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レジュメ付属の資料編
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「テロ組織に対するジュネーヴ条約共通3条の適用」の補足情報を載せた資料編
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レジュメ付属の資料編
1.
2016 年 11
月 26 日(土) 愛知大学 国際法ゼミ 人道法班 資料編
2.
1 目次 I. 9・11 同時多発テロ事件とそれを契機としたアフガニスタン紛争・・p.2~3 II.
条約条文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.4~5 III. マルテンス条項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.6 ~7 IV. 関係判例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.8~9
3.
2 I. 9・11 同時多発テロ事件とそれを契機としたアフガニスタン紛争 2001
年 9 月 11 日 米民間航空機 4 機ハイジャックされ,このうちの 2 機がニュー ヨークの国際貿易センタービルに相次いで激突 10 月 7 日 米、自衛権行使を安保理に報告 11 月 13 日 米国大統領軍事命令発布…*1 2002 年 2 月 7 日 大統領決定…*2 6 月 11 日~ 6 月 19 日 アフガニスタンにおける緊急 Loya Jirga(国民大会議)が開催 アフガニスタン、カルザイ政権誕生 2003 年 3 月 20 日 対イラク軍事活動開始 * 1. 拘束したテロリストを軍事委員会で裁くことを認める趣旨 2. バイビー司法次官補、パウエル国務長官覚書、タフト国務省法律顧問の各覚書を検討し た上で、ジュネーヴ諸条約はアルカイダと米国との紛争に適用されない、と決定。
4.
3 【米国がテロリストに対して実施した尋問手段】 1 食餌操作。一日 1000
キロカロリーの摂取に減らし、被拘禁者に栄養剤のエンシュア・ リキッド一本しか与えない。 2 摂氏 20 度以上の部屋で裸にする。女性尋問官が使われるときも含め、裸体を見られる という被拘禁者の恐怖に付け入ることができる。 3 気をつけ掴み。制御されたすばやい動きでシャツの襟を掴み、被拘禁者を引き寄せる。 4 壁ぶつけ。柔らかい壁面に、二、三十回叩きつける。 5 顔押さえ。尋問官が両手の掌で被拘禁者の顔を押さえる。 6 びんた、もしくは侮辱的平手打ち。顎と耳たぶのあいだぐらいの頬を平手で打つ。 7 腹叩き。拳ではなく手の甲で、臍と胸骨のあいだを打つ。 8 狭い場所に閉じ込める。たいがい真っ暗にする。一度に八時間、あるいは一日に十八時 間以内。きわめて狭い場所では二時間以内。無害な虫を入れて、被拘禁者を怯えさせる。 だが、この尋問技術は使用されなかった。 9 壁立たせ。両腕をのばし、指が壁に触れるようにして被拘禁者を直立させる。動くこと は許されず、一時的な筋疲労を起こす。 10 無理がかかる姿勢三種類。 A) 脚をのばして床に座り、両腕をあげる。 B) 四十五度傾いてひざまずく。 C) 前もしくはうしろで手錠をかけ、壁から九十センチ離れたところから、頭だけで壁 に もたれさせる。 D) 壁立たせとおなじで、これらの姿勢は一時的な筋疲労を起こす。 11 水浸し。被拘禁者に冷水を注ぐかスプレーする。水浸しにする最長の時間は、低体温症 を起こす時間の三分の二。 12 四十八時間以上の睡眠妨害。被拘禁者を立たせ、手錠をかけて、天井に鎖でつなぐ。足 は足かせで床に固定する。両手が心臓と顎のあいだにくるようにする。頭より上に手を 挙げていられるのは二時間だけだ。小さなスツールに足かせで固定してもよいが、鎖に 体重をかけて天井からぶらさがるようにしてはならない。裸にしてオムツをつける場 合もある。オムツは衛星のためであり、「被拘禁者を辱めるために使ってはならない」。 最長時間は百八十時間、もしくは一週間以上。そのあとは邪魔されない睡眠を八時間あ たえなければならない。 13 水板責め。被拘禁者を板に紐で固定し、足を高くする。被拘禁者の顔に布をかぶせて、 その布の上から四十秒以上水を流す。肉体的苦痛はないが、「たいがいの場合、恐怖と パニックを起こし」、溺れるような感覚を生じさせる。テロ攻撃が差し迫っていて、被 拘禁者がその攻撃を阻止できる使用可能な情報を持っているという、たしかな情報が ある場合のみ使用できる。水板責めによる二時間の尋問を一日に二回、五日まで、つづ けて行なうことができる。水を流す一日の延べ時間は十二分以内。
5.
