学部時代に研究したオフィスデザインと組織パフォーマンスについての資料です。

1. 空間の開放度が
インフォーマルコミュニケーションに与える
影響に関する一考察
経営システム工学科 妹尾研究室
12_09200 立石健太
1

2. 背景・問題意識・研究目的
2

3. 背景
知識創造を重視する社会へと時代が移行するなかで、インフォーマルコミュ
ニケーションが注目されている。本研究では、「非公式かつ偶発的なコミュニ
ケーション」としてのインフォーマルコミュニケーションに注目する。
知識創造のプロセスにおいて重要な要素である知識や
アイデアの共有を促進する行為として、コミュニケーショ
ンのうち廊下での立ち話や喫煙所での会話など非公式
かつ偶発的なコミュニケーションのことを指す「イン
フォーマルコミュニケーション」が注目されている。
3
Takeuchi・Nonaka(1995)

4. 背景：コミュニケーションスペース
コミュニケーションを活性化するためにフリーアドレスオフィスを導入する潮
流に伴い、オフィス内外に存在する自席以外のスペース(コミュニケーション
スペース)を開放的にすることでインフォーマルコミュニケーションを活性化し
ようとする試みがなされている。
4
・オープンミーティングスペース
オープン化したミーティングスペース。通りがかりの人も参加すること
ができる
・マグネットスペース
カフェテリア、コピー機周辺、自販機周辺、コーヒーサーバ周辺など、
磁石のようにワーカを引きつけるスペース
Allen(2008)・佐藤(2013)
オフィス：企業が部門・部署単位で使用する空間のこと

5. 背景：コミュニケーションスペースと開放度
フリーアドレスオフィスでは、開放度を高めることで偶発的なコミュニケーショ
ンが発生することが先行研究から明らかになっている。
一方でコミュニケーションスペースに関して、開放度を高めることによる効果
を実証した研究は少ない。それどころか、開放度が高いと利用されないとい
う結果も見られる。
5
• 重役室の脇にあるラウンジは、他の重役にくつろいでいることを
見られたくないため使用されず、重役も他の従業員とともに食堂
を使って いた。
Mehrabian(1976)

6. 問題意識
6
コミュニケーションスペースの開放度はインフォーマルコミュニケーションに
影響を及すのではないか。
開放度：オフィス空間
主に自席や
執務スペース周り
コミュニケーション
開放度：コミュニケーション
スペース
オープンミーティングスペース
マグネットスペース
インフォーマル
コミュニケーション
先行研究
フリーアドレスの潮流に伴い開放度を高め
たコミュニケーションスペースが導入され
つつあるが、十分な研究がなされていない
本研究

7. 研究目的
7
コミュニケーションスペースの開放度がインフォーマルコミュニ
ケーションに及ぼす影響を明らかにすることで、インフォーマ
ルコミュニケーションを活性化しようとする企業に示唆を与える。
従来、会社におけるインフォーマルコミュニケーションは喫
煙室や給湯室、廊下などで行われてきた。近年は、イン
フォーマルコミュニケーションを誘発するためにマグネット
スペースやオープンミーティングスペースなどを導入する
傾向が見られる。
近年はインフォーマルコミュニケーションを活性化するた
めに開放度を高めたコミュニケーションスペースを導入し
ているが、スペースの開放度についての研究は十分に行
われていない。
背景
問題意識

8. RQ・仮説の設定
8

9. RQの設定
9
空間の物理的特徴から構成される開放度とユーザーのその空間に対
する認識・感情は、コミュニケーション・パターンに影響を及ぼす。
物理的特徴
空間に対する認識
空間に対する感情
会話量
会話相手
会話性質
コミュニケーション・パターン空間の開放度
阿部(2005-2007)

10. RQの設定
10
本研究では、この３変数を物理的開放度、認知的開放度、心理的開
放度とし、空間の開放度を構成するものと考えた
本研究ではインフォーマルコミュニケーションの量と性質に注目して
RQを設定する
物理的開放度
認知的開放度
心理的開放度
会話量
会話性質
インフォーマルコミュニケーション空間の開放度

