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キリスト教世界最古の儀式
である(?)
ヤコブによる神の儀式ヤコブによる神の儀式
Divine Liturgy of St.JamesDivine Liturgy of St.James
はじめに
白状します。
「世界最古の儀式」と銘打ちましたが、実の所この儀式が確立したのは四世紀のエルサレムなんだそうです。
ジョン・フェンウィックという学者の説によれば、エルサレムの聖キュリロス1
という人が聖バシレイオス2
と同じ原型を使って 370 年にこの儀式を作成したんだとか3
。そして彼の時代のエルサレム教会は聖ヤコブ、
つまりナザレのイエスの兄弟が建てた教会とは直接繋がってはいないという。
更にユーカリスト(聖餐)が日曜朝における礼拝に組み込まれたのはユスティノス4
の時点、二世紀以降で
あり、それ以前はパンとワインは通常の食事における儀式を介して食べられていたのだそうです5
。である
ならば、この「ヤコブによる神の儀式」でのパンとワインをキリストの肉と血として食べるという流れは、
62 年に死んだとされるヤコブ等による教会には存在し得なかった事に6
…
じゃあこの儀式の全部が四世紀に出来たのかというと、どうやらそういう訳でもないようです。
どの部分がどの位、という問題は当然発生しますが、この儀式は当時に伝わっていた古い儀式を整理して、
そこから幾ばくかの抜粋をする事によって作られています。例えば、血を抜いた動物を捧げるであるとか、
「我が民族の救い」という言い回しが二度使われていたりと、四世紀頃にはとっくに離散していたユダヤ人
キリスト教徒の習慣と思われる箇所等も残っていたりします。
ジョン・ウィルキンソンという学者によれば、かつて最初期のユダヤ人キリスト教徒が作った箇所として、
1 313 頃-386。エルサレム主教を務めた人物で、アリウス派との闘争で有名です。
2 330 頃-379。こちらはカイサリア(当時の小アジアを代表する都市。現トルコのカイセリ)主教を務め、
三位一体論の形成、現在の正教会における聖体礼儀(カトリックにおけるミサに相当)の原型構築等の
功績を残しています。
3 https://orthodoxwiki.org/Liturgy_of_St._James より。
4 100?-162?。初めてキリスト教にギリシャ哲学を組み込み、完全なロゴス(ギリシャ哲学における神が
生み出した世界の根本原理)とイエス=キリストを結びつけた神学者です。
5 F・ハーン『新約聖書の礼拝』 p146
6 ただし一世紀後半から二世紀の間に成立したとされる『ディダケー』には明白に日曜礼拝における聖餐
に関する記述があります。一方この『ディダケー』はユダヤ人キリスト教徒によって書かれたとされる
『マタイによる福音書』との共通点を多く持っていますが、福音書においては日曜礼拝に聖餐があった
のか否かは不明瞭です。となると、日曜礼拝における聖餐は 85 年には成立していたとされる『マタイに
よる福音書』の後から二世紀前半の間のどこかに成立していたのでしょうか。…まぁヤコブ以降なのは
間違いないんだろうとは。
1
トリサギオン(日本正教会訳だと聖三祝文)の祈り、奉献の祈り(人間から神へ犠牲等を捧げる際の祈り)、
後悔の祈り(自分が罪人である、あるいは罪を犯した事への祈り)、ユダヤ教と並行する接合と Ectenes
の祈り(~に代わって、で始まる人々や物に対する祈りで、「主に懇願しよう」で締める78
。ここでは二つ
まとめて懇願の祈りと呼びます)の 5 つがユダヤ人キリスト教徒による祈りを保存しているとか9
。他にも
色々と興味深い記述があったり、逆に今日東方正教会による聖体礼儀ではしつこいくらいに書かれる下りが
丸々無かったりと、キリスト教の発展を考える上で様々な示唆があるのは確かです。と、いう事で。多くの
方々に謎解きの楽しさを堪能してもらう為に、また単純に私自身の興味の為に、この儀式を日本語に訳して
みることにしました。
…ただし私はギリシャ語が出来ないので、この翻訳は英語訳からの孫訳になります。これは浅学をご容赦を
としか言えません。ちなみにユダヤ人キリスト教徒達が実際にはアラム語で儀式を行っていた場合はひ孫訳
という事になります。が、仮にアラム語による原典があったとしてもそれは一文字も残っていないので気に
しても仕方ない話ですが。
さて、この翻訳のソースですが。
http://www.ccel.org/ccel/schaff/anf07.xii.ii.html
Christian Classics Ethereal Library というサイトによる翻訳を主に使いました。
https://web.archive.org/web/20080615045105/http://web.ukonline.co.uk/ephrem/lit-james.htm
またこちらも参照しています。CCEL による翻訳で行き詰まった時は時にこちらの身も蓋もない翻訳が役に
立っています。
https://web.archive.org/web/20080513232141/http://web.ukonline.co.uk/ephrem/index02.htm
英国にあるコンスタンティノープル教会、つまりカルケドン系正教会の修道院によるサイトのようです。
ほとんど翻訳が終わってしまったあとに存在に気付いたのですが、
http://www.newadvent.org/fathers/0717.htm
こんなソースもあります。ただしこれは CCEL のそれと殆ど内容が一緒です。
http://www.orp.gr/?p=3787
ギリシャ語の.doc ファイルはここからダウンロードしています。ただしこのギリシャ語も原型とは程遠い、
現在使われている(つまり後世に色々と書き足されている)儀式の次第のようです。
http://britishorthodox.org/miscellaneous/an-introduction-to-the-liturgy-of-saint-james/
この聖体礼儀そのものに関してはこんな文章も。
7 http://www.finedictionary.com/litany.html より。
8 ただしこの儀式では「主に懇願しよう」とか「主に乞い願おう」とかが先に唱えられ、それから祈りが
始まっています。
9 逆に言えば、パンとワインをイエス=キリストの肉と血とする祈りはユダヤ人キリスト教徒の祈りには
含まれていないという事でもあります。
2
神を指す Thou およびその変化系は全て「汝」で。
イエス・キリストを指す大文字の He およびその変化系は全て「彼」。
Divine は「神の」で、spirit は「霊」で訳しました。
ちなみに「聖体礼儀」ではなく「神の儀式」としたのは、「聖体礼儀」が誤訳だからです。
単語や節回しは日本人の多くが慣れているであろうカトリックやプロテスタントによる翻訳を多分に参考に
しましたが、時々日本正教会風の言い回しが出てきたりもします。
あ、それと。
これを翻訳している私は非信徒で、かつ洗礼を受けるつもりは全くない人間です。
教会の都合を無視する事には全くためらいはないので、その辺は悪しからず。
主の兄弟ヤコブによる神の儀式主の兄弟ヤコブによる神の儀式
司祭
おお主なる我らの神よ、多くの罪に汚れた私を拒み給うな。ご覧あれ、私が僭越にも汝の神にして天上なる
この神秘に来たるは、私がこの目で汝の善良を拝み、この声で汝を、罪人なる私を憐れむ神よと称える為。
天に逆らい汝の御前で罪を犯した私は、汝、神の霊なる食卓、汝の独り子にして我らの主イエス・キリスト、
罪人であり全身を汚した私の為に犠牲となり神秘なる啓示を成し給うた方がおられる処には相応しくない者。
故に私は汝に懇願と感謝を奉り、慰め主である汝の霊を私に遣わし、私をこの儀式に相応しき者として強め
給わん事を願う。そして私を罪に定め給わず、汝によって人々にもたらされた御言葉10
を広めるに相応しい
者と成し給え。我らが主イエス・キリスト、汝によって祝福され、汝の全く聖なる、善き、力をもたらす、
汝と全く同一である11
霊と共にある方よ、今もいつも永遠に、アーメン。
祭壇前の祈り
父と子と聖霊に栄光あれ、三にして一の神性の光、三位一体12
において単一の存在となり分かたれる事なく
分かれる方よ。大地はその支配を、海はその力を、全ての存在するもしくは存在するであろう被造物はその
偉大さを称えており、その栄光が天国を宣言する神の全能、その一つが三位一体。全ての栄光、崇敬、力、
偉大、壮麗が今もいつも永遠にあなたのものであらん事を。
10 英文では the word。ヨハネ福音書から使われるキリスト=「御言葉」という意味か、それともここでは
「福音」か…と思っていたらギリシャ語にはこの単語に相当する箇所がありませんでした。以後英語の
the word と word は「御言葉」と「言葉」で使い分けています。
11 (原文注)「全く同一であり」は後世の(ただし正当な)付加。
12 「三位一体」という言葉を初めて使ったのは二世紀のテルトゥリアヌスなので、これもおそらく原型に
存在しないと私は判断しています。「三位一体」はここで二回ともう三箇所の五回しか使われておらず、
しかもその内二箇所は後世の挿入、残りもその疑惑が強いです。
3
冒頭における香料への祈り13
主なるイエス・キリスト、おお神の言葉14
、何者にも強制される事なく罪なき御身を十字に架け父なる神に
捧げ給うた方、結び付けられた二つの性質、預言者の唇に触れてその舌を動かし、またその罪を除いたよう
に、罪人たる我らに触れて一切の汚れを清め、汝に喜びの捧げ物を奉る為の聖なる祭壇に立たせ給う主よ。
汝の無益な下僕である我々からこの甘美なる匂いの香りを受取り給え。そして我らの肉体と魂に巣食う悪魔
の臭いを芳しい香りに変え、汝の全く聖き聖霊の力によって我々を清め給え。汝ただ一人が聖なるによりて、
聖化し、信者への聖餐となり給う方によりて。栄光が汝に、汝の永遠の父と、汝の全く聖きと、善きにして
力をもたらす霊と共に、今もいつも永遠にあらんことを。アーメン。
導入の祈り
おお慈悲深き永遠の王、世界の造り主よ、汝のキリストを仲立ちとして汝へと向かう教会を迎え入れ給え。
全ての意義を満たし、全てを完全へと導き、我々を汝の聖化の恵みに値する存在まで引き上げ、汝の聖なる
教会に集わせ給う主よ、それは汝が汝の独り子の尊き血によってもたらし給うたもの。我らの主にして救い
主イエス・キリスト、汝によって祝福され賛美された方よ、汝の全く聖きと、善きにして命をもたらす聖霊
と共に、今もいつも永遠にあらんことを。アーメン。
輔祭
再び主に祈りましょう。
司祭による、集会の導入における香料への祈り
おお神よ、アベルの贈物、ノアとアブラハムの犠牲、アロンとザカリヤの香物を受け取り給うた方よ、罪人
たる我等の手からも甘美な匂いを放つこの香を受け取り、我らの罪と汝の全ての民の許しと成し給え。汝の
御業が祝福され、光栄が汝のものとなり、父なる汝が汝の独り子と、汝の全く聖きと、善きにして命をもた
らす霊と共に、今もいつも永遠にあらんことを。アーメン。
輔祭
司祭様、祝福を発して下さい15
。
司祭が祈る
我らの主にして神なるイエス・キリスト、並外れた善良と愛によって自らの意志で十字に架けられ、槍と釘
に貫かれる事を拒み給わざる方、我々にも永遠に残る終わりのない記憶をもたらす、あの神秘にして苦痛に
満ちた奉仕を成し遂げ給う方よ。神であるキリストにおける司祭を祝福し、我々の始まり16
を祝福し給え。
13 (原文注)これらの(つまり、以後繰り返される。このカッコ内は私の注)香料に関する文言及び祈り
も後世の付加。
14 英文で word かつギリシャ語も Λόγος του Θεού とあるので「言葉」と訳しました。文脈上は完全に
「御言葉」ですが。…ただ、この箇所そのものが後世の付加らしいです。
15 (原文注)この「司祭様」が「主」になっているテキストもあります。
16 英語では entrance とあります。恐らくこの儀式の始まりを指す単語です。
4
言葉にならない慈愛17
によってこの我らの礼拝の奉献を十分に完全なるものに成し給わん事を。今もいつも
永遠に。アーメン。
輔祭に合わせて答唱
主は我らを祝福し、我らをセラフィムのように神への贈物を成すに相応しいものにして下さる。故に歌おう、
大いに歌おう、聖なる賛美歌トリサギオンを。溢れんばかりに満ち満ちておびただしい程に完全なその神聖
さを以て、今もいつも。
それから輔祭が先頭で歌う
神の独り子、神の言葉18
、不滅なる方。我らを救う為に甘んじて神の母19
たる乙女マリアより受肉した方は、
全きの人間となり苦しめられなさった。おお我らの神キリスト、その死によって死を踏み破りし、三位一体
の一つにして父と聖霊とともに賛美される方よ、我らを守り給え。
司祭が祭壇の門における祈りを告げる
全能の神、栄光の偉大なる主よ、独り子にして我らが主、神であり救い主であるイエス・キリストが人々と
交わった僅かな間に我らに至聖所への門を賜りし方よ、汝の聖なる祭壇を前に恐れ震える我々は、汝の善良
を懇願して祈願する。我らに力を、おお神よ、汝の善き恵みを与え給え、我らの魂、体、霊を清めん事を、
我らの思いを敬虔に導かん事を。我々が純粋な良心を以て汝に贈物、捧げ物、我らの逸脱を許す為の果実を
捧げられるように。そして汝が永遠に祝福し給うその独り子の恵みと慈悲と親愛とによって、汝の民の全て
に平安をもたらさん事を。アーメン。
祭壇に近づいた後、司祭が告げる
皆に平安を。
会衆
貴方の霊にも。
司祭
主は我ら全てを祝福し、神の純粋なる神秘への始まりと祝いにふさわしく神化し給う。彼の恵みと親愛に
よって、祝福された善く正しき魂に安息のあらん事を。今もいつも永遠に、アーメン。
17 英語では compassion。思いやりと訳した方がいいかもしれません。
18 英語では word で the が付いていないので、文脈上は「御言葉」に見えるのですが「言葉」としました。
ただこの箇所もヤコブの時点で存在していなかった「神の母」や「三位一体」が入っているので後世の、
例えばキュリロスの手によるものかも…?