4 II. 条約条文 ジュネーヴ諸条約 共通 2
条 平時に実施すべき規定の外、この条約は、二以上の締約国の間に生ずるすべての宣 言された戦争①又はその他の武力紛争の場合②について、当該締約国の一が戦争状態を承認 するとしないとを問わず③、適用する。 この条約は、また、一締約国の領域の一部又は全部が占領されたすべての場合に ついて、その占領が武力抵抗を受けると受けないとを問わず、適用する。 紛争当事者の一がこの条約の締約国でない場合にも、締約国たる諸国は、その相 互の関係においては、この条約によって拘束されるものとする。更に、それらの諸国は、 締約国でない紛争当事国がこの条約の規定を受諾に、且つ、適用するときは、その国との 関係においても、この条約によって拘束されるものとする。 共通 3 条 締約国の一の領域内に生ずる④国際的性質を有しない武力紛争⑤には、各紛争当事者は、少 なくとも次の規定を適用しなければならない。 (1) 敵対行為に直接参加しない者(武器を放棄した軍隊の構成員及び病気、負傷、抑留その 他の事由により戦闘外に置かれた者を含む。)は、すべての場合において、人種、色、宗教 若しくは信条、性別、門地若しくは貧富又はその他の類似の基準による不利な差別をしない で人道的に待遇しなければならない。 このため、次の行為は、前記の者については、いかなる場所でも禁止する。 (a) 生命及び身体に対する暴行、特に、あらゆる種類の殺人、傷害、虐待及び拷問 (b) 人質 (c) 個人の尊厳に対する侵害、特に、侮辱的で体面を汚す待遇 (d) 正規に構成された裁判所で文明国民が不可欠と認めるすべての裁判上の保証を与える ものの裁判によらない判決の言渡及び刑の執行 (2) 傷者及び病者は、収容して看護しなければならない。赤十字国際委員会のような公平 な人道的機関は、その役務を紛争当事者に提供することができる。 紛争当事者は、また、特別の協定によって、この条約の他の規定の全部又は一部を実施す ることに努めなければならない。 前記の規定の適用は、紛争当事者の法的地位に影響を及ぼすものではない。
6.
5 第 1 条約第
63 条【廃棄】 各締約国は、この条約を自由に廃棄することができる。 廃棄は、書面でスイス連邦政府に通告しなければならず、スイス連邦政府は、その 通告をすべての締約国の政府に伝達しなければならない。 廃棄は、スイス連邦政府にその通告をした後一年で効力を生ずる。但し、廃棄する 国が紛争に加わっている時に通告された廃棄は、平和条約が締結され、且つ、この条約によ って保護される者の解放及び送還に関連する業務が終了するまでは、効力を生じない。 廃棄は、廃棄する国についてのみ効力を生ずる。廃棄は、文明国民の間で確立して いる慣行、人道の法則、公衆の良心の命ずるところ等に由来する国際法の原則に基いて紛争 当事国が引き続き履行しなければならない義務を害するものではない。 第 1 追加議定書 1 条 1 締約国は、すべての場合において、この議定書を尊重し、かつ、この議定書の尊重 を確保することを約束する。 2 文民及び戦闘員は、この議定書その他の国際取極がその対象としていない場合に おいても、確立された慣習、人道の諸原則及び公共の良心に由来する国際法の諸原則に基づ く保護並びにこのような国際法の諸原則の支配の下に置かれる。 3 この議定書は、戦争犠牲者の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ諸 条約を補完するものであり、同諸条約のそれぞれの第2条に共通して規定する事態につい て適用する。 4 3に規定する事態には、国際連合憲章並びに国際連合憲章による諸国間の友好関 係及び協力についての国際法の諸原則に関する宣言にうたう人民の自決の権利の行使とし て人民が植民地支配及び外国による占領並びに人種差別体制に対して戦う武力紛争を含 む。
7.
6 III. マルテンス条項 ○ マルテンス条項の
3 要素 〈図1〉 しかし――― マルテンス条項の内容について、ハーグ会議で十分な検討が行われた形跡はなく、その 3 要素がいかなるものなのか、いかにして適用されるかといった実際的問題についての手が かりは何も残されていない。 【根拠事例】 ○ ニカラグア事件判決 → 国際司法裁判所(ICJ)がはじめてマルテンス条項に言及した判例 米国は「ゲリラ戦における心理作戦」と題するマニュアルを作成し、ニカラグアの反政府 団体コントラに配布したことにより、コントラが人道法の一般原則に反する行為を行うこ とを奨励した問題。 ※ 米国の強制管轄権受諾宣言に付した多数国間条約の留保のため、ジュネーヴ諸条約の 下で生じる紛争を扱うことができない。 【ICJ】 (a) マルテンス条項(廃棄条項:第 1 条約 63 条)に言及し、ジュネーヴ諸条約の規定が 適用できなくとも、その根底にある人道法の一般原則が適用できると示した (b) ジュネーヴ諸条約共通 3 条に規定された、非国際的武力紛争に適用される規則は「人 道の基本的考慮」を反映するものと認定 (c) 人道の諸原則はコルフ海峡事件判決にいう「人道の基本的考慮」と同じ 確立された慣 習 人道の諸原則 公共良心の要 求 これら 3 要素から導かれる国際法の原則を 遵守
8.
