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私はなぜ心配するのをやめてAIを受け入れるようになったか
- 1. 金子 格 早稲田大学知覚情報システム研究所(招聘研究員)
寺田 麻佑 一橋大学ソーシャルデータサイエンス学部
湯田 恵美 東北大学 大学院情報科学研究科
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私はなぜ心配するのをやめてAIを受け入れるようになったか
2023-6-12 第100回EIP 研究会
http://id.nii.ac.jp/1001/00226123/
- 4. 私はなぜ心配するのをやめてAIを受け入れるようになったか 金子格 早稲田大学
知覚情報システム研究所
画像生成AIで既存クリエイターが不利益を受けるか?
– 多くの学習データが利用される。学習データには著作権がある。
– 学習は著作権侵害にならない。
– 平成30年著作権法改正第三十条の四
• 著作物は,次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は
他人に享受させることを目的としない場合には,その必要と認められる限度において,いずれの
方法によるかを問わず,利用することができる.ただし,当該著作物の種類及び用途並びに当該
利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない.
• 一 著作物の録音,録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供す
る場合
• 二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から,当該情報を構成する言語,音,影像そ
の他の要素に係る情報を抽出し,比較,分類その他の解析を行うことをいう.第四十七条の五第
一項第二号において同じ.)の用に供する場合
• 三 前二号に掲げる場合のほか,著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく
当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著
作物にあつては,当該著作物の電子計算機における実行を除く.)に供する場合
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- 5. 私はなぜ心配するのをやめてAIを受け入れるようになったか 金子格 早稲田大学
知覚情報システム研究所
2.2. 心配ないかもしれない
– 著作物は,次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は
他人に享受させることを目的としない場合には,その必要と認められる限度において,いずれ
の方法によるかを問わず,利用することができる.ただし,当該著作物の種類及び用途並びに
当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない.
– つまり以下の場合は除外されると考えられる?
• 思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的とする場合
• 著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない
– 生成AIで生成した画像を人間が見る用途に使って著作権侵害をした場合は明らかに除外され
る。著作権許諾なく利用できるのは、あくまで分析まで。(じゃないですかね?)
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- 9. 私はなぜ心配するのをやめてAIを受け入れるようになったか 金子格 早稲田大学
知覚情報システム研究所
2.2. 心配ないかもしれない
– 第30条の4はどこまでを許容するものか
• 想像: 第30条の1「一 著作物の録音,録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化の
ための試験の用に供する場合」とあわせると、およそAI, DL の実験には制限がなくなる。こ
れを意図したのでは。
• だとすると、分析結果から大量にコンテンツを作ることで現著作者の利益を害する場合は、
除外されるのが当然。
• ここで、利益を害する、とあることで、「権利」にかかわるものでなくても結果として「利益が害
される」場合を除外しようとしている?
– であるなら、クリエイターの利益が害されることはない、ということになる。
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- 12. 私はなぜ心配するのをやめてAIを受け入れるようになったか 金子格 早稲田大学
知覚情報システム研究所
製油所の会話
– 職員A: 山田君どこにいる?
– 山田: CFKPP計のところにいます
– 職員A : いいところにいますね.アスファルトブロックを数点とPCの顆粒がほしい.
– 職員A : 流量でてきたな~。どろどろの重たい油なんで。この原油をひっぱるのは10数年ぶりだね~。
ほとんどの人が経験していないな。最近道路工事も多いし。
– 職員A: 今日の原油、すこし柔らかいで
– 職員B: もし柔らかいんやったら、軽いんやったら、加熱炉379度までさげやんくていいんかも」
– 職員A: どうするかな、それもうすこしむこうと揉んでもらわんと
AIはこうした条件で判断可能か?
– 人間が様々な実体情報から取捨選択している。
– 超スパースな空間の未経験の入力にヒューリスティックに最適なパラメータを外挿している。
かなりむずかしい
– 牛の出産予測システム、漁場の予測システムなどあるが、基本学習データがllmなどにくらべ著しく
少ない上に、問題となるのはほとんどが突発事象なので、性能がなかなかあがらない。
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- 14. 私はなぜ心配するのをやめてAIを受け入れるようになったか 金子格 早稲田大学
知覚情報システム研究所
秘密漏洩リスクの類型
(1) 公開されたデータの学習を通じて漏洩
– すでに公開されているから正確には漏洩ではない
– AIを通じてこれまでアクセス困難な属性にアクセスできる可能性がある
(2) サービスの不具合により漏洩する
– AIとは関係のないアプリケーションプログラム上の瑕疵である.
(3) 外部のサービスに情報を渡してしまったこと自体が問題となる場合
– 外部のサービスからの漏洩がなくても,管理規定上外部サービスに情報を移転すること自体が
禁止されている場合。AIの問題というよりは機密情報の管理上の問題。
– そのような事例もAIの機密漏洩事例のコンテキストで報告されている[6] .
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- 17. 私はなぜ心配するのをやめてAIを受け入れるようになったか 金子格 早稲田大学
知覚情報システム研究所
AIの安全性はサービス提供者にかかっている.
– 何等かの事故を起こせばAIに対する信認もサービス提供者に対する信認も低下する。
– これを防ぐインセンティブが大きければそれだけAIの安全性を担保する強い動機になる。
AIサービス提供企業には脅威をとりのぞく強いインセンティブがある
– AI開発はビッグサイエンスであり、巨額の投資を必要としている。
– 参加するのは時価総額10兆円級の巨大企業である。
– 巨大企業にとって重要なのは事業の将来性であり広範囲な信任だ。
– 社会に害を与えず、豊かさをもたらす,社会人類全体にとって有益な技術である、という信頼を
構築するよう、経済的に強く動機付けられる.
– 巨大な資金を用い、全力で、AIの安全性を確立することを目指していると期待できる。
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