19 (原文注)この神の母(Θεοτόκος)はカルケドン公会議(451)以降に書き足されたものです。
  (私注)ちなみに「神の母」という単語はこの儀式を作った人物と目されるエルサレムの聖キュリロス
(313 頃-386)の著作でも使われています。
5
それから輔祭が共同祈願20
を告げる
平和の内に神に祈願しよう。
天からの平和、神による人への愛、我々の魂への救いを神に祈願しよう。
全世界の平和を、全ての神の聖なる教会の結束を神に祈願しよう。
罪の許しを、逸脱21
への寛恕を、あらゆる苦痛、憤怒、危険、苦難、我らの敵による反攻22
からの解放を神
に祈願しよう。
それから聖歌隊がトリサギオン23
を歌う
聖なる神、聖なる力強き、聖なる不滅なる方よ、我らを憐れみ給え。
それから司祭が祈り、身を屈める
おお慈愛に満ち慈悲深い、辛抱強き、実に丁重にして真実なる神よ、汝の整った住処から我らをご覧になり、
汝の請願者である我らの声を聞き、悪魔と人によるあらゆる誘惑から我らを守り給え。我らへの助けを躊躇
せず、我らの力では耐えられない折檻をお控え給え。我らには乗り越えられない苛みであっても、汝は踏み
越えん、主よ我らに敵対するもの全てから我らを守り給え。我らを守り給え、おお神よ、世の困難から汝の
善良を以て。汝の祭壇にふさわしき純粋な良心へと近づけるように。汝が罪として定め給わず、祝福されし
賛美歌トリサギオンが汝に届くように。天上の力を以てこの儀式を執り行い、汝神への湧き出す喜びを以て、
我らが永遠の生命にふさわしい者として数えられるように。
(司祭)朗々と
何故なら汝は聖なり、主我らが神よ。汝がおわし安らい給う聖なる処へ、我らは汝に喜びと賛美歌トリサギ
オンを届ける。父と子と聖霊よ、今もいつも永遠に。
会衆
アーメン。
司祭
皆に平安を。
会衆
貴方の霊にも。
20 英語では bidding prayer。聖公会の用語で、Prayers of the Faithful、カトリックの共同祈願の別名です。
21 英語だと transgressions 、ギリシャ語だと πλημμελημάτων 。
22 英語だと uprising 、ギリシャ語だと επαναστάσεως 。多分に神への反攻、という意味がある筈。
23 日本正教会では「聖三祝文」と訳されているのですが、あちらは「聖なる神、聖なる勇毅(ゆうき)、
聖なる常生(じょうせい)の者や、我等を憐れめよ」と、mighty(英) σχυρόςἰ (希)に「勇ましい」
という不要な意味を付けているのでここでは「トリサギオン」とします。なお英国正教会によるとこの
トリサギオンは原型そのものではないとも。
6
聖歌隊
アレルヤ。
それから旧約聖書における聖なる予言と預言者の記述が読まれ、神の子の受肉、彼の受難と死からの復活、
天への御昇り、栄光に包まれての二度目の来臨が表明される。これらの朗読は日々聖なる神の儀式において
行われていた。
朗読と教えの後、輔祭が唱える
皆で唱えよう、主よ、慈悲深き方よ。
全能の主、我らの父祖の神。
我らは汝が我らの声を聞き給わん事を祈願します。
天上からの平和と我らが魂の救いの為に。
主に祈願しよう。
全世界の平和の為に、神の聖なる教会全ての結合の為に。
主に祈願しよう。
キリストを愛する全ての人の救いと助けの為に。
我らは汝が我らの声を聞き給わん事を祈願します。
あらゆる苦痛、憤怒、危険、苦難、捕囚、悲痛な死、我々の内にある悪からの救いの為に。
我らは汝が我らの声を聞き給わん事を祈願します。
ここにいる人々は、汝の豊かで豊富な慈悲を待ち望む。
我らは汝に祈願する、慈悲深く丁重なる方よ。
汝の人々を救い給え、おお主よ、汝を継承する者全てに祝福を給わん。
慈悲と慈愛を以て汝の世界に留まり給え。
尊く力をもたらす十字架の力によってキリスト者のホルンを高く響かせよ。
我らは汝に祈願する、最も慈悲深き主、汝への我らの祈りを聞き届け、我らに慈悲をもたらす方よ。
会衆が三唱
主よ、我らを憐れみ給え。
輔祭
我らが罪の許し、我らが逸脱の寛恕、あらゆる苦痛、憤怒、危険、苦難からの救いの為に、主に祈願しよう。
全てを以て主に乞い願おう、完全で、聖に、平和に、罪なく一日を過ぎ越せるように。
主に乞い願おう、平和の伝え主、信仰の導き手、我らの魂と体の守護者に。
主に乞い願おう、我らの罪と逸脱を許し寛恕する方に。
主に乞い願おう、我らの魂と世界の平和に善く適切なる物の持ち主に。
主に乞い願おう、我らの残りの人生を平和と健やかさの内に送らせて下さるであろう物に。
乞い願おう、我らの人生の終わりにキリスト者であるように、痛みも恥も無く、恐ろしく悍ましいキリスト
の座の前で良き弁明が出来るように。
7
司祭
福音にして光、救い主にして我らの魂と肉体の守り手である汝、神、及び汝の独り子、汝の全く聖なる霊の
為に、今もいつも。
会衆
アーメン24
。
司祭
神は、我らに汝の神なる救いの予言を教え給うた方は、我らの魂が罪人である事を語る前に理解させる光。
それ故に我らは実直な信仰、潔白な生活、純粋な会話を求めようとしながら、魂に由来する物が聞こえない
のみならず、善行を成す事もかなわなくなった。
(司祭)朗々と
我らが主イエス・キリスト、汝によって祝福されし、汝の全く聖なる、善き、力をもたらす聖霊と共にある
方において、今もいつも、永遠に。
会衆
アーメン。
司祭
皆に平安を。
会衆
貴方の霊にも。
輔祭
あなたの身を主に屈めましょう。
会衆
主、汝に。
司祭が祈り、述べる
おお主なる、生命をもたらし、善き物を与え、永遠の生命への祝福されし希望を人類に与え給う、我らが主
イエス・キリストよ。我らを神聖さに値する者、未来の至福を楽しむ為の汝の神なる儀式にとって完全なる
者に数え給え。
(司祭)朗々と
故に、いつも汝の力で守り給え、真実の光へ導き給え。今もいつも、我らが父、子、聖霊である汝に感謝と
24 (原文注)司祭「全く聖なる正しきを以て祈念する。我らの全く聖なる、純粋にして最も壮麗なる女性、
神の母にして永遠の乙女マリアに、我々を捧げよう。またその一方で我らの命全てを我らの神キリスト
に捧げよう」会衆「主、汝に」…という後世の付加がこの後に続きます。
8
喜びを伝えられるように。
会衆
アーメン。
輔祭
洗礼志願者25
、洗礼を受けていない者、我々とともに祈りの場に参加できない者はご退去を。
(その後)扉を閉め、皆で立ち、主への祈りを続けましょう。
以後、信者のみによる儀式に移行――
司祭が香料の祈りを告げる
主なる全能、栄光の王、一切万物が創造される前にそれらの全てを知り給いし方よ、この聖なる時間に汝を
呼び求める我らに汝自らを明かし給え。また我らを我らの逸脱による恥から救い給え。我らの意識と思いを
不順な欲望、この世の偽り、悪魔のあらゆる権勢から清め給え。罪人である我らの手から香料を受取り給え、
かつてアベル、ノア、アーロン、サムエル及び汝の全ての聖人から捧げ物を受け取ったように。我らをあり
とあらゆる悪魔から守り給え、我らを常に父、その独り子、汝の全く聖なる霊である、汝への喜び、崇拝、
賛美に留め給え、今もいつも永遠に。
聖歌隊の長がケルビムの賛美歌を歌う
全ての滅ぶべき肉体よ、静まれ、恐れ震えて立て、地上それ自体においては何もない事を瞑想せよ――
王の王、主の主として、我らの神キリストは犠牲となり、信仰の糧として与えられる為に来たれり。天使の
群れが全ての力と支配と共に彼の前に集う、数多の目を持つケルビム、六枚の羽根を背負い自らの顔を覆う
セラフィムが叫ぶように賛美歌を唱える、アレルヤ、アレルヤ、アレルヤ。
司祭が聖なる贈物26
を手に、祈る――
おお神よ、我らの神、天のパンを下さった方。この食物は世界の全て、我らが主イエス・キリスト、救い主、
贖い主、恩恵を施す方、我らを祝福し聖化し給う方。汝自らによりてこの贈物を祝福し、汝の天上における
祭壇へと寛大によって受取り給え。
汝の善良と愛によって、贈物をした者達を、またその贈物において念じられた者達を記憶し給え。我らを汝、
神の神秘なる儀式において罪に定める事なきよう保ち給え。神聖にして賛美されしは汝の全き栄光に満ちた
偉大なその名、父、子、聖霊は今もいつも永遠に。
25 日本正教会では「啓蒙者」と訳されています。しかしあっちは啓蒙される者と啓蒙する者をどっちも
「啓蒙者」と読んだりしているのでここでは「洗礼志願者」としました。
26 「聖なる」とは言っているが、まだこの時点で捧げ物であるパンとワインは聖別されていない、これは
非常に象徴的で、つまり聖別される前のパンとワインそのものが栄光あるキリストの代替になるという
無知に基づく迷信が存在していたのだ…と、原文の脚注にあります。
9
司祭
皆に平安を。
輔祭
司祭様、祝福を発して下さい。
司祭
神の祝福あれ、聖にして純粋なる神秘の現れにおいて我々を祝福し聖化し給い、聖にして正しき天から祝福
された魂に安息をもたらし給う方よ、今もいつも、全く永遠に。
輔祭
叡智に目を向けましょう。
司祭が始める
私は一なる神、父なる全能、天と地の造り主を、また一つの主であるイエス・キリスト、神の子を信じる。
信条への安息において。
それから祈り、首を屈める
神にして全ての主、価値なき我々をこの時間に相応しいものとし、人類を愛し給う方。あらゆる偽りと偽善
から清められる事で、我らは平和と愛の繋がりにおいて互いに結びつく。証となる聖化をもたらし給う汝の
聖なる知識、汝の独り子、我らが主にして救い主イエス・キリスト、汝によって祝福され給いて、汝の全く
聖なる、善き、力をもたらす霊とともにある方よ、今もいつも永遠に、アーメン。
輔祭
