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1 緒   言
2011 年 3 月 11 日の東日本大震災に伴って発生した福島
第一原子力発電所事故により,大量の放射性核種が東日本
を中心に広く拡散した.事故の被害は大きく,今後長期に
わたって被ばくによる悪影響が懸念されている.そのた
め,今回の事故による放射性核種の拡散を正確に把握し,
地点ごとに事故直後から将来までの被ばくの程度を見積も
ることは極めて重要であると考えられる.しかし,事故か
ら 1 年以上経った今では短半減期核種の崩壊などもあり,
事故当初に空間線量率を測定していなかった地点で初期被
ばく線量を見積もることは非常に困難である.
現在では長半減期核種である
134
Cs と
137
Cs が空間線量率
の大部分を担っていると考えられるが,原子力発電所から
放出された核種の中には放出量ではそれらを上回る,もし
くは同程度の核種が数多く存在している(Table 1)
1)2)
.例
えば
133
Xe の放出量は
134
Cs や
137
Cs の 1000 倍程度あり,他
にも
131
I,
133
I や
132
Te の放出量が特に大きいと見積もられ
ている.したがって事故当初は,
134
Cs や
137
Cs よりもこれ
ら短半減期核種が支配的だったと考えられ,その当時の放
射能を明らかにすることが,事故当時の空間線量率を推定
する上では有効な手段になり得る.
しかしこれら短半減期核種の環境中での放射能濃度は,
事故直後に測定しない限り定量が困難である.代表的な短
半減期核種である
131
I や
110m
Ag は福島県内で土壌試料にお
ける濃度測定がされているものの,値の出ていない地点も
多い
3)
.一方で現在土壌中にある放射性核種の中でも卓越
した放射能を示すセシウムの二つの放射性同位体
134
Cs と
137
Cs については多くの地点で放射能が測定されている.
134
Cs と
137
Cs の沈着量が多ければ,事故当時の短半減期核
種の沈降量もそれに比例して多かったとも考えられるが,
放射性セシウムと他の短半減期核種の放出量比は原子炉ご
とに大きく異なっているため,単純に放射性セシウムの濃
度から他の核種の濃度を推定することはできない.例え
ば,事故当時に高線量であったと考えられる
132
Te の 2,3
号機からの放出量は,Table 1 を見るかぎりそれぞれ
134
Cs
の 3.6 倍,7.8 倍と推定されているが,1 号機からは
134
Cs の
35 倍と推定されている.したがって放射性セシウムの濃度
から他の核種の放射能を推定するためには土壌中の放射性
セシウムの濃度を明らかにすると共にそのセシウムの汚染
がどの原子炉からの汚染であるかを特定することが重要で
ある.
そこで本研究では,各々の地点における放射性核種によ
る汚染が原子力発電所のどの炉からどの程度引き起こされ
たものなのかを特定することを目的とした.各地点におけ
る原子炉号機ごとの汚染の程度を割り出すことができれ
475
134
Cs/
137
Cs 放射能比を指標とした福島第一原子力発電所事故に
由来する放射性核種の放出原子炉別汚染評価
小森 昌史
1
,小豆川勝見
1
,野川 憲夫
2
,松尾 基之
Ⓡ 1
福島第一原子力発電所事故によって環境中に降り積もった放射性核種が,地点ごとに原子炉 1∼3 号機の
中でどの放出源の寄与によるものであるかを
134
Cs/
137
Cs 放射能比(以下放射能比)を指標として調べた.事
故によって放出された
134
Cs と
137
Cs の放射能比はおよそ 1 : 1 であるが,細かく見ると原子炉ごとに比が異な
るために環境試料中で放射能比のばらつきが生じており,その比が汚染源ごとの寄与の大きさを表す指標に
なると考えられる.そこで本研究では東日本の広域で土壌・植物片を採取して γ 線測定を行い,各地点にお
ける放射能比を算出した.また東京電力が公開している原子炉建屋やタービン建屋の汚染水の放射能から,
各原子炉における
134
Cs/
137
Cs 放出放射能比を算出し,環境試料中の放射能比と比較した.その結果,最初に
放射性核種を放出した 1 号機の放射能比と,最初に汚染が起こったとされる宮城県牡鹿半島の試料における
放射能比がともに 0.91 程度と他原子炉・他地点と比較して低い値であることがわかり,同地点の汚染は 1 号
機由来が強いことが実試料からも示唆された.また他地点でも放射能比を算出し,原子炉各号機由来の汚染
の程度を見積もった.
BUNSEKI KAGAKU Vol. 62, No. 6, pp. 475-483(2013)
© 2013 The Japan Society for Analytical Chemistry
1
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 : 153-8902 東京
都目黒区駒場 3-8-1
2
東京大学アイソトープ総合センター : 113-0032 東京都文京区
弥生 2-11-16
報  文
ば,各放出原子炉における推定されている
134
Csと他の核種
の放出量の比から,現在は定量困難である短半減期核種の
放射能も推定することができると考えられる.
また放射性核種拡散の予測・推定として発表されている
ものに,日本気象協会や関係都道府県が計算している緊急
時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)
4)
や,国立環境研究所が行っている「福島第一原子力発電所
から放出された放射性核種の大気輸送沈着シミュレーショ
ン」
5)
などが挙げられるが,それらの計算は環境中の試料の
放射能測定結果に基づいたものではない.環境試料中の汚
染源原子炉ごとの寄与を算出することができれば,それを
原子炉 1∼3 号機それぞれの核種放出イベントが起こった
日時と照らし合わせることで汚染日時を推定することに役
立てることができ,放射性核種拡散シミュレーションの検
証にも重要な役割を果たすことができると考えられる.
汚染源である原子炉ごとの汚染への寄与を算出するため
の指標として,本研究では
134
Cs/
137
Cs 放射能比に着目し
た.今回の事故での主な放射性核種放出源である原子炉 1
∼3 号機は,それぞれ放出した
134
Cs/
137
Cs 放射能比が異
なっていると考えられる.放射性核種は各原子炉号機から
放出された後,風や降雨などの影響で移動するが,同位体
の関係にある
134
Cs と
137
Cs は化学的性質が等しく,環境中
での挙動の差は無視できると考えられるため,両者の放射
能比は自然崩壊による減衰と,各原子炉号機から放出され
た放射性核種が混じりあう事によってのみ変化すると考え
られる.したがって環境試料中での
134
Cs/
137
Cs 放射能比の
大小は,各原子炉号機から放出された放射性核種の影響の
大小を反映していると言え,汚染の起源が炉ごとにどの程
度であるかを明らかにする指標となり得る.
134
Cs/
137
Cs 放
射能比を研究対象とした Tagami らの報告
6)
は既に存在し
ており,その中で
134
Cs/
137
Cs 放射能比がチェルノブイリ周
辺の試料と福島県内の試料で異なることが明らかにされた
が,本研究の目的である福島原子力発電所事故による汚染
間での比較は行われていなかった.Tagami らの報告の中
では
134
Cs/
137
Cs 放射能比の測定不確かさが 3∼5 % となっ
ていたが,後述するように,原子炉号機間で
134
Cs/
137
Cs 放
射能比の差は最大でも 10 % 程度であり,各地の汚染に対
して各原子炉号機がどの程度影響を及ぼしているかを判断
することが目的の本研究には,その値を適応するのが難し
い.また文部科学省の土壌モニタリングの結果
3)7)
をはじめ
として,
134
Cs 及び
137
Cs の土壌もしくは植物中の放射能濃
度は多くのデータが公開されている
8)
.しかしこれらの
データも原子炉号機ごとにどの程度の影響を及ぼしている
かの指標として用いるには,測定の精度や,試料の量が十
分であったとはいえない.本研究では測定の不確かさを
1 % 未満に抑えた精度の高い測定を,広域で採取した試料
において実施することによって,原子炉別に汚染への影響
を調べる事を実現することを目的とした.
2 実   験
2・1 試料採取
福島県,宮城県,岩手県の東北地方 3 県と,茨城県,東
京都,神奈川県の関東地方 1 都 2 県でそれぞれ土壌・植物
試料を計 55 試料採取した.採取地点の詳細を Fig. 1 に示
す.土壌試料は表層にある植物片や石などを取り除いた
後,スコップにて深さ 3 cm 程度を均一に採取した.植物
試料は土壌表面にある葉や枝などを採取した.試料は採取
した地域ごとに五つに分類した.採取地域はそれぞれ
ⅰ)原子力発電所周辺(試料番号 1∼21),ⅱ)原子力発電
所北西方向(22∼24),ⅲ)宮城県牡鹿半島(25∼28),
ⅳ)岩手県奥州市(29∼31),ⅴ)関東地方(32∼55)で
ある.これらの地点は,モニタリングポストによる空間線
476 B U N S E K I  K A G A K U Vol. 62 (2013)
Table 1 Estimated amount of released nuclides from each reactor unit of
Fukushima Daiichi Nuclear Power Station 1)2)
Nuclide Half-life
Amount of released nuclides/Bq
Reactor unit 1 Reactor unit 2 Reactor unit 3 Total
134
Cs 2.1y 7.1E+14 1.6E+16 8.2E+14 1.8E+16
137
Cs 30.1y 5.9E+14 1.4E+16 7.1E+14 1.5E+16
133
Xe 5.2d 3.4E+18 3.5E+18 4.4E+18 1.1E+19
89
Sr 50.5d 8.2E+13 6.8E+14 1.2E+15 2.0E+15
90
Sr 28.9y 6.1E+12 4.8E+13 8.5E+13 1.4E+14
140
Ba 12.8d 1.3E+14 1.1E+15 1.9E+15 3.1E+15
127m
Te 109d 2.5E+14 7.7E+14 6.9E+13 1.1E+15
129m
Te 33.6d 7.2E+14 2.4E+15 2.1E+14 3.3E+15
131m
Te 30h 2.2E+15 2.3E+15 4.5E+14 5.0E+15
132
Te 3.2d 2.5E+16 5.7E+16 6.4E+15 8.8E+16
131
I 8.0d 1.2E+16 1.4E+17 7.0E+15 1.6E+17
133
I 20.8h 1.2E+16 2.6E+16 4.2E+15 4.2E+16
135
I 6.6h 2.0E+15 7.4E+13 1.9E+14 2.3E+15
127
Sb 3.9d 1.7E+15 4.2E+15 4.5E+14 6.4E+15
量率の観測
9)10)
から,放射性核種による大きな汚染が起
こった日時がⅰ)原子力発電所周辺は 3 月 15 日の午後,
ⅱ)原子力発電所北西方向は 3 月 15 日の夕方,ⅲ)宮城
県牡鹿半島は 3 月 12 日,ⅳ)岩手県奥州市が 3 月 20 日,
ⅴ)関東地方が 3 月 21 日と考えられる.したがって分類
したグループ内では汚染時期が近く,汚染の組成が似てい
ると考えられるため,このような分類を行った.
