1.私の今行なっている研究は【DFATと種々の多能性細胞における遺伝子発現プロファイルの比較解析】についてです。
2.本研究室では、脂肪細胞を脱分化させることによって、脱分化脂肪細胞株(DFAT)を樹立しています。このDFATは、中胚葉、外胚葉由来の細胞に分化転換できる多能性をもっていることが明らかになっています。
3.しかし、この多能性に関わる遺伝子が明らかになっていません。
4.そこで、私は遺伝子発現プロファイルを比較解析し、DFATの多能性に関わる遺伝子を抽出することを目的として研究を行ないました。
5.材料および方法です。今回の研究により取得したDFATと公共のデータベースから取得した種々の多能性細胞とマイクロアレイデータを用いて、遺伝子発現プロファイルの主成分分析を行いました。
6.主成分分析の結果に入る前に少しマイクロアレイの説明をさせていただきます。
マイクロアレイとはその細胞(または組織)の全遺伝子の発現状況がわかるものとなっています。細胞からtotal RNAを抽出し、それを増幅および標識するため一回DNAを介して再びcRNAをつくります。次に、断片化したRNAとDNAチップのプローブを相補的な配列同士をくっつけます。そのハイブリダイズさせたRNAの標識を染色しスキャンすることによって、画像データを作成します。
7.その画像データを数値化することによって遺伝子発現を解析できるようにします。以上のことがマイクロアレイの簡単な説明です。では、結果に入っていきます。
8.こちらが、多能性細胞における遺伝子発現プロファイルの主成分分析を行なった結果です。この主成分分析とはそれぞれの細胞の距離を比較したとき離れていれば、異なる細胞で、近ければ類似している細胞であるということがわかる方法です。
この方法を用いて、DFATがどの胚葉系の細胞と類似性が高いか調べました。みてもらうとわかるように、DFATは内胚葉、外胚葉由来の細胞と離れた位置にプロットされました。さらに、MSC、C3H10T1/2と近いので、中胚葉由来の細胞と類似性が高いことが示されました。
10.次に、先ほど用いた多能性細胞であるMSC、C3H10T1/2に加え、単分化能をもつ3T3-L1、C2C12、3T3-E1、分化能をもたないBALB-3T3のマイクロアレイデータを用いて、中胚葉由来の細胞で主成分分析を行ないました。
11.中胚葉由来の細胞における遺伝子発現プロファイルの主成分分析の結果です。
先ほどと見方は同じです。このようにDFATは分化能をもたない