清流の国ぎふ 防災・減災センター
新型コロナウイルス感染症を
考慮した
水害避難体制について
岐阜大学流域圏科学研究センター 小山真紀
maki_k@gifu-u.ac.jp
https://researchmap.jp/makik/
https://www.facebook.com/maki.koyama.14/
2020/7/25 第12回 スケジューリング学会 人道支援ロジスティクス研究部会
「COVID-19リスクへの対応に関するZoomフォーラム(1)」
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• 「こうすればOK」という明確な答えはない
• 分からない事もまだまだ多い
• 状況も変化するため,関わる人みんなで考えな
がら,一人一人が出来得る限りの最善と思われ
る対策を探索し,実施する (トライアンドエ
ラーしながら進めざるを得ない)
• その結果生じることについては,責めるのでは
なく,検証し,次に活かす
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答えが無い中でやらざるを得ない
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COVID-19が収束するには
• 治療薬が実用化される
• ワクチンが実用化される
• 集団免疫が獲得される(多くの個人が感染し,
免疫を持った人が増えることによって,感染が
広がりにくくなる)
•年単位の時間が必要
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これまで以上に部局間,組織間の
連携が必要
• COVID-19対策は感染症対応の部局が担当だが,自然災害対応は災害対
応部局が担当.自然災害時を見越したCOVID-19対策を考えられる部局
がない
• 宿泊療養者(感染していることが明らかな人)が浸水想定領域で療養してい
る場合,「感染者の避難(移動)」を考えないといけなくなる
• 災害時には,保健師巡回などによって被災者の健康問題への対応が行われて
いるが,COVID-19対応の体制と並行で行う事を考慮しなければいけなくなる
• 災害時には,3密を避けられない状況が生じやすいため,クラスター発生リス
クが高くなること,インフラや使える建物,設備などが使えない状況も想定
されることから,感染者発生時,クラスター発生時の対応が平常時の体制で
は難しくなることも想定される
• 避難支援を行う場合,濃厚接触者の情報が支援者にわたらないことが想定さ
れる
• 計画段階から,災害関連部局だけでなく,感染症対応部局ほか,関
係部局と一緒に考え,調整しておくことが必要がある
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事が起きてから考えることによって,対応が後手後手になる
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準備や調整に時間がかかる
早く動き始めることが必要
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考え方の基本
• 直前避難を可能な限り避ける
• 避難先の選択肢が狭まるため,3密になりやすい
• 前日以上前から避難できれば,選択肢も増える
• 宿泊療養者(感染者),濃厚接触者,風邪様症
状者,無症状者の避難所を分ける
• 避難所はできるだけ個室
• それが難しい場合には,完全に空間を分けた上(ダ
イヤモンド・プリンセス号のときのゾーニングと同
様の考え方)で,少人数ずつに分かれて生活する
• 市町村外への避難も考慮する
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一時避難と長期避難は分けて考える
• 被災前に行う,命を守るための避難(一時避難)
は避難対象人数が多いが,被害が生じなければ,
短期で帰宅できる
• 浸水しない場所の駐車場を確保し,車避難もあり得る
(ただしエコノミークラス症候群に注意)
• 一時避難は長期の避難生活ができる場所に限らなくて良
い
• 被災して,自宅で生活することが難しくなった人
は長期の避難生活が必要
• 見なし避難所(見なし仮設住宅)をすぐ提供できる準備
をしておく
• 市町村を越えた生活場所提供に関する連携を行っておく
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一時避難・避難行動
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宿泊療養者(感染者)・感染の恐れがある人が
避難(移動)しないといけない状態を作らない
• 宿泊療養者用の宿泊施設は浸水想定区域,土砂災害警
戒区域/特別警戒区域外にする(浸水しないフロアで,
浸水があっても生活できる場所ならば,検討の余地あ
り)
• 感染の恐れがある人(濃厚接触者,風邪様症状者)は
浸水想定区域,土砂災害警戒区域/特別警戒区域外で隔
離生活するようにする(浸水しないフロアで,浸水が
あっても生活できる場所ならば,検討の余地あり)
• 自宅が危険地域内にある場合,危険区域外のホテルなどで隔
離させる(現状仕組みがない)
• やむを得ず危険地域内での療養・隔離をする場合には,避難
先(感染者用)の設定と,避難フロー(マイタイムライン)
を決めておく
• 宿泊療養者の情報を危機管理部局など,災害対応に関わる部
局と予め共有しておく
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立ち退き避難しなければならないかどうかを確認
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リスクの高いところは,ある程度わかっている
※中小河川ではハザードマップができていないところもある
※土砂災害警戒区域は基本的に人が住んでいるところしか指定されていない
ハザードマップで全てが網羅されているわけではないが,分かっているところ
だけでも考えておくことで,直前避難をしないといけない人の数を減らせる
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分散避難
11https://www.city.nara.lg.jp/site/coronavirus/73734.html
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避難情報のあり方
• 現状の避難情報の出し方は,直前避難(発災数
時間前)のタイミングであるが,前日以前に移
動ができるタイミングでの避難情報の出し方を
考えたほうが良いと思われる
• 直前避難だと,身近な指定避難所に集まらざるを得
ず,感染者・濃厚接触者・風邪様症状者・無症状者
が3密で集まることになる
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要検討 ?
