『声幽 ネットワーク論とはなにか』2014年1月25日 サイスペ読書会 #kansai_ct
- 5. 『動物化するポストモダン』
近代では,まず小さな見えるものがあり,その背後に大きな見えないも
のがあり,前者から後者へと遡って,見えないものをつぎつぎと見える
ものに変えていくことが世界理解のモデルだったと言うことができる.
(図19a).
しかし,ポストモダンのデータベース型世界では,その両者はもはや直
接に繋がることがない.小さな物語は大きな非物語を部分的に読み込
むことで生まれるが,同じ非物語からはまた別の小さな物語が生まれ
うるのであり,そのいずれが優位かを決定する審級はない.つまり小さ
な物語から大きな物語へと遡ることはできない.したがってここでは,ま
ず目の前に小さな見えるものがあり,そしてそこから見えないものに遡
ろうとしたとしても,それは見えた瞬間にただちに小さな物語へと変
わってしまい,それに失望してふたたび見えないものへと向かう,という
際限のない横滑りの運動が生じることになる(図19b).
[東浩紀,
『動物化するポストモダン-‐-‐オタクから見た日本社会』
2001,160]
5
- 11. ゼロ年代 深夜アニメ 本数
100
90
80
70
60
50
深夜アニメ 本数
40
30
20
10
0
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
11
- 16. 声優と俳優:キムタク問題
• 「キムタク問題」とは,俳優としてのキムタクが,どんな配役
を演じたとしても,キムタクとして,認知されてしまうこと
• 「見られる」存在であるがゆえに,いつまでも,美しくあり続け
ることが求められる.だが,だからこそ,キムタクは,キムタクと
いう呪いをうけてしまう.
• 俳優は,声(聴覚)のデータベースと,イメージ(視覚)のデータ
ベースが同時並行的に形成されていき,だんだんとそれが
同化していくが,声幽の場合は,二つのデータベースの形成
が全く別々の時間軸で形成されていく.
二つのデータベースのずれ
=不気味な感覚=声優の幽霊性
16
- 17. 声優とVOCALOID:
初音ミクは藤田咲の夢を見るのか
• ミクは,声優,藤田咲の声をサンプリングしてつくられたVOCALOIDに
もかかわらず,ミクの声と藤田咲の声との間には大きな隔たりがあ
る.それは,現在のVOCALOID技術の一つの限界である.だが,技術
が洗練していくことで,藤田咲本人と全く違いが分からないように
なっていくとすれば,そのとき,初音ミクは,藤田咲であろうとするの
か,もしくは,初音ミクであろうとするのか.
• そもそも,藤田咲というオリジナルがありながら,オリジナルの存在
が忘却されている初音ミクは,藤田咲になりたいという「欲望」を持
つとは思えない.
• 初音ミクというデータベースは,藤田咲というデータベースを既に
超えている.
• 声優にとってのキャラクター≒VOCALOIDにとっての歌い手,絵師,
作曲者
17
- 22. 参考文献みたいなもの
• 引用文献
• ハイデガー.
『ヒューマニズムについて』.
• 関西クラスタ.
“アニメルカ特別号『反=アニメ批評2012autumm』.”
声の幽霊が回帰する?-‐-‐声幽論をめぐって.
2012.
56-‐67.
• 東浩紀.
“「想像界と動物的回路-‐-‐形式化のデリダ的諸問題」.” 著:
『文学環境論集 東浩紀コレクションL』,
脚本:
東浩紀.
2007.
• —.
『サイバースペースはなぜそう呼ばれるか+』.
河出書房,
2011.
• —.
『存在論的、郵便的−−ジャック・デリダについて』.
新潮社,
1998.
• —.
『動物化するポストモダン‐‐オタクから見た日本社会』.
講談社,
2001.
• その他色々
22