背を正して立ち、うやうやしく立ち、神への畏れを以て立ち、良心への呵責を心に持ちましょう。平和と共
に神に祈りましょう。
司祭
神の平和、慈悲、愛、慈愛、親愛において、汝、汝の独り子、及び汝の全く聖なる霊よ、今もいつも。
会衆
アーメン。
司祭
皆に平安を。
会衆
貴方の霊にも。
輔祭
聖なる接吻を以て互いに挨拶を交わしましょう。我らの頭を主に屈めましょう。
10
司祭が身を屈め、この祈りを告げる――
唯一の主にして慈悲深き神よ、汝の聖なる祭壇に頭を垂れ、汝からもたらされる魂の贈物を探し求める者に、
汝の善き恵みを下し給え。我ら全てを我らから引き離せぬ霊の祝福で満たし給え。汝、天上に住む方、地上
の取るに足らぬ物を見届けてくれる方よ。
(司祭)朗々と
賞賛と崇拝にふさわしく、最も壮麗なるは汝の全く聖なる御名、父と子と聖霊が、今もいつも、全く永遠に。
輔祭
司祭様、祝福を発して下さい。
司祭
主よ我らに、また我ら全てと共にいる司祭27
に恵みと親愛によって祝福し給え。
繰り返し
主よ我らを祝福し給え、我らを彼の祭壇に相応しいものになし給え。いつでも、今もいつも永遠に。
繰り返し
神によって祝福され、彼の純粋に神秘なる儀式に集う我ら全てを祝福し聖化する方よ、今もいつも永遠に。
輔祭が普遍への28
連祷を始める
平和の内に主に祈りましょう。
会衆
主よ、憐れみ給え。
輔祭
我らを守り給え、我らへの慈悲を以て。我らを憐れみ保ち給え、おお神よ、汝の恵みを以て。
天からの平和、神の親愛、我らの魂の救いの為に――
神に乞い願おう。
全世界の平和を、神の聖なるすべての教会の結合の為に。
神に乞い願おう。
果実をもたらす者、神の聖なる教会において立派な働きをする者の為に。貧者、寡婦、孤児、異邦人、愛を
求める人を忘れぬ者の為に。我らの祈りにおいて言及される事を望む者の為に。
神に乞い願おう。
27 英文では minister、ギリシャ語が分からず。「司教」かとも思ったのですが、後の箇所では明白に執行
する者という文脈で使われているのでそれに倣いました。
28 英文では universal ですがギリシャ語は ΚΑΘΟΛΙΚΗ なので、カトリックという言葉の原義である普遍と
訳してみました。
11
老いて弱った者の為に。病と苦しみの内にある者の為に。不浄な霊に苦しめられ、神の速やかなる癒やしと
その救いを必要とする者の為に。
神に乞い願おう。
純潔のまま生きている者、独身者、規律の内に在る者、聖なる結婚をした者の為に。また教父、及び地上に
おける山、洞穴、洞窟で苦行にある同胞達の為に29
。
神に乞い願おう。
船上の、旅をしている、異邦人の中にあるキリスト者の為に。また捕縛、亡命、監禁、辛い隷従を強いられ
ている同胞達が平和に戻れるように。
神に乞い願おう。
罪の許し、逸脱への寛恕、あらゆる苦痛、憤怒、危険、苦難、我らの敵による反攻からの助けを。
神に乞い願おう。
順調な気候、平和の雨、恵み深き雫、豊かな収穫、善き季節の順当な区切りを。御恵みの冠30
を。
神に乞い願おう。
我らの教父と同胞達が示すものを、また彼らがその聖なる時において我々のために祈る事を、いかなる季節
においても、彼らの熱心さ、働き、真面目さを願おう。
神に乞い願おう。
苦難と苦痛の中にあり、神の慈悲と助けを必要としているあらゆるキリスト者の魂の為に。過ちからの帰還、
病からの健康、捕縛からの解放、既に眠った教父や同胞達の安息の為に。
神に乞い願おう。
神の御前にいる我々の祈りが耳に届き受け入れられるように、彼の豊かな慈悲と慈愛が下されるように。
神に乞い願おう。
その捧げ物が、尊く、天上の、言葉にならない、純粋で、栄光に満ちた、想像を絶する、空恐ろしい、神の
贈物が、その場に立ちそれらを捧げた司祭のあがないになるように。
主である神に懇願して捧げよう。
会衆
おお主よ、憐れみ給え。
(三度)それから司祭は贈物の前で三度十字を切り、立ち上がり、一人で話し出す――
いと高き処におられる神に栄光あれ、大地に平和あれ、人々の間に善意あれ。
(三度)
主よ、汝は我が唇を開き、我が口にゆるりと汝を賛美させる。
(三度)
私の口を汝への賛美で満たさせ給え、おお主よ、汝の栄光、汝の光栄をいつの日にも伝えられるように。
(三度)
29 (原文注)ニケア公会議以前にも苦行派が存在したのでは、とあります。
30 「御恵みの冠」は詩篇 65:11 より。
12
父にアーメン。子にアーメン。聖霊にアーメン。今もいつも、全く永遠に。アーメン。
こちらとあちらに身を屈め、述べる――
我と共にある神を崇める。そして共に彼の名を讃えよう。
会衆が応え、身を屈める
汝によって聖霊が来たる。その最上の力は汝をも覆うだろう
それから司祭の長口上31
に入る
おお王たる主よ、慈愛と慈悲を以て我らの間に留まり、自由を以て我々に与え給いし方。汝の卑しく、罪に
満ちた取るに足らない下僕が、不遜にも汝の聖なる祭壇に立ち、我らの罪と人々の過ちの為に慄きつつ血を
抜いた32
この犠牲を汝に奉る。汝の無価値なる下僕を見下ろし給え、そして汝の慈愛を示す為に、私の逸脱
を拭い去り給え。私の唇と心を肉体と魂の汚れから清め、恥ずべき愚かな考えを私から取り除き、そして汝
の全く聖なる霊の力によって私をこの儀式に相応しきものと成し給え。汝の善良による寛大を以て私を受け
入れ、汝の祭壇に引き入れ給え。
その喜びを以て、おお主よ、我らの手より差し出される贈物を相応しきものとする為に、私の弱さへと寄り
添い給え。私を汝の臨在より見捨てず、無価値なる私を拒まず、汝の偉大なる慈悲によって私を憐れみ給え。
汝の数多き慈悲によって私の逸脱を見過ごし給え。汝の栄光の前に来たる私を罪に定めず、汝の独り子及び
汝の全く聖なる霊の煌めきによる守護に相応しい存在に数え給え。私を罪の奴隷として見捨てず、汝の下僕
として汝の御前に恵みと慈悲と罪の許しを見出させ給え、今この世界において、また来るべき世界において。
私は汝に祈願する、王たる全能、力強き主よ、私の祈りを聞き入れ給え。一切万物の間に働きかける汝を、
我らの全てが万物に汝から来たる助けと支援を探し求める。汝の独り子、善きにして力をもたらし全く同一
なる霊を、今もいつも。
おお神よ、汝の独り子を世界に送り汝の偉大にして語りがたき愛を示し給うは、彼が迷える羊を呼び戻し、
我らを罪人として拒まず、この慄きつつ血を抜いた犠牲を汝の物として手に入れ給うが為。我らが我ら自身
の公正さではなく、汝の善き慈悲を信頼するは、汝が我らの民族33
を狩り集める存在である故。
我らは汝の善良に乞い願い祈願する、我らによって執行されるこの救済の神秘において汝の民を罪に定めず、
罪の許し、肉体と魂の再生、汝の大いなる充足とならん事を。神と父、汝の慈悲と愛の内にあり汝によって
祝福され給いし汝の独り子と、汝の全く聖なる善きにして力をもたらす霊と共に、今もいつも永遠に。
おお主なる神、我々を創り上げ、命をもたらし、救いの道を示し、天上における神秘の啓示をもたらし、汝
の全く聖なる霊によりてこの司祭を任命し給う方よ。許し給え、おお王よ、我らが汝の新約の下僕となり、
31 英語で great length とあります。
32 英語で bloodless。「血の気がない」という意味ですが、どうやらこの犠牲を文字通りに神に捧げている
ようなので「血を抜いた」と訳しました。レビ記に従えば血は祭壇の周囲に撒いて神には捧げませんし、
使徒言行録によればエルサレム会議でも血は避けるべきと決定されています。
33 英語で race、ギリシャ語でも γένος なので「民族」と訳しました。この「民族」は後でもう一回使われ
ています。
13
汝の純粋なる神秘の司祭となる事を。汝の聖なる祭壇に引き寄せられるかのように我らを受け入れ給え。汝
の慈悲による許しによって我らを、我ら及び人々の逸脱をあがなう為の贈物と犠牲を捧げるに相応しき者と
なし給え。我らにお許しを、おお主よ、全くの畏れと純粋な良心を以て汝に霊に満ち血を抜いたこの犠牲を
贈る事を。そしてその贈物を天上にある汝の聖にして霊に満ちた祭壇へと、甘美で霊に満ちたる匂いの香と
して寛大に受け取り、その応えとして汝の全く聖なる霊の恵みを我らに下し給え。
そして、おお神よ、我らをご覧じよ、我らの理にかなった儀式を見つめ、受け入れ給え。汝がアベルの贈物、
ノアによる犠牲、モーセとアロンらの聖職、サムエルによる平和の願い、ダビデの後悔、ザカリヤの香料を
受け入れ給うたように。汝の使徒らの手による真正な儀式を受け入れ給うたように。汝の善良によりて罪人
である我らの手によるこれらの贈物も受け入れ給え。我らによる奉献を相応しきものに、聖霊によって清め
られたものにし、我らの逸脱と人々の過ちのあがない、また既に眠りし魂の安息となるものとして認め給え。
また卑しく、罪に満ち、無価値なる我々を、無垢に汝の聖なる祭壇に仕える者として数え、信仰に満ちた知
の給仕としての報いを受け取らせ、汝の正しく善き報いが下される恐るべき日に恵みと慈悲を見出させ給え。
覆いへの祈り
我らは汝に感謝します、おお主にして神、不遜なる我らを汝の聖所の入り口に至らせ、汝のキリストの肉を
隠す覆いによって我らを新しい生命の道に新生させ給う方よ。故に我らは、汝が栄光の聖櫃がある処に入り、
覆いの内に入って、諸聖の中の聖を見つめ、汝の善良の前に自らを放棄するに相応しい存在に数えられた。
主よ、我らに慈悲を下さる方。我らは汝の聖なる祭壇の前に立ち、強く畏れ震えながら、我らの罪と人々の
過ちをあがなう慄きつつ血を抜いた犠牲を奉る。もたらし給え、おお主よ、汝の善き恵み、我らの魂、肉体、
霊の浄化、思いの浄化を。我らが純粋な良心を以て汝に喜びの犠牲、和解の贈物を奉れるように。