11. RQの設定
11
本研究では、この３変数を物理的開放度、認知的開放度、心理的開
放度とし、空間の開放度を構成するものと考えた
本研究ではインフォーマルコミュニケーションの量と性質に注目して
RQを設定する
物理的開放度
認知的開放度
心理的開放度
空間の開放度
物理的特徴のうち、開放度に関連すると考え
られる項目で構成された値
ユーザーが各コミュニケーションスペースの開
放度を主観的に判断した値
ユーザーが各スペースを利用する際にどの程
度プライバシーが守られているかを主観的に
判断した値

12. RQの設定
12
本研究では、この３変数を物理的開放度、認知的開放度、心理的開
放度とし、空間の開放度を構成するものと考えた
本研究ではインフォーマルコミュニケーションの量と性質に注目して
RQを設定する
会話量
会話性質
インフォーマルコミュニケーション
そのスペースでどの程度の頻度でインフォー
マルコミュニケーションを行ったか
会話内容が業務内容に関係のあるものか、あ
るいは関係のない世間話のようなものか

13. RQの設定
13
空間の開放度は、インフォーマルコミュニケーションの量に影響を与えるか
RQ①
空間の開放度は、インフォーマルコミュニケーションの性質に影響を与えるか
RQ②
空間の開放度
物理的開放度
認知的開放度
心理的開放度
インフォーマル
コミュニケーション
RQ1
RQ2 会話量
会話性質

14. 仮説の構築
14
仮説1-1:物理的開放度の違いによってインフォーマルコミュニケーショの量に差が生じる
仮説1-2:認知的開放度の違いによってインフォーマルコミュニケーションの量に差が生じる
仮説1-3:心理的開放度の違いによってインフォーマルコミュニケーションの量に差が生じる
仮説2-1:物理的開放度の違いによってインフォーマルコミュニケーショの性質に差が生じる
仮説2-2:認知的開放度の違いによってインフォーマルコミュニケーションの性質に差が生じる
仮説2-3:心理的開放度の違いによってインフォーマルコミュニケーションの性質に差が生じる
RQ1
RQ2

15. アンケート調査概要・分析手順
15

16. アンケート調査概要
16
調査対象
製造業(M社)の人事部20名
→インフォーマルコミュニケーションの量・性質
その人事部が利用した経験のある
2つのオフィスのコミュニケーションスペース14箇所(予備調査で特定)
→物理的・認知的・心理的開放度を測定
質問項目
先行研究で用いられた質問項目を適宜修正
質問紙
M社の方に協力いただき、人事部の20名の方に質問紙(データ形式)を配布
回答数
20部(うち有効回答18部)

17. 分析手順
17
1. ヒストグラム・箱ヒゲ図を用いて、各コミュニケーションスペースにお
けるインフォーマルコミュニケーションのフロア効果、天井効果の有
無を確認する
→ 会話量は4箇所、会話性質は2箇所でフロア効果が確認された
2. 主成分分析とカテゴリー化によって、測定項目から物理的開放度と
心理的開放度を作成
3. 相関分析によって、会話量や会話性質と各開放度の相関関係を確
認する
4. ノンパラメトリック検定を用いて、各開放度の違いによってインフォー
マルコミュニケーションの量と性質に有意な差が生じるかを確認する
また3つ以上の群の検定では多重比較を行っている

18. 分析結果
18

19. 主成分分析手順・結果
19
阿部(2005-2007)をもとに物理的開放度は4つの質問項目から、心理的開放
度は３つの質問項目から主成分分析を行い、各変数を作成した。
物理的開放度
心理的開放度
(3項目とも同じ値で
あった)
遮蔽物の低さ
周囲の人数
スペースの場所
使用用途の有無
総合的プライバシ
会話のプライバシ
視線のプライバシ
認知的開放度
(１項目による測定)

20. 会話量と各変数の相関関係
20
会話量と認知的・心理的開放度では5%水準で有意な負の相関関係が確認された。
また、認知的開放度と心理的開放度の間に完全な相関関係が見られた。

