劣モジュラ性を利用した
ドローンによるばらまき型センサ配置
国立研究開発法人 情報通信研究機構
杉浦孔明
ドローンで安価なセンサをばらまけば、
地区レベルのセンサネットワークを即座に構築できる
• ターゲット: 人手が困難/危険な場所へのセンサネットの構築
– 洪水、汚染、生態系、気象、土壌、等のモニタリング*
• 背景技術
– 安価/使い捨てセンサ
– 長距離・省電力な通信手段(「IoT用SIM」、WiSUNなど)
• 「ばらまき型センサ配置」の研究課題
– 単純な投下計画が情報収集に有効とは限らない→では、どの場
所に投下していくのが最適か?
汚染 火山 豪雨
*今後10年のドローンの経済効果=821億ドル@アメリカ
関連研究
分類 例
センサ配置一般 [Hart 10など]センサネットワーク、ロボティクス、
環境モニタリングの分野で多数
ドローンによる
センサ配置
[Abdulaal, ICUAS13]洪水発見のためのセンサばらま
き。⇔投下計画は扱っていない
劣モジュラ最適化
によるセンサ配置
[Krause 08] 相互情報量最大化によるセンサ配置。
⇔位置誤差がないという前提なので、大きい誤差が
あるとランダム配置と変わらない性能になる
提案手法は「誤差を前提として情報量を最大化する観測が
得られるようなセンサ投下計画」を行う
• 「ばらまき型センサ配置」の定義
– 観測対象の周辺にドローンがセンサを逐一投下する計画問題
• ばらまき型センサ配置に特有の問題
1. センサがどこに落ちるかについて不確実性が存在
2. 観測値が似た場所に偏って投下しても意味は無い
• 提案手法は上記をどう解くか
– 誤差のモデル化を行い、シンプ
ルな期待値尺度を導出
– 上記を(近似的に)最大化する
ように、greedy手法でセンサを
投下
Q: greedy手法が逐次投下と相性が良いからといってそれでよいのか?
A: 1-1/e近似が保証されている
• 査読者的疑問
– 「センサが多くなったらどうするのか?」(最適値の探索は組
み合わせ爆発を起こすのでは)
– 「逐次的な配置は必ずしも最適配置にならないのでは?」(1
個投下したら取り消せない)
• 劣モジュラ性の利用
– 特定の条件下で相互情報量は劣モジュラ性を持つ
– greedy手法が1-1/e近似になる
最適値の63%が保証されて
いる。実用上は90%程度の
報告も[河原+15]
組み合わせ爆発
を起こさない
X,Y ⊆ V , X ⊆ Y
センサ観測モデルとしてガウス過程を利用[Krause 08]
仮定1:センサ群Aの観測値がガ
ウス分布に従う
仮定2:センサyとy’の間の共分
散がRBFカーネルで近似できる
→このとき「AとV¥Aの相互情報
量MI」は劣モジュラ性を持つ
(V¥Aはセンサ未設置場所)
センサ位置
センサ未設置場所に対する相互情報
量を大きくしたい
各センサの観測値は、ガウス分布に
従う
センサ観測値の共分散が距離のみに
依存する(実応用では推定すべき)
A
A
A
AA
A
V
提案手法:
誤差の分布を得たうえで相互情報量の期待値を最大化する
提案手法:
相互情報量の期待値を考慮し、以
下を最大化するy*targetを選択
センサyの分散
センサyとセンサ群Aの共分散
VからAとyを除いた群
仮定1:センサ群Aの観測値がガ
ウス分布に従う
仮定2:センサyとy’の間の共分
散がRBFカーネルで近似できる
→このとき「AとV¥Aの相互情報
量MI」は劣モジュラ性を持つ
(V¥Aはセンサ未設置場所)
センサ位置
位置誤差のモデル化
今回の設定では移動量と方向に依存することがわかった
位置誤差
1. [Engel+ 14]による位置推定誤差
→移動量 dと方向 x, yに依存
2. 落下による散らばり
→センサ形状/材質に依存
T Target D Drone
※環境と投下する高さは一定
位置誤差をガウス分布で近似
• 分散=方向(αxとαy)と移動量
dに依存。βはオフセット
実験設定:
再現性確保の面から実験を主にシミュレーション上で行う
• 実機モデル
– ハードウェア:AR.Drone 2.0を基に電磁石によるセンサ着脱機構
を取付(ハードウェア寿命は数十時間程度と想定)
– 位置推定:単眼カメラによる位置推定[Klein+07][Engel+ 14]
– 環境:8m x 12mの屋内環境
• シミュレーションモデル
– 再現性確保の面で実機実験より有利
カメラ画像
環境
俯瞰視点
配置結果
代表条件における定量的結果:
提案手法は、ベースライン/ランダム手法より優れる
提案手法(青)は既存手法
(緑)およびランダム投下
(オレンジ)より良い
センサ数
実験設定
・25候補点に12個のセンサを設置
・シミュレーション実験
比較対象
・ベースライン[Krause 08]
・ランダム投下
評価尺度
(累積)相互情報量
位置誤差パラメータ
(αx, αy)=(0.3, 0.2)
*10回平均の結果
相互情報量
実験設定
• シミュレーション実験
目的
• 様々な位置誤差の環境に対す
る提案手法の有効性を検証
比較対象
• ベースライン[Krause 08]
尺度
• 累積相互情報量の差
– 青:ベースラインが優れる
– 赤:提案手法が優れる
感度解析: 誤差が小さければ提案手法はベースラインと
同等で、誤差が大きいと提案手法が優れる
パラメータの組121通りに対し、
10回ずつの平均
x方向の誤差:αx
y方向の誤差:αy
誤差が小さいので
同等(差が0)
それ以外の領域では
提案手法が優れる
まとめ
• ターゲット:人手が困難/危険な地域に対するセンサ
ネット構築
• 手法:期待相互情報量にもとづくばらまき型センサ配置
• 結果:位置誤差が生じる状況で、ベースラインより提案
手法が優れることを確認
• 工学的応用 & 環世界 =?
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20160606劣モジュラ性を利用したドローンによるばらまき型センサ配置