39.767 2.21
損失 0.28 - -0.03
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
0 0.5 1 1.5 2 2.5
メタノールモル分率
[mol%]
積算留出量 [mol]
留出液
原料
9
 表 9 の全留出液の組成 xdist,total [mol%]は、留出液 1 のモル数を Ndist,1 [mol]、メタノール
モル分率を xdist,1 [mol%]、
同様に留出液 2 の Ndist,2 [mol]、
xdist,2 [mol%]、
留出液 3 の Ndist,3
[mol]、xdist,3 [mol%]で表し、次式によって求めることができる。次式を⑦とした。
𝑥𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑡𝑜𝑡𝑎𝑙 [mol%] =
𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,1 𝑥𝑑𝑖𝑠𝑡,1 + 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,2 𝑥𝑑𝑖𝑠𝑡,2 + 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,3 𝑥𝑑𝑖𝑠𝑡,3
𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,1 + 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,2 + 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,3
=
0.765 × 85.045 + 0.739 × 81.983 × 0.784 × 80.485
0.765 + 0.739 + 0.784
= 82.493 mol% ∙∙∙ ⑦
 表 9 のメタノール成分量 [mol]は、各試料溶液のモル数 N [mol]とメタノールモル分率
xMeOH [-]の積であり、原料メタノールであれば、次式によって求めることができる。次
式を式⑧とした。
メタノール成分量 [mol] = 𝑁 [mol] × 𝑥𝑀𝑒𝑂𝐻 [−] = 8.135 × 0.49996 = 4.07 mol ∙∙∙ ⑧
全留出液、残液の場合も上式と同様の計算を行った。
 表 9 の損失の計算は、原料から、全留出液と残液を引いた値に等しく、モル数であれ
ば、次式によって求めることができる。次式を式⑨とした。
損失 [mol] = 原料 [mol]ー(全留出液 [mol] + 残液 [mol]) = 8.135 − (2.289 + 5.566)
= 0.28 mol ∙∙∙ ⑨
メタノール成分量の損失の場合も上式と同様の計算を行った。
以上のことから、表9に示した物質収支となった。
10
(f) 留出液の 10 mL ごとの温度と時間について
3-6(2)で行った留出液 1、2、3の 10 mL ごとの温度と時間の測定結果について表 10 にま
とめた。以下に、表 10 を示す。
表 10.留出量に対する温度と時間経過
サンプルナンバー 留出量(ビーカー目盛) [mL] 温度 [℃] 時間 [分:秒]
留出液 1
トールビーカー①
0 63.0 0:00
10 66.4 4:44
20 66.8 11:12
30 67.0 19:06
留出液2
トールビーカー②
10 67.0 23:46
20 67.6 31:15
30 67.8 38:33
留出液3
トールビーカー➂
10 68.0 44:22
20 68.1 51:54
30 68.6 59:30
(g) 留出液の留出率および平均留出温度と積算留出量の関係について
留出液1、2、3の留出率と平均留出温度について表 11 にまとめた。以下に、表 11 を示
す。
表 11.留出率と平均留出温度
サンプル 留出率βi [-] 平均留出温度 [℃]
留出液 1
トールビーカー①
0.0940 66.7
留出液 2
トールビーカー②
0.1850 67.5
留出液 3
トールビーカー➂
0.2815 68.2
 表 11 の留出率βi [-]は、
積算留出量をΣNdist,i [mol]、
原料のモル数を Ffeed [mol]で表し、
留出液 1 のトールビーカー①であれば次式によって求めることができる。次式を式⑩
とした。
𝛽𝑖 [−] =
∑ 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑖 [mol]
𝐹𝑓𝑒𝑒𝑑 [mol]
=
0.765
8.135
= 0.0940 ∙∙∙ ⑩
11
トールビーカー②、トールビーカー➂の場合も上式と同様の計算を行った。
 表 11 の平均留出温度は、10 mL ごとに測定した温度の平均であり、10 mL ごとの温度
をそれぞれ T10 [℃]、T20 [℃]、T30 [℃]と表し、トールビーカー①であれば次式によって
求めることができる。次式を式⑪とした。
平均留出温度 [℃] =
𝑇10 [℃] + 𝑇20[℃] + 𝑇30[℃]
3
=