21. 会話性質と各変数の相関関係
21
会話性質と各開放度には有意な相関関係が見られなかった。

22. ノンパラメトリック検定による仮説の検定結果
22
RQ１(会話量)では認知的・心理的開放度、RQ2(会話性質)では物理的開放度で
有意な差が確認された
Mann-WhitneyのU検定・Kruskal-Wallisの検定結果
会話量 会話性質
物理的開放度 棄却 5%で支持
認知的開放度 5%で支持 棄却
心理的開放度 5%で支持 棄却
N=162 N=198

23. RQ1に対する仮説の検定結果
23
認知的開放度および心理的開放度で、有意な差が見られた。相関分析の
結果からも、認知的開放度と心理的開放度が高くなるとインフォーマルコ
ミュニケーションの量は減少する傾向が確認された。
RQ1:空間の開放度は、インフォーマルコミュニケーションの量に影響を与えるか。
多い
少ない
低い 高い 低い 高い
＊
＊：5%有意で差が見られたペア
＊
認知的開放度 心理的開放度

24. RQ2に対する仮説の検定結果
24
物理的開放度で、有意な差が見られた。また、認知的開放度と心理的開放
度は会話性質に影響を及ぼさないことが明らかになった。
RQ2:空間の開放度は、インフォーマルコミュニケーションの性質に影響を与えるか
業務内容と
関連あり
業務内容と
関連なし
低い 高い
＊
＊：5%有意で差が見られたペア
物理的開放度

25. RQ2に対する追加分析
25
物理的開放度3のスペースはオフィス内に、物理的開放度4のスペースは
オフィス外にあることが明らかになった。
RQ2:空間の開放度は、インフォーマルコミュニケーションの性質に影響を与えるか
＊
物理的開放度3
• ミーティングスペース
• 立ちテーブル
• ファレスブース(オープンミーティングスペース)
• 本棚前
• クローバー型デスク
物理的開放度4
• 廊下(旧オフィス)
• 廊下(新オフィス)
• 食堂
物理的開放度

26. 考察
26

27. RQ2の検定結果に対する考察
27
Mann-WhitneyのU検定・Kruskal-Wallisの検定結果
会話性質
物理的開放度 5%で支持
認知的開放度 棄却
心理的開放度 棄却
N=198

28. RQ2の検定結果に対する考察 ①
28
インタビュー結果から、開放度ではなくそのスペースがどのように使われているかが会話
性質に大きく影響するという意見が得られた。追加分析では、有意な差が見られたペアは
オフィス内かオフィス外かで分類されることがわかった。このように会話性質においては、
開放度以外の要因が大きな影響を与えていると考えられる。
インタビュー結果
オフィス内のインフォーマルコミュニケーションは、会議やミーティングなどの
フォーマルなコミュニケーションの後に話されることが多く、業務内容に関連してし
まう。 ＊
物理的開放度3
• ミーティングスペース
• 立ちテーブル
• ファレスブース(オープンミーティングスペース)
• 本棚前
• クローバー型デスク
物理的開放度4
• 廊下(旧オフィス)
• 廊下(新オフィス)
• 食堂

29. RQ2の検定結果に対する考察②
29
本研究では、コミュニケーションスペースの開放度は会話性質に影響を及ぼさないという
結果が得られた。これは、会話性質を業務内容との関連で測定したことが原因と考えられ
る。
情報の機密性：開放度が高いと機密性のある内容が話されない可能性
アイデア出しや議論の有無：アイデア出しや議論がなされれば、その内容
が業務に直結する可能性がある
• 今後は、情報の機密性やアイデア出しや議論が出たかどうかなどに注
目して測定する必要があるだろう。

30. 本研究から得られた示唆
30
認知的開放度と心理的開放度を抑えることで、インフォーマルコミュ
ニケーションの量の減少を防ぐ施策
オフィス外でありながらも、業務に関連するインフォーマルコミュニ
ケーションを誘発する施策
• オフィス外のコミュニケーションスペースでも業務を可能にさせる
→オフィス外のスペースの使われ方がオフィス内と変わらなくなることで業
務関連の会話が誘発される。他部門とのコミュニケーションにより新しいア
イデアが生まれる可能性がある。
• 席の向きは入り口側を避けるなど、コミュニケーションスペースを利用す
るユーザーが、開放度が高いと感じないようにする工夫

