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BoP ~The Base of the Economic Pyramid~ ■ 概論(導入) アフリカやインドで裸足で遊ぶ子供たちを見たときに、 「この子達は靴も買えない」と見るか、「靴が売れる市場が存在する」と見るか? 世界には、 1 日 2 ドル未満で生活する貧困層が約 40 億人いる。 経済ピラミッドの底辺に位置するこの貧困層 (Base of the Economic Pyramid=BoP) こそ、今後急速に成長する魅力的な市場ととらえる。 彼らを、慈善や援助の相手としてはなく、ビジネスの対象として重視し、貧困層を「顧客」や「消費者」に変えるには。 1) BoP とは   開発途上地域において1人あたりの年間所得(購買力平価換算)が 3,000 ドル未満の世帯  世界の人口 55.75 億人の 72 %を占め、 特にアジアの BoP 層は 28.6 億人( 3.5 兆㌦)! 富裕層と BoP 層のコスト差 参考文献 『ネクスト・マーケット』( 2004 )  C.K. プラハラード著     『 BoP ビジネス戦略』( 2010 年) 野村総合研究所著 ToP 層 約 1.75 億人 年間所得  20,000 ㌦ MoP 層 約 14 億人 年間所得  3,000 ㌦ BoP 層 約 40 億人  年間所得  3,000 ㌦未満 5 兆ドルのマーケット ⇒ BoP 層であっても必要なものには相応の対価を支払っており、企業の工夫次第で顧客になりうる! 【 Next   Billion 】 1 日の所得が8㌦前後の人々。相対的に生活にゆとりがあり、企業がアプローチし易い。 MoP 層に比べると、より豊かになる仕組みや機会が提供されていない。 【 Bottom   Billion 】 1 日の所得が1~2㌦前後の人々。 最低限の生活を行うことすら難しい状況で、企業がアプローチするのが比較的難しい。 国際開発の視点からはアプローチの 優先順位が高い 1.8 倍 0.025 $ 0.05 $ 電話(1分) 37 倍 0.03 $ 1.12 $ 水道(1㎥) 53 倍 12 ~18% 600 ~ 1000 % 利子(年利) 1.2 倍 0.24 $ 0.28 $ コメ( 1kg ) 10 倍 2.0 $ 20.00 $ 下痢止め薬 その差 上流層が住む地域 スラム街 項目
BoP    ~The Base of the Economic Pyramid~ 8.2  千国 2) BoP ビジネスとは ① 途上国の、主に貧困者層が製品・サービスを対象消費者となり、開発課題の改善につながるもの ② 同対象層の人々に、経済活動への参画、企業や雇用の機会を提供し、開発課題の改善につながるもの 【よくある誤解】  先進国のサービスを BoP 層の手の届くように小型化・小分けにして提供するサービス。 3)企業にとっての BoP ビジネスの意義 -> BOP 市場に参入することで得たノウハウ、実現したイノベーションは、先進国市場でも活用でき、企業の成長、発展に大いにつながる。 ・将来市場の開拓      ・レピュテーションの向上  (ブランドの知名度や評判の向上) ・次世代ビジネスプラットフォームの構築  ① 将来の市場開拓    ② 原材料の安定調達と   コスト・イノベーション     ※ 消費者としてだけでなく、生産者・販売者としての立場も。 ・原材料の将来的コスト・リスクの削減  、食品関連企業における原料確保など ・生産過程でのコストイノベーション    「価格-利益=製造コスト」 ④ 製品・サービスのイノベーション   ③ 流通チャネルの強化    ・限定された流通チャネルを確保し、交渉力を高める。 ・将来の中間層へのアプローチ ・世界中のアイディアを結集することによるイノベーション ・途上国で技術を発展させることによるイノベーション (先進国ではカニバリズムが起きる) ・次世代リーダーの育成 ⑤ 人材のイノベーション    能力の掛け合わせと共同のコミットメント 深い対話(双方向) BoP 層はパートナー 相互価値の創造  ( Creating Mutual Value ) BoP 2.0 パッケージ変更や流通網の拡大が狙い 傾聴(一方向) BoP 層は消費者 貧困層の顧客化  ( Selling to the Poor ) BoP 1.0
BoP    ~The Base of the Economic Pyramid~ 8.2  千国 4)ステークホルダーにとっての BoP ビジネスの意義 ① 政府・国際機関    ・民間企業のもつ、資金・人財・技術等を、自らのミッション達成のために活用できる 経済産業省『 BoP ビジネス政策研究会』  ○官民連携による継続的・効率的な経済協力の実施(途上国の生活水準向上・貧困削減、アジア等)  ○我が国経済協力の認識度、存在感の向上  ○我が国企業の海外進出支援  (海外市場の創出・拡大による企業・経済全体のサービスの開発) ② NPO/NGO     ・企業の経験・ノウハウ・リソースを活用して、より早期に、効果的に自らのミッションを達成すること ③ 投資家    ・投資対象の増加 ・投資家の価値の再評価  (金儲けの手段という誤解の払拭) 5) BoP ビジネスの特徴 ロングターム 思考 社会変革視点 パートナーシップ ① 社会変革視点:グローバルな問題の取り組む             現地に入り込み、土着化して考える ② パートナーシップ: Win - Win 関係を構築する               企業単体では為しえない価値の創出を目指す ③ ロングターム思考:将来市場の構築を優先する               サステナビリティ(継続性)を重視する