66.4 + 66.8 + 67.0
3
= 66.7 ℃ ∙∙∙ ⑪
トールビーカー②、③の場合も上式と同様の計算を行った。
以上のことから、表 11 に示した留出率と平均留出温度となった。
 縦軸に温度、横軸に積算留出量をとり、2つの関係を図2にグラフ化した。以下に、
図2を示す。
図 2.平均留出温度と積算留出量の関係
図2から、積算留出量が増加するには、温度を高くする必要があるとわかった。
66.6
66.8
67
67.2
67.4
67.6
67.8
68
68.2
68.4
0 0.5 1 1.5 2 2.5
温度
[℃]
積算留出量 [mol]
12
(h) 残液組成の理論値について
残液組成の理論値 xi について、表 12 にまとめた。以下に、表 12 を示す。
表 12.残液組成の理論値
残液組成の種類 理論値 [-]
残液組成 x1 0.46996
残液組成 x2 0.43496
残液組成 x3 0.39496
表 12 の残液組成の理論値は、Rayleigh の式を用いて求めた。以下に、手順を示す。
水-メタノール系の気液平衡データの計算結果について表 13 にまとめた。
以下に、表 13 をまとめた。
表 13.水-メタノール系気液平衡データの計算結果
t [℃] x [-] y [-]
65.44 0.95 0.979343
66.22 0.90 0.968676
67.01 0.85 0.937970
67.82 0.80 0.917179
68.66 0.75 0.896237
69.51 0.70 0.875074
70.40 0.65 0.853566
71.31 0.60 0.831578
72.27 0.55 0.808893
73.28 0.50 0.785234
74.36 0.45 0.760200
75.52 0.40 0.733229
76.80 0.35 0.703470
78.25 0.30 0.669636
79.93 0.25 0.629705
81.94 0.20 0.580282
84.47 0.15 0.515257
87.82 0.10 0.422639
92.57 0.05 0.275493
表 13 を基に、最小二乗法による式を求めると、次式のようになった。次式を式⑫とした。
𝑦 = 0.2962 + 1.3540𝑥 − 0.7073𝑥2
∙∙∙ ⑫
13
式⑫を Rayleigh の式に代入すると、次式のようになった。次式を式⑬とした。
ln
1
1 − 𝛽𝑖
= ∫
dx
𝑦 − 𝑥
=
𝑥𝑜
𝑥𝑖
∫
dx
0.2962 + 1.3540𝑥 − 0.7073𝑥2
𝑥𝑜
𝑥𝑖
∙∙∙ ⑬
式⑬から、
台形近似法により xi を計算することで、
表 12 に示した残液組成の理論値となっ
た。
(i) 留出液平均組成𝑥̅D,i [-]の理論値ついて
留出液平均組成𝑥̅D,i [-]の理論値は、原料メタノール組成を xfeed [-]、残液メタノール組成を
xstill,i [-]で表し、
(g)の留出率βi を用いて、
留出液 1 であれば次式によって求めることができ
る。次式を式⑭とした。ただし、残液メタノール組成とは、(h)で求めた値である。
𝑥𝐷,𝑖
̅̅̅̅̅ [−] =
𝑥𝑓𝑒𝑒𝑑 [−] − (1 − 𝛽𝑖 [−])𝑥𝑠𝑡𝑖𝑙𝑙,𝑖 [−]
𝛽𝑖 [−]
=
0.49996 − (1 − 0.0940) × 0.46996
0.0940
= 0.7890 ∙∙∙ ⑭
留出液 2、留出液 3 の平均組成の場合も上式と同様の計算を行った。
(j) 残液組成および留出液平均組成の実測値について
 残液組成の実測値 xi [-]について
残液組成の実測値 xi [-]は、原料のモル数を Ffeed [mol]、原料メタノール組成を xfeed [-]、
留出液量を Ndist,i [mol]、留出液メタノール組成 xdist,i [-]で表し、サンプリング 1 終了時
の残液組成であれば、次式によって求めることができる。次式を式⑮とした。
𝑥𝑖 [−] =
𝐹𝑓𝑒𝑒𝑑 [mol] 𝑥𝑓𝑒𝑒𝑑 [−] − ∑ 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑖 [mol] 𝑥𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑖 [−]
𝐹𝑓𝑒𝑒𝑑 [mol] − ∑ 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑖 [mol]
=
8.135 × 0.49996 − 0.765 × 0.85045
8.135 − 0.765
= 0.0.4636 ∙∙∙ ⑮
サンプリング2、3終了時の残液組成も上式と同様の計算を行った。
 留出平均組成の実測値 xD,i [-]について
留出平均組成の実測値 xD,i [-]は、留出液量を Ndist,i [mol]、留出液メタノール組成 xdist,i
[-]で表し、留出液 1 の組成であれば、次式によって求めることができる。次式を式⑯
とした。
14
𝑥𝐷,𝑖 =