31. 結論と本研究の限界・今後の課題
31

32. 結論
32
コミュニケーションスペースの開放度がインフォーマルコミュニケーションに
及ぼす影響を明らかにすることで、インフォーマルコミュニケーションを活性
化しようとする企業対して示唆を与える。
• 認知的開放度と心理的開放度が高くなるとインフォーマルコミュニケー
ションの量が減少する。
• コミュニケーションスペースの開放度は、会話性質に影響を与えない。む
しろスペースがオフィス外か否かなど、その他の要因による影響が大き
い可能性がある。
研究目的
発見事項

33. 本研究の限界と今後の課題
33
本研究の限界
• ユーザの主観的尺度である認知・心理的開放度を１人の値で代用している。
• インフォーマルコミュニケーションの性質を仕事の関連度のみで測定している
今後の課題
• ユーザー単位でのコミュニケーションの変化について研究する必要がある
• 物理的開放度と認知的・心理的開放度の因果関係を考慮する必要がある

34. 34
ご清聴ありがとうございました

35. 35
付録

36. 参考文献
36
AllenJ., & Gerstberger, P. G.T. 1973. “ Field experiment to improve
communications in a product engineering department.” [Human Factors]
15 [5]: 487-498.
AllenThomasJ. 1977. “Managing the flow of technology: Technology transfer
and the dessemination of technological information within the R&D
Organization.” the MIT press.
ConrathWDavid. 1973. “Communication Environment and Its Relationship to
Organization Structure.” management Science application series [2]:
586-603.
DavisR.VTim. 1984. “The Influence of the Physical Environment in Offices.”
The Academy of Management Review 9 [2]: 271-283.
DunbarRobin. 1998. ことばの起源-猿の毛繕い、人のゴシップ. 翻訳者: 服部清美 ,
松浦俊輔.
HatchJoMary. 1987. “Physical Barriers, Task Characteristics, and Interaction
Activity in Research and Development Firms.” Administrative Science
Qwarterly 32 [3]: 387-399.
KrautE., Fish, R.S., Root, R.W., & Chalfonte, B.L.R. 1989. “ Informal
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SpacapanOskamp & S.S. Human Reactions to Technology: The Claremont
Symposium on Applied Social Psychology [Sage publications] 145-199.

37. 参考文献
37
MolinskyAndy. 2013. Global Dexterity: How to Adapt Your Behavior Across
Cultures without Losing Yourself in the Process. Harvard Business Review
Press .
OldhamRGreg, , RotchfordLNancy. 1983. “ Relationship Between Office
Characteristics and Employee Reactions:A Study of the Physical
Environment.” Administrative Science Qwarterly 28 [4]: 542-556.
SundstromEric, , SundstromGMary. 1986. Workplace: the Psychology of Physical
Environment in Offices and Factors. Cambridge, Cambridge University Press.
SundstromEric, HerbertRKring, , BrownWDavid. “Privacy and Communication in
an open-plan offices:A case study.” Environment and Behavior 14 [3]: 379-392.
Takeuchi Hirotaka, , NonakaIkujiro. 1995. “The Knowledge-Creating Company:
How Japanese Companies Create the Dynamics of Innovation”. Oxford
University Press.
WinemanJD. 1982.“ The Office Environment as a source of Stress, in G. W. Evans
(Ed.)”. Cambridge University Press.
阿部智和. 2014-03. “オフィス空間のデザイン研究のレビュー : 知的創造性に 着目した
オフィス空間のデザインをめぐって.” 地域経済経営ネットワーク研究センター年
報 [北海道大学大学院経済学研究科地域経済経営ネットワーク研究センター] 3:
87-101.