BoP    ~The Base of the Economic Pyramid~ 8.2  千国 6) BoP ビジネスの事例 ■ フィリップス(オランダ) アフリカにおいて現在電気のない生活をしている人が 5 億人。彼らはロウソクかケロシンランプを使用している。 フィリップスは、無電化村に対し 3 種類の照明器具を販売。 A )  U day lamp  蛍光ランプと LED を組み合わせ、充電機能と太陽光パネルを搭載。   4 時間の使用可能。 20 ~ 50 $ B)   My Reading Light   LED 照明が搭載されている学習用ライト。シート状になっており、   3.5 ~ 9 時間の使用が可能。 15 $以下で販売 C)Hnd-crank Flashlight  持ち運び可能な発電機で充電するタイプのライト。   2 分間手動でハンドルを回すと 17 分間の使用が可能。 5 $程度 オランダ外務省より、資金提供や金融メカニズムの構築支援を受ける。 International Finance Corporation (ライティングアフリカイニシアティブを展開)より、製品テストやマーケットリサーチ、税制の待遇などの協力がある。 パートナーシップ 多くのパイロット展開を実施し、継続の難しいものは撤退。アフリカの照明プロジェクトをガーナ、ウガンダ、ケニア、インドへ横展開中。 農村部で充電ステーションが普及することで、発電所ビジネスや将来の電化製品の販売などのビジネス展開が可能となる。 ロングターム思考 安全な光源の提供により、 BoP 層の人体の保護と環境の保全が図れる。 支出の削減、陽が落ちた後でも労働可能、教育の充実、健康への好影響、家事の効率アップ、 安全性の向上、環境への好影響など 社会変革視点
BoP    ~The Base of the Economic Pyramid~ 8.2  千国 5) BoP ビジネスの事例 ■ SC ジョンソン(アメリカ) トイレなどの基本的な衛生設備を利用できない人は約 26 億人。衛生設備の改善は、乳幼児の死亡率を 1/3 減少させ、貧困の解決にも寄与する。 SC ジョンソンは、スラム街の青年グループと協力。” Community Cleaning Service” 活動を展開し、商品の流通とともに地元青年団にサービスを 提供することでビジネスをサポートしてもらう活動を展開。 Shared Toilet Cleaning   Service  現地の青年団によるコミュニティ内の共同トイレの清掃サービス   SC ジョンソンが製品の提供や害虫駆除・清掃技術のトレーニングを実施し、  パートナーの青年団が自ら清掃サービスを実施する活動。 Public Toilet Management  現地の青年団の有料トイレ事業をサポートする活動。  従来のスラムでのビジネス経験とコミュニティからの信頼を活かし、起業。 将来的には、 SC ジョンソンの製品を直接販売する、個人でトイレを持った際にブランド価値が上がる、他の地域への展開が可能などの メリットがある ケニアのスラム街の青年団や NPO/NGO 。 パートナーシップ コーネル大学と連携し、 BoP プロトコルを実施。 【フェーズ1】現地にホームステイ。現地での会合を設けて、新規事業のアイディアを練る 【フェーズ2】現地のパートナー候補とともにパイロット展開を開始 【フェーズ3】自らの事業の現地への影響力を見極め、事業改善の検討と新たなパートナー選び ロングターム思考 衛生環境の改善と企業家としての機会創出、所得の向上。トイレの安全性の向上など。 従来危険な空間だったトイレを有料として、安全性を確保することで、女性の社会進出を助け、学校などの 公共の施設がきれいになることで女子児童の通学を促進する。 社会変革視点
BoP    ~The Base of the Economic Pyramid~ 8.2  千国 6) BoP ビジネスの事例 (経済産業省報告より) グローバル企業の例 日本企業の例