∑ 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑖 [mol] 𝑥𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑖[−]
∑ 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑖 [mol]
=
0.765 × 0.85045
0.765
= 0.85045 ∙∙∙ ⑯
留出液 2、3の組成も上式と同様の計算を行った。
(k) 残液組成および留出平均組成の理論値と実測値について
上記の(h)から(j)で求めた残液組成および留出平均組成の理論値と実測値について表 14 に
まとめた。以下に、表 14 を示す。
表 14.残液組成および留出平均組成の理論値と実測値
残液組成 [-] 留出液組成 [-]
サンプル 理論値 [-] 実測値 [-] 理論値 [-] 実測値 [-]
留出液 1 0.46996 0.4636 0.7890 0.8505
留出液 2 0.43496 0.4238 0.7863 0.8354
留出液 3 0.39496 0.3727 0.7680 0.8249
(l) 留出率と残液組成、留出液平均組成の関係について
縦軸に組成、横軸に留出率をとり、留出率に対する残液組成と留出液平均組成のそれぞれ
理論値および実測値の関係について図3にまとめた。以下に、図3を示す。
図 3.留出率に対する残液組成および留出平均組成の関係
図 3 から、残液組成は理論値が実測値よりも大きい値であること、留出平均組成は実測値
が理論値よりも大きい値であることがわかった。
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3
組成
[-]
留出率 [-]
残液組成実測値
残液組成理論値
留出平均組成実測値
留出平均組成理論値
15
5. 考察
 分縮の影響について
(k)でまとめた留出液組成の理論値と実測値を比較すると、全ての留出液において、実測
値が理論値よりも大きいことがわかった。この原因として分縮の影響を考えた。分縮と
は、単蒸留において蒸気が外部に出るまで、フラスコ内での液沸点と蒸気温度を同温度
に保たなければならないが、ある部分に液沸点温度よりも低温な部分があった場合、蒸
気がそこで凝縮を起こす現象のことである。本実験においても、器具の隙間などにより
温度を均一に保つことが出来ず、分縮が起きたと考えられる。ゆえに、凝縮箇所から再
び蒸留が始まり、一度濃縮された留出液組成がさらに濃縮してしまったことにより、理
論値とずれが見られたと考察した。
 物質収支について
(e)で示したメタノール成分の物質収支において、収支がとれずマイナスの値となってし
まった。つまり、原料成分よりも、全留出液と残液の合計成分のほうがおおきくなって
しまったのである。この原因はいくつかあり、ひとつをあげると、モル分率決定時の温
度のズレが考えられる。メタノール成分はモル数と組成(メタノールモル分率)の積によ
って求めた。このメタノールモル分率は組成対密度表から決定したもので、実験時の温
度と密度から判断した。温度について全ての試料溶液において決定時は 21.5 ℃である
としたが、室温が常に一定に保たれるような実験室ではないため、温度が若干変化して
おり、メタノールモル分率を読み取る地点に誤差があったと考えられる。密度について
は同じピクノメーターで、同じ電子天秤で測定したため、仮に天秤やピクノメーターに
機械的なトラブルやズレがあったとしても全ての試料溶液において同様なズレが発生す
るため、今回の収支が合わないことに大きな影響を与えていないと考えた。
6. 結論
本実験で単蒸留は、蒸留装置に原料を一度入れたら、新しく原料を追加しない操作(バッチ操
作)であることがわかった。また、物質収支の関係や Rayleigh の式を適用することで、残液組
成や留出液組成を求めることができた。理論値と実測値の差には分縮などが関わっているこ
とが確認できた。
加えて、
複数の要因で、
実験結果として物質収支が合わなかったことから、
実験環境を整えることや丁寧な記録、読み取りが必要であると考えた。
7. 参考文献
なし

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単蒸留

  • 2. 2 1. 要約 本実験では、水とメタノール混合物の単蒸留を通し、その理論と操作および物質収支の概念 の理解を高めることを目的とした。蒸留装置に原料を加え、留出液と残液を回収し、物質収 支をモル数とメタノール成分量から判断した。実験結果としては、物質収支がとれなかった が、メタノールモル分率決定時の温度の読み取りに原因があると考察した。また、留出液組 成の実測値が理論値よりも大きくなった原因に、隙間などにより分縮が起きたと考察した。 2. 目的 メタノールと水の混合物に対し、分離操作として単蒸留を行い、物質収支の概念や単蒸留の 理論、バッチ操作についての理解を高めることを目的とする。 3. 実験方法 3-1 準備 本実験での使用器具を表 1 にまとめた。以下に、表 1 を示す。 表 1.使用器具 名称 規格 [mL] 個数 [-] 蒸留装置一式 枝付きフラスコ 300 mL 1 アダプター - 1 リービッヒ冷却器 - 1 マントルヒーター - 1 スタンド - 1 ブロック - 2 温度計 - 1 断熱材 - - その他の器具 トールビーカー 50 mL 4 ピクノメーター 10 mL 1 共栓付きフラスコ 300 mL 1 三角フラスコ 200 mL 1 ビーカー 500 mL 1 300 mL 1 駒込ピペット 2 mL 1 ロート - 1 ピペットスタンド - - 沸石 - - ストップウォッチ - 1