38. 参考文献
38
阿部智和. 2014-03. “オフィス空間のデザイン研究のレビュー : 知的創造性に 着目した
オフィス空間のデザインをめぐって.” 地域経済経営ネットワーク研究センター年
報 [北海道大学大学院経済学研究科地域経済経営ネットワーク研究センター] 3:
87-101.
阿部智和. 2005-7. “オフィス空間の物理的特徴とコミュニケ－ション・パターンに関す
る考察” : 先行研究における分析手法の紹介. 一橋研究編集委員会, 1-14.
稲水. 2013. “ワークプレイスの多様性・柔軟性・統合性.” 組織科学 47: 4-14.
稲水伸行. 2008. “空間密度が行動・コミュニケーションに与える影響 ―ノンテリトリア
ル・オフィス移転の事例分析―”. 経済学研究科 企業・市場専攻, 東京大学大学院,
東京大学ものづくり経営研究センター.
亀田真澄, , 宇田川暢.. “Moodle による e–Learning における数学ソフトウェアの 活用
事例について.” 山口東京理科大学.
吉田悟. 1993. “オフィスにおけるプライバシーの再検討.” 産業・組織心理学研究 7
[2]: 21-31.
古川靖洋. 2006. “ホワイトカラーの生産性とオフィス環境”. 第 23 巻, 著: 総合政策研究,
1-11.

39. 参考文献
39
佐藤泰. 2013. “フリーアドレスにおけるマグネットスペースがワーカーの交流活動に与
える影響”. 北海道: 日本建築学会大会学術講演概集.
佐藤泰. 2013. “フリーアドレスオフィス空間の環境要素がワーカーの交流活動に与え
る影響.” 学術講演梗概集 [一般社団法人日本建築学会] 建築計画: 49-50.
谷塚祐太郎, 谷口美虎人, 坂下義明, 松本裕司, 城戸崎和佐, , 仲隆介. 2010. “オフィスに
おける場所の性質がコミュニケーションに与える影響.” 日本建築学会大会学術講演

40. 背景：インフォーマルコミュニケーションとは
コミュニケーションは、フォーマルとインフォーマルに分けられる。
インフォーマルコミュニケーションとは組織や集団内で行われる非公式かつ
偶発的なコミュニケーションのこと。
40
フォーマル インフォーマル
スケジュール 事前に決定 予定なし
参加者 事前に決定 予定なし
議事 事前に決定 予定なし
発言の方向 一方的 対話的
話の内容 貧弱 豊富
言葉 文語的 口語的
フォーマルコミュニケーションとインフォーマルコミュニケーションの違い
Fish et al (1990)
会議
打ち合わせ
報告など
フォーマル
インフォーマル
廊下での立ち話
喫煙室での会話
食堂での会話など
Sundstrom et al(1986)

41. 背景：フリーアドレス・オフィス
近年このインフォーマルコミュニケーションを含む偶発的なコミュニケーション
を活性化するために、オフィスを見渡しの良い開放的なレイアウトにする動
きが活発になっている。
このオフィスをフリーアドレス・オフィスという。
41
フリーアドレス・オフィス
壁やパーティションをなくしたオープン化と固定席を共有席にする自由席化
を達成したオフィス
オープン化によって周囲が見渡せることと、自由に場所を選んで仕事がで
きることから意図せざるコミュニケーションが自然発生する可能性もある
Allen&Gerstberger(1973)

42. 主成分分析結果
42
カテゴリ主成分分析によって物理的開放度の１変数を作成し、4件尺度にしている。
カテゴリ主成分分析結果
信頼性の基準:cronbachのα ≧0.7
固有値の基準≧1
＊ 心理的開放度の３項目は全て同じ値であったため、総合的プライバ
シーの値を心理的開放度としている。

43. 支持された仮説に関してのインタビュー結果
43

44. リサーチモデル
44
空間の開放度
物理的開放度
認知的開放度
心理的開放度
インフォーマル
コミュニケーション
RQ1
RQ2
会話量
会話性質
出所：筆者が作成

45. 仮説の構築
45
仮説1-1:物理的開放度の違いによってインフォーマルコミュニケーショの量に差が生じる
仮説1-2:認知的開放度の違いによってインフォーマルコミュニケーションの量に差が生じる
仮説1-3:心理的開放度の違いによってインフォーマルコミュニケーションの量に差が生じる
空間の開放度
物理的開放度
認知的開放度
心理的開放度
インフォーマル
コミュニケーションH1-1
会話量
H1-2
H1-3

