ニ方向のグローバリゼーション

ニ方向のグローバリゼーション

グローバルマネージメントの手法には大きく分けると二つの方法があります。

グローバル統合ローカル適合
・世界は単一市場・各国市場は互いに独立
・世界規模での競争優位の確立が目標・各国ごとの競争優位の確立が目標
・価値連鎖（バリューチェーン）の各機能を最も有利な場に配置・価値連鎖（バリューチェーン）の各機能を各国別に配置
・世界共通の顧客ニーズを対象に製品の標準化を行なう・各市場の顧客ニーズを反映した現地適応戦略
・本社主導の海外子会社コントロール・現地への権限委譲

【グローバル統合】【ローカル適合】
従来の日本企業型のグローバリゼーション韓国企業型のグローバリゼーション

グローバル統合というのは標準化、つまり全世界に展開しローカル適合とは、進出先の市場の顧客ニーズに可能な限
それぞれの進出先で、できる限り同じことを実施するといり合わせてローカライズ（現地化）していくこと、それが
うのがグローバル化であるという考え方です。グローバル化の本質であるという考え方です。
各国市場において同じようなターゲット顧客を対象に、同グローバルマーケットにおけるサムスン電子、LGに代表さ
じような商品を、同じような流通形態、同じような価格でれる韓国企業のものづくり、マーケティング戦略はそれぞ
展開する。れの国や地域にはそれぞれ異なる生活様式・文化・習慣・
このことにより、スケールメリットを享受できる、標準化経済力・環境などがあることを前提にして、それぞれの国
を追求していくという形のグローバリゼーションです。や地域に合わせた地政学的製品企画、開発を行なっていま
多少のアレンジはあるものの、基本的には日本や欧米の先す。
進国市場の消費者向けに開発した製品をそのまま海外に輸価格だけではなく、生活事情、地政学的視点からデザイン。
出している「日本流の輸出」が大半。
世界中でほぼ同じものを売るというやり方は、品質の高い
日本製品ならではの戦略。

© 2012 MULTILINGUAL OUTSOURCING Co., Ltd. All Rights Reserved. 1


ローカル適合例

サムスン電子

・北米市場向けの大型ピザを収納できる冷蔵庫
・インド市場向けクールパック付き冷蔵庫
停電が頻繁に起きる環境を考慮し、冷蔵室の温度上昇を2時間くらい繰り下げることができる。
・インド市場向けダークカラー冷蔵庫
日系メーカーがインドで白い冷蔵庫を販売しているのに対し、インドではマサラ（カレー粉）を毎日使うので、表面が白色だとすぐに表面
が黄色くなってしまい、汚れの目立つ色が敬遠されることに着眼し、グレー、ブラウン、ブラック、ワインレッドなど汚れが目立たない色
の冷蔵庫を販売。
・ロシア、中国市場向けデュアルSIMフォン
2つのSIMカードを差し込むことにより、1台の携帯電話で2つの電話番号、SMSを同時に使い分けて使用することができる。
携帯電話を複数持ち、使い分けることの多かった中国、ロシアで支持されている。

・インド市場向けベルの音をボリュームアップした携帯電話
インドは騒音が他の国に比べ、ずっと大きいためボリュームを大きくできるよう配慮。

LG電子
・中東市場向けコーラン内臓テレビ
・インド市場向けマルチリンガル（ヒンディー語、テルグ語、ベンガル語、
タミル語）対応テレビ
・インド市場向け絹製サリーが洗える洗濯機

・新興国市場向け二槽式洗濯機



ローカル適合例

LG電子
・インド市場向け野菜室付き冷蔵庫
ベジタリアンが多いインド向けに、冷凍室の面積を減らし、野菜専用スペース設け、冷蔵室の面積を
大きく設計。
・インド市場向け施錠できる冷蔵庫
鍵をかけるけることで、子供が冷蔵庫をあけ、いたずらすることを防止できる。
子供が間違ったものを口に入れ危険にあうリスクを防止できる。
メイドの盗難を防止できる。
・インド市場向けボタン1つで101のインド料理ができる電子レンジ