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避難所・避難生活
被害が発生した後
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生活環境の設え
• できるだけ個室,世帯別の環境とする
• 空き家・空き室の活用(見なし仮設住宅の早期適用)
• ホテルなどの活用
• 市町村内だけでなく,近隣市町村とも連携した住宅の提
供を可能にしておく
• 個室が難しい場合には,完全に空間を分けた上
(ダイヤモンド・プリンセス号のときのゾーニン
グと同様の考え方)で,少人数ずつに分かれて生
活する.ゾーンを超えて共有する場所は作らない.
ゾーン外の人とは接触しない(感染者が出ても,
そのグループだけ隔離すればよい)
• 学校など,これまでの指定避難所のような環境
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感染予防策
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越智小枝:新型コロナウイルスの科学(4)
http://ieei.or.jp/2020/04/expl200415/?fbclid=IwAR3rvVit
y9n6mSpSULKeJy8ge1dsz1KYN2ilJdjfA7he2a7W2JAk8Uijh
cU
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避難所運営の考え方
• 手洗い・換気・人との距離の確保など感染防止策の徹底
• 廃用症候群や体調不良につながるような生活環境にしない(これまで以
上に,見守りや支援が難しくなるため,環境が悪いとCOVID-19以外でも
体調悪化が続出しかねない上,診療できない状況になりかねない)
• 空間も人(グループ・チーム)も完全に分けることで,感染者が出た場
合の影響範囲を限定する
• Aゾーンに関わる人はAゾーンのみ.というように,ゾーン超えで接触す
ることがないようにする(ゾーン超えでのやり取りはオンラインや置き
配など).
• 感染者が出た場合の対応フロー,隔離場所などの設定
• オンラインツールの活用
• 支援者が見込めないので,各避難所に避難している人自身で運営する体
制を検討(感染者の避難所を作らざるを得ない場合,無症状の人中心で
支援を行う(こういう状況が生じた場合の対策フローを事前に保健所と
相談しておく).それ以外のところでは,若い人,体調の良い人優先で
運営者を募る.重症ハイリスク者には,対人対応はさせないなど)
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避難所運営を具体的に考えるときの参考資料1
17認定NPO 法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)避難生活改善に関する専門委員会:新型コロナウイルス避難生活お役立ちサポートブック
清流の国ぎふ 防災・減災センター
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避難所運営を具体的に考えるときの参考資料2
19http://www.kankyokansen.org/modules/news/index.php?content_id=345
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20田代将人:福祉・介護施設における新型コロナウイルス感染症の対策スライドより
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21田代将人:福祉・介護施設における新型コロナウイルス感染症の対策スライドより
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22田代将人:福祉・介護施設における新型コロナウイルス感染症の対策スライドより
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災害対策を考える上で・・・
• 絶対大丈夫という方策はない
• メリットデメリットを考えて,係わる人が納得
できる計画を立てる(地域の中で,計画づくり
を相互に支援する)
• そこに避難した人で助け合うことが大事
• 感染リスクを下げながら助け合える環境作りを進め
る
• 高齢者・基礎疾患を持つ人には,接触を伴う対応や
受け付けなどの対面での活動以外を担当してもらう
• 排除行動が起きやすくなるので,そういう状況を知
り,不安を減らしたり,楽しく過ごせる工夫などに
ついて,今から考える
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実際には理想どおりにはいかない事も多い
• できる限り理想的な環境を目指す一方で,実際に
はそうでない状況にならざるを得ないことも多い.