  • 3. 3 本実験での使用試薬について表 2 にまとめた。以下に、表 2 を示す。 表 2.使用試薬 名称 濃度 使用量 メタノール水溶液 49.996 mol% 250 mL 3-2.使用器具の空重量の測定 (1) ピクノメーターの重量を精密電子天秤で計測した。 (2) トールビーカー3 個、500 mL ビーカー、200 mL の共栓付きフラスコの重量を電子天秤で 計測した。 3-3.ピクノメーターの体積の計算 (1) ピクノメーターに純水を加え、重量を精密電子天秤で計測した。 (2) (1)の重量と 3-2(1)重量との差をとり、純水の重量を計算した。 (3) 気温と密度表から、純水の密度を決定し、密度と重量からピクノメーターの体積を求め た。 3-4.原料メタノール水溶液の密度と液組成の計算 (1) ピクノメーターに原料メタノール水溶液を加え、重量を測定し、空のピクノメーターの 重量との差をとることで、原料メタノール水溶液の重量を求めた。 (2) (1)の重量と 3-3(3)の体積から、原料メタノール水溶液の密度を求めた。 (3) 気温と(2)の密度を用いて、組成対密度表から原料メタノール水溶液のモル分率を求めた。 3-5.蒸留実験の準備 (1) 500 mL ビーカーに約 250 mL の原料メタノール水溶液を加え、重量を測定した。 (2) (1)の重量と 3-2(2)の 500 mL ビーカーの空の重量との差をとり、原料メタノール水溶液 の重量を求めた。 (3) (2)の原料メタノール水溶液を枝付きフラスコに仕込み、マントルヒーターで加熱した。 このとき測定のために温度計を設置し、突沸を防ぐためにフラスコ内に沸石を入れた。 3-6.蒸留実験 (1) 留出液受けのトールビーカーに1滴目が落ちた時から時間と温度の測定を行った。 (2) 10 mL ごとに温度と時間を記録し、1 つのトールビーカーに 30 mL の留出を確認できた ら、留出液受けを新しいトールビーカーに変更する。この操作を3本行い、合計で留出 液を 90 mL 得た。 (3) 留出液の入ったトールビーカーの重量を測定し、 3-2(2)のトールビーカーの空の重量との 差をとり、全留出液の重量を計算した。 (4) ピクノメーターに留出液を加え、3-4 と同様の方法で重量、密度、モル分率を求めた。3 本のトールビーカーに対し、同様の操作、計算を行った。 (5) 留出液 90 mL 得ることができたら、加熱をやめ、冷却管の下に新しいトールビーカーを 設置した。
  • 4. 4 (6) 三角フラスコに残液を加えて、3-4 と同様の方法で重量、密度、モル分率を求めた。 4. 実験結果 (a) 実験器具の空の重量について 3-2 で測定した実験器具の空の重量について表 3 にまとめた。以下に表 3 を示す。 表 3.使用器具の空重量の測定 実験器具名 重量 [g] ① ② ➂ トールビーカー 43.96 44.04 43.10 ピクノメーター 11.62 - - 500 mL ビーカー 182.9 - - 共栓付きフラスコ 123.6 - - (b) ピクノメーターの体積について 3-3 で求めたピクノメーターの体積と、それを求めるために使用した純水+ピクノメータ ーの重量、純水の重量、純水の密度について表 4 にまとめた。以下に、表 4 を示す。 表 4.ピクノメーターの体積 種類 値 純水+ピクノメーターの重量 21.42 g 純水の重量 9.803 g 純水の密度 0.9979 g/cm3 ピクノメーターの体積 9.824 cm3 表 4 のピクノメーターの体積は、純水の重量を純水の密度で割った値であり、次式によっ て求めることができる。次式を式①とした。 ピクノメーターの体積 [cm3] = 純水の重量 [g] 純水の密度 [ g cm3] = 9.8032 0.99788 = 9.824 cm3 ∙∙∙ ① 式①において純水の密度は密度表から決定したものであり、純水の重量は、純水+ピクノ メーターの重量から、 3-2 で測定した空のピクノメーターの重量を引いたものに等しく、 次 式によって求めることができる。次式を式②とした。 純水の重量 [g] = 純水+ピクノメーターの重量 [g]ーピクノメータの重量 [g] = 21.420ー11.617 = 9.803 g ∙∙∙ ②