・インド市場向け800時間以上作動するバッテリ搭載携帯電話
電気施設が整っていないためインドでは、充電する所を探すのが難しいという
顧客の声を反映。
・パキスタン市場向けMobile Tracker機能付き携帯電話
パキスタンでは携帯電話の盗難が多く、現金のように取引されている点に着目し、
盗難や紛失した場合でも、容易に位置と番号を追跡できるように配慮。

Orion製菓
・インド市場向けチョコパイ
ベジタリアンが多いインドでは、すべての食品にベジタリアン用であることを知らせる公式の緑色のラベルが付いていることに着目。
植物性チョコパイを開発し、植物性チョコパイがベジタリアンのための食べ物であることを知らせる緑色のラベルを付けて販売。

現代自動車
・インド市場向けターバン対応車



グローバル統合かローカル適合か？

グローバル統合とローカル適合のどちらが重要かということではなく、両方重要であると考えられます。
ただし、企業としてはどちらに注力するべきか選択する、もしくは両立を目指していくことになります。

グローバル統合

グローバルトランスナショナル
Sony Play Station
Nintendo Nintendo DS

インターナショナルマルチドメスティック
サムソン電子
ＬＧ電子

ローカル適合



グローバル統合かローカル適合か？

グローバル統合を追求していくと、いわゆる標準化としての「グローバル化」に向かっていきます。
非常に強力な本社があり、本国活動・本国事業を中心に、経営上の意思決定やイノベーション、新しいテクノロジー、新しい
サービスのほとんどすべてが本国で生み出され、これを世界中に拡大していくことになります。

ローカル適合を追及していくと、複数の国で事業展開をしているが、進出先各国での事業はそれぞれ独立しており、ある国で
行っている事業展開は他の国で行っている事業展開とほとんど相互作用がなく、影響しあわないという形のグローバル化、「マ
ルチドメスティック」となります。
マルチドメスティックとは、各国の国内事情に応じた「ドメスティック」な事業展開を、複数市場において「マルチ」に進めて
いくグローバル戦略です。

これから日本企業が目指していくグローバル化の在り方として、グローバル統合とローカル適合をどう両立させるかということ
が問われるようになってきます。

日本企業が苦手としてきたマルチドメスティックを追求しすぎると、それぞれの国の事業が独立し、各国内で様々な経営活動が
完結し、他国の事業にほとんど影響を与えなくなるのに対し、グローバル統合とローカル適合を両立させた「トランスナショナ
ル」とは、それぞれの国で事業展開し、進出先の国での活動が生み出すノウハウ、新しい知識、新たなサービスを提供しあうと
いう、それぞれの事業活動が相互作用を生み出す形態を意味します。

グローバル化により、進出先において本国市場のみで展開していた場合にはなかなか生まれなかったようなイノベーションが生
まれ、新たなノウハウを蓄積することにより、次のグローバル経営、新たな市場に進出していく際にそれが有効に活用されると
いうようなあり方を目指していく。
これが「トランスナショナル」なグローバル化という考えになります。



トランスナショナルなグローバリゼーションとは

トランスナショナルなグローバリゼーションとは、世界を1つの市場とみなし、「グローバル統合」、「ローカル適応」に加え
「グローバルな知識開発」を重視していくことです。

地球規模での経営効率、競争優位性の追求（グローバル統合）
通信、交通手段の発達により、製品を地球規模の市場に提供しやすくなり、国境を越えて経営資源を獲得することも容易になっ
てきている。
これらを利用して、地球規模でスケールメリットを生かし、経営効率を高める。

現地対応の柔軟性（ローカル適応）
地球が狭くなったとはいうものの、各国固有の文化差、制度の違いは無視できない。
現地市場、現地組織に合わせて柔軟に対応する。

本社、現地の隔てない知の共有と組織学習（グローバルな知識開発）
経営資源を有効に活用するために、世界に広がった部門間、事業間においても知を共有し、組織で学習を行う。


ニ方向のグローバリゼーション

Recommended

Recommended

More Related Content

Similar to ニ方向のグローバリゼーション

Similar to ニ方向のグローバリゼーション (13)

Recently uploaded

Recently uploaded (8)

ニ方向のグローバリゼーション