2・2 試料調製と測定
採取した土壌試料は 110 ℃ で 12 時間以上加熱乾燥し,植
物試料は灰化したものを東京大学アイソトープ総合センター
の Ge(Li) 半導体検出器(Princeton Gamma Technologies
製)で γ 線測定を行った.測定は U8 容器に試料が 10∼
50 mm 程度の高さになるように封入し,試料の放射能に応
じて 3600∼14400 秒間(live time)測定した.計数効率補
正には,放射能標準体積線源 MX033U8PP(日本アイソ
トープ協会)を用いて充填高さごとに算出した計数効率を
用いた.
137
Cs は 661.7 keV のピークから,
134
Cs は放出率の
高いピークから加重平均を求め,放射能濃度(Bq g
−1
)を
算出した.土壌試料は乾燥状態,植物試料は湿潤状態での
放射能濃度として算出している.また,東北地方太平洋沖
地震直後に原子力発電所が緊急停止し,その時点で核分裂
が停止して燃料中の放射性核種の放射能比が核分裂によっ
ては変化しなくなり,原子炉ごとの特性が保存されると考
えられるので,すべての試料で 2011 年 3 月 11 日の 14 時
46 分時点での放射能比に半減期補正をそろえて算出した
値について比較することにした.また
137
Csは核実験由来の
ものがいまだに若干存在しているが,その値は土壌中で最
大でも数十 Bq kg
−1
程度という報告があり
11)
,十分に高い
放射能を示す地点においては今回の分析には大きな影響を
与えないと考え,考慮に入れなかった.
3 結果と考察
3・1 各原子炉中燃料の
134
Cs/
137
Cs 放射能比決定
環境試料中の
134
Cs/
137
Cs 放射能比から,それがどの原子
炉から汚染されたかということを算出するためには,主な
汚 染 源 で あ る 原 子 炉 1∼3 号 機 の 核 燃 料 に お け る
134
Cs/
137
Cs 放射能比を決定する必要がある.本研究では,
原子炉の 1∼3 号機の燃料中の
134
Cs/
137
Cs 放射能比を,東
京電力が発表している,原子炉近くのタービン建屋におけ
る溜まり水及び原子炉建屋地下滞留水の放射能
12)∼25)
から
算出した.原子炉建屋やタービン建屋は原子炉号機それぞ
れに付属し,そこに滞留している水は基本的に他の建屋の
滞留水と混じり合わないと考えられるので,それぞれの原
子炉の燃料の
134
Cs/
137
Cs 放射能比を滞留水が反映している
と言える.東京電力はこれら汚染水中の
134
Cs 及び
137
Cs の
放射能濃度を有効数字 2 桁で公開していたので,ここでは
その 3 桁目を測定不確かさとして扱い,
134
Cs/
137
Cs 放射能
比とその不確かさを算出した.例えば放射能濃度が 1.3×
10
5
Bq kg
−1
であった場合は,0.05×10
5
つまり,±5×10
3
を不確かさとし,その値を用いて
134
Cs/
137
Cs 放射能比の不
確かさを算出した.Fig. 2 にそれぞれの原子炉に付属する
タービン建屋溜まり水中の
134
Cs/
137
Cs 放射能比と汚染水の
採取日時の関係を示す.放射能比の値は 2011 年 3 月 11 日
の 14 時 46 分に半減期補正をしてある.試料の採取日時に
かかわらず,1 号機のタービン建屋における溜まり水の
Fig. 1 Sampling map along with sample No.
(1∼21) Around Fukushima Daiichi Nuclear Power
Station (○); (22∼24) Northwest from Fukushima
Daiichi Nuclear Power Station (●); (25∼28) Oshika
peninsula, Miyagi (×); (29∼31) Oshu city, Iwate
( △ ); (32 ∼55) Kanto area ( □ ); Location of
Fukushima Daiichi Nuclear Power Station (★).
Fig. 2 Time dependence of the 134
Cs/137
Cs activity
ratio in polluted water of reactor unit 1 to 3
(■) Reactor unit 1; (□) Reactor unit 2; (◆)
Reactor unit 3. line ①, When water of reactor unit
1 started to be transported to reactor unit 2; line ②,
When the water of reactor unit 3 started to be
transported to reactor unit 2.
報 文  477小森,小豆川,野川,松尾 :
134
Cs/
137
Cs 放射能比を指標とした福島第一原子力発電所事故に由来する放射性核種の放出原子炉別汚染評価
134
Cs/
137
Cs 放射能比が他に比べて低いことが見て取れる.
しかしそれら一つ一つのデータの不確かさは大きく,信頼
性が十分ではないため,データは採取日時によらず一定で
あると言う前提のもと,同一試料の繰り返し測定として考
えた.ただし,それらが同一試料であるという前提のため
には 2011 年 6 月から始まった汚染水の処理を考慮しなく
てはならない.中でも 1 号機のタービン建屋から 2 号機の
タービン建屋への溜まり水の輸送を 2011 年 10 月 22 日か
ら開始しており
26)
,それが 2012 年まで継続的に続いてい
る.また,2012 年 1 月 12 日からは 3 号機の復水器から 2
号機のタービン建屋への溜まり水の輸送が行われてお
り
27)
,各原子炉の燃料に由来する汚染水が混合されてし
まっている可能性がある.Fig. 2 において①,② の破線で
それらの水輸送の開始時期を表した.事実,2011 年 10 月
以降に 1 号機での
134
Cs/
137
Cs 放射能比が 2 号機での値近く
まで跳ね上がっている.これらのことをふまえて,1∼2 号
機における
134
Cs/
137
Cs 放射能比は 2011 年 10 月以前の値,
3 号機では 2012 年 1 月以前の値を参照することにした.
汚染水処理が始まる以前の各原子炉号機における
134
Cs/
137
Cs 放射能比を Fig. 3 に示す.1 号機では
134
Cs/
137
Cs
放射能比が 0.89∼0.93 程度,2 号機では 0.96∼1.05 程度,
3 号機では 0.97∼1.04 程度となっている.2 号機と 3 号機
には有意な差が見られなかったが,1 号機での
134
Cs/
137
Cs
放射能比は 2,3 号機に比べて明らかに低くなっていた.そ
れぞれの原子炉号機建屋での
134
Cs/
137
Cs 放射能比の平均値
は,1 号機では 0.91,2 号機では 1.00,3 号機では 1.01 で
あった.各平均値間の有意差の有無を,t 検定を用いて検
証した.その結果,それぞれの平均値に差がない確率 p 値
は 2∼3 号機間で 0.44(両側検定,等分散)と,棄却する
事ができず,有意差はないと言える.1∼2 号機間では p 値
が 6.7×10
−4
(両側検定,等分散),1∼3 号機間では p 値
が 1.5×10
−4
(両側検定,等分散)と,有意差が認められた.
3・2 採取試料中の
134
Cs/
137
Cs 放射能比
汚染水中の
134
Cs/
137
Cs 放射能比は 2,3 号機間では有意
な差異が見られなかったものの,1 号機では 2,3 号機に比
べて有意に小さくなっていたことから,環境試料中で
134
Cs/
137
Cs 放射能比が小さいほど 1 号機から放出された放
射性核種の影響が大きく,
134
Cs/
137
Cs 放射能比が大きいほ
ど 2,3 号機から放出された放射性核種の影響が大きいと
言うことができる.そこで環境試料中のセシウムの放射能
濃度を測定し,
134
Cs/
137
Cs 放射能比を算出した結果を
Table 2,Fig. 4 に示す.
汚染水中での
134
Cs/
137
Cs 放射能比は 0.89∼1.05 程度で
あったのに対し,環境試料中の
134
Cs/
137
Cs 放射能比は 0.91
∼1.05 程度であり,放射性核種の発生源が主に 1∼3 号機
であったということには矛盾しない.しかし前節で算出し
た各原子炉号機汚染水での平均値は 3 号機の 1.01 が最大で
あり,環境試料中にその値を超える地点が存在してしまっ
ている.溜まり水の試料数が多くなかったことで,2∼3 号
機の放射能濃度から算出した
134
Cs/
137
Cs 放射能比がばらつ
きの内の値が小さい方に偶然偏ってしまい,実際に放出し
た放射能比に比べて値が小さく評価されてしまった可能性
がある.このように汚染水中における
134
Cs/
137
Cs 放射能比
の平均値を,各原子炉号機から放出された
134
Cs/
137
Cs 放射
能比としてそのまま扱う事はできなかったが,1 号機での
値は 2∼3 号機に比べて小さいことが明らかであるため,
以下では
134
Cs/
137
Cs 放射能比を 1 号機の汚染に寄与する割
合を求める指標として活用していく.
それぞれの試料中の
134
Cs/
137
Cs 放射能比の測定不確かさ
は,すべて 0.01 未満に収まっているのに対し,環境試料中
での値は最大で 0.14 程度の差が存在し,その差は測定の不
確かさによるものではないと言うことができる.
134
Cs と
137
Cs は化学的挙動にほとんど差異はないと考えられるた
め,地点ごとの
134
Cs/
137
Cs 放射能比のばらつきの要因とし
て考えられるのは放出時点で既に異なっていた,つまり放
出元の原子炉が異なるということである.また Fig. 5 に
134
Cs/
137
Cs 放射能比の大小と全セシウム
134+137
Cs の放射能
濃度の関係を示す.近隣地域であっても
134+137
Cs の放射能
濃度には大きなばらつきが存在するにもかかわらず,放射
能比は比較的近い値をとっており,両者の関係は R
2
=
0.026 とほぼ相関がないと言える.したがって近隣地域,つ
478 B U N S E K I  K A G A K U Vol. 62 (2013)
Fig. 3 Difference of the 134
Cs/137
Cs activity ratio in
polluted water among reactor unit 1, 2 and 3
(■) Reactor unit 1; (□) Reactor unit 2; (◆)
Reactor unit 3.