  • 5. 5 以上のことから、ピクノメーターの体積は、9.824 cm3 と求めることができた。 (c) 原料、留出液 1、2、3、残液の重量、密度およびメタノールモル分率について 3-4 から 3-6 までで求めた原料、留出液、残液の重量、密度およびモル分率について表 5 に まとめた。以下に、表 5 を示す。 表 5.原料、留出液、残液の重量、密度およびモル分率について 液体の種類 重量 [g] 密度 [g/cm3 ] メタノールモル分率 [mol%] 原料 203.6 0.8847 49.996 留出液1 22.91 0.8188 85.045 留出液2 21.84 0.8224 81.983 留出液3 23.00 0.8252 80.485 残液 131.4 0.9080 39.767  表 5 の各試料溶液の重量について 各試料溶液の重量を求めるために、使用した試料溶液+実験器具の重量の値について 表 6 にまとめた。以下に、表 6 を示す。 表 6.各試料溶液+実験器具の重量 種類 重量 [g] 原料+500 mL ビーカー 386.5 留出液 1+トールビーカー 66.87 留出液 2+トールビーカー 65.88 留出液 3+トールビーカー 66.10 残液+三角フラスコ 254.9 各試料溶液の重量は、 試料溶液+測定に使用した実験器具の重量から、 3-2 で測定した 空の実験器具の重量を引いたものに等しく、原料メタノールであれば次式によって求 めることができる。次式を式➂とした。 例)原料メタノールの場合 原料の重量 [g] = 原料+500 mL ビーカーの重量 [g] − 500 mL ビーカーの重量 [g] = 386.50 − 182.87 = 203.6 g ∙∙∙ ➂ 留出液、残液の場合も上式と同様の計算を行い求めた。
  • 6. 6  表 5 の各試料溶液の密度について 各試料溶液の密度を求めるために、各試料溶液+ピクノメーターの重量、ピクノメー ター内にあった各試料溶液の重量について表 7 にまとめた。以下に、表 7 を示す。表 7 の各試料溶液の重量の求め方は、(b)の式②と同様である。 表 7.各試料溶液+ピクノメーターの重量、各試料溶液の重量 種類 各試料液+ピクノメーターの重量 [g] 各試料液の重量 [g] 原料 20.31 8.691 留出液 1 19.66 8.044 留出液 2 19.70 8.079 留出液 3 19.72 8.107 残液 20.54 8.921 各試料溶液の密度は、表 7 の各試料溶液の重量を、3-3 で求めたピクノメーターの体 積で割った値であり、原料メタノールであれば次式によって求めることができる。次 式を式④とした。 例)原料メタノールの場合 原料の密度 [ g cm3 ] = 原料の重量 [g] ピクノメーターの体積 [cm3] = 8.6910 9.8240 = 0.8847 g cm3 ∙∙∙ ④ 留出液、残液の場合も上式と同様の計算を行い求めた。  表 5 のメタノールモル分率について メタノールモル分率は組成密度表を用いて決定した。組成対密度表からモル分率を読 み取るために必要なものは、その時点での室温と、上記で求めた試料溶液の密度であ る。温度についてはどの試料溶液の場合でも、21.5 ℃であった。 例)原料メタノールの場合 室温が 21.5 ℃、密度が 0.8847 g/cm3 であることから、メタノールモル分率を 49.996 mol%と組成対密度表から読み取ることができた。 留出液、残液の場合も同様の方法でモル分率を読み取った。 以上のことから、表5に示した原料メタノール水溶液、留出液1、2、3、残液の重 量、密度およびメタノールモル分率となった。
  • 7. 7 (d) 原料および留出液、残液のモル数および積算留出量について (c)の結果より、 求められる各試料溶液のモル数および積算留出量について表 8 にまとめた。 以下に、表 8 を示す。 表 8.各試料溶液のモル数および積算留出量 溶液の種類 モル数 N [mol] 積算留出量 [mol] 原料 8.14 - 留出液 1 0.77 0.77 留出液 2 0.74 1.51 留出液 3 0.78 2.29 残液 5.57 -  表 8 のモル数 N [mol]は、各試料液の重量を m [g]、メタノールの分子量を MMeOH [g/mol]=32.04 g/mol、水の分子量を Mwater [g/mol]=18.02 g/mol、メタノールモル分率を xMeOH [-]、水のモル分率を xwater [-]で表し、原料メタノールであれば次式によって求め ることができる。次式を式⑤とした。 例)原料メタノールの場合 𝑁 [mol] = 𝑚 [g] 𝑀𝑀𝑒𝑂𝐻 [ g mol ] × 𝑥𝑀𝑒𝑂𝐻 [−] + 𝑀𝑤𝑎𝑡𝑒𝑟 [ g mol ] × 𝑥𝑤𝑎𝑡𝑒𝑟[−] = 203.63 32.04 × 0.49996 + 18.02 × (1 − 0.49996) = 8.14 mol ∙∙∙ ⑤ 留出液、残液の場合も上式と同様の計算を行い求めた。  表 8 の積算留出量 [mol]は、留出液のモル数の和である。留出液 2 時点の積算留出量 であれば、次式によって求めることができる。次式を式➅とした。 例)留出液2の場合 積算留出量 [mol] = 留出液 1 のモル数 [mol] + 留出液 2 のモル数 [mol] = 0.765 + 0.739 = 1.51 mol ∙∙∙ ➅ 留出液 1、3 の場合も上式と同様の計算を行った。 以上のことから、表 8 に示したモル数と積算留出量となった。