(司祭)朗々と
汝によって祝福されし汝の独り子の慈悲と親愛によりて、汝の全く聖なる、善き、力をもたらす霊と共に、
今もいつも。
会衆
アーメン。
司祭
皆に平安を。
輔祭
背を正して立ち、神を畏れて立ちましょう、悔恨を以て。神に平和を届けるために、聖なる交わりの儀式に
意識を向けましょう。
会衆
平和の捧げ物、喜びの犠牲。
14
司祭(この時奉納されたパンとワインから覆いは取り除かれている)
この聖化された儀式の象徴を隠していた覆いは取り除かれ、汝はそれを明らかにした。我らの知性の視野は
絶対的な光で満たされ、肉体と魂のあらゆる汚れによる貧しさは拭い去られ、この震え恐れながら近づくに
値する者となった。汝が全く慈悲に満ちた寛大な神であり給う故に、我らは喜びと感謝を天上の汝に届ける、
父、子、聖霊である汝に、今もいつも永遠に。
領聖の祝文
それから司祭が朗々と――
父である主の愛、子である主の恵み、聖霊による分かち合いと贈物は、我ら全てと共に。
会衆
そして汝の霊に。
司祭
我らの精神と心を天に向けましょう。
会衆
それは正しく妥当なる。
それから司祭が祈る
実にそれは正しく妥当に、相応しきものとなる。汝を賛美し、汝を歌い、汝を崇め、汝を崇拝し、汝の栄光
を讃え、汝に感謝を捧げる為の。見えると見えざるありとあらゆる創造物の創り手、永遠に善くある宝物、
命と不死の泉、神にして全ての主なる方に。
天の天にありすべてを司る方に賛美を。太陽、月、星星の歌声を。地と海とそこにある全てを。エルサレム、
天上の集いであり、天に記されし始まりの教会を。正しき人と預言者達の霊を。殉教者と使徒の魂を。天使、
大天使、座天使、主天使、権天使、力天使、恐るべき能天使、数多の目を持つ智天使、六枚の羽根を背負い
二枚の羽根で顔を、別の二枚の羽根で足を、更なる二枚の羽根で飛翔する熾天使、互いを休む事なき唇で、
絶え間なく叫ぶように賛美する者達を。
(司祭)朗々と
朗々たる声で壮麗なる汝の栄光を称える賛美歌を歌わん、叫ぶような声で、讃え、吠え、そして述べん――
会衆
聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、おお万軍の主、天地は汝の栄光に満ちる。いと高き所にホザンナ、
祝福された彼は主の名によって来たる、いと高き所にホザンナ。
司祭が贈物の前で十字を切り、告げる――
聖なるは汝、永遠なる王、あらゆる神聖の主にしてこれを与え給う方。また聖なるは汝の独り子、我らが主
15
イエス・キリスト、汝によって万物を創り給う方。また聖なるは汝の聖霊、万物を、汝の深淵なるものをも
見通し給う方、おお神よ。聖なるは汝、全能なる、全く力強き、善き、恐るべき、慈悲に満ち給いし、汝の
被造物に誰よりも慈愛をもたらし給う方。土から自らの像と肖34
として人を作り給う方。其に楽園の喜びを
与え給う方。其が掟に背き去った後、其を無視せず見捨てなかった方、おお善き方、しかして其を慈悲深き
父として罰し、律法によって其を呼び、預言者達によって其35
を導き給う方。その後汝の独り子、我らが主
イエス・キリストを世界に送り給いし方、彼の来たるによりて彼は汝の像を新しく復元し給う。
天から降り、聖霊及び乙女にして神の母36
マリアによって肉体となり、僅かな間に人々の間にあり、我らの
民族37
を救う為の統治を成し遂げた方。十字架において自らの意志によって生命をもたらす死を耐え忍び、
罪なき彼が我々の為に罪人となり給いしは、彼が裏切られた、否、世界の生命と救いの為に彼が自らを委ね
給うたあの夜に於いてである。
それから司祭がパンを持ち、告げる――
彼の聖にして純粋なる罪なき不滅の手からパンを受け取れ。天に目を向け、彼の神にして父である汝にそれ
を示さん。彼は感謝と崇敬を受け、裂かれ、それは我らに与えられた。彼の弟子と使徒が言うは――
輔祭が述べる38
これは罪の許しと終わりなき生命の為。
会衆
アーメン。
それから司祭が杯を持ち、告げる――
このように、晩餐の後、彼は杯を手に取りワインと水を混ぜ合わせ給う。天に目を向け、彼の神にして父で
ある汝の前にあれ。彼は感謝と崇敬を受け、杯を祝福し、これを聖霊で満たし、我らに与え給う。彼の弟子
は告げる、そなた達よ、皆でこれを飲め、これはあなたと多くの者の為に流された新訳の血、罪の許しの為
に分け与えられたもの。
会衆
アーメン。
34 image and likeness、ギリシャ語では ε κώνἰ と μοίωσιςὁ 。一般的には「似姿」という訳語で知られて
いますが、ここでは日本正教会に倣って「像と肖」と訳しました。というのも直後に「像」のみが復元
されたという記述があり、「似姿」で二つまとめてしまうと宜しくないのです。
35 英語では he ですし彼と訳するべきなのですが、ここではイエス・キリストを示す大文字の He を「彼」
と訳しているのでこんな漢字を使う事になりました。ここでの其はアダムの事です。
36 (原文注)この記述はニケア公会議以降のもの。
37 これが二回目の「民族」です。
38 原文注によると、ここは司祭がそのまま続ける所であるにも関わらず、輔祭が突然乱入しているとの事。
言われてみれば。ワインに関しては司祭が通してやってますし。
16
司祭
これは私に思い起こさせる。そなたがこのパンを食べ、杯を飲む度に、そなたは主の死を思い、彼の復活を
告白する、彼が来られるまで。
輔祭
我らは信じ、告白する、
会衆
我らは汝の死を思い、おお主よ、汝の復活を告白する。
司祭(奉納する)
故に記憶する、命をもたらす彼の苦難を、救いの為に彼が架かり給いし十字架を、彼の死と埋葬を。そして
彼は三日目に死から復活し、天に昇り、我らの神にして父である汝の右手に座し給う。そして栄光に満ちた
恐るべき彼の二度目の降臨において、彼は栄光と共に来たりて生と死を審判し、彼の働きを以て万人に宣告
し給う。たとえ我らが罪人であろうと、汝に、おお主よ、慄きつつ血を抜いた犠牲を捧げ、汝が我らを罪を
犯した者と見做さず、我らの内にある悪に報いを下し給わぬ事を祈る。
しかし汝は、汝の慈悲と語りがたき親愛によりて、汝の懇願者である我らの罪状を見過ごし、消し去り給う。
汝は我らに汝が整えたる(その目は見ず、耳は聞かず、我らの心に立ち入らない39
)天上の永遠なる贈物を
与え給う、おお神よ、汝を愛する者達の為に。そして、おお愛する主よ、人々を私によって、また私の罪に
よって拒み給う事なかれ。
それから司祭が三度述べる――
汝を乞い願う汝の民と教会の為に。
会衆
我らを憐れみ給え、おお主なる我らの神、全能の父よ。
司祭が再び述べる(嘆願する)
我らを憐れみ給え、おお全能の神。
我らを憐れみ給え、おお我らの救い主たる神。
我らを憐れみ給え、おお神よ、汝の偉大なる慈悲によりて。我らと我らの捧げし贈物に、汝の全く聖なる霊
を賜わん事を。
それから首を屈め、述べる――
王にして力をもたらす霊は、我らの神である父、及び汝と共に統治する汝の独り子と共に汝の王座に座り、
それらは本質を同じくして40
、共に永遠にあり給う。律法と預言者と新訳において語られたるは、我らが主
イエス・キリストがヨルダン川に浸かり、住み給う事。及び、ペンテコステの日に聖にして栄光あるシオン
39 (原文注)カッコ内はエディンバラ版による根拠薄弱な挿入。
40 (原文注)ニケア公会議以降の挿入、ただし適切な。
17
の屋上の間41
において炎のような舌が使徒達に降りたる事。この汝の全く聖なる霊は送られ給う、おお主よ、
我々の元に、また捧げられた聖なる贈物に。
司祭が背を伸ばし、朗々と述べる――
それは来たる、彼の聖にして善く栄光に満ちた現れによって。彼はこのパンを聖化し、汝キリストの聖なる
体と成す。
会衆
アーメン。
司祭
そしてこの杯を汝の尊き血と成す。
会衆
アーメン。
司祭、立ったまま
それらは食した者全ての罪の許し、終わりなき命、魂と体の聖化、善き業の果実の実り、汝の聖にして普遍
なる、汝が信仰の岩に建てた教会の確立となろう。地獄の門はそれを打ち破る事なく、あらゆる異端と醜聞、
悪を成す者から守られ、時が満ちるまで保たれる。
そして身を屈め、告げる――
我らはまたそれらを汝に贈る、おお主よ、汝のキリストが聖なる現れと汝の全く聖なる霊の訪れによって、
汝が賛美し給う祭壇へと。特に栄光に満ちたシオン、全ての教会の母42
、世界の隅々まで広がる汝の聖なる、
普遍なる使徒の教会は、今でさえ、おお主よ、汝の全く聖なる霊の豊かな贈物の上に建てられている。
また記憶し給え、おお主よ、そこにありし我らの聖なる教父と同胞を、全地にある司祭ら、汝の真なる神の
御言葉43
を正しく分け与える者らを。
また記憶し給え、おお主よ、全ての都市と国を、そこに住む真実の信仰を持つ者を、彼らに平和と安寧を。
記憶し給え、おお主よ、船上の、旅をしている、異邦人の中にあるキリスト者を。我らの教父と同胞、枷、
監禁、捕縛、亡命の中に、鉱山44
、拷問、辛い隷従の中にいる人々を。
記憶し給え、おお主よ、老いて弱った者、病と苦しみの内にある者を。不浄な霊に苦しめられる者に、汝の
41 英語では Upper room。手元の聖書に倣って「屋上の間」と訳しましたが「二階」と訳されたりもする
そうです。
42 (原文注)このエルサレムへの尊称は第 1 コンスタンティノポリス公会議によって認可。
43 ここの The word はギリシャ語でも τον λόγον とあり、「御言葉」=キリスト…と言いたいのですが、
文脈上は福音とも取れるので何とも。なお英語とギリシャ語の双方で「御言葉」を確認できたのはここ
だけです。