Table 2 Activity concentration of 134
Cs and 137
Cs, and 134
Cs/137
Cs activity ratio in
each sample
No. Location Sampling date
Activity concentration/Bq g−1
134
Cs/137
Cs
radioactivity ratio134
Cs 137
Cs
1 364.6±0.2 367.4±0.3 0.992±0.001
2 318.0±0.2 313.6±0.3 1.014±0.001
3 2105±2 2095±2 1.005±0.001
4 1780±1 1740±2 1.023±0.001
5 1377.7±0.4 1380.5±0.6 0.998±0.001
6 2887±1 2880±1 1.002±0.000
7 305.6±0.6 307.9±0.9 0.993±0.003
8 280.4±0.7 279.2±0.9 1.005±0.004
9 178.4±0.2 176.0±0.2 1.014±0.002
10 306.2±0.2 302.4±0.3 1.013±0.001
11 i 2011/12/21 245.6±0.9 241.8±1.2 1.015±0.006
12 42.41±0.22 42.27±0.29 1.003±0.009
13 1272±0 1292±0 0.985±0.000
14 1278±0 1289±1 0.992±0.001
15 4001±2 4121±3 0.971±0.001
16 229.8±0.6 225.5±0.7 1.019±0.004
17 17.57±0.06 18.06±0.09 0.973±0.006
18 50.35±0.26 49.55±0.34 1.016±0.009
19 15.71±0.04 15.65±0.06 1.003±0.004
20 52.36±0.08 52.74±0.10 0.993±0.002
21 5.827±0.030 5.948±0.038 0.980±0.008
22 154.8±0.2 151.8±0.2 1.020±0.002
23 ii 2011/5/29 136.7±0.2 134.0±0.2 1.020±0.002
24 8.721±0.041 8.375±0.046 1.041±0.008
25
iii 2012/6/22
2.893±0.016 3.190±0.020 0.907±0.007
26 3.228±0.015 3.454±0.019 0.935±0.007
27 3.101±0.010 3.293±0.013 0.942±0.005
28 4.708±0.022 4.792±0.027 0.982±0.007
No. Location Sampling date
Activity concentration/Bq g−1
134
Cs/137
Cs
activity ratio134
Cs 137
Cs
29 12.53±0.03 12.37±0.03 1.013±0.003
30 iv 2012/6/23 17.49±0.05 17.02±0.05 1.028±0.004
31 27.48±0.04 27.24±0.04 1.009±0.002
32
v
10.76±0.03 10.51±0.04 1.025±0.005
33 27.23±0.06 26.76±0.08 1.018±0.004
34 7.781±0.029 7.680±0.035 1.013±0.006
35 11.55±0.04 11.47±0.05 1.007±0.005
36 5.586±0.023 5.586±0.028 1.000±0.006
37 8.915±0.032 8.817±0.039 1.011±0.006
38 2012/6/17 44.78±0.07 43.59±0.09 1.027±0.003
39 9.139±0.035 9.022±0.043 1.013±0.006
40 9.534±0.031 9.298±0.037 1.025±0.005
41 13.69±0.04 13.36±0.06 1.025±0.005
42 18.82±0.04 18.78±0.05 1.002±0.004
43 17.62±0.04 17.24±0.05 1.022±0.004
44 8.343±0.029 8.328±0.035 1.002±0.005
45 13.51±0.05 12.93±0.07 1.045±0.007
46 2011/11/27 15.05±0.05 14.81±0.06 1.016±0.005
47 19.27±0.05 18.90±0.06 1.019±0.004
48 17.78±0.05 17.49±0.07 1.017±0.005
49 2.470±0.013 2.458±0.018 1.005±0.009
50 2011/9/10 0.2090±0.0005 0.2089±0.0007 1.000±0.004
51 8.845±0.033 8.588±0.045 1.030±0.007
52 110.2±0.2 106.4±0.2 1.036±0.002
53
2012/7/14
5.316±0.019 5.192±0.023 1.024±0.006
54 17.10±0.03 16.83±0.04 1.016±0.003
55 2011/7/24 41.37±0.11 40.47±0.14 1.022±0.004
報 文  479小森,小豆川,野川,松尾 :
134
Cs/
137
Cs 放射能比を指標とした福島第一原子力発電所事故に由来する放射性核種の放出原子炉別汚染評価
まり汚染された時期やその際に飛散してきた放射性核種の
放出源が同じと考えられる地点では
134
Cs/
137
Cs 放射能比は
汚染の度合いにかかわらず近い値になることが言える.以
上のことから,
134
Cs/
137
Cs 放射能比は地点ごとに汚染源の
割合を調べる上で十分な指標になると考えられる.
次に地域ごとに見ていく.まず宮城県の牡鹿半島では 3
月 12 日の深夜から 3 月 13 日にかけて事故初期の段階で空
間線量率が急激に上昇したという報告や,原子力発電所事
故が起こってから最初に汚染された陸上の地点であるとい
うシミュレーション結果がある
28)29)
.その時点で放射性核
種を放出していたのは,建屋が爆発してしまっていた原子
炉 1 号機のみであり
30)
,また飛散シミュレーションからは
牡鹿半島での汚染はその初期に起こった汚染が大部分であ
ると見る事もできる.それらのことをふまえると,牡鹿半
島における汚染は原子炉 1 号機から放出された放射性核種
の寄与が大きくなっているということが推測できる.そこ
で Fig. 4 で牡鹿半島での
134
Cs/
137
Cs 放射能比の値を見てみ
ると,0.91∼0.98 程度となっていて,特に試料 No.25∼27
に関しては他の地点に比べて不確かさを考慮しても明らか
に 低 い こ と が 分 か る. そ の 中 で も No.25 の 試 料 は
134
Cs/
137
Cs 放射能比が 0.91 と,1 号機における
134
Cs/
137
Cs
放射能比に近いことから,ほとんどの原子力発電所 1 号機
由来の汚染がほとんどであることが示唆された.事故初期
に起こった汚染の原因である原子炉号機の特定が環境中の
実試料からも支持されたことは非常に価値があることであ
ると言える.また牡鹿半島の試料は,試料番号が 25 から
28 へと大きくなるほど採取地点が南となっており,それに
連動して
134
Cs/
137
Cs 放射能比が 0.91,0.94,0.94,0.98 と
大きくなる傾向が見られた.先に挙げた飛散シミュレー
ションにおいて,3 月 12 日以降も放射性核種が度々牡鹿半
島の,主に南部に飛散してきているという計算結果があ
る.そのように 2 号機もしくは 3 号機から放出された放射
性核種が飛来することによって,当初は 1 号機での値と同
程度に小さかったと考えられる
134
Cs/
137
Cs 放射能比が,半
島南部で大きくなったと考えることができる.
次に,福島第一原子力発電所周辺の試料における
134
Cs/
137
Cs 放射能比は 0.98∼1.01 程度であり,これは他の
地点での値の中間程度にあたる.原子力発電所周辺は 1∼
3 号機すべての放射性核種放出の影響を受けていることを
考えると,それぞれの原子炉号機由来の汚染が混じり合っ
て値が平均化されていると言える.
他の地点を見ると,関東地方と福島北西方向,岩手県の
試料で
134
Cs/
137
Cs放射能比が1.00∼1.04と今回分析した試
料の中でも高い値を示しており,これらの地点では汚染源
は 2∼3 号機に比べて 1 号機の割合がかなり低くなってい
ると言える.中でも原子力発電所北西地点や関東地方では
134
Cs/
137
Cs 放射能比が 1.04 以上と大きくなっている地点も
存在し,こういった地点では 1 号機からの汚染は割合とし
てほとんどないということが言えるだろう.
またこれらの測定値,計算値と既存の測定によって得ら
れた報告値と比較するために,文部科学省が公開している
土壌中の核種分析結果
7)
との比較を行った.公開されてい
る測定値は 2011 年の 6 月 14 日に半減期補正がそろえられ
ていたため
31)
,著者らの試料と同様 2011 年の 3 月 11 日時
点での放射能濃度に換算し,
134
Cs/
137
Cs 放射能比を計算し
た.茨城県南などの関東地方や宮城県の牡鹿半島,岩手県
奥州市での試料は採取されていなかったので,ここでは福
島県内の試料のみを比較対象とした.著者らの試料では
134
Cs/
137
Cs 放射能比が 0.97∼1.04 を示した一方で,文部科
480 B U N S E K I  K A G A K U Vol. 62 (2013)
Fig. 4 134
Cs/137
Cs activity ratio in environmental
samples
(○) Around Fukushima Daiichi Nuclear Power
Station; (●) Northwest from Fukushima Daiichi
Nuclear Power Station; (×) Oshika peninsula,
Miyagi; (△) Oshu city, Iwate; (□) Kanto area.
Fig. 5 Relation between the activity of total cesium
and the 134
Cs/137
Cs activity ratio with a linear
approximation
(○) Around Fukushima Daiichi Nuclear Power
Station; (●) Northwest from Fukushima Daiichi
Nuclear Power Station; (×) Oshika peninsula,
Miyagi; (△) Oshu city, Iwate; (□) Kanto area.
学省の分析結果では 0.5∼1.4 程度と著者らの試料に比べ
広く値が分布していた.著者らの測定結果に比べて値のば
らつきが大きい事の要因に関しては,測定時間が著者らの
分析に比べて短かった事などから,一つ一つの試料の測定
不確かさが大きくなってしまったことが考えられる.さら
に土壌中の放射性セシウムの濃度が低い試料も分析対象で
あったことから,核実験由来の
137
Csの影響を無視できなく
なり,結果として
134
Cs/
137
Cs 放射能比が低く示された可能
性が考えられる.このように文部科学省の公表データで
は,福島第一原子力発電所事故由来の
134
Cs/
137
Cs 放射能比
の分析精度が低いと考えられる.短期間で多くの試料の放
射能濃度を測定する必要があり,本研究とは目的が異なっ
ているため仕方がない事ではあるが,実際に各データの不
確かさが大きいため,これらのデータは,個別で各原子炉
の寄与を調べる指標として用いる事はできない.しかし分
析試料が豊富に存在するため,細かい地域ごとの違いを無
視し,いくつかの試料の平均値を用いることで著者らの分
析値と比較し,その確度の妥当性を議論することはできる
と考えられる.そこで著者らと文部科学省の分析結果を,
それぞれ平均した値で比較すると,福島県内の試料におけ
る
134
Cs/
137
Cs 放射能比は共に 1.00 となっていた.またその
中でも,原子力発電所南北方向と北西方向を区別して比較
を行った.著者らの試料では福島県は原子力発電所の南北
方向で
134
Cs/
137
Cs 放射能比が平均 1.00 であったのに対し,
北西方向では 1.02∼1.04 と値が大きくなっていた.一方で
文部科学省のデータにおいても原子力発電所南北方向(南
相馬,浪江市,大熊町,双葉町,富岡町,楢葉町)での平
均が 0.98(合計 172 試料)であるのに対し,北西方向(飯
館村,伊達市)では 1.01(合計 113 試料)であり,やはり
北西方向で値が大きくなっていた.このように
134
Cs/
137
Cs
放射能比の平均値を見ると,確かに著者らのデータと文部
科学省のデータの傾向は一致していた.しかし文部科学省
のデータでは細かな
134
Cs/
137
Cs 放射能比の違いが,そのば
らつきの大きさに埋もれてしまっている事は想像に難くな
く,本研究で行ったような精度の高い分析が,放射性核種
の放出源を特定するうえで重要である事を改めて示す結果
となった.