  • 8. 8  縦軸に(c)で読み取ったメタノールモル分率、横軸に上記で求めた積算留出量をとり、 2つの関係を図 1 にグラフ化した。以下に、図 1 を示す。 図 1.メタノールモル分率と積算留出量の関係 図1から、留出液の積算留出量が増加するほど、メタノールモル分率が減少している ことがわかった。また、当然のことだが、単蒸留を行い、メタノール成分が多い液体 が留出したため、いずれの留出液のメタノールモル分率であっても、原料のメタノー ルモル分率よりも高い値となっていることが確認できた。 (e) 原料、留出液、残液の全物質収支とメタノール成分の成分物質収支について (c)、(d)の結果を基に、モル数、組成、メタノール成分量の観点から物質収支がとれている かについて表 9 にまとめた。以下に、表 9 を示す。 表 9.全物質収支とメタノール成分の成分物質収支 測定値 モル数 [mol] 組成 [mol%] メタノール成分 [mol%] 原料 8.14 49.996 4.07 全留出液 2.29 82.493 1.89 残液 5.57 39.767 2.21 損失 0.28 - -0.03 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 0 0.5 1 1.5 2 2.5 メタノールモル分率 [mol%] 積算留出量 [mol] 留出液 原料
  • 9. 9  表 9 の全留出液の組成 xdist,total [mol%]は、留出液 1 のモル数を Ndist,1 [mol]、メタノール モル分率を xdist,1 [mol%]、 同様に留出液 2 の Ndist,2 [mol]、 xdist,2 [mol%]、 留出液 3 の Ndist,3 [mol]、xdist,3 [mol%]で表し、次式によって求めることができる。次式を⑦とした。 𝑥𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑡𝑜𝑡𝑎𝑙 [mol%] = 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,1 𝑥𝑑𝑖𝑠𝑡,1 + 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,2 𝑥𝑑𝑖𝑠𝑡,2 + 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,3 𝑥𝑑𝑖𝑠𝑡,3 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,1 + 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,2 + 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,3 = 0.765 × 85.045 + 0.739 × 81.983 × 0.784 × 80.485 0.765 + 0.739 + 0.784 = 82.493 mol% ∙∙∙ ⑦  表 9 のメタノール成分量 [mol]は、各試料溶液のモル数 N [mol]とメタノールモル分率 xMeOH [-]の積であり、原料メタノールであれば、次式によって求めることができる。次 式を式⑧とした。 メタノール成分量 [mol] = 𝑁 [mol] × 𝑥𝑀𝑒𝑂𝐻 [−] = 8.135 × 0.49996 = 4.07 mol ∙∙∙ ⑧ 全留出液、残液の場合も上式と同様の計算を行った。  表 9 の損失の計算は、原料から、全留出液と残液を引いた値に等しく、モル数であれ ば、次式によって求めることができる。次式を式⑨とした。 損失 [mol] = 原料 [mol]ー(全留出液 [mol] + 残液 [mol]) = 8.135 − (2.289 + 5.566) = 0.28 mol ∙∙∙ ⑨ メタノール成分量の損失の場合も上式と同様の計算を行った。 以上のことから、表9に示した物質収支となった。
  • 10. 10 (f) 留出液の 10 mL ごとの温度と時間について 3-6(2)で行った留出液 1、2、3の 10 mL ごとの温度と時間の測定結果について表 10 にま とめた。以下に、表 10 を示す。 表 10.留出量に対する温度と時間経過 サンプルナンバー 留出量(ビーカー目盛) [mL] 温度 [℃] 時間 [分:秒] 留出液 1 トールビーカー① 0 63.0 0:00 10 66.4 4:44 20 66.8 11:12 30 67.0 19:06 留出液2 トールビーカー② 10 67.0 23:46 20 67.6 31:15 30 67.8 38:33 留出液3 トールビーカー➂ 10 68.0 44:22 20 68.1 51:54 30 68.6 59:30 (g) 留出液の留出率および平均留出温度と積算留出量の関係について 留出液1、2、3の留出率と平均留出温度について表 11 にまとめた。以下に、表 11 を示 す。 表 11.留出率と平均留出温度 サンプル 留出率βi [-] 平均留出温度 [℃] 留出液 1 トールビーカー① 0.0940 66.7 留出液 2 トールビーカー② 0.1850 67.5 留出液 3 トールビーカー➂ 0.2815 68.2  表 11 の留出率βi [-]は、 積算留出量をΣNdist,i [mol]、 原料のモル数を Ffeed [mol]で表し、 留出液 1 のトールビーカー①であれば次式によって求めることができる。次式を式⑩ とした。 𝛽𝑖 [−] = ∑ 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑖 [mol] 𝐹𝑓𝑒𝑒𝑑 [mol] = 0.765 8.135 = 0.0940 ∙∙∙ ⑩
