理科における批判的思考と知的好奇心の関係性
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日本理科教育学会第68回全国大会 岩手大会 2018年8月5日
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理科における批判的思考と知的好奇心の関係性
- 2. 研究の概要 2 研究の目的 理科における批判的思考と知的好奇心の関係を明らかにする 探究的・合理的な思考 多面的な思考 反省的な思考 健全な懐疑心 特殊的好奇心 拡散的好奇心 0.84*** 0.10*** 0.90*** 0.09** 𝑅2= 0.68 𝑅2= 0.79 ** : p < .01，***: p < .001RMSEA = 0.06, CFI = 0.87
- 5. 研究の背景 5 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 探究的・合理的な思考 多面的な思考 反省的な思考 健全な懐疑心 小学生 中学生 ●「探究的・合理的な思考」「多面的な思考」「反省的な思考」は， 中学生の方が小学生よりもやや低い傾向にある 小学校と中学生の比較（雲財・中村，2017）
- 9. 質問項目の検討 9 批判的思考 何を信じ，何を行うのか決定に焦点を当てた合理的で省察的な思考 （Ennis, 1987; 木下・山中, 2014） ●木下・山中（2014）の批判的思考尺度（４因子23項目：五件法）を引用 因子 質問項目の例 探究的・合理的な思考 新しいことに挑戦するのが好きである 多面的な思考 実験のやり方に間違いはなかったか考える 反省的な思考 自分の予想におかしいところはないか確かめる 健全な懐疑心 簡単な実験のときは，実験してみなくてもよいと思う
- 10. 質問項目の検討 10 知的好奇心（西川・雨宮，2015） 拡散的好奇心：新奇で多様な情報を求める傾向 特殊的好奇心：不整合や矛盾に敏感で，それを解消しようと 積極的かつ持続的に取り組む傾向 因子 質問項目の例 拡散的好奇心 ・新しい事に挑戦することは好きだ。 ・誰もやった事のない物事にとても興味がある。など 特殊的好奇心 ・はっきりした明快な答えが出るまでずっと考える。 ・物事を学ぶ時には，徹底的に調べたい。 など ●西川・雨宮（2015）の知的好奇心尺度（2因子12項目：五件法）を引用
- 11. 目的 理科における批判的思考と知的好奇心の関係を明らかにする 時期 2017年６月～９月 対象 公立小学校の児童346名 A小学校 ５年86名，６年91名 B小学校：５学86名，６年83名 公立中学校の生徒971名 C中学校：１年156名，２年179名，３年187名 D中学校：１年143名，２年157名，３年149名 調査の概要 11 ※2017年度日本理科教育学会関東支部大会で発表した調査と同じデータを用いた
- 13. データの概要 13 ID 学年 Q1 ・・ Q23 Q24 ・・ Q35 1 5 5 4 5 3 2 5 3 5 5 5 3 5 5 5 4 5 4 5 3 3 3 5 … … … … … … … … 五件法（1~5） 批判的思考 知的好奇心
- 14. 分析に用いたソフト 14 ソフト ●IBM SPSS Statistics 24 ●IBM SPSS Amos 24.0.0
- 15. 基礎集計 15 下位因子 Mean (SD) 批 判 的 思 考 探究的・合理的な思考 3.65 (0.89) 3.29 (0.79) 多面的な思考 3.49 (0.84) 3.27 (0.71) 反省的な思考 3.36 (0.95) 2.98 (0.82) 健全な懐疑心 3.44 (0.95) 3.49 (0.85) 知 的 好 奇 心 拡散的好奇心 3.68 (0.90) 3.23 (0.81) 特殊的好奇心 3.39 (0.94) 3.07 (0.92)
- 18. 相関行列 18 探究的 合理的 多面的 反省的 懐疑心 探究的・合理的な思考 1.000 0.734 0.702 0.108 多面的な思考 1.000 0.705 0.181 反省的な思考 1.000 0.077 健全な懐疑心 1.000 理科における批判的思考の下位因子間の相関係数 ●「健全な懐疑心」を除く３因子が，それぞれで強い相関がある