4 結   言
環境試料中の
134
Cs/
137
Cs 放射能比の違いが,その地点に
おける汚染源である原子炉号機それぞれの寄与の割合を反
映しているという見通しのもと研究を進めてきた結果,そ
れぞれの原子炉号機での
134
Cs/
137
Cs 放射能比は1号機で 2∼
3 号機に比べて有意に小さい値を示しており,
134
Cs/
137
Cs
放射能比の大小が 1 号機からの汚染の寄与に直接関係して
いることが示唆された.また宮城県牡鹿半島は,放射性核
種を放出した時期とその放出原子炉号機,放射性核種飛散
シミュレーション,空間線量値の推移などから,1 号機か
らの汚染が大きいであろうと推定される地点である.一
方,そこで採取した環境試料中の
134
Cs/
137
Cs 放射能比は,
今回分析したどの地点の試料と比べても小さく,この地点
では 1 号機からの汚染寄与が大きいことが,本研究で用い
た指標から推定する事ができた.このように二つの異なる
アプローチから同じ結論が得られた事から,この推定は信
頼性が高いと言う事ができ,また
134
Cs/
137
Cs 放射能比が地
点ごとの汚染源原子炉号機ごとの寄与を調べるための指標
として有用であることが本研究の結果,明らかとなった.
134
Cs と
137
Cs は今回の事故で大量に放出され,また長半
減期であるため,環境中で長い間放射線を放出し続けてし
まう厄介なものである.一方でまだ放射能が測定されてい
ない試料でも事故後数年にわたって精度の高い測定ができ
るということは,
134
Cs/
137
Cs 放射能比に関するデータを蓄
積し,放射性核種による汚染がどの原子炉からの寄与によ
るものかを調べていく上での利点といえる.さらに両者と
もに γ 線放出核種であるため,定量が比較的容易であると
言う事も利点になる.本研究で分析した試料は放射性核種
による汚染が起こった範囲の一部で採取したものでしかな
いが,
134
Cs や
137
Cs の放射能濃度は広く測定が行われてお
り,測定が行われていない試料の測定も今後見込まれる事
から,多くの
134
Cs/
137
Cs 放射能比データが集まり,事故の
影響を評価するのに役立つことが期待される.
謝   辞
本研究の一部は東京大学アイソトープ総合センターで実
施された.また本研究の一部は住友財団環境研究助成に
よって行われた.ここに感謝の意を表します.
文   献
1) 経済産業省 (2011) : 放射性物質放出量データの一
部誤りについて,<http://www.meti.go.jp/press/
2011/10/20111020001/20111020001.pdf> (2012.
12.5 アクセス).
2) 斉藤勝裕 :“東日本大震災後の放射性物質汚染対策
―放射線の基礎から環境影響評価、除染技術とその
取り組み”, p.107 (2012).
3) 文部科学省 (2011) : 土壌モニタリングの測定結果
平成 23 年 6 月 1 日∼平成 24 年 3 月 30 日までの測
定 結 果,<http://radioactivity.mext.go.jp/old/ja/
monitoring_around_FukushimaNPP_soil_
monitoring/2012/03/32352/index.html> (2012.
12.5 アクセス).
4) 文部科学省 (2011) : 緊急時迅速放射能影響予測
ネットワークシステム (SPEEDI) 等による計算結
果,<http://radioactivity.mext.go.jp/ja/list/201/
list-1.html> (2012.12.5 アクセス).
5) 国立環境研究所 (2011) : 福島第一原子力発電所か
ら放出された放射性物質の大気輸送沈着シミュレー
ション,<http://www.nies.go.jp/shinsai/> (2012.
12.5 アクセス).
6) K. Tagami, S. Uchida, Y. Uchihori, N. Ishii, H.
報 文  481小森,小豆川,野川,松尾 :
134
Cs/
137
Cs 放射能比を指標とした福島第一原子力発電所事故に由来する放射性核種の放出原子炉別汚染評価
Kitamura, Y. Shirakawa : Science of the Total
Environment, 409, 4885 (2011).
7) 文部科学省 (2011) : 土壌の核種分析結果 (セシウム
134、137 に つ い て),<www.mext.go.jp/b_menu/
shingi/chousa/.../1310688_1.pdf> (2013.3.15 アク
セス).
8) H. Kato, Y. Onda, M. Teramage : Journal of
Environmental Radioactivity, 111, 59 (2012).
9) 福島県 (2011) : 20km∼ 50km圏付近環境放射能測
定結果 (暫定値),<http://wwwcms.pref.fukushima.
jp/download/1/20-50km0315-0331.pdf> (2013.
3.15 アクセス).
10) 福島県 (2011) : 県内 7 方部 環境放射能測定結果 (暫
定値),<http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/
1/7houbu0311-0331.pdf> (2013.3.15 アクセス).
11) 駒村美佐子,津村昭人,山口紀子,木方展治,小平
潔 : 農業環境技術研究所資料, 28, 1 (2005).
12) 東京電力 (2011) : 福島第一原子力発電所における
放射能濃度・空間線量率の推移,<http://www.
tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_
111203_01-j.pdf> (2012.12.5 アクセス).
13) 東京電力 (2011) : 12/14 福島第一タービン建屋地
下階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco.
co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_
111214_01-j.pdf> (2012.12.5 アクセス).
14) 東京電力 (2012) : 1/21 福島第一タービン建屋地下
階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco.
co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_
120121_03-j.pdf> (2012.12.5 アクセス).
15) 東京電力 (2012) : 2/13 3、4 号機タービン建屋地
下階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco.
co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_
120213_05-j.pdf> (2012.12.5 アクセス).
16) 東京電力 (2012) : 3/19 福島第一タービン建屋地下
階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco.
co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_
120319_01-j.pdf> (2012.12.5 アクセス).
17) 東京電力 (2012) : 4/23 福島第一タービン建屋地下
階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco.
co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_
120423_01-j.pdf> (2012.12.5 アクセス).
18) 東京電力 (2012) : 5/17 福島第一タービン建屋地下
階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco.
co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_
120517_03-j.pdf> (2012.12.5 アクセス).
19) 東京電力 (2012) : 6/18 福島第一タービン建屋地下
階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco.
co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_
120618_03-j.pdf> (2012.12.5 アクセス).
20) 東京電力 (2012) : 7/23 福島第一タービン建屋地下
階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco.
co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_
120723_01-j.pdf> (2012.12.5 アクセス).
21) 東京電力 (2012) : 8/13 福島第一タービン建屋地下
階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco.
co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_
120813_01-j.pdf> (2012.12.5 アクセス).
22) 東京電力 (2012) : 9/20 福島第一タービン建屋地下
階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco.
co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_
120920_01-j.pdf> (2012.12.5 アクセス).
23) 東京電力 (2011) : 12/12 原子炉建屋地下滞留水の
放 射 能 濃 度 等 の 測 定 結 果,<http://www.tepco.
co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_
111212_02-j.pdf> (2012.12.5 アクセス).
24) 東京電力 (2012) : 4/18 原子炉建屋地下滞留水の放
射能濃度等の測定結果,<http://www.tepco.co.jp/
nu/fukushima-np/images/handouts_120423_07-j.
pdf> (2012.12.5 アクセス).
25) 東京電力 (2012) : 6/7 原子炉建屋地下滞留水の放
射能濃度等の測定結果,<http://www.tepco.co.jp/
nu/fukushima-np/images/handouts_120607_03-j.
pdf> (2012.12.5 アクセス).
26) 東京電力 (2011) : 福島第一原子力発電所における
高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理
の状況について (第 18 報),<http://www.tepco.
co.jp/cc/press/11102604-j.html> (2012.12.5 アクセ
ス).
27) 東京電力 (2012) : 福島第一原子力発電所における
高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理
の状況について (第 30 報),<http://www.tepco.
co.jp/cc/press/2012/12011803-j.html> (2012.12.5
アクセス).
28) 気象庁気象研究所 (2011) : 福島原発からの放射性
物質の移流拡散について,<http://www.mri-jma.
go.jp/Topics/H23_tohoku-taiheiyo-oki-eq/
1107fukushima.html> (2012.12.5 アクセス).
29) 株式会社ヴィジブルインフォメーションセンター
(2011) : 福島第一発電緊急事態 大気放出に係る事
故解析 広域結果,<http://www.vic.jp/fukushima2/
g1/r2011031200.html> (2012.12.5 アクセス).
30) 東京電力 (2012) : 福島第一原子力発電所事故にお
ける放射性物質の大気中への放出量の推定につい
て,<www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/
images/120524j0105.pdf> (2012.12.5 アクセス).
31) 文部科学省 (2011) : 文部科学省による放射線量等
分布マップ (放射性セシウムの土壌濃度マップ) の
作成について (8 月 30 日), <http://radioactivity.mext.
go.jp/ja/contents/6000/5043/24/11555_0830.
pdf> (2013.3.21 アクセス).
482 B U N S E K I  K A G A K U Vol. 62 (2013)
Evaluation of Radioactive Contamination Caused by
Each Plant of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station
Using 134
Cs/137
Cs Activity Ratio as an Index
Masashi KOMORI
1
, Katsumi SHOZUGAWA
1
, Norio NOGAWA
2
and Motoyuki MATSUO
Ⓡ1
1
Graduate School of Arts and Sciences, The University of Tokyo, 3-8-1, Komaba, Meguro-ku, Tokyo 153-8902
2
Radioisotope Center, The University of Tokyo, 2-11-16, Yayoi, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0032
(Received December 7, 2012; Accepted March 29, 2013)
We estimated the extent of radioactive contamination from each reactor unit (1 to 3) of
Fukushima Daiichi Nuclear Power Station by using the 134
Cs/137
Cs activity ratio as an index.
Although the activity ratio of 134
Cs/137
Cs emitted by the accident has been reported to be about
1 : 1, variations in the activity ratio has arisen in environmental samples, since the ratio differs
slightly for every nuclear reactor. Therefore, it is considered that the ratio is useful for a
index for evaluating the contamination from each reactor unit. We collected soils and plant
pieces in eastern Japan, measured gamma rays and calculated the 134
Cs/137
Cs activity ratio. We
also calculated the 134
Cs/137
Cs activity ratio in contaminated water accumulated in each reactor
building (R/B) and turbine building (T/B), and compared it with the ratio of environmental
samples. The data of the 134
Cs and 137
Cs activity concentration are presented by Tokyo Electric
Power Company. As a result, it turned out that the ratio of a sample in Oshika Peninsula was
about 0.91, which was lower than that of other samples, and similar to the ratio of reactor unit
1 of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station. It is suggested that Oshika Peninsula is
contaminated mainly from reactor unit 1. We also evaluated the extent of activity
contamination from each reactor unit at other points.
Keywords: activity ratio; radioactive cesium; reactor unit; radioactive contamination;
contamination source.