  • 11. 11 トールビーカー②、トールビーカー➂の場合も上式と同様の計算を行った。  表 11 の平均留出温度は、10 mL ごとに測定した温度の平均であり、10 mL ごとの温度 をそれぞれ T10 [℃]、T20 [℃]、T30 [℃]と表し、トールビーカー①であれば次式によって 求めることができる。次式を式⑪とした。 平均留出温度 [℃] = 𝑇10 [℃] + 𝑇20[℃] + 𝑇30[℃] 3 = 66.4 + 66.8 + 67.0 3 = 66.7 ℃ ∙∙∙ ⑪ トールビーカー②、③の場合も上式と同様の計算を行った。 以上のことから、表 11 に示した留出率と平均留出温度となった。  縦軸に温度、横軸に積算留出量をとり、2つの関係を図2にグラフ化した。以下に、 図2を示す。 図 2.平均留出温度と積算留出量の関係 図2から、積算留出量が増加するには、温度を高くする必要があるとわかった。 66.6 66.8 67 67.2 67.4 67.6 67.8 68 68.2 68.4 0 0.5 1 1.5 2 2.5 温度 [℃] 積算留出量 [mol]
  • 12. 12 (h) 残液組成の理論値について 残液組成の理論値 xi について、表 12 にまとめた。以下に、表 12 を示す。 表 12.残液組成の理論値 残液組成の種類 理論値 [-] 残液組成 x1 0.46996 残液組成 x2 0.43496 残液組成 x3 0.39496 表 12 の残液組成の理論値は、Rayleigh の式を用いて求めた。以下に、手順を示す。 水-メタノール系の気液平衡データの計算結果について表 13 にまとめた。 以下に、表 13 をまとめた。 表 13.水-メタノール系気液平衡データの計算結果 t [℃] x [-] y [-] 65.44 0.95 0.979343 66.22 0.90 0.968676 67.01 0.85 0.937970 67.82 0.80 0.917179 68.66 0.75 0.896237 69.51 0.70 0.875074 70.40 0.65 0.853566 71.31 0.60 0.831578 72.27 0.55 0.808893 73.28 0.50 0.785234 74.36 0.45 0.760200 75.52 0.40 0.733229 76.80 0.35 0.703470 78.25 0.30 0.669636 79.93 0.25 0.629705 81.94 0.20 0.580282 84.47 0.15 0.515257 87.82 0.10 0.422639 92.57 0.05 0.275493 表 13 を基に、最小二乗法による式を求めると、次式のようになった。次式を式⑫とした。 𝑦 = 0.2962 + 1.3540𝑥 − 0.7073𝑥2 ∙∙∙ ⑫
  • 13. 13 式⑫を Rayleigh の式に代入すると、次式のようになった。次式を式⑬とした。 ln 1 1 − 𝛽𝑖 = ∫ dx 𝑦 − 𝑥 = 𝑥𝑜 𝑥𝑖 ∫ dx 0.2962 + 1.3540𝑥 − 0.7073𝑥2 𝑥𝑜 𝑥𝑖 ∙∙∙ ⑬ 式⑬から、 台形近似法により xi を計算することで、 表 12 に示した残液組成の理論値となっ た。 (i) 留出液平均組成𝑥̅D,i [-]の理論値ついて 留出液平均組成𝑥̅D,i [-]の理論値は、原料メタノール組成を xfeed [-]、残液メタノール組成を xstill,i [-]で表し、 (g)の留出率βi を用いて、 留出液 1 であれば次式によって求めることができ る。次式を式⑭とした。ただし、残液メタノール組成とは、(h)で求めた値である。 𝑥𝐷,𝑖 ̅̅̅̅̅ [−] = 𝑥𝑓𝑒𝑒𝑑 [−] − (1 − 𝛽𝑖 [−])𝑥𝑠𝑡𝑖𝑙𝑙,𝑖 [−] 𝛽𝑖 [−] = 0.49996 − (1 − 0.0940) × 0.46996 0.0940 = 0.7890 ∙∙∙ ⑭ 留出液 2、留出液 3 の平均組成の場合も上式と同様の計算を行った。 (j) 残液組成および留出液平均組成の実測値について  残液組成の実測値 xi [-]について 残液組成の実測値 xi [-]は、原料のモル数を Ffeed [mol]、原料メタノール組成を xfeed [-]、 留出液量を Ndist,i [mol]、留出液メタノール組成 xdist,i [-]で表し、サンプリング 1 終了時 の残液組成であれば、次式によって求めることができる。次式を式⑮とした。 