日本の外国人大学教員の知識・知的能力開発機会とそれを妨げる要因の検証に取り組んでいる．聞き取りをした44名の語りでは，言語文化的な苦労がありながらも，主体的に，国際的に自身の能力の研鑽に励んでいる姿が浮かび上がった．先行研究に見られる，疎外され，日本の学術界を悲観するイメージとは異なる様子を窺い知ることができている． This paper presents some preliminary findings based on interviews with 44 foreign young academics in Japan. Although the literature often reports their exclusion and disappointment in Japanese academia, this study reveals their proactive, international engagement in their knowledge and intellectual development.

1. 櫻井勇介
広島大学 教育学習支援センター
外国人大学教員の
知的能力開発の経験と
阻害要因に関する探索調査の
暫定的知見
@yskrijp

2. Yusuke SAKURAI、 PhD
取り組む課題
 外国人研究者：多様化する大学教員や研究者
 社会統計的動向（出身や母語など）や不慣れな言語
や文化に起因する日本勤務の難しさ (e.g. Brotherhood
et al., 2019; Huang, 2021; Chen, 2022)
 【課題】職能開発の機会や制限要因は未解明
 Vitae RDF：「知識と知的能力」「個人資質」
「研究統括と管理」「関与とインパクト」
 「知識と知的能力」：「知識基盤」「認知的能力」
「創造性」

3. Yusuke SAKURAI、 PhD
研究の手続き
 44名の高等教育機関の外国籍教員
 性別、分野、国籍、契約形態、日本語運用力を考慮
 半構造化インタビュー｜学修・職務経験、研究者と
しての能力開発の機会、将来の展望
 文字化資料をもとにコード付け
 職能開発の機会を構造化｜分類・整理
 同時にこれらの能力開発の阻害要因
 事例コード内、間の比較対照
 現象学的解釈アプローチ

4. 「機会」の概念化
母国とは異なる環境にありなが
ら専門的知識や研究方法の知識
などを蓄積
 リソース｜組織や体制①
 情報獲得の場｜組織や体制②
 意見交換・インスピレーション｜
人的繋がり

5. リソース｜組織や体制①
 文献やオンラインビデオ
 割当てられる一定の研究費や科研費
 時間的余裕｜授業担当が少・外国人／任期付ポ
ストだから学内運営が期待されない
 外国の環境と比して自由

6. 情報獲得の場｜組織や体制②
 研究活動・査読
 学術的集会｜学内、国内外
 コロナ禍特有のオンラインの機会

7. 意見交換・インスピレーション｜
人的繋がり




8. Intellectual
Networking
Institutional
リソース
情報獲得の場
人的繋がり
リン・マクアルパインの ” ”
リン・マクアルパインの ”Identity Trajectory”
McAlpine, L., & Amundsen, C. (2017). Identity-
trajectories of early career researchers: Unpacking the
post-PhD experience. Palgrave Macmillan Limited.

9. Yusuke SAKURAI、 PhD
課題や難しさ
 言語文化的な葛藤
 各種セミナーや学内外の学術交流の機会を効率的に
生かせない
 「知識と知的能力」が望めないことに直結するとは
限らない
 国際学会、英語で意思疎通ができる所属部署の職員の支援、学外の国
際学術コミュニティーの同僚、資料に併記された英語訳を頼る
 授業担当や学内運営業務の負担大
 オンラインの機会は「身が入らない」

10. 先行研究との統合
 日本の職業文化環境の中で「軽んじられ、疎
外され、時には怒りや失望をも表す者」とし
て描かれてきた
 不慣れな言語や文化的な背景の違いに格闘し
ながら、周囲の人に支援を得て、柔軟に、国
際的に様々な機会を掴み主体的に活動
 日本の環境に嫌気を感じる者も、得られるリ
ソースを活用し研究に精進し、国境にとらわ
れず次の職場に移るため研鑽を積む

11. 今後の見通し
 付与コード内容を精査、主なテーマを洗練
 分野による違い・博士課程を修了したのが
日本であるか・性別