報 文  483小森,小豆川,野川,松尾 :
134
Cs/
137
Cs 放射能比を指標とした福島第一原子力発電所事故に由来する放射性核種の放出原子炉別汚染評価

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62 475

  • 1. 1 緒   言 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災に伴って発生した福島 第一原子力発電所事故により,大量の放射性核種が東日本 を中心に広く拡散した.事故の被害は大きく,今後長期に わたって被ばくによる悪影響が懸念されている.そのた め,今回の事故による放射性核種の拡散を正確に把握し, 地点ごとに事故直後から将来までの被ばくの程度を見積も ることは極めて重要であると考えられる.しかし,事故か ら 1 年以上経った今では短半減期核種の崩壊などもあり, 事故当初に空間線量率を測定していなかった地点で初期被 ばく線量を見積もることは非常に困難である. 現在では長半減期核種である 134 Cs と 137 Cs が空間線量率 の大部分を担っていると考えられるが,原子力発電所から 放出された核種の中には放出量ではそれらを上回る,もし くは同程度の核種が数多く存在している(Table 1) 1)2) .例 えば 133 Xe の放出量は 134 Cs や 137 Cs の 1000 倍程度あり,他 にも 131 I, 133 I や 132 Te の放出量が特に大きいと見積もられ ている.したがって事故当初は, 134 Cs や 137 Cs よりもこれ ら短半減期核種が支配的だったと考えられ,その当時の放 射能を明らかにすることが,事故当時の空間線量率を推定 する上では有効な手段になり得る. しかしこれら短半減期核種の環境中での放射能濃度は, 事故直後に測定しない限り定量が困難である.代表的な短 半減期核種である 131 I や 110m Ag は福島県内で土壌試料にお ける濃度測定がされているものの,値の出ていない地点も 多い 3) .一方で現在土壌中にある放射性核種の中でも卓越 した放射能を示すセシウムの二つの放射性同位体 134 Cs と 137 Cs については多くの地点で放射能が測定されている. 134 Cs と 137 Cs の沈着量が多ければ,事故当時の短半減期核 種の沈降量もそれに比例して多かったとも考えられるが, 放射性セシウムと他の短半減期核種の放出量比は原子炉ご とに大きく異なっているため,単純に放射性セシウムの濃 度から他の核種の濃度を推定することはできない.例え ば,事故当時に高線量であったと考えられる 132 Te の 2,3 号機からの放出量は,Table 1 を見るかぎりそれぞれ 134 Cs の 3.6 倍,7.8 倍と推定されているが,1 号機からは 134 Cs の 35 倍と推定されている.したがって放射性セシウムの濃度 から他の核種の放射能を推定するためには土壌中の放射性 セシウムの濃度を明らかにすると共にそのセシウムの汚染 がどの原子炉からの汚染であるかを特定することが重要で ある. そこで本研究では,各々の地点における放射性核種によ る汚染が原子力発電所のどの炉からどの程度引き起こされ たものなのかを特定することを目的とした.各地点におけ る原子炉号機ごとの汚染の程度を割り出すことができれ 475 134 Cs/ 137 Cs 放射能比を指標とした福島第一原子力発電所事故に 由来する放射性核種の放出原子炉別汚染評価 小森 昌史 1 ,小豆川勝見 1 ,野川 憲夫 2 ,松尾 基之 Ⓡ 1 福島第一原子力発電所事故によって環境中に降り積もった放射性核種が,地点ごとに原子炉 1∼3 号機の 中でどの放出源の寄与によるものであるかを 134 Cs/ 137 Cs 放射能比(以下放射能比)を指標として調べた.事 故によって放出された 134 Cs と 137 Cs の放射能比はおよそ 1 : 1 であるが,細かく見ると原子炉ごとに比が異な るために環境試料中で放射能比のばらつきが生じており,その比が汚染源ごとの寄与の大きさを表す指標に なると考えられる.そこで本研究では東日本の広域で土壌・植物片を採取して γ 線測定を行い,各地点にお ける放射能比を算出した.また東京電力が公開している原子炉建屋やタービン建屋の汚染水の放射能から, 各原子炉における 134 Cs/ 137 Cs 放出放射能比を算出し,環境試料中の放射能比と比較した.その結果,最初に 放射性核種を放出した 1 号機の放射能比と,最初に汚染が起こったとされる宮城県牡鹿半島の試料における 放射能比がともに 0.91 程度と他原子炉・他地点と比較して低い値であることがわかり,同地点の汚染は 1 号 機由来が強いことが実試料からも示唆された.また他地点でも放射能比を算出し,原子炉各号機由来の汚染 の程度を見積もった. BUNSEKI KAGAKU Vol. 62, No. 6, pp. 475-483(2013) © 2013 The Japan Society for Analytical Chemistry 1 東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 : 153-8902 東京 都目黒区駒場 3-8-1 2 東京大学アイソトープ総合センター : 113-0032 東京都文京区 弥生 2-11-16 報  文
  • 2. ば,各放出原子炉における推定されている 134 Csと他の核種 の放出量の比から,現在は定量困難である短半減期核種の 放射能も推定することができると考えられる. また放射性核種拡散の予測・推定として発表されている ものに,日本気象協会や関係都道府県が計算している緊急 時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI) 4) や,国立環境研究所が行っている「福島第一原子力発電所 から放出された放射性核種の大気輸送沈着シミュレーショ ン」 5) などが挙げられるが,それらの計算は環境中の試料の 放射能測定結果に基づいたものではない.環境試料中の汚 染源原子炉ごとの寄与を算出することができれば,それを 原子炉 1∼3 号機それぞれの核種放出イベントが起こった 日時と照らし合わせることで汚染日時を推定することに役 立てることができ,放射性核種拡散シミュレーションの検 証にも重要な役割を果たすことができると考えられる. 汚染源である原子炉ごとの汚染への寄与を算出するため の指標として,本研究では 134 Cs/ 137 Cs 放射能比に着目し た.今回の事故での主な放射性核種放出源である原子炉 1 ∼3 号機は,それぞれ放出した 134 Cs/ 137 Cs 放射能比が異 なっていると考えられる.放射性核種は各原子炉号機から 放出された後,風や降雨などの影響で移動するが,同位体 の関係にある 134 Cs と 137 Cs は化学的性質が等しく,環境中 での挙動の差は無視できると考えられるため,両者の放射 能比は自然崩壊による減衰と,各原子炉号機から放出され た放射性核種が混じりあう事によってのみ変化すると考え られる.したがって環境試料中での 134 Cs/ 137 Cs 放射能比の 大小は,各原子炉号機から放出された放射性核種の影響の 大小を反映していると言え,汚染の起源が炉ごとにどの程 度であるかを明らかにする指標となり得る. 134 Cs/ 137 Cs 放 射能比を研究対象とした Tagami らの報告 6) は既に存在し ており,その中で 134 Cs/ 137 Cs 放射能比がチェルノブイリ周 辺の試料と福島県内の試料で異なることが明らかにされた が,本研究の目的である福島原子力発電所事故による汚染 間での比較は行われていなかった.Tagami らの報告の中 では 134 Cs/ 137 Cs 放射能比の測定不確かさが 3∼5 % となっ ていたが,後述するように,原子炉号機間で 134 Cs/ 137 Cs 放 射能比の差は最大でも 10 % 程度であり,各地の汚染に対 して各原子炉号機がどの程度影響を及ぼしているかを判断 することが目的の本研究には,その値を適応するのが難し い.また文部科学省の土壌モニタリングの結果 3)7) をはじめ として, 134 Cs 及び 137 Cs の土壌もしくは植物中の放射能濃 度は多くのデータが公開されている 8) .しかしこれらの データも原子炉号機ごとにどの程度の影響を及ぼしている かの指標として用いるには,測定の精度や,試料の量が十 分であったとはいえない.本研究では測定の不確かさを 1 % 未満に抑えた精度の高い測定を,広域で採取した試料 において実施することによって,原子炉別に汚染への影響 を調べる事を実現することを目的とした. 2 実   験 2・1 試料採取 福島県,宮城県,岩手県の東北地方 3 県と,茨城県,東 京都,神奈川県の関東地方 1 都 2 県でそれぞれ土壌・植物 試料を計 55 試料採取した.採取地点の詳細を Fig. 1 に示 す.土壌試料は表層にある植物片や石などを取り除いた 後,スコップにて深さ 3 cm 程度を均一に採取した.植物 試料は土壌表面にある葉や枝などを採取した.試料は採取 した地域ごとに五つに分類した.採取地域はそれぞれ ⅰ)原子力発電所周辺(試料番号 1∼21),ⅱ)原子力発電 所北西方向(22∼24),ⅲ)宮城県牡鹿半島(25∼28), ⅳ)岩手県奥州市(29∼31),ⅴ)関東地方(32∼55)で ある.これらの地点は,モニタリングポストによる空間線 476 B U N S E K I  K A G A K U Vol. 62 (2013) Table 1 Estimated amount of released nuclides from each reactor unit of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station 1)2) Nuclide Half-life Amount of released nuclides/Bq Reactor unit 1 Reactor unit 2 Reactor unit 3 Total 134 Cs 2.1y 7.1E+14 1.6E+16 8.2E+14 1.8E+16 137 Cs 30.1y 5.9E+14 1.4E+16 7.1E+14 1.5E+16 133 Xe 5.2d 3.4E+18 3.5E+18 4.4E+18 1.1E+19 89 Sr 50.5d 8.2E+13 6.8E+14 1.2E+15 2.0E+15 90 Sr 28.9y 6.1E+12 4.8E+13 8.5E+13 1.4E+14 140 Ba 12.8d 1.3E+14 1.1E+15 1.9E+15 3.1E+15 127m Te 109d 2.5E+14 7.7E+14 6.9E+13 1.1E+15 129m Te 33.6d 7.2E+14 2.4E+15 2.1E+14 3.3E+15 131m Te 30h 2.2E+15 2.3E+15 4.5E+14 5.0E+15 132 Te 3.2d 2.5E+16 5.7E+16 6.4E+15 8.8E+16 131 I 8.0d 1.2E+16 1.4E+17 7.0E+15 1.6E+17 133 I 20.8h 1.2E+16 2.6E+16 4.2E+15 4.2E+16 135 I 6.6h 2.0E+15 7.4E+13 1.9E+14 2.3E+15 127 Sb 3.9d 1.7E+15 4.2E+15 4.5E+14 6.4E+15