46. RQ②に対する仮説の構築
46
仮説2-1:物理的開放度の違いによってインフォーマルコミュニケーショの性質に差が生じる
仮説2-2:認知的開放度の違いによってインフォーマルコミュニケーションの性質に差が生じる
仮説2-3:心理的開放度の違いによってインフォーマルコミュニケーションの性質に差が生じる
空間の開放度
物理的開放度
認知的開放度
心理的開放度
インフォーマル
コミュニケーションH2-1
会話性質
H2-2
H2-3

47. 予備調査
47
先行研究とM社の方への質問により、本研究が対象とするコミュニケーションスペー
スを決定した
旧オフィス
 廊下(先行研究)
 給湯室(先行研究)
 喫煙所(先行研究)
 通路側ミーティングスペース(M社Kさん)
 入り口横ミーティングスペース(M社Kさん)
 エレベーター横リラックススペース(先行研究)
 コラボレーションスペース：アイデア出しやブレインストーミングなど業務に関するイン
フォーマルコミュニケーションが見られる。(M社Kさん)
新オフィス
 廊下(先行研究)
 クローバー型デスク(オープンミーティングスペース)(M社Kさん)
 食堂(先行研究)
 昇降式立ちテーブル(オープンミーティングスペース)(M社Kさん)
 ファミレスブース(オープンミーティングスペース) (M社Kさん)
 本棚前：本を探しに来た人による偶発的な会話が行われる可能性(M社Kさん)

48. RQ1に対する追加分析
48
なるとインフォーマルコミュニケーションの量は減少する傾向が確認された。
RQ1:空間の開放度は、インフォーマルコミュニケーションの量に影響を与えるか。
＊
＊
認知心理的開放度2
• 入り口横ミーティングスペース
• ファレスブース(オープンミーティングスペース)
認知心理的開放度4
• 廊下(旧オフィス)
• 通路側ミーティングスペース
• 立ちテーブル(オープンミーティングスペース)
• クローバ型デスク(オープンミーティングスペース)
• 食堂
• 廊下(新オフィス)

49. RQ1の検定結果に対する考察
49
Mann-WhitneyのU検定・Kruskal-Wallisの検定結果
会話量
物理的開放度 棄却
認知的開放度 5%で支持
心理的開放度 5%で支持
N=162

50. RQ1の検定結果に対する考察
50
物理的開放度では会話量に有意な差が見られなかったが、認知的開放度
と心理的開放度の関係性を考慮すると、その影響は無視できない。むしろ、
物理的開放度のどの部分が認知的開放度と心理的開放度を説明しうるの
かを研究する必要がある。
• 認知的開放度と心理的開放度は、スペースを主観的に判断した値である。
• 物理的開放度は認知的開放度と心理的開放度との間に強い正の相関関係がある。

51. 本研究の貢献
51
阿部や古川が研究を進めていた空間の開放度とコミュニケーションの関係に関して、特に
執務空間以外のスペースの開放度とインフォーマルコミュニケーションの関係に注目する
ことで近年の企業動向に新しい示唆を与えることができた。
開放度：オフィス空間 コミュニケーション
開放度：コミュニケーション
スペース
インフォーマル
コミュニケーション
先行研究
本研究
• 認知的開放度と心理的開放度が高くなると会話量が減少する。
• コミュニケーションスペースの開放度は、会話性質に影響を与えない。

52. リサーチデザイン
インフォーマルコミュニケーションの量および性質は5段階リッカートで質問する
⼊⼒
⼒⼒必
須 1.⾏⾏⾏って いない 2.あまり、⾏⾏⾏って いない 3.どちらとも⾔⾔えな い 4.やや、⾏⾏⾏って いる 5.頻繁に、⾏⾏⾏って いる
⼊⼒
⼒
⼒
必
須 1.全く仕事と関係ない 2.あまり仕事と関係ない 3.どちらとも⾔⾔えな い 4.やや、仕事と関係ある 5.かなり仕事と関係ある
⾏い
選択肢
各スペースでの会話量と会話の性質について
各スペースの開放度の変数について