BoP    ~The Base of the Economic Pyramid~ 8.2  千国 7) BoP ビジネスの戦略は 意識・組織戦略・人材確保の視点から ① 意識の問題 多くの経営陣は、「 BoP 層=救済の対象」「 10 年後に MoP 層になってから考慮すればよい市場」と考えている 複数の投資要素( R&D 、事業、広告・販促、 CSR 、人材・・・) ● 社長直轄のトップダウンプロジェクトとし、社長が全投資意思決定権者となる ● 横串の横断的組織を立ち上げ、企業存続の観点から BoP ビジネスを投資意思決定を検討する (できれば組織は現地に置いた方がよい) ② 組織戦略の問題 「順応力」 現地市場を観察し理解するとともに、適合する商品・サービスを徹底的にカスタマイズする力 「集約力」 商品・サービスの、業務の標準化と集約化により効率を高め、継続的に利益を生み出す力 「展開力」  BoP 市場での事業経験に学び、常に新たな商品・サービスの開発と、新たなマーケットの開拓を企画、実行する力 ② 人材確保の問題 1目利き力   BoP 層の抱える社会課題から潜在的ニーズを引き出し、事業機会を発掘する力 2企業家力 先進国とは大きく違う社会・経済情勢のなかでビジネスをゼロから立ち上げる力 3展開力   企業内だけでなく、 NPO/NGO や現地政府などとの調整を実施する力 目利き力 企業家力 マルチ・コーディネート力 サムスン: 3 年目以降の社員を世界中に派遣。 1 年間滞在し、文化・言語を学び現地人脈を築く IBM  :出身国の異なる海外支援チームを派遣し、現地 NPO/NGO と社会貢献プロジェクトを行う

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  • 2. BoP    ~The Base of the Economic Pyramid~ 8.2  千国 2) BoP ビジネスとは ① 途上国の、主に貧困者層が製品・サービスを対象消費者となり、開発課題の改善につながるもの ② 同対象層の人々に、経済活動への参画、企業や雇用の機会を提供し、開発課題の改善につながるもの 【よくある誤解】  先進国のサービスを BoP 層の手の届くように小型化・小分けにして提供するサービス。 3)企業にとっての BoP ビジネスの意義 -> BOP 市場に参入することで得たノウハウ、実現したイノベーションは、先進国市場でも活用でき、企業の成長、発展に大いにつながる。 ・将来市場の開拓      ・レピュテーションの向上  (ブランドの知名度や評判の向上) ・次世代ビジネスプラットフォームの構築  ① 将来の市場開拓    ② 原材料の安定調達と   コスト・イノベーション     ※ 消費者としてだけでなく、生産者・販売者としての立場も。 ・原材料の将来的コスト・リスクの削減  、食品関連企業における原料確保など ・生産過程でのコストイノベーション    「価格-利益=製造コスト」 ④ 製品・サービスのイノベーション   ③ 流通チャネルの強化    ・限定された流通チャネルを確保し、交渉力を高める。 ・将来の中間層へのアプローチ ・世界中のアイディアを結集することによるイノベーション ・途上国で技術を発展させることによるイノベーション (先進国ではカニバリズムが起きる) ・次世代リーダーの育成 ⑤ 人材のイノベーション    能力の掛け合わせと共同のコミットメント 深い対話(双方向) BoP 層はパートナー 相互価値の創造  ( Creating Mutual Value ) BoP 2.0 パッケージ変更や流通網の拡大が狙い 傾聴(一方向) BoP 層は消費者 貧困層の顧客化  ( Selling to the Poor ) BoP 1.0
  • 3. BoP    ~The Base of the Economic Pyramid~ 8.2  千国 4)ステークホルダーにとっての BoP ビジネスの意義 ① 政府・国際機関    ・民間企業のもつ、資金・人財・技術等を、自らのミッション達成のために活用できる 経済産業省『 BoP ビジネス政策研究会』  ○官民連携による継続的・効率的な経済協力の実施(途上国の生活水準向上・貧困削減、アジア等)  ○我が国経済協力の認識度、存在感の向上  ○我が国企業の海外進出支援  (海外市場の創出・拡大による企業・経済全体のサービスの開発) ② NPO/NGO     ・企業の経験・ノウハウ・リソースを活用して、より早期に、効果的に自らのミッションを達成すること ③ 投資家    ・投資対象の増加 ・投資家の価値の再評価  (金儲けの手段という誤解の払拭) 5) BoP ビジネスの特徴 ロングターム 思考 社会変革視点 パートナーシップ ① 社会変革視点:グローバルな問題の取り組む             現地に入り込み、土着化して考える ② パートナーシップ: Win - Win 関係を構築する              企業単体では為しえない価値の創出を目指す ③ ロングターム思考:将来市場の構築を優先する              サステナビリティ(継続性)を重視する