  • 3. 量率の観測 9)10) から,放射性核種による大きな汚染が起 こった日時がⅰ)原子力発電所周辺は 3 月 15 日の午後, ⅱ)原子力発電所北西方向は 3 月 15 日の夕方,ⅲ)宮城 県牡鹿半島は 3 月 12 日,ⅳ)岩手県奥州市が 3 月 20 日, ⅴ)関東地方が 3 月 21 日と考えられる.したがって分類 したグループ内では汚染時期が近く,汚染の組成が似てい ると考えられるため,このような分類を行った. 2・2 試料調製と測定 採取した土壌試料は 110 ℃ で 12 時間以上加熱乾燥し,植 物試料は灰化したものを東京大学アイソトープ総合センター の Ge(Li) 半導体検出器(Princeton Gamma Technologies 製)で γ 線測定を行った.測定は U8 容器に試料が 10∼ 50 mm 程度の高さになるように封入し,試料の放射能に応 じて 3600∼14400 秒間(live time)測定した.計数効率補 正には,放射能標準体積線源 MX033U8PP(日本アイソ トープ協会)を用いて充填高さごとに算出した計数効率を 用いた. 137 Cs は 661.7 keV のピークから, 134 Cs は放出率の 高いピークから加重平均を求め,放射能濃度(Bq g −1 )を 算出した.土壌試料は乾燥状態,植物試料は湿潤状態での 放射能濃度として算出している.また,東北地方太平洋沖 地震直後に原子力発電所が緊急停止し,その時点で核分裂 が停止して燃料中の放射性核種の放射能比が核分裂によっ ては変化しなくなり,原子炉ごとの特性が保存されると考 えられるので,すべての試料で 2011 年 3 月 11 日の 14 時 46 分時点での放射能比に半減期補正をそろえて算出した 値について比較することにした.また 137 Csは核実験由来の ものがいまだに若干存在しているが,その値は土壌中で最 大でも数十 Bq kg −1 程度という報告があり 11) ,十分に高い 放射能を示す地点においては今回の分析には大きな影響を 与えないと考え,考慮に入れなかった. 3 結果と考察 3・1 各原子炉中燃料の 134 Cs/ 137 Cs 放射能比決定 環境試料中の 134 Cs/ 137 Cs 放射能比から,それがどの原子 炉から汚染されたかということを算出するためには,主な 汚 染 源 で あ る 原 子 炉 1∼3 号 機 の 核 燃 料 に お け る 134 Cs/ 137 Cs 放射能比を決定する必要がある.本研究では, 原子炉の 1∼3 号機の燃料中の 134 Cs/ 137 Cs 放射能比を,東 京電力が発表している,原子炉近くのタービン建屋におけ る溜まり水及び原子炉建屋地下滞留水の放射能 12)∼25) から 算出した.原子炉建屋やタービン建屋は原子炉号機それぞ れに付属し,そこに滞留している水は基本的に他の建屋の 滞留水と混じり合わないと考えられるので,それぞれの原 子炉の燃料の 134 Cs/ 137 Cs 放射能比を滞留水が反映している と言える.東京電力はこれら汚染水中の 134 Cs 及び 137 Cs の 放射能濃度を有効数字 2 桁で公開していたので,ここでは その 3 桁目を測定不確かさとして扱い, 134 Cs/ 137 Cs 放射能 比とその不確かさを算出した.例えば放射能濃度が 1.3× 10 5 Bq kg −1 であった場合は,0.05×10 5 つまり,±5×10 3 を不確かさとし,その値を用いて 134 Cs/ 137 Cs 放射能比の不 確かさを算出した.Fig. 2 にそれぞれの原子炉に付属する タービン建屋溜まり水中の 134 Cs/ 137 Cs 放射能比と汚染水の 採取日時の関係を示す.放射能比の値は 2011 年 3 月 11 日 の 14 時 46 分に半減期補正をしてある.試料の採取日時に かかわらず,1 号機のタービン建屋における溜まり水の Fig. 1 Sampling map along with sample No. (1∼21) Around Fukushima Daiichi Nuclear Power Station (○); (22∼24) Northwest from Fukushima Daiichi Nuclear Power Station (●); (25∼28) Oshika peninsula, Miyagi (×); (29∼31) Oshu city, Iwate ( △ ); (32 ∼55) Kanto area ( □ ); Location of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station (★). Fig. 2 Time dependence of the 134 Cs/137 Cs activity ratio in polluted water of reactor unit 1 to 3 (■) Reactor unit 1; (□) Reactor unit 2; (◆) Reactor unit 3. line ①, When water of reactor unit 1 started to be transported to reactor unit 2; line ②, When the water of reactor unit 3 started to be transported to reactor unit 2. 報 文  477小森,小豆川,野川,松尾 : 134 Cs/ 137 Cs 放射能比を指標とした福島第一原子力発電所事故に由来する放射性核種の放出原子炉別汚染評価
  • 4. 134 Cs/ 137 Cs 放射能比が他に比べて低いことが見て取れる. しかしそれら一つ一つのデータの不確かさは大きく,信頼 性が十分ではないため,データは採取日時によらず一定で あると言う前提のもと,同一試料の繰り返し測定として考 えた.ただし,それらが同一試料であるという前提のため には 2011 年 6 月から始まった汚染水の処理を考慮しなく てはならない.中でも 1 号機のタービン建屋から 2 号機の タービン建屋への溜まり水の輸送を 2011 年 10 月 22 日か ら開始しており 26) ,それが 2012 年まで継続的に続いてい る.また,2012 年 1 月 12 日からは 3 号機の復水器から 2 号機のタービン建屋への溜まり水の輸送が行われてお り 27) ,各原子炉の燃料に由来する汚染水が混合されてし まっている可能性がある.Fig. 2 において①,② の破線で それらの水輸送の開始時期を表した.事実,2011 年 10 月 以降に 1 号機での 134 Cs/ 137 Cs 放射能比が 2 号機での値近く まで跳ね上がっている.これらのことをふまえて,1∼2 号 機における 134 Cs/ 137 Cs 放射能比は 2011 年 10 月以前の値, 3 号機では 2012 年 1 月以前の値を参照することにした. 汚染水処理が始まる以前の各原子炉号機における 134 Cs/ 137 Cs 放射能比を Fig. 3 に示す.1 号機では 134 Cs/ 137 Cs 放射能比が 0.89∼0.93 程度,2 号機では 0.96∼1.05 程度, 3 号機では 0.97∼1.04 程度となっている.2 号機と 3 号機 には有意な差が見られなかったが,1 号機での 134 Cs/ 137 Cs 放射能比は 2,3 号機に比べて明らかに低くなっていた.そ れぞれの原子炉号機建屋での 134 Cs/ 137 Cs 放射能比の平均値 は,1 号機では 0.91,2 号機では 1.00,3 号機では 1.01 で あった.各平均値間の有意差の有無を,t 検定を用いて検 証した.その結果,それぞれの平均値に差がない確率 p 値 は 2∼3 号機間で 0.44(両側検定,等分散)と,棄却する 事ができず,有意差はないと言える.1∼2 号機間では p 値 が 6.7×10 −4 (両側検定,等分散),1∼3 号機間では p 値 が 1.5×10 −4 (両側検定,等分散)と,有意差が認められた. 3・2 採取試料中の 134 Cs/ 137 Cs 放射能比 汚染水中の 134 Cs/ 137 Cs 放射能比は 2,3 号機間では有意 な差異が見られなかったものの,1 号機では 2,3 号機に比 べて有意に小さくなっていたことから,環境試料中で 134 Cs/ 137 Cs 放射能比が小さいほど 1 号機から放出された放 射性核種の影響が大きく, 134 Cs/ 137 Cs 放射能比が大きいほ ど 2,3 号機から放出された放射性核種の影響が大きいと 言うことができる.そこで環境試料中のセシウムの放射能 濃度を測定し, 134 Cs/ 137 Cs 放射能比を算出した結果を Table 2,Fig. 4 に示す. 汚染水中での 134 Cs/ 137 Cs 放射能比は 0.89∼1.05 程度で あったのに対し,環境試料中の 134 Cs/ 137 Cs 放射能比は 0.91 ∼1.05 程度であり,放射性核種の発生源が主に 1∼3 号機 であったということには矛盾しない.しかし前節で算出し た各原子炉号機汚染水での平均値は 3 号機の 1.01 が最大で あり,環境試料中にその値を超える地点が存在してしまっ ている.溜まり水の試料数が多くなかったことで,2∼3 号 機の放射能濃度から算出した 134 Cs/ 137 Cs 放射能比がばらつ きの内の値が小さい方に偶然偏ってしまい,実際に放出し た放射能比に比べて値が小さく評価されてしまった可能性 がある.このように汚染水中における 134 Cs/ 137 Cs 放射能比 の平均値を,各原子炉号機から放出された 134 Cs/ 137 Cs 放射 能比としてそのまま扱う事はできなかったが,1 号機での 値は 2∼3 号機に比べて小さいことが明らかであるため, 以下では 134 Cs/ 137 Cs 放射能比を 1 号機の汚染に寄与する割 合を求める指標として活用していく. それぞれの試料中の 134 Cs/ 137 Cs 放射能比の測定不確かさ は,すべて 0.01 未満に収まっているのに対し,環境試料中 での値は最大で 0.14 程度の差が存在し,その差は測定の不 確かさによるものではないと言うことができる. 134 Cs と 137 Cs は化学的挙動にほとんど差異はないと考えられるた め,地点ごとの 134 Cs/ 137 Cs 放射能比のばらつきの要因とし て考えられるのは放出時点で既に異なっていた,つまり放 出元の原子炉が異なるということである.また Fig. 5 に 134 Cs/ 137 Cs 放射能比の大小と全セシウム 134+137 Cs の放射能 濃度の関係を示す.近隣地域であっても 134+137 Cs の放射能 濃度には大きなばらつきが存在するにもかかわらず,放射 能比は比較的近い値をとっており,両者の関係は R 2 = 0.026 とほぼ相関がないと言える.したがって近隣地域,つ 478 B U N S E K I  K A G A K U Vol. 62 (2013) Fig. 3 Difference of the 134 Cs/137 Cs activity ratio in polluted water among reactor unit 1, 2 and 3 (■) Reactor unit 1; (□) Reactor unit 2; (◆) Reactor unit 3.