𝑥𝑖 [−] = 𝐹𝑓𝑒𝑒𝑑 [mol] 𝑥𝑓𝑒𝑒𝑑 [−] − ∑ 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑖 [mol] 𝑥𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑖 [−] 𝐹𝑓𝑒𝑒𝑑 [mol] − ∑ 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑖 [mol] = 8.135 × 0.49996 − 0.765 × 0.85045 8.135 − 0.765 = 0.0.4636 ∙∙∙ ⑮ サンプリング2、3終了時の残液組成も上式と同様の計算を行った。  留出平均組成の実測値 xD,i [-]について 留出平均組成の実測値 xD,i [-]は、留出液量を Ndist,i [mol]、留出液メタノール組成 xdist,i [-]で表し、留出液 1 の組成であれば、次式によって求めることができる。次式を式⑯ とした。
  • 14. 14 𝑥𝐷,𝑖 = ∑ 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑖 [mol] 𝑥𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑖[−] ∑ 𝑁𝑑𝑖𝑠𝑡,𝑖 [mol] = 0.765 × 0.85045 0.765 = 0.85045 ∙∙∙ ⑯ 留出液 2、3の組成も上式と同様の計算を行った。 (k) 残液組成および留出平均組成の理論値と実測値について 上記の(h)から(j)で求めた残液組成および留出平均組成の理論値と実測値について表 14 に まとめた。以下に、表 14 を示す。 表 14.残液組成および留出平均組成の理論値と実測値 残液組成 [-] 留出液組成 [-] サンプル 理論値 [-] 実測値 [-] 理論値 [-] 実測値 [-] 留出液 1 0.46996 0.4636 0.7890 0.8505 留出液 2 0.43496 0.4238 0.7863 0.8354 留出液 3 0.39496 0.3727 0.7680 0.8249 (l) 留出率と残液組成、留出液平均組成の関係について 縦軸に組成、横軸に留出率をとり、留出率に対する残液組成と留出液平均組成のそれぞれ 理論値および実測値の関係について図3にまとめた。以下に、図3を示す。 図 3.留出率に対する残液組成および留出平均組成の関係 図 3 から、残液組成は理論値が実測値よりも大きい値であること、留出平均組成は実測値 が理論値よりも大きい値であることがわかった。 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 組成 [-] 留出率 [-] 残液組成実測値 残液組成理論値 留出平均組成実測値 留出平均組成理論値
  • 15. 15 5. 考察  分縮の影響について (k)でまとめた留出液組成の理論値と実測値を比較すると、全ての留出液において、実測 値が理論値よりも大きいことがわかった。この原因として分縮の影響を考えた。分縮と は、単蒸留において蒸気が外部に出るまで、フラスコ内での液沸点と蒸気温度を同温度 に保たなければならないが、ある部分に液沸点温度よりも低温な部分があった場合、蒸 気がそこで凝縮を起こす現象のことである。本実験においても、器具の隙間などにより 温度を均一に保つことが出来ず、分縮が起きたと考えられる。ゆえに、凝縮箇所から再 び蒸留が始まり、一度濃縮された留出液組成がさらに濃縮してしまったことにより、理 論値とずれが見られたと考察した。  物質収支について (e)で示したメタノール成分の物質収支において、収支がとれずマイナスの値となってし まった。つまり、原料成分よりも、全留出液と残液の合計成分のほうがおおきくなって しまったのである。この原因はいくつかあり、ひとつをあげると、モル分率決定時の温 度のズレが考えられる。メタノール成分はモル数と組成(メタノールモル分率)の積によ って求めた。このメタノールモル分率は組成対密度表から決定したもので、実験時の温 度と密度から判断した。温度について全ての試料溶液において決定時は 21.5 ℃である としたが、室温が常に一定に保たれるような実験室ではないため、温度が若干変化して おり、メタノールモル分率を読み取る地点に誤差があったと考えられる。密度について は同じピクノメーターで、同じ電子天秤で測定したため、仮に天秤やピクノメーターに 機械的なトラブルやズレがあったとしても全ての試料溶液において同様なズレが発生す るため、今回の収支が合わないことに大きな影響を与えていないと考えた。 6. 結論 本実験で単蒸留は、蒸留装置に原料を一度入れたら、新しく原料を追加しない操作(バッチ操 作)であることがわかった。また、物質収支の関係や Rayleigh の式を適用することで、残液組 成や留出液組成を求めることができた。理論値と実測値の差には分縮などが関わっているこ とが確認できた。 加えて、 複数の要因で、 実験結果として物質収支が合わなかったことから、 実験環境を整えることや丁寧な記録、読み取りが必要であると考えた。 7. 参考文献 なし