  • 4. BoP    ~The Base of the Economic Pyramid~ 8.2  千国 6) BoP ビジネスの事例 ■ フィリップス(オランダ) アフリカにおいて現在電気のない生活をしている人が 5 億人。彼らはロウソクかケロシンランプを使用している。 フィリップスは、無電化村に対し 3 種類の照明器具を販売。 A ) U day lamp  蛍光ランプと LED を組み合わせ、充電機能と太陽光パネルを搭載。   4 時間の使用可能。 20 ~ 50 $ B)   My Reading Light   LED 照明が搭載されている学習用ライト。シート状になっており、   3.5 ~ 9 時間の使用が可能。 15 $以下で販売 C)Hnd-crank Flashlight  持ち運び可能な発電機で充電するタイプのライト。   2 分間手動でハンドルを回すと 17 分間の使用が可能。 5 $程度 オランダ外務省より、資金提供や金融メカニズムの構築支援を受ける。 International Finance Corporation (ライティングアフリカイニシアティブを展開)より、製品テストやマーケットリサーチ、税制の待遇などの協力がある。 パートナーシップ 多くのパイロット展開を実施し、継続の難しいものは撤退。アフリカの照明プロジェクトをガーナ、ウガンダ、ケニア、インドへ横展開中。 農村部で充電ステーションが普及することで、発電所ビジネスや将来の電化製品の販売などのビジネス展開が可能となる。 ロングターム思考 安全な光源の提供により、 BoP 層の人体の保護と環境の保全が図れる。 支出の削減、陽が落ちた後でも労働可能、教育の充実、健康への好影響、家事の効率アップ、 安全性の向上、環境への好影響など 社会変革視点
  • 5. BoP    ~The Base of the Economic Pyramid~ 8.2  千国 5) BoP ビジネスの事例 ■ SC ジョンソン(アメリカ) トイレなどの基本的な衛生設備を利用できない人は約 26 億人。衛生設備の改善は、乳幼児の死亡率を 1/3 減少させ、貧困の解決にも寄与する。 SC ジョンソンは、スラム街の青年グループと協力。” Community Cleaning Service” 活動を展開し、商品の流通とともに地元青年団にサービスを 提供することでビジネスをサポートしてもらう活動を展開。 Shared Toilet Cleaning   Service  現地の青年団によるコミュニティ内の共同トイレの清掃サービス   SC ジョンソンが製品の提供や害虫駆除・清掃技術のトレーニングを実施し、  パートナーの青年団が自ら清掃サービスを実施する活動。 Public Toilet Management  現地の青年団の有料トイレ事業をサポートする活動。  従来のスラムでのビジネス経験とコミュニティからの信頼を活かし、起業。 将来的には、 SC ジョンソンの製品を直接販売する、個人でトイレを持った際にブランド価値が上がる、他の地域への展開が可能などの メリットがある ケニアのスラム街の青年団や NPO/NGO 。 パートナーシップ コーネル大学と連携し、 BoP プロトコルを実施。 【フェーズ1】現地にホームステイ。現地での会合を設けて、新規事業のアイディアを練る 【フェーズ2】現地のパートナー候補とともにパイロット展開を開始 【フェーズ3】自らの事業の現地への影響力を見極め、事業改善の検討と新たなパートナー選び ロングターム思考 衛生環境の改善と企業家としての機会創出、所得の向上。トイレの安全性の向上など。 従来危険な空間だったトイレを有料として、安全性を確保することで、女性の社会進出を助け、学校などの 公共の施設がきれいになることで女子児童の通学を促進する。 社会変革視点
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  • 7. BoP    ~The Base of the Economic Pyramid~ 8.2  千国 7) BoP ビジネスの戦略は 意識・組織戦略・人材確保の視点から ① 意識の問題 多くの経営陣は、「 BoP 層=救済の対象」「 10 年後に MoP 層になってから考慮すればよい市場」と考えている 複数の投資要素( R&D 、事業、広告・販促、 CSR 、人材・・・) ● 社長直轄のトップダウンプロジェクトとし、社長が全投資意思決定権者となる ● 横串の横断的組織を立ち上げ、企業存続の観点から BoP ビジネスを投資意思決定を検討する (できれば組織は現地に置いた方がよい) ② 組織戦略の問題 「順応力」 現地市場を観察し理解するとともに、適合する商品・サービスを徹底的にカスタマイズする力 「集約力」 商品・サービスの、業務の標準化と集約化により効率を高め、継続的に利益を生み出す力 「展開力」  BoP 市場での事業経験に学び、常に新たな商品・サービスの開発と、新たなマーケットの開拓を企画、実行する力 ② 人材確保の問題 1目利き力  BoP 層の抱える社会課題から潜在的ニーズを引き出し、事業機会を発掘する力 2企業家力 先進国とは大きく違う社会・経済情勢のなかでビジネスをゼロから立ち上げる力 3展開力   企業内だけでなく、 NPO/NGO や現地政府などとの調整を実施する力 目利き力 企業家力 マルチ・コーディネート力 サムスン: 3 年目以降の社員を世界中に派遣。 1 年間滞在し、文化・言語を学び現地人脈を築く IBM  :出身国の異なる海外支援チームを派遣し、現地 NPO/NGO と社会貢献プロジェクトを行う