44 英語では mines。ギリシャ語も μέταλλο です。
18
速やかなる癒やしと、おお神よ、彼らの救いを。
記憶し給え、おお主よ、苦難と苦痛の中にあり、汝の慈悲と助けを必要としているあらゆるキリスト者の魂
を。おお神よ、過ちからの帰還を。
記憶し給え、おお主よ、我らの教父と同胞を、重き労苦を背負い、我らの司祭を務める者らを、汝の聖なる
名によるを以て。
記憶し給え、おお主よ、善きの全てを。全てに慈悲を、おお主よ、我ら全てと和解し給え。汝の民の多くに
平和を、醜聞から遠ざけ、戦に終わりをもたらし、異端の勃興を止め給え。汝の愛と平和を我らにもたらし
給え、おお主よにして我らの救い主、地の全ての終末における希望よ。
記憶し給え、おお主よ、順調な気候、平和の雨、恵み深き雫、豊かな収穫、御恵みの冠を、汝の善良を以て。
汝を待ち望む全ての目の為に、汝が然るべき時に彼らに食物を与え給え。汝はその手を広げて、喜びを以て
全ての生きる物を満たし給う。
記憶し給え、おお主よ、果実をもたらす者、神の聖なる教会において立派な働きをする者を。貧者、寡婦、
孤児、異邦人、愛を求める人を忘れぬ者を。我らの祈りにおいて言及される事を望む者を。
更に、主よ、この日汝の聖なる祭壇に捧げ物を奉る者らを喜びを以て記憶し給え。また各々がそれらの捧げ
物において心に留めた人々を、今この時に汝に向かい合う人々を。
記憶し給え、おお主よ、汝の数多の慈悲と慈愛を以て、汝の卑しく無益な下僕であるこの私をも。汝の祭壇
を囲む輔祭達を。寛大に彼らに罪なき命をもたらし、彼らの司祭を罪無きに保ち、彼らの為に善き位を手に
入れ給う事を。我らが慈悲と恵みを見いだせるように、世界の始まりから幾世代に渡り、汝をよく喜ばせた
あらゆる聖人において。遠き父祖、父祖、主教、預言者、使徒、殉教者、告白者、教師、聖人、及び全ての
正しき魂は汝キリストへの信仰によって完全となった。
栄えあれ、マリア、殊に好まれたる、主は貴女と共にある。貴女は女性の中で祝福され、貴女の子宮による
果実も祝福され給う、貴女が我らの魂の救世主を産み給うたが故に45
。
輔祭
我らを記憶し給え、おお主なる神。
司祭が屈み、述べる――
記憶し給え、おお主なる神よ、我らが記憶する者、記憶しない者、公正なるアベルから今日までの、真実の
信仰を持つ者の、その魂と全ての肉体を。かの地に住まう彼らに安息を与え給え、汝の王国に、楽園の喜び
に、アブラハム、イサク、ヤコブ、我らが聖なる教父の胸中にある者に。痛み、悲しみ、嘆きから解放され、
汝の顔の光が、永遠に彼らを照らす処にある者に46
。
我らキリスト者の生命の終わりを、相応しき、罪のない、平和の内にあるものと成し給え、おお主よ。我ら
を共に集わせ給え、おお主よ、汝が選びし者を汝の足元へと、汝が望む時に、汝が望むままに。恥と逸脱の
無き事を、汝の独り子、神にして主である救世主イエス・キリストにおいて。彼は大地にあったものの内、
唯一罪なきものであり給いし故に。
45 (原文注)このマリアに関する下りは改ざん。
46 (原文注)この祈りは原初の考えに完全に一致します。
19
輔祭
そして祈ろう――
全世界の平和と安定の為に、神の聖なる教会の為に、各自が贈物を捧げた者、その際に祈念した者の為に。
ここに立つ人々、そして全ての男、全ての女の為に。
会衆
そして全ての男、全ての女の為に。(アーメン)
司祭朗々と述べる
彼らと我ら両方の為に、汝が汝の善良と愛においてなし給わん。
会衆
許し、弱め、赦免し給え、おお主よ、我らの逸脱を。自らに依りて及び依らざる、知りながら及び知らざる
の故に、夜と昼に、思いと意図によるものを。汝の善良と愛において我らの逸脱全てを許し給え。
司祭
恵みと慈愛と愛をもたらすは汝の独り子、汝によって祝福され賛美され給いし方、汝の全く聖なる、善き、
力をもたらす霊と共にあり給う方による、今もいつも永遠に。
会衆
アーメン。
司祭
皆に平安を。
会衆
あなたの霊にも。
輔祭
再び、続けて、平和の内に主に祈ろう。
主である神がもたらし聖化し給うた贈物を、高貴にして、天の、語り難き、純粋なる、栄光に満ちた、恐る
べき、凄まじき、神のものの為に。
祈ろう。
我らの神である主が、聖にして天上にある彼の祭壇へと寛大にもそれらを受け取り給う事を。理性と魂は、
甘き魂の救い主の香りによって、神の恵みと全く聖なる霊の贈物を我らへの返答として見出すだろう。
祈ろう。
信仰の繋がりの為に、彼の全く聖にして崇敬される霊との交わりの為に祈ろう。
我ら自身とお互いを、我らの生命全てを委ねよう、我らの神キリストに。
20
会衆
アーメン。
司祭が祈る
神にして我らが父なる主、神であり救世主たるイエス・キリスト、栄光の主、祝福されし本質、惜しみない
善良、神にして全ての王、全てを永遠に祝福し、ケルビムに座り、セラフィムに賛美され、幾千年も前から
立ち、幾万年も前から天使と大天使を率い給いし方。汝は贈物、捧げ物、甘き霊の匂いである香として汝に
捧げられた果物を受け取り、これらを喜び、聖化し、完全とし給う。おお善き方、汝のキリストの恵みと、
汝の全く聖なる霊の現れによって。
(司祭)朗々と
我らを持ち主として数え給え、おお愛する主よ、大胆さの、純粋な心の故に罪に定まる事なき、悔恨の魂の、
聖化された唇の。敢えて名を呼ぶ為に、汝、聖なる神、天の父の。そして述べる。
会衆
天におられる我らの父、汝の名は聖とされ、独唱において在り給う。
司祭、屈んで述べる(声を詰まらせ)47
我らを誘惑に陥らせ給うな、主、あらゆる主人の主よ。我らの弱さを知り、邪悪なるものとその行いから、
その悪意と狡猾さから救い給う方よ。我らのへりくだりにおける、汝の聖なる名によりて。
(司祭)朗々と
王国と、力と、栄光は、父、子、聖霊たる汝のもの。今もいつも。
会衆
アーメン。
司祭
皆に平安を。
会衆
あなたの霊にも。
輔祭
頭を屈めて主に祈ろう。
会衆
汝に、おお主よ。
47 (原文注)初期の全ての儀式は以下を主の祈りとし、邪悪なるものに対する請願を強調している。それ
らは彼らの名に因んで「炎の矢」と烙印されていました。
21
司祭が祈り、このように話す――
汝よ、おお主よ、我らは汝の祭壇に頭を垂れる汝の下僕にして、汝による豊かな慈悲を待ち望むもの。
下し給え、おお主よ、汝の大いなる慈悲と祝福を。我らの魂、体、霊を聖化し、汝の聖なる神秘を受け取り
食するに相応しき者と成し給え、罪の許しと終わりなき命の為に。
(司祭)朗々と
崇拝と賛美は汝の為、神、汝の独り子、汝の全く聖なる霊に、今もいつも。
会衆
アーメン。
司祭、朗々と述べる
聖にして本質を同じくするは恵みと慈悲、作られしに非ず、崇拝さる三位一体、我ら全てと共にあり給う48
。
会衆
そして汝の霊と共に。
輔祭
神への畏れにおいて、目を向けよう。
司祭、密かに述べる49
――
おお聖なる主、聖なる場所に住まう方は、汝が慈悲の御言葉50
、及び汝が全く聖なる霊の訪れによりて我ら
を聖化し給う。汝において、おお主よ、述べ給うは、そなたらは聖となる、私が聖であるようにと。おお主
なる我らの神、測りがたき主の言葉、父及び聖霊と本質を一にし、共に永遠にあり独立なる方よ、汝の聖に
して血を抜いた犠牲における純粋なる賛美歌を受け取り給え。セラフィムとケルビムと共に、罪人なる私は
叫んで言う――
彼(司祭)が贈物を掲げて朗々と述べる
聖なる物は聖なるへ。
会衆
聖なるはただ一人、一人の主イエス・キリスト、父である神の栄光にあり、永遠に栄光を与えられ給う方。
輔祭
罪の許し、我らの魂の和解の為に、苦難と苦痛の中にある全ての魂、神の慈悲と助けを必要としている人々
の為に、過ちからの帰還、病からの癒やし、捕縛からの解放、既に眠りし教父と同胞達の安息の為に。
皆で熱意を以て言おう、主よ、憐れみ給え。
48 (原文注)他のギリシャ文献からの複写。
49 (原文注)この贈物に関する箇所はエディンバラ版による誤った挿入。
50 ここの the word はギリシャ語で該当する箇所を発見できませんでした。誤挿入らしいですし。
22
会衆(十二回)
主よ、憐れみ給え。
それから司祭はパンを裂き、右手に半分を、左手に半分を持ち、右手を聖杯に浸けて、述べる――
我らの主にして神であり救い主である、イエス・キリストの全く聖なる体と尊き血の結合。
それから彼は左手で十字を切り、もう片方51
にも切る。それから速やかにこれを分け、全てを各々の聖杯に
一欠片として入れる前に、述べる――
それは一つになり、聖化され、完全となった。父と、子と、聖霊の名において、今もいつも。
パンの上で十字を切る時、述べる――
見よ神の子羊、父の子、世界の罪を除き給う方は、世界の生命と救いの為に犠牲となられた。
一欠片を各々の聖杯に入れて、述べる――
キリストの欠片、恵みと真実に満ちた、父の、聖霊の、全く永遠なる栄光と力である方の。
それから分割を始め、述べる――
主は私の羊飼い、私は乏しい事はない。緑の牧野において、云々52
。
それから
私は常に主を称える、云々53
。
それから
私は汝を崇め奉る、我が神、おお王よ、云々54
。
それから
主を褒め称えよ、汝の全ての国よ、云々55
。
輔祭
司祭様、祝福を発して下さい。
司祭
彼の純粋な贈物が交わるによって、主は我らを祝福し給い、過ちから遠ざけ給う、今もいつも。
それから
おお主の善きを味わいそして見よ。彼は分かれて分けられず、信仰ある者に分け与えられ尽きる事がない。
51 おそらく聖杯に浸かっている方のパンだと思われますが自信はありません。
52 (原文注)詩篇 23。
53 (原文注)詩篇 34。
54 (原文注)詩篇 145。
55 (原文注)詩篇 117。
23
