2017/08/26-30にかけて行われた情報オリンピック日本委員会主催の夏季セミナーにて勉強し、発表した内容です。

1. 二項ヒープ
@tokoroten_lab

2. はじめに
ただのデータ構造の紹介になってしまいました。
二項ヒープを知っている方は寝ましょう。

3. ヒープとは…
木構造
常に親ノードが子ノードよりも小さい(大きい)か等しい
(他) 二分ヒープ、フィボナッチヒープ
二項ヒープ
3
7
1
4
5
8
2
6
最小ヒープ

4. 二項ヒープ
二項ヒープは二項木の集合からなるヒープ
ヒープ同士のマージをO(logN)で行える
二項木とは…
ランク０の二項木 単一ノード
ランク r (0 < r) 1つの根とランクr-1, r-2, ..., 0を子とする木

5. 二項木
ランク 0 1 32

6. 二項木
ランク r の２つの二項木を繋げることでランク r + 1 の二項木を生成できる
片方をルートと0..r-1のノードに分割し、それにrのノードを加える
ノード数は 2^r 個になる

7. 構成する二項木の数
サイズ n の二項ヒープが持つ二項木はちょうど二進表記の１の位置に対応する。
→ 高々 log(n + 1) 個の木しか持たない。

8. 二進数との対応
例) n = 11, 2^0 + 2^1 + 2^3
二進表記は 1011 となり、ランク 0, 1, 3 の二項木から構成される
1 2
3 6
4
7
8
5
9
ランク 0 1 32
11
10

9. マージ
ヒープのマージは二進数の足し算のように行う
具体的には、ランクの低い木から順に同じランクの木を結合していく
繰り上がりもあることに注意する
計算量は O(log n)

10. マージ
6
7
5
8
1
2
3
4
ヒープA
110
ヒープB
010
ヒープA+B
1000

11. マージ
6
7
5
8
1
2
3
4
ヒープA
110
ヒープB
010
ヒープA+B
1000

12. マージ
6
7
5
8
1
2
3
4
ヒープA
110
ヒープB
010
ヒープA+B
1000

13. マージ
6
7
5
8
1
2
3
4
ヒープA
110
ヒープB
010
ヒープA+B
1000
3
4
1
2

14. マージ
6
7
5
8
1
2
3
4
ヒープA
110
ヒープB
010
ヒープA+B
1000
3
4
1
2
6
7
5
8

15. 挿入
要素を追加する際には、挿入する要素のみからなるヒープを作成する
それを挿入先のヒープとマージする
計算量はマージと同じになるため O(log n)

16. 二項木のルートノードを調べる
計算量はヒープ内の二項木の数に依存するため O(log n)
最小値の検索
6 3
4 8
1
7
9
5
7
11
10

17. 最小値削除
最小値を検索し、その要素を削除する
分離されたグループ内の部分木のリストを取得する
得たリストと元のヒープをマージする
計算量は検索及びマージと同じになるため O(log n)

18. 計算量
操作 計算量
最小(大)値の検索 O(log n)
最小(大)値の削除 O(log n)
要素の挿入 O(log n)
ヒープ同士のマージ O(log n)

19. おまけ Haskellによるマージの実装

20. 参考文献
純粋関数型データ構造 (著 : Chris Okasaki)
Wikipedia (https://ja.wikipedia.org/wiki/二項ヒープ)