- 19. 探索的因子分析の結果 19 質問項目 因子 1 2 [多面的な思考4]実験のやり方に間違いはなかったか考える。 0.741 0.073 [多面的な思考3]実験の結果が出たとき，おかしいところはないか考える。 0.726 0.143 [探求的・合理的な思考3]自分が納得できるまで考えぬく。 0.701 -0.134 [反省的な思考2]友だちの予想におかしいところはないか考える。 0.677 -0.151 [探求的・合理的な思考6]よい考えを思いついても，もっとよい考えはないか探してみる。 0.677 0.060 [反省的な思考4]友だちの考察におかしいところはないか考える 0.660 -0.148 [探求的・合理的な思考4]ーつのやり方で問題が解決しないときは，ほかのやり方を試してみる。 0.658 0.052 [反省的な思考3]実験をする前，ほかの実験方法はないか考える。 0.645 -0.044 [反省的な思考1]自分の予想におかしいところはないか確かめる。 0.632 0.029 [探求的・合理的な思考2]自分の意見には，理由をつける。 0.629 -0.023 [多面的な思考1]実験データがうまく取れないとき，実験のやり方に間違いはないか確かめる。 0.605 0.038 [多面的な思考5]実験データが間違っているかもしれないと疑ってみる。 0.602 -0.034 [探求的・合理的な思考5]わからないことがあると質問したくなる。 0.585 -0.129 [多面的な思考6]都合が悪い実験データだからといって無視しない。 0.554 0.071 [探求的・合理的な思考7]自分の知らない「自然のできごと」を知りたい。 0.514 0.013 [多面的な思考2]一回目の実験結果だけをみて，二回目の実験結果を決めつけない。 0.481 0.198 [多面的な思考7]必要な実験データがそろっていないときは，結論を出さない。 0.473 -0.165 [多面的な思考8]一回の実験だけでは結果を信用しない。 0.473 0.283 [健全な懐疑心1]簡単な実験のときは，実験してみなくてもよいと思う。 -0.055 0.629 [健全な懐疑心2]くり返しやってみなくても，実験の結果はいつも同じだと思う。 -0.144 0.625 [健全な懐疑心3]インターネットで調べたことは，間違いがないと思う。 -0.010 0.396 最尤法，プロマックス回転，因子負荷量 .350を基準とした
- 20. 基礎集計（２回目） 20 下位因子 Mean (SD) 批 判 的 思 考 探究的・合理的な思考 多面的な思考 反省的な思考 3.49 (0.82) 3.19 (0.68) 健全な懐疑心 3.44 (0.95) 3.49 (0.85) 知 的 好 奇 心 拡散的好奇心 3.68 (0.90) 3.23 (0.81) 特殊的好奇心 3.39 (0.94) 3.07 (0.92)
- 22. 構造方程式モデリング（２回目） 22 探究的・合理的な思考 多面的な思考 反省的な思考 健全な懐疑心 特殊的好奇心 拡散的好奇心 0.84*** 0.10*** 0.90*** 0.09** 𝑅2= 0.68 𝑅2 = 0.79 ** : p < .01，***: p < .001 RMSEA = 0.06, CFI = 0.87 ●「探究・合理，多面，反省」のパス係数が相対的に大きい ●「健全な懐疑心」のパス係数は相対的に小さい
- 23. 多母集団同時分析 23 探究・合理 多面，反省 懐疑心 特殊 拡散 探究・合理 多面，反省 懐疑心 特殊 拡散 小学生と中学生の傾向に違いがあるかどうかを調べるために 多母集団同時分析を行った 小学生 中学生
- 24. 多母集団同時分析 24 探究・合理 多面，反省 懐疑心 特殊 拡散 探究・合理 多面，反省 懐疑心 特殊 拡散 0.89*** 0.04 0.92*** ***: p < .001 配置不変モデル，RMSEA = 0.05, CFI = 0.86 0.01 小学生 中学生 0.80*** 0.14*** 0.89*** 0.13*** ●小学生では，「健全な懐疑心」のパスが有意ではない ● 小学生では，「探究・合理，多面，反省」のパス係数が相対的に大きい 𝑅2= 0.79 𝑅2 = 0.83 𝑅2= 0.61 𝑅2= 0.76
- 28. 研究の概要 28 研究の目的 理科における批判的思考と知的好奇心の関係を明らかにする 探究的・合理的な思考 多面的な思考 反省的な思考 健全な懐疑心 特殊的好奇心 拡散的好奇心 0.84*** 0.10*** 0.90*** 0.09** 𝑅2= 0.68 𝑅2= 0.79 ** : p < .01，***: p < .001RMSEA = 0.06, CFI = 0.87