罪の許しと終わりなき生命の為、今もいつも、永遠に。
輔祭
キリストの平和の内に、歌おう。
聖歌隊
おお主の善きを味わいそして見よ。
司祭が交わり56
の前の祈りを述べる
おお主なる我らが神、天のパン、全世界の生命。私は天に対し、汝の御前で罪を犯した、汝の純粋なる神秘
を食するに相応しくない者。しかし慈悲深き主として、汝の恵みによって私を相応しき者と成し給え、罪に
定められる事無く汝の聖なる体と尊き血を食すに、罪の許しと終わりなき生命の為に。
それから彼は聖職者に分け与え、輔祭が円盤と聖杯を会衆に分け与えている際に、最初の円盤を持った輔祭
が述べる――
司祭様、祝福を発して下さい。
司祭が返答する――
神に栄光あれ、我ら全てを聖化し給えてまた聖化し給う方に。
輔祭が述べる――
汝を崇め奉ります、おお神よ。天の上にあり、汝の栄光は全地に満ち、汝の王国は全く永遠に存続します。
輔祭がそれを横の机に置く際に、司祭が述べる57
――
主なる我らが神の名によって祝福される、永遠に。
輔祭
神への畏れを以て、及び信仰と愛を以て、近づこう。
会衆
祝福されるは彼、主の名によりて来る方58
。
再び輔祭が円盤を横の机に置く際に、述べる――
司祭様、祝福を発して下さい。
56 この「交わり」とはキリストの体と血であるパンとワインを食べて彼と一体化する、という事です。
57 おそらくこの「それを横の机に置く」というのはパンとワインを食べ終わって空になった円盤と聖杯を
片付ける動作を指します。
58 (原文注)この時点で平信徒が領聖している。(私注)領聖とはキリストの肉と血であるパンとワイン
を食べる事。
24
司祭
汝の民を守り給え、おお主よ、汝の継承者を祝福し給え。
司祭再び
我らの神に栄光あれ、我ら全てを聖化し給う方に。
聖杯を聖なる机に戻す際に、司祭が述べる――
祝福されるは主の名、全く永遠に。
輔祭と会衆が述べる――
我らの口を汝への賛美で満たそう、おお主よ。我らの舌を楽しみで満たそう、汝の栄光と、汝の偉大なるを
いつでも歌えるように。
再び――
我らは汝に感謝を伝えます、我が神キリスト、汝は我らを汝の体と血を食するに相応しい者として下さった、
罪の許しと終わりなき命のために。汝の善良と愛において、我らは祈ります、我らを罪に定める事のなきに
保ち下さる事を。
最後の導入における香料の祈り
我らは汝に感謝を伝え奉る、救世主にして全ての神、全ての善き物を汝は我らに与え、汝の聖なる純粋なる
神秘に我らを参加させ給う。我らは汝にこの香料を捧げ、祈る。我らを汝が翼の影に留め給え、我らの息が
絶えるまで我らの魂と体を聖化する汝の聖なる儀式に参入するに相応しい者と成し給え、聖なる王国を継承
する為に。汝において、おお神は、我らを聖化し給う。我らは賛美と感謝を汝に捧げる、父、子、聖霊に。
輔祭が導入を開始する
汝に栄光あれ、汝に栄光あれ、汝に栄光あれ、おお王なるキリスト、神の独り子にして父なる神の言葉59
。
汝は我らを数えて下さった、汝の罪人にして取るに足らない下僕を、罪の許しと終わりなき命をもたらす汝
の聖なる神秘を楽しむに相応しき者に。汝に栄光あれ。
導入を成す間、輔祭はこのように述べ始める――
何度も何度も、いつの時でも、平和の内に、主に祈願しよう。
彼の聖なる儀式への参加は我らをあらゆる誤った事柄から遠ざけ、我らの終わりなき生命への旅を支えて、
聖霊の交わりと贈物となる。
司祭が述べる
我らの全く聖なる、純粋にして、最も栄光ある、神の母にして永遠の乙女マリア60
、及び世界の始まりから
汝をよく喜ばせた全ての聖人達を祝わん。我ら自身を、互いを、我らの生命全てを、我らが神なるキリスト
59 ここでは明白に「言葉」=キリストです。かつ、後世の付加ではないかもしれません。
60 (原文注)改ざん。ただしマリア崇拝ではない。神の母は讃えられているが崇拝されてはいない。
25
に捧げん。
会衆
汝に、おお主よ。
司祭
おお神よ、汝の偉大さと語りがたき愛において汝が下僕の弱さを慮り、我らをこの天の食卓における食事に
値する者に数え、汝の純粋な神秘に与る我らを罪人として糾弾し給わぬ方よ。しかし我らを聖きに保ち給え、
おお善き方、汝が聖霊の聖化によって。世界の始まりから汝をよく喜ばせていた汝の聖人全てを我らが引き
継ぎその役割を見いだせるように。汝の独り子、我らが主にして神である救世主イエス・キリスト、汝に
よって祝福され、汝の全く聖にして、善き、力をもたらす精霊と共にあり給う方の慈悲において。祝福され
賛美されるは汝の全く高貴にして栄光ある名、父、子、聖霊、今もいつも、全く永遠に。
会衆
アーメン。
司祭
皆に平安を。
会衆
貴方の霊にも。
輔祭
皆の頭を主に屈めよう。
司祭
おお主よ、偉大にして驚くべき方、その目を汝の下僕、汝に頭を垂れる我々に向け給え。汝の御手、強きに
して祝福に満ちたるを伸ばし、我らを祝福し給え。汝の相続人たる我々にいつも何時でも汝を賛美させ給え。
我らの唯一の生にして真実なる神、聖にして本質を同じくする三位一体61
、父、子、聖霊62
よ、今もいつも。
(司祭)朗々と
我ら全てが汝に属し汝を賛美するによりて、栄光、崇拝、感謝が、父、子、聖霊に、今もいつも。
輔祭
キリストの平和において歌おう、
そして再び述べる
キリストの平和において進もう。
61 (原文注)原始の慣習に基づく正当な付加。
62 何故かここだけ Spirit ではなく Ghost が使われています。同じ「聖霊」で訳してしまいましたが。
26
会衆
主の名において。司祭様、祝福を発して下さい。
終祭の祈りが、輔祭によって述べられる
栄光から栄光へと進もう、我らは汝を賛美する、我らの魂の救い主を。栄光は父、子、聖霊に今もいつも、
全く永遠に。我らは汝を賛美する、我らの魂の救い主を。
司祭が祭壇から祭具室への祈りを述べる
力から力へと進まん、汝の寺院における神の儀式全てを満たせ。今なお我らは汝に祈願する、おお主である
我が神よ、我らを完全なる親愛に相応しき者とし、我らの道を真直ぐに成し、我らに汝への畏れを根付かせ、
我らを天上の王国に相応しき者と成し給え。我らが主イエス・キリスト、汝によって祝福され、汝の全く聖
なる、善き、力をもたらす霊と共にあり給う方に、今もいつも、永遠に。
輔祭
何度でも、如何なる時も、平和の内に主に祈願しよう。
役割を果たした祭具室での祈り
汝は我らに与え給う、おお主よ、汝の独り子、イエス・キリストの全く聖なる体と尊き血との繋がりによる
聖化を。汝の善き霊の恵みを与え、我らを信仰において罪なしに保ち、我らに完全な選択と贖いと来るべき
永遠の喜びに導き給う。汝が我らの聖化と光であり給うが故に、おお神、汝の独り子、汝の全く聖なる霊よ、
今もいつも、全く永遠に。アーメン。
輔祭
キリストの平和の内に見つめよう。
司祭
祝福されるは神、聖にして、力をもたらす、純粋な神秘において祝福して聖化し給う方。今もいつも、全く
永遠に、アーメン。
それから、和解の祈り
おお主なるイエス・キリスト、生きる神の子、子羊にして羊飼い。世の罪を除き、自由に二人の借金を取り
消し63
、罪人であった女に罪の許しを与え64
、罪の許しとともに麻痺に癒やしを与え給うた方。許し、弱め、
赦免し給え、おお神よ、我らの無礼を、望むと望まずにおいて、知ると知らざるとにおいて、逸脱と反抗に
よるものを。汝の全く聖なる霊は汝の下僕によって成されるよりも良しと知っておられるが故に。
そしてもし、この世界に住みこの世界による体を持つ者達が、悪魔の言葉ないし行いによって動かされるか、
63 ルカ 7:36-50 にある「二つの借金」の話のようです。ただこの時借金を取り消しにしたのはイエスでは
なかったりしますが。
64 上記の箇所ルカ 7:36-50 で言及された女性の事だと思われます。なおマタイ 26:6-13 とマルコ 14:3-9 に
類似する箇所ですが、この二つは女の罪を許すとは言っていません。
27
呪いの下にあるか、あるいは何か特別の誓いによって、汝の掟に完全に背くのならば。私は汝の語りがたき
親愛に祈願し懇願する、彼らを悪魔の言葉から解き放ち、呪いと特別の誓いから救い出すものに、汝の善良
によって。
真に、おお王なる主よ、汝の下僕らに代わりし私の懇願を聞き給え、汝が彼らの過ち全てを見過ごし、これ
以上を記憶し給うな。 彼らに依り及び依らざる、全ての逸脱を許し給え。彼らを終わりのなき罰から救い
給え。汝によりて彼は我らを率い、述べ給う。そなたらを地上に繋ぎ止める物は天において繋ぎ留められ、
そなたらを地上から解放する者は天において開放されると。汝は我らの神、哀れみ給う神、救いと罪の許し
であるが故に。汝による栄光は、永遠の父、力をもたらす霊と共に、今もいつも、全く永遠に、アーメン。
28
私自身の考察
ここは興味がなければ読み飛ばしていただいても結構です。私は神学教育は受けていませんし。
一見の印象だけでも
・ほぼ全ての文言や祈りにおける多彩な父、子、聖霊の装飾。ミサや今日の聖体礼儀に比べて歴然に多い
・かつ、聖書等の引用ではないこの儀式独自の装飾もおそらく多数
・ただし「三位一体」という言葉は殆ど使われていない。だが三者は大多数の箇所で並立して語られる
・マタイ 34-35 や第二テサロニケにおけるようなキリストの再臨と裁きが言及されている
・エルサレムがシオンとして特別扱いされている
・使徒言行録のようなペンテコステの記述がある等、ルカの引用がいくつかある
・やはり多彩な奉献の祈り、特に血を抜いた動物と思われるものを捧げる祈り
・果物も文字通りに捧げていたように見える
・香料に関する祈りは後世の付加らしいが、香料そのものが捧げ物になっていた教会があった?