  • 5. Table 2 Activity concentration of 134 Cs and 137 Cs, and 134 Cs/137 Cs activity ratio in each sample No. Location Sampling date Activity concentration/Bq g−1 134 Cs/137 Cs radioactivity ratio134 Cs 137 Cs 1 364.6±0.2 367.4±0.3 0.992±0.001 2 318.0±0.2 313.6±0.3 1.014±0.001 3 2105±2 2095±2 1.005±0.001 4 1780±1 1740±2 1.023±0.001 5 1377.7±0.4 1380.5±0.6 0.998±0.001 6 2887±1 2880±1 1.002±0.000 7 305.6±0.6 307.9±0.9 0.993±0.003 8 280.4±0.7 279.2±0.9 1.005±0.004 9 178.4±0.2 176.0±0.2 1.014±0.002 10 306.2±0.2 302.4±0.3 1.013±0.001 11 i 2011/12/21 245.6±0.9 241.8±1.2 1.015±0.006 12 42.41±0.22 42.27±0.29 1.003±0.009 13 1272±0 1292±0 0.985±0.000 14 1278±0 1289±1 0.992±0.001 15 4001±2 4121±3 0.971±0.001 16 229.8±0.6 225.5±0.7 1.019±0.004 17 17.57±0.06 18.06±0.09 0.973±0.006 18 50.35±0.26 49.55±0.34 1.016±0.009 19 15.71±0.04 15.65±0.06 1.003±0.004 20 52.36±0.08 52.74±0.10 0.993±0.002 21 5.827±0.030 5.948±0.038 0.980±0.008 22 154.8±0.2 151.8±0.2 1.020±0.002 23 ii 2011/5/29 136.7±0.2 134.0±0.2 1.020±0.002 24 8.721±0.041 8.375±0.046 1.041±0.008 25 iii 2012/6/22 2.893±0.016 3.190±0.020 0.907±0.007 26 3.228±0.015 3.454±0.019 0.935±0.007 27 3.101±0.010 3.293±0.013 0.942±0.005 28 4.708±0.022 4.792±0.027 0.982±0.007 No. Location Sampling date Activity concentration/Bq g−1 134 Cs/137 Cs activity ratio134 Cs 137 Cs 29 12.53±0.03 12.37±0.03 1.013±0.003 30 iv 2012/6/23 17.49±0.05 17.02±0.05 1.028±0.004 31 27.48±0.04 27.24±0.04 1.009±0.002 32 v 10.76±0.03 10.51±0.04 1.025±0.005 33 27.23±0.06 26.76±0.08 1.018±0.004 34 7.781±0.029 7.680±0.035 1.013±0.006 35 11.55±0.04 11.47±0.05 1.007±0.005 36 5.586±0.023 5.586±0.028 1.000±0.006 37 8.915±0.032 8.817±0.039 1.011±0.006 38 2012/6/17 44.78±0.07 43.59±0.09 1.027±0.003 39 9.139±0.035 9.022±0.043 1.013±0.006 40 9.534±0.031 9.298±0.037 1.025±0.005 41 13.69±0.04 13.36±0.06 1.025±0.005 42 18.82±0.04 18.78±0.05 1.002±0.004 43 17.62±0.04 17.24±0.05 1.022±0.004 44 8.343±0.029 8.328±0.035 1.002±0.005 45 13.51±0.05 12.93±0.07 1.045±0.007 46 2011/11/27 15.05±0.05 14.81±0.06 1.016±0.005 47 19.27±0.05 18.90±0.06 1.019±0.004 48 17.78±0.05 17.49±0.07 1.017±0.005 49 2.470±0.013 2.458±0.018 1.005±0.009 50 2011/9/10 0.2090±0.0005 0.2089±0.0007 1.000±0.004 51 8.845±0.033 8.588±0.045 1.030±0.007 52 110.2±0.2 106.4±0.2 1.036±0.002 53 2012/7/14 5.316±0.019 5.192±0.023 1.024±0.006 54 17.10±0.03 16.83±0.04 1.016±0.003 55 2011/7/24 41.37±0.11 40.47±0.14 1.022±0.004 報 文  479小森,小豆川,野川,松尾 : 134 Cs/ 137 Cs 放射能比を指標とした福島第一原子力発電所事故に由来する放射性核種の放出原子炉別汚染評価
  • 6. まり汚染された時期やその際に飛散してきた放射性核種の 放出源が同じと考えられる地点では 134 Cs/ 137 Cs 放射能比は 汚染の度合いにかかわらず近い値になることが言える.以 上のことから, 134 Cs/ 137 Cs 放射能比は地点ごとに汚染源の 割合を調べる上で十分な指標になると考えられる. 次に地域ごとに見ていく.まず宮城県の牡鹿半島では 3 月 12 日の深夜から 3 月 13 日にかけて事故初期の段階で空 間線量率が急激に上昇したという報告や,原子力発電所事 故が起こってから最初に汚染された陸上の地点であるとい うシミュレーション結果がある 28)29) .その時点で放射性核 種を放出していたのは,建屋が爆発してしまっていた原子 炉 1 号機のみであり 30) ,また飛散シミュレーションからは 牡鹿半島での汚染はその初期に起こった汚染が大部分であ ると見る事もできる.それらのことをふまえると,牡鹿半 島における汚染は原子炉 1 号機から放出された放射性核種 の寄与が大きくなっているということが推測できる.そこ で Fig. 4 で牡鹿半島での 134 Cs/ 137 Cs 放射能比の値を見てみ ると,0.91∼0.98 程度となっていて,特に試料 No.25∼27 に関しては他の地点に比べて不確かさを考慮しても明らか に 低 い こ と が 分 か る. そ の 中 で も No.25 の 試 料 は 134 Cs/ 137 Cs 放射能比が 0.91 と,1 号機における 134 Cs/ 137 Cs 放射能比に近いことから,ほとんどの原子力発電所 1 号機 由来の汚染がほとんどであることが示唆された.事故初期 に起こった汚染の原因である原子炉号機の特定が環境中の 実試料からも支持されたことは非常に価値があることであ ると言える.また牡鹿半島の試料は,試料番号が 25 から 28 へと大きくなるほど採取地点が南となっており,それに 連動して 134 Cs/ 137 Cs 放射能比が 0.91,0.94,0.94,0.98 と 大きくなる傾向が見られた.先に挙げた飛散シミュレー ションにおいて,3 月 12 日以降も放射性核種が度々牡鹿半 島の,主に南部に飛散してきているという計算結果があ る.そのように 2 号機もしくは 3 号機から放出された放射 性核種が飛来することによって,当初は 1 号機での値と同 程度に小さかったと考えられる 134 Cs/ 137 Cs 放射能比が,半 島南部で大きくなったと考えることができる. 次に,福島第一原子力発電所周辺の試料における 134 Cs/ 137 Cs 放射能比は 0.98∼1.01 程度であり,これは他の 地点での値の中間程度にあたる.原子力発電所周辺は 1∼ 3 号機すべての放射性核種放出の影響を受けていることを 考えると,それぞれの原子炉号機由来の汚染が混じり合っ て値が平均化されていると言える. 他の地点を見ると,関東地方と福島北西方向,岩手県の 試料で 134 Cs/ 137 Cs放射能比が1.00∼1.04と今回分析した試 料の中でも高い値を示しており,これらの地点では汚染源 は 2∼3 号機に比べて 1 号機の割合がかなり低くなってい ると言える.中でも原子力発電所北西地点や関東地方では 134 Cs/ 137 Cs 放射能比が 1.04 以上と大きくなっている地点も 存在し,こういった地点では 1 号機からの汚染は割合とし てほとんどないということが言えるだろう. またこれらの測定値,計算値と既存の測定によって得ら れた報告値と比較するために,文部科学省が公開している 土壌中の核種分析結果 7) との比較を行った.公開されてい る測定値は 2011 年の 6 月 14 日に半減期補正がそろえられ ていたため 31) ,著者らの試料と同様 2011 年の 3 月 11 日時 点での放射能濃度に換算し, 134 Cs/ 137 Cs 放射能比を計算し た.茨城県南などの関東地方や宮城県の牡鹿半島,岩手県 奥州市での試料は採取されていなかったので,ここでは福 島県内の試料のみを比較対象とした.著者らの試料では 134 Cs/ 137 Cs 放射能比が 0.97∼1.04 を示した一方で,文部科 480 B U N S E K I  K A G A K U Vol. 62 (2013) Fig. 4 134 Cs/137 Cs activity ratio in environmental samples (○) Around Fukushima Daiichi Nuclear Power Station; (●) Northwest from Fukushima Daiichi Nuclear Power Station; (×) Oshika peninsula, Miyagi; (△) Oshu city, Iwate; (□) Kanto area. Fig. 5 Relation between the activity of total cesium and the 134 Cs/137 Cs activity ratio with a linear approximation (○) Around Fukushima Daiichi Nuclear Power Station; (●) Northwest from Fukushima Daiichi Nuclear Power Station; (×) Oshika peninsula, Miyagi; (△) Oshu city, Iwate; (□) Kanto area.