その場合には,その状況を受け止めた上で,最大
限出来る事を行う(できれば,事前にプランBも考
えておく)
• 人が集まりすぎた場合(天候などの状況によって,受け
入れるか,別の場所に行ってもらうなどの考え方があ
る)
• 物資が足りない場合(持参して避難してもらう,代替で
使えるものを考えておくなど)
• 感染の疑いが出た場合やクラスターが発生した場合(対
応フローを具体的に考えておく.消毒や避難者の移動の
必要性なども含めて,事前に保健所と具体的な手順につ
いて調整しておく)
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分散避難で起こりそうなこと・起きていること
• 現状の避難者支援対策は,避難所を拠点として行
われる
• 避難所以外に避難している人(在宅避難,親戚・知人宅
避難,車避難・・・)の把握ができない
• 避難所以外に避難している人に情報や物資がわたらない
• 避難所以外に避難している人の健康モニタリングができ
ない
• 避難所以外に避難している人の生活環境が悪化し,関連
死のリスクが高くなる
• 要支援者,要配慮者の方は,避難所以外に避難せざるを
得ないことが多い(配慮が必要な人,関連死のリスクの
高い人にほど支援が行き渡らない)
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これまでの災害でも繰り返し起きていたにも係わらず,改善されていない.コロナ
禍では,分散避難を前提とした,しっかりした避難者支援のスキームを作る機会で
もある
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最悪のシナリオ
• 救助活動者が感染,救助活動によって感染拡大
• 避難所で,「あの人は感染者ではないか」という疑心暗鬼などにより,
差別,排除行動,暴力などが発生する
• 孤立する人が増えたり,息抜きや,楽しみ,生きがいにつながる活動が
できず,精神的に不調な人が多数発生する
• 避難所でクラスターが発生する
• 避難所内での体調モニタリングができていなくて,クラスターが発生し
たことに気づくのが遅れる
• 高齢者を中心に,多数の人が重症化する
• 医療のキャパシティを超え,重傷者のトリアージが行われる(治療して
もらえない人が,避難所で多数亡くなる)
• 避難所環境が劣悪で,COVID-19以外でも多数の人が体調悪化,避難所の
ヘルスモニタリング体制が整わず,死亡する人が増加する
• 避難所外避難者の状況が把握できず,その結果,情報も支援も行き届か
ないため,避難所外でも関連死が多数発生する
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グループの見解であり,
所属組織の見解ではあり
ません
https://researchmap.jp/multidatabases/multidatabase_contents/detail/228424/5cddccbb
83e4334251afd9fa1fa3d4e6?frame_id=432385
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個人で必要なこと
• 危険区域内(土砂災害警戒区域,浸水想定フロ
ア)に居住している人は,自分の健康状況に応じ
て,前日より前に避難できるよう,個別避難計画
を作成する
• 自分にとって,納得できる避難先を予め考える
• 行政が,体調に応じた避難先を決めているかどうか
• 自分で避難先を用意できるか(親戚・知人宅,ホテル,車)
• 自分が感染者,あるいは感染しているかもしれないと思われ
る場合,その場所は,人にうつすリスクが低い場所か
• 他者からの感染リスクの低い場所か
• 生活環境は劣悪にならないか
• 避難支援が必要な人で,避難支援が見込めない場合は,出水
期中は,危険区域外への転居・退避も検討したほうがいいか
もしれない(居住環境を変えることのリスクなどもあり,当
事者,関わる人が納得できる対策を考える)
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地域で進めること
• COVID-19の一般的知識,感染防止策の周知
• チラシ撒くだけでなく,学校,職場などを含め,あらゆ
る機会を使ってしっかり知ってもらう(現状,医療系の
人と一般の人で,かなり認識に差がある)
• COVID-19流行下での避難が,どのようなものにな
るかを考える場作り
• 現状,対面型でのワークショップは難しいので,オンラ
インでの場作り,それが難しい人は,繋がっている人と
考える場作り(ケアマネさん経由など)を行う
• 個別避難計画作成の支援
• 地域内で,計画作成を支援しあえると良い(地区防災組
織や,防災団体など)
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最悪のシナリオ
• 救助活動者が感染,救助活動によって感染拡大
• 避難所で,「あの人は感染者ではないか」という疑心暗鬼などに
より,差別,排除行動,暴力などが発生する
• 孤立する人が増えたり,息抜きや,楽しみ,生きがいにつながる
活動ができず,精神的に不調な人が多数発生する
• 避難所でクラスターが発生する
• 避難所内での体調モニタリングができていなくて,クラスターが
発生したことに気づくのが遅れる
• 高齢者を中心に,多数の人が重症化する
• 医療のキャパシティを超え,重傷者のトリアージが行われる(治
療してもらえない人が,避難所で多数亡くなる)
• 避難所環境が劣悪で,COVID-19以外でも多数の人が体調悪化,避
難所のヘルスモニタリング体制が整わず,死亡する人が増加する
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2020075 scheduling society mk