・この場合今日の正教会における舞台装置としての香料とは扱いが変わる
・後悔の祈りも幾度となく繰り返される
・様々な形で幾度も繰り返される父、子、聖霊の称揚と、行き過ぎている位の謙遜
・人間の理性、良心、自力は一箇所を除いて信用されておらず、それらは神によってもたらされるとする
・神は自分達を強めるに違いないと何度も懇願する
・またその割に神への要求はやたらと、厚かましい位に多い
・おかげで非常に慇懃無礼に見える
・ガラテヤ書やマタイ福音書におけるキリスト者は天の王国を継承するという思想が何度か言及される
・神品領聖と信徒領聖の間の間隙はおそらく殆ど無い
・総じて装飾が長くて多い。確かにこれは年一回もやったらお腹一杯か
・特にエルサレムが無くなって四散したユダヤ人キリスト教徒達に、こんな長い儀式をする安寧はあったか
・新約聖書の朗読はない。ただし新訳という言葉は使われている
・答唱詩編、日本正教会でポロキメンとして知られる箇所もない
・バシレイオスの時点で組み込まれている真福九端(マタイ 5:3-12 山上の垂訓)がない
・キュリロスないし後世の付加を除けばマリアに対する言及が無い
・除かなくても今日の正教会における程(節々で事ある毎に言及される)にはマリアには言及されない
・原型はミラノ勅令以前、つまり迫害があったとされる時代のものだからか、権力者への祈りがない
・司教といった諸教会を束ねる者への祈りもない。言及されるのは一箇所だけ
・聖堂およびその建立者に対する言及がない
・啓蒙者(洗礼志願者)に対する祈りがない
・「領聖祝文」として知られる領聖前の祈りがない
・少なくともこの儀式においては洗礼を受けていない者は何も食べていない
・ただし儀式の後でアンティドルにあたるもの(非洗礼者用のパン)を食べている可能性はある
29
といった際立った特徴を読み取れます。
以下、細かい話にも言及してみます。
P 1
「そして私を罪に定め給わず、汝によって人々にもたらされた御言葉を広めるに相応しい者と成し給え。我
らが主イエス・キリスト、汝によって祝福され、汝の全く聖なる、善き、力をもたらす、汝と全く同一であ
る霊と共にある方よ、今もいつも永遠に、アーメン。」
脚注でも書いたように The word、ギリシャ語で τον λόγον は「御言葉」と訳しているのですが、ここでは
キリストとも福音とも読めます。そもそもギリシャ語ではこの段落に τον λόγον は無かったんですが。
以後、「言葉」「御言葉」が明らかにイエス・キリストを指す箇所は四つあるのですが、その三つが後世、
あるいはキュリロスによる記述が疑われる箇所です。原型が保存されているとされる懇願の祈りにおいて、
一箇所(P19)The word と τον λόγον が一致するのですが、ここでの「御言葉」はキリストかその福音か
何とも言えない感じです。最後の方(P25)には「神の独り子にして父なる神の言葉」という下りがあり、
ここでは完全に言葉=キリストで、原型とされる五つの祈りからは外れるのですがもしやすると…といった
所です。
ヨハネ福音書を端緒とするイエス・キリスト=御言葉という発想は初期のユダヤ人キリスト教徒にあったの
かどうかはちょっと何とも言えません。ただ福音書が成立する前から、キリストの言行を世界全て(の民族
なのか、世界全てのユダヤ人なのかは分かりません)に伝えようという動きがユダヤ人キリスト教徒にも
あったとは言えるかもしれません。この一箇所を信頼していいのなら。
「そして我らの肉体と魂に巣食う悪魔の臭いを芳しい香りに変え、汝の全く聖き聖霊の力によって我々を清
め給え」
実は新約聖書だとよく言及される「悪魔」は、旧約聖書では殆ど触れられなかったりします。一方で、主に
ヨブ記でよく言及される「サタン」はこの儀式においては一回も出てきません。
神に従い悪魔に立ち向かうべし、という発想はヤコブの手紙にもあります。もっともこの手紙は偽書らしい
ですが。とはいえパウロ書簡や他の人の手紙でも、悪魔の影響を避けよという言及は何度か、そう頻繁では
ないのですがされています。という事で、最初期のキリスト教徒の間にも悪魔に対する恐れはあったのかも
しれません。
この儀式において悪魔(devil)は四度使われており、その内二つは後世の付加と脚注で書かれている香料へ
の祈りですが、残りの二つは原型にもあったかもしれません。
ちなみに一世紀後半から二世紀に成立したディダケーでは悪魔が一度も言及されていなかったりもします。
P 6
「それから旧約聖書における聖なる予言と預言者の記述が読まれ、神の子の受肉、彼の受難と死からの復活、
天への御昇り、栄光に包まれての二度目の来臨が表明される。これらの朗読は日々聖なる神の儀式において
行われていた」
今日、バシレイオス及びヨハネス・クリュソストモスの聖体礼儀には旧約聖書の朗読は含まれていません。
30
一方、この二人及びエルサレムのキュリロス以前に原型があったであろうローマ教会、今日のカトリックに
おけるミサにおいては旧訳朗読が含まれています。となると、バシレイオスが何らかの理由で旧訳の朗読を
外したと考えるのが自然ですが、さて。
と同時に、370年の時点ではまだローマ帝国が東西分裂していないのですが、バシレイオスの聖体礼儀が
確立した段階(その時点では既に395年を過ぎているでしょう)では既にローマ教会とコンスタンティ
ノープル教会はお互いの儀式には干渉できない程度には独立していた事も伺えます。
またこの記述は、福音書やパウロ書簡が成立する前からの残滓と見てもいいかもしれません。もしあるなら
ここで読まないほうが不自然でしょうから。
P 7
ここに限らず、司祭や輔祭は神に色々な事を祈願するのですが。
そこで祈られている事はバシレイオスによる聖体礼儀にも一部共通しています。順番は別々ですが。
以下、対応する所を日本正教会訳の大連祷と合わせて抜粋してみます。「」内が日本正教会訳です。
「上より降る安和と我等が霊の救いの為に主に祈らん」(日本正教会は soul を「霊」と訳しています)
天上からの平和と我らが魂の救いの為に。主に祈願しよう
「全世界の安和、神の聖なる諸教会の堅立、及び衆人の合一の為に主に祈らん」
全世界の平和の為に、神の聖なる教会全ての結合の為に。主に祈願しよう。
「此の聖堂,及び信と慎と神を畏るる心とを以て,此処に来る者の為に主に祈らん」
対応なし
「教会を司どる我等の尊貴なる(府主教ないし大主教)、司祭の尊品、ハリストスに因る輔祭職、悉くの教
衆、及び衆人の為に主に祈らん」
対応なし
「我が国の(国王)、及び国を司る者の為に主に祈らん」
対応なし
「此の都邑と凡の都邑と地方,及び信仰を以て此の中に居る者の為に主に祈らん」
記憶し給え、おお主よ、全ての都市と国を、そこに住む真実の信仰を持つ者を、彼らに平和と安寧を。
別の箇所(P 19)。
「気候順和,五穀豊穣,天下泰平の為に主に祈らん」
順調な気候、平和の雨、恵み深き雫、豊かな収穫、善き季節の順当な区切りを。御恵みの冠を。神に乞い願
おう。
別の箇所(P 12、19)。
「航海する者、旅行する者、病を患うる者、艱難に遭う者、虜となりし者、及び彼等の救いの為に主に祈ら
ん」
神に乞い願おう。船上の、旅をしている、異邦人の中にあるキリスト者の為に。また捕縛、亡命、監禁、辛
い隷従を強いられている同胞達が平和に戻れるように。
31
別の箇所(P 12)。P 19にも微妙に節回しの違う似たような箇所があります。
「我等諸の憂愁と怒と危難とを免るるが為に主に祈らん」
我らは汝が我らの声を聞き給わん事を祈願します。あらゆる苦痛、憤怒、危険、苦難、捕囚、悲痛な死、
我々の内にある悪からの救いの為に。
「神や爾の恩寵を以て、我等を助け、救い、憐み、守れよ」
我らを守り給え、我らへの慈悲を以て。我らを憐れみ保ち給え、おお神よ、汝の恵みを以て。
別の箇所(P 11)。
「至聖至潔にして至りて讃美たる、我等の光栄の女宰、生神女、永貞童女マリアと、諸聖人とを記憶して、
我等己の身、及び互に各の身を以て、並に悉くの我等の生命を以て、ハリストス神に委託せん 」
我らの全く聖なる、純粋にして、最も栄光ある、神の母にして永遠の乙女マリア、及び世界の始まりから汝
をよく喜ばせた全ての聖人達を祝わん。我ら自身を、互いを、我らの生命全てを、我らが神なるキリストに
捧げん。
別の箇所(P 26)。前述の通りマリア云々は後世の加筆。
…と、こんな感じでどうやらバシレイオスとキュリロスが同一の原型からちょっとづつ違う形で引用した、
という説にはかなり説得力があるように思えます。一方ローマの教会ではこれらの祈願はばっさり削除され、
あるいは元々これらの祈願が存在してなかった故か、共同祈願にまとめられる事になります。
P 8
「神は、我らに汝の神なる救いの予言を教え給うた方は、我らの魂が罪人である事を語る前に理解させる光。
それ故に我らは実直な信仰、潔白な生活、純粋な会話を求めようとしながら、魂に由来する物が聞こえない
のみならず、善行を成す事もかなわなくなった。」
「魂が罪人」とまで言ってしまうとなると、この箇所を書いた人は原罪を意識していたと考えるのが普通、
だとは思います。この箇所はバシレイオス以降の聖体礼儀では採用されておらず、となるとキュリロスか、
あるいは後悔の祈りが原型からあるという説に従うなら、ローマ人への手紙 5:12-21 でパウロが言及する
ように、最初期のキリスト教徒は原罪を強く意識していたのかもしれません。ただし、「罪人」である事は
他の箇所でも散々繰り返されますが、「魂が罪人」とまで書いているのはここだけです。
P9
「洗礼志願者、洗礼を受けていない者、我々とともに祈りの場に参加できない者はご退去を」
最初期のキリスト教にも洗礼を受ける前に準備期間があったのは確かとの事です。ただし洗礼志願者が退去
まで要求されるようになったのはいつ頃かはちょっと分かりませんし、この文章が原初からのものなのかも