  • 7. 学省の分析結果では 0.5∼1.4 程度と著者らの試料に比べ 広く値が分布していた.著者らの測定結果に比べて値のば らつきが大きい事の要因に関しては,測定時間が著者らの 分析に比べて短かった事などから,一つ一つの試料の測定 不確かさが大きくなってしまったことが考えられる.さら に土壌中の放射性セシウムの濃度が低い試料も分析対象で あったことから,核実験由来の 137 Csの影響を無視できなく なり,結果として 134 Cs/ 137 Cs 放射能比が低く示された可能 性が考えられる.このように文部科学省の公表データで は,福島第一原子力発電所事故由来の 134 Cs/ 137 Cs 放射能比 の分析精度が低いと考えられる.短期間で多くの試料の放 射能濃度を測定する必要があり,本研究とは目的が異なっ ているため仕方がない事ではあるが,実際に各データの不 確かさが大きいため,これらのデータは,個別で各原子炉 の寄与を調べる指標として用いる事はできない.しかし分 析試料が豊富に存在するため,細かい地域ごとの違いを無 視し,いくつかの試料の平均値を用いることで著者らの分 析値と比較し,その確度の妥当性を議論することはできる と考えられる.そこで著者らと文部科学省の分析結果を, それぞれ平均した値で比較すると,福島県内の試料におけ る 134 Cs/ 137 Cs 放射能比は共に 1.00 となっていた.またその 中でも,原子力発電所南北方向と北西方向を区別して比較 を行った.著者らの試料では福島県は原子力発電所の南北 方向で 134 Cs/ 137 Cs 放射能比が平均 1.00 であったのに対し, 北西方向では 1.02∼1.04 と値が大きくなっていた.一方で 文部科学省のデータにおいても原子力発電所南北方向(南 相馬,浪江市,大熊町,双葉町,富岡町,楢葉町)での平 均が 0.98(合計 172 試料)であるのに対し,北西方向(飯 館村,伊達市)では 1.01(合計 113 試料)であり,やはり 北西方向で値が大きくなっていた.このように 134 Cs/ 137 Cs 放射能比の平均値を見ると,確かに著者らのデータと文部 科学省のデータの傾向は一致していた.しかし文部科学省 のデータでは細かな 134 Cs/ 137 Cs 放射能比の違いが,そのば らつきの大きさに埋もれてしまっている事は想像に難くな く,本研究で行ったような精度の高い分析が,放射性核種 の放出源を特定するうえで重要である事を改めて示す結果 となった. 4 結   言 環境試料中の 134 Cs/ 137 Cs 放射能比の違いが,その地点に おける汚染源である原子炉号機それぞれの寄与の割合を反 映しているという見通しのもと研究を進めてきた結果,そ れぞれの原子炉号機での 134 Cs/ 137 Cs 放射能比は1号機で 2∼ 3 号機に比べて有意に小さい値を示しており, 134 Cs/ 137 Cs 放射能比の大小が 1 号機からの汚染の寄与に直接関係して いることが示唆された.また宮城県牡鹿半島は,放射性核 種を放出した時期とその放出原子炉号機,放射性核種飛散 シミュレーション,空間線量値の推移などから,1 号機か らの汚染が大きいであろうと推定される地点である.一 方,そこで採取した環境試料中の 134 Cs/ 137 Cs 放射能比は, 今回分析したどの地点の試料と比べても小さく,この地点 では 1 号機からの汚染寄与が大きいことが,本研究で用い た指標から推定する事ができた.このように二つの異なる アプローチから同じ結論が得られた事から,この推定は信 頼性が高いと言う事ができ,また 134 Cs/ 137 Cs 放射能比が地 点ごとの汚染源原子炉号機ごとの寄与を調べるための指標 として有用であることが本研究の結果,明らかとなった. 134 Cs と 137 Cs は今回の事故で大量に放出され,また長半 減期であるため,環境中で長い間放射線を放出し続けてし まう厄介なものである.一方でまだ放射能が測定されてい ない試料でも事故後数年にわたって精度の高い測定ができ るということは, 134 Cs/ 137 Cs 放射能比に関するデータを蓄 積し,放射性核種による汚染がどの原子炉からの寄与によ るものかを調べていく上での利点といえる.さらに両者と もに γ 線放出核種であるため,定量が比較的容易であると 言う事も利点になる.本研究で分析した試料は放射性核種 による汚染が起こった範囲の一部で採取したものでしかな いが, 134 Cs や 137 Cs の放射能濃度は広く測定が行われてお り,測定が行われていない試料の測定も今後見込まれる事 から,多くの 134 Cs/ 137 Cs 放射能比データが集まり,事故の 影響を評価するのに役立つことが期待される. 謝   辞 本研究の一部は東京大学アイソトープ総合センターで実 施された.また本研究の一部は住友財団環境研究助成に よって行われた.ここに感謝の意を表します. 文   献 1) 経済産業省 (2011) : 放射性物質放出量データの一 部誤りについて,<http://www.meti.go.jp/press/ 2011/10/20111020001/20111020001.pdf> (2012. 12.5 アクセス). 2) 斉藤勝裕 :“東日本大震災後の放射性物質汚染対策 ―放射線の基礎から環境影響評価、除染技術とその 取り組み”, p.107 (2012). 3) 文部科学省 (2011) : 土壌モニタリングの測定結果 平成 23 年 6 月 1 日∼平成 24 年 3 月 30 日までの測 定 結 果,<http://radioactivity.mext.go.jp/old/ja/ monitoring_around_FukushimaNPP_soil_ monitoring/2012/03/32352/index.html> (2012. 12.5 アクセス). 4) 文部科学省 (2011) : 緊急時迅速放射能影響予測 ネットワークシステム (SPEEDI) 等による計算結 果,<http://radioactivity.mext.go.jp/ja/list/201/ list-1.html> (2012.12.5 アクセス). 5) 国立環境研究所 (2011) : 福島第一原子力発電所か ら放出された放射性物質の大気輸送沈着シミュレー ション,<http://www.nies.go.jp/shinsai/> (2012. 12.5 アクセス). 6) K. Tagami, S. Uchida, Y. Uchihori, N. Ishii, H. 報 文  481小森,小豆川,野川,松尾 : 134 Cs/ 137 Cs 放射能比を指標とした福島第一原子力発電所事故に由来する放射性核種の放出原子炉別汚染評価
  • 8. Kitamura, Y. Shirakawa : Science of the Total Environment, 409, 4885 (2011). 7) 文部科学省 (2011) : 土壌の核種分析結果 (セシウム 134、137 に つ い て),<www.mext.go.jp/b_menu/ shingi/chousa/.../1310688_1.pdf> (2013.3.15 アク セス). 8) H. Kato, Y. Onda, M. Teramage : Journal of Environmental Radioactivity, 111, 59 (2012). 9) 福島県 (2011) : 20km∼ 50km圏付近環境放射能測 定結果 (暫定値),<http://wwwcms.pref.fukushima. jp/download/1/20-50km0315-0331.pdf> (2013. 3.15 アクセス). 10) 福島県 (2011) : 県内 7 方部 環境放射能測定結果 (暫 定値),<http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/ 1/7houbu0311-0331.pdf> (2013.3.15 アクセス). 11) 駒村美佐子,津村昭人,山口紀子,木方展治,小平 潔 : 農業環境技術研究所資料, 28, 1 (2005). 12) 東京電力 (2011) : 福島第一原子力発電所における 放射能濃度・空間線量率の推移,<http://www. tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_ 111203_01-j.pdf> (2012.12.5 アクセス). 13) 東京電力 (2011) : 12/14 福島第一タービン建屋地 下階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco. co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_ 111214_01-j.pdf> (2012.12.5 アクセス). 14) 東京電力 (2012) : 1/21 福島第一タービン建屋地下 階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco. co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_ 120121_03-j.pdf> (2012.12.5 アクセス). 15) 東京電力 (2012) : 2/13 3、4 号機タービン建屋地 下階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco. co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_ 120213_05-j.pdf> (2012.12.5 アクセス). 16) 東京電力 (2012) : 3/19 福島第一タービン建屋地下 階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco. co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_ 120319_01-j.pdf> (2012.12.5 アクセス). 17) 東京電力 (2012) : 4/23 福島第一タービン建屋地下 階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco. co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_ 120423_01-j.pdf> (2012.12.5 アクセス). 18) 東京電力 (2012) : 5/17 福島第一タービン建屋地下 階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco. co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_ 120517_03-j.pdf> (2012.12.5 アクセス). 19) 東京電力 (2012) : 6/18 福島第一タービン建屋地下 階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco. co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_ 120618_03-j.pdf> (2012.12.5 アクセス). 20) 東京電力 (2012) : 7/23 福島第一タービン建屋地下 階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco. co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_ 120723_01-j.pdf> (2012.12.5 アクセス). 21) 東京電力 (2012) : 8/13 福島第一タービン建屋地下 階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco. co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_ 120813_01-j.pdf> (2012.12.5 アクセス). 22) 東京電力 (2012) : 9/20 福島第一タービン建屋地下 階溜まり水の核種分析結果,<http://www.tepco. co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_ 120920_01-j.pdf> (2012.12.5 アクセス). 23) 東京電力 (2011) : 12/12 原子炉建屋地下滞留水の 放 射 能 濃 度 等 の 測 定 結 果,<http://www.tepco. co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_ 111212_02-j.pdf> (2012.12.5 アクセス). 24) 東京電力 (2012) : 4/18 原子炉建屋地下滞留水の放 射能濃度等の測定結果,<http://www.tepco.co.jp/ nu/fukushima-np/images/handouts_120423_07-j. pdf> (2012.12.5 アクセス). 25) 東京電力 (2012) : 6/7 原子炉建屋地下滞留水の放 射能濃度等の測定結果,<http://www.tepco.co.jp/ nu/fukushima-np/images/handouts_120607_03-j. pdf> (2012.12.5 アクセス). 26) 東京電力 (2011) : 福島第一原子力発電所における 高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理 の状況について (第 18 報),<http://www.tepco. co.jp/cc/press/11102604-j.html> (2012.12.5 アクセ ス). 27) 東京電力 (2012) : 福島第一原子力発電所における 高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理 の状況について (第 30 報),<http://www.tepco. co.jp/cc/press/2012/12011803-j.html> (2012.12.5 アクセス). 28) 気象庁気象研究所 (2011) : 福島原発からの放射性 物質の移流拡散について,<http://www.mri-jma. go.jp/Topics/H23_tohoku-taiheiyo-oki-eq/ 1107fukushima.html> (2012.12.5 アクセス). 29) 株式会社ヴィジブルインフォメーションセンター (2011) : 福島第一発電緊急事態 大気放出に係る事 故解析 広域結果,<http://www.vic.jp/fukushima2/ g1/r2011031200.html> (2012.12.5 アクセス). 30) 東京電力 (2012) : 福島第一原子力発電所事故にお ける放射性物質の大気中への放出量の推定につい て,<www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/ images/120524j0105.pdf> (2012.12.5 アクセス). 31) 文部科学省 (2011) : 文部科学省による放射線量等 分布マップ (放射性セシウムの土壌濃度マップ) の 作成について (8 月 30 日), <http://radioactivity.mext. go.jp/ja/contents/6000/5043/24/11555_0830. pdf> (2013.3.21 アクセス). 482 B U N S E K I  K A G A K U Vol. 62 (2013)
  • 9. Evaluation of Radioactive Contamination Caused by Each Plant of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Using 134 Cs/137 Cs Activity Ratio as an Index Masashi KOMORI 1 , Katsumi SHOZUGAWA 1 , Norio NOGAWA 2 and Motoyuki MATSUO Ⓡ1 1 Graduate School of Arts and Sciences, The University of Tokyo, 3-8-1, Komaba, Meguro-ku, Tokyo 153-8902 2 Radioisotope Center, The University of Tokyo, 2-11-16, Yayoi, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0032 (Received December 7, 2012; Accepted March 29, 2013) We estimated the extent of radioactive contamination from each reactor unit (1 to 3) of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station by using the 134 Cs/137 Cs activity ratio as an index. Although the activity ratio of 134 Cs/137 Cs emitted by the accident has been reported to be about 1 : 1, variations in the activity ratio has arisen in environmental samples, since the ratio differs slightly for every nuclear reactor. Therefore, it is considered that the ratio is useful for a index for evaluating the contamination from each reactor unit. We collected soils and plant pieces in eastern Japan, measured gamma rays and calculated the 134 Cs/137 Cs activity ratio. We also calculated the 134 Cs/137 Cs activity ratio in contaminated water accumulated in each reactor building (R/B) and turbine building (T/B), and compared it with the ratio of environmental samples. The data of the 134 Cs and 137 Cs activity concentration are presented by Tokyo Electric Power Company. As a result, it turned out that the ratio of a sample in Oshika Peninsula was about 0.91, which was lower than that of other samples, and similar to the ratio of reactor unit 1 of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station. It is suggested that Oshika Peninsula is contaminated mainly from reactor unit 1. We also evaluated the extent of activity contamination from each reactor unit at other points. Keywords: activity ratio; radioactive cesium; reactor unit; radioactive contamination; contamination source. 報 文  483小森,小豆川,野川,松尾 : 134 Cs/ 137 Cs 放射能比を指標とした福島第一原子力発電所事故に由来する放射性核種の放出原子炉別汚染評価