何とも。
後日東西を問わず洗礼を受けていない者も出ていかなくていい事になったのですが、正教会においてはこの
文章だけが後に残りました。これが日本正教会における「衆啓蒙者出でよ」という下りです。「出でよ」と
言うと今日では「出てこい」という響きになりますが、実は「出て行け」という意味です。
32
「司祭が聖なる贈物を手に、祈る――」
原文の脚注には、パンとワインそのものが儀式を通す前からキリストの肉と血とされている、という迷信が
存在していた…と書かれていますが。そもそもこの儀式の原型と思われるユダヤ人キリスト教徒の日曜礼拝
には聖餐が組み込まれていなかったらしい、というのは冒頭に書いた通りです。
実際、ここの記述は聖別される前の単なるパンの扱いとしては実に仰々しいものです。儀式の最中にパンが
キリストの体になるのがバシレイオス以降の聖体礼儀である事を考えると、パンとワインそのものが聖なる
ものであるとしているこの下りはそれ以前の古い習慣から来ているという指摘は頷けるものです。
さて、元々は通常の食事でパンとワインをキリストの肉と血として聖化してその場で食べていたらしい、と
いう事にもまた冒頭で触れたのですが、これを踏まえると、
1、始めは食卓を共にしているキリスト教徒達が、その場その場でパンとワインを聖化していた
2、おそらく二世紀頃、日曜礼拝に前日の食卓ですでに聖化しておいたパンを持ち寄り、一斉に食べるよう
になった。「司祭が聖なる贈物を手に、祈る――」でパンそのものを聖なるものとしているのは、元々先に
信徒達の食卓で聖化を済ませていたからではなかろうか
3、それから間もなく、日曜礼拝でパンとワインを聖餐にして食べる今日の形になり、始めの習慣が廃れた
という流れが見えるように思えます。証拠とかは一切ないんですけどね。
P10
「聖なる接吻を以て互いに挨拶を交わしましょう。我らの頭を主に屈めましょう」
ルカ 7:45、ローマ 16:16、第一ペテロ 5:14 などによると、挨拶として接吻するのは当時において珍しく
もない習慣だったようです。
ちなみに、カトリックでは二十世紀後半になってミサにおける信徒同士の挨拶が復活(接吻はしませんが)
しています。一方バシレイオスは互いへの挨拶を採用しなかった為、今日に至るまで東方正教会の聖体礼儀
には挨拶する箇所はありません。
P12
「純潔のまま生きている者、独身者、規律の内に在る者、聖なる結婚をした者の為に。また教父、及び地上
における山、洞穴、洞窟で苦行にある同胞達の為に」
この文脈だと「聖なる結婚」は神との結婚を意味するかもしれません。単に規則に基づいた合法な結婚かも
しれませんが。原始キリスト教の時代で結婚禁止といえばグノーシス主義が有名ですが、そこまでいかなく
とも禁欲や純潔への親近感は原初から存在していました。例えば、パウロは結婚しなくて済むならその方が
いいと断言していますし、洗礼者ヨハネのグループも禁欲を旨としていました。
ちなみにこの箇所が 370 年に書かれたとするとその時点で修道生活の祖アントニウスは世を去っており
(356 年死去とされる)、キュリロスは彼らの存在を念頭に入れていた可能性もあります。
P13
「おお神よ、汝の独り子を世界に送り汝の偉大にして語りがたき愛を示したのは、彼が迷える羊を呼び戻し、
33
我らを罪人として拒まず、この慄きつつ血を抜いた犠牲を汝の物として手に入れ給うが為。我らが我ら自身
の公正さではなく、汝の善き慈悲を信頼するは、汝が我らの民族を狩り集める存在である故」
およびP16
「天から降り、聖霊及び乙女にして神の母マリアによって肉体となり、僅かな間に人々の間にあり、我らの
民族を救う為の統治を成し遂げた方」
「我らの民族」を救う存在として神やキリストが語られているのはこの二箇所です。迷える羊の飼い主とか、
民族を救う為の統治であるとか、いかにもキリストが来る前のユダヤ人によるメシア信仰の影響に見えます。
「我らの民族」ではない異邦人であるキュリロスや後世のキリスト教徒がわざわざ民族の救済という記述を
書き足すとは常識的には考えがたいので、ここは原始教会におけるユダヤ人キリスト教徒が、パウロ達とは
無関係な教会で書いた箇所だと私には思えます。ただ、この記述が単なる痕跡なのか、あるいはユダヤ人で
あったヤコブ、ないしこの記述を書いた人々がユダヤの血脈を重んじていたのかはこれだけだと何とも言え
ません。
ちなみにこの儀式でもよく使われる「父と子と聖霊」という言葉を初めて並べ、ユダヤ人キリスト教徒向け
に福音書を書いたとされるマタイは「我らの民族」の救いは一度も主張していません。マタイはヤコブ派の
この儀式に与っていたのか、それとも別の教会に所属していたのか?
P 15
「天の天にありすべてを司る方に賛美を。太陽、月、星星の歌声を。地と海とそこにある全てを。エルサレ
ム、天上の集いであり、天に記されし始まりの教会を。正しき人と預言者達の霊を。殉教者と使徒の魂を。
天使、大天使、座天使、主天使、権天使、力天使、恐るべき能天使、数多の目を持つ智天使、六枚の羽根を
背負い二枚の羽根で顔を、別の二枚の羽根で足を、更なる二枚の羽根で飛翔する熾天使、互いを休む事なき
唇で、絶え間なく叫ぶように賛美する者達を」
ここの他にも二箇所ほどエルサレムが特別扱いされている箇所があるのですが、これが原始教会のユダヤ人
キリスト教徒によるものなのか、特別な地位を与えられる事になった後世のエルサレム教会によるものか、
更に言えばエルサレム教会の主教だったキュリロスによるのかは難しい所です。神殿崩壊前のエルサレムに
あった原始教会が他のユダヤ教徒のようにエルサレムを神の都とみなしていても不思議ではないのですが、
三箇所のいずれも改ざんが疑われる箇所を伴ってもいます。
なおここでは後に偽デュオニソス・アレオパギタによって体系化される九大天使が言及されているのですが、
これは後世の付加でしょう。天使、大天使、智天使(ケルビム)、熾天使(セラフィム)以外は聖書に直接
の記述が無いですし。…いや一世紀からこれらの天使の存在が認められていた可能性もゼロではない、ない、
かなぁー…?
P 16
「土から自らの像と肖として人を作った方。其に楽園の喜びを与えた方。其が掟に背き去った後、其を無視
せず見捨てなかった方、おお善き方、しかして其を慈悲深き父として罰し、律法によって其を呼び、預言者
達によって其を導いた方。その後汝の独り子、我らが主イエス・キリストを世界に送りし方、彼の来たるに
34
よりて彼は汝の像を新しく復元なさった」
この「汝の像を新しく復元なさった」という記述があり、image と likeness の内 image だけが復元された
とあるので「似姿」という広く知られる訳語を使えませんでした。
ここで新しく復元されたのが「像」、つまり神によるイメージと言うか設計図だけで、「肖」、つまり神に
似ている事ではないのは注目に値します。これはイエス・キリストによっても「肖」は回復されていないと
認識されていた、と考えるべきでしょうか? ちなみに、後の正教会は「肖」を(並外れた)信徒生活に
よって回復できると考えるようになり、これを Θέωσις「神成」あるいは「神化」と呼んでいます。
ただしこの記述が何時の時点で書かれたのかは難しい所です。第二コリント 3:18 では「わたしたちはみな、
顔おおいなしに、主の栄光を鏡に映すように見つつ、栄光から栄光へと、主と同じ姿に変えられていく。こ
れは霊なる主の働きによるのである65
」とあるのですが、ここで変えられていくのは「同じ姿」即ち「肖」
で「像」ではありません。
ユダヤ人キリスト教徒による原始教会に「像」が復元されたという発想はあったかどうか。コロサイ
66
3:9-
10 においては「あなたがたは、古き人をその行いと一緒に脱ぎ捨て、造り主のかたちに従って新しくされ、
真の知識に至る新しき人を着たのである」とあり、ここでは image(かたち)が新しくされたとあるのです
が、その直後に「そこには、もはやギリシヤ人とユダヤ人、割礼と無割礼、未開の人、スクテヤ人、奴隷、
自由人の差別はない。キリストがすべてであり、すべてのもののうちにいますのである」と続いています。
しかしこの儀式においては直後に「天から降り、聖霊及び乙女にして神の母マリアによって肉体となり、僅
かな間に人々の間にあり、我らの民族を救う為の統治を成し遂げた方」とあり、記述がぶつかっています。
書いた人がそこまで考えてなかったと言われればそれまでですが。
P17
「故に記憶する、命をもたらす彼の苦難を、救いの為に彼が架かった十字架を、彼の死と埋葬を。そして彼
は三日目に死から復活し、天に昇り、我らの神にして父である汝の右手に座す」
復活して天の右に座す、という記述は福音書だとルカ 22:69 と(後世に誰かが書き足した)マルコ 16:19
にのみあります。一方、パウロもローマ 8:34 で言及しています。となると原始教会における考えなのか、
それともルカの引用になるのか。
P17
「律法と預言者と新訳において語られしは、我らが主イエス・キリストがヨルダン川に浸かり、住み給う事。
及び、ペンテコステの日に聖にして栄光あるシオンの屋上の間において炎のような舌が使徒達に降りた事」
65 この記述の前、3:15-17 には「今日に至るもなお、モーセの書が朗読されるたびに、おおいが彼らの心に
かかっている。しかし主に向く時には、そのおおいは取り除かれる。 主は霊である。そして、主の霊の
あるところには、自由がある」とあり、おそらくこの箇所が正教会における「神成」の聖書的根拠だと
思われます。
66 ただしコロサイはエルサレム神殿崩壊後に書かれたという疑いも強いです。
35
キリスト教最古の儀式(?)ヤコブによる神の儀式
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