7 ◎ 人道の諸原則と「人道の基本的考慮」 〈図 2〉 【図
2 より】 マルテンス条項の一要素である人道の諸原則が「人道の基本的考慮」と同義であるなら ば、共通 3 条はマルテンス条項の人道の諸原則としての性格を有すると考えられる。 マルテンス条項 人道の諸原則 共通 3 条 「人道の基本的考慮」 反映
9.
8 IV. 関係判例 【ICJ コルフ海峡事件判決(1949
年)】 ○ 事件概要 ① 1944 年 10 月/翌年 1 月・2 月 イギリス軍によりコルフ海峡が掃海され、航行の安全 が公表される。 ② 1946 年 5 月 15 日 安全だと考えたイギリスは、2 隻のイギリス軍艦を通航させる。そ こでアルバニア沿岸から砲撃を受けるという事態が発生した。 ③ 1946 年 10 月 22 日 先のアルバニアの態度をただす目的で、イギリスは 4 隻の軍艦に よる北コルフ海峡(アルバニア領水内)北上を敢行。その際 4 隻の軍艦のうち、2 隻が 機雷に触れ大破し、多数の死傷者が出た。 ④ 同年 11 月 12 日~13 日 事件後、イギリスはコルフ海峡の掃海を実施した。その際、 ドイツ製の機雷 22 個を発見した。 ⑤ イギリスは国連安全保障理事会に事件を付託。 ⑥ 安保理は、両国に紛争を国際司法裁判所に付託して解決することを勧告した。 ○ 争点 A) アルバニアの機雷に関する責任 B) イギリスのアルバニア主権の侵害(海峡通航・機雷掃海) ○ 本案判決(1949 年) ……アルバニア政府の義務は……その機雷に近づきつつあったイギリスの軍艦にその差し 迫った危険を警告することである。この義務は 1907 年のハーグ条約から生ずるものでは ない。……むしろ、一般的に確立された原則、すなわち人道の原則(人道の基本的考慮)、 海洋交通の自由、そして自国の領域を、そのことを知りながら、他国の領域を侵害するよ うな形で使用させてはならないというすべての国家の義務である……かくて、裁判所は 1946 年 10 月 23 日のアルバニア領海内で起こった爆発。およびそこで生じた物的人的損 害に対して、アルバニアは国際法上の責任があり、イギリスに対して賠償を支払う義務が あると結論する。 A) アルバニア政府には、領水内の機雷に近づきつつあったイギリスの軍艦に危険を知ら せる義務があった。この義務は(戦時にしか適用されない)ハーグ条約(自動触発海底 水雷の敷設に関する 1907 年のハーグ条約)から生じるものではなく、一般的に確立さ れた原則に(人道の基本的考慮、海上交通の自由の原則、領域管理責任の原則)よるも のである。 B) コルフ海峡は国際海峡であり、沿岸国による交通の制限が課されるものではない。した がって、イギリス軍艦のコルフ海峡通航は主権侵害にあたらない。他方、領域主権尊重 の立場からは、イギリスの一方的な掃海行為は領域主権の侵害を構成する。
10.
9 【ICJ ニカラグア事件判決】 ○ 事件概要 ①
1979 年 7 月 アメリカのレーガン政権は、ニカラグアの反政府組織コントラを支援 (資金援助、組織の構築、訓練、活動全体の立案) ② コントラはアメリカの実効的支配の下にニカラグアに対し、多大な物的損害と人的損 失を負わせる (非国際的武力紛争) ③ アメリカは、自ら雇用した要員を使って、ニカラグアの港湾に機雷を敷設し、港湾・ 石油施設・海軍基地などを攻撃(国際的武力紛争) ④ 1984 年 ニカラグアは、アメリカの国際法違反と損害賠償義務の存在の宣言を求め国 際司法裁判所に提訴 ○ 判決概要 【アメリカの行為】 米国大統領の許可によって同国機関の指示を受けた要因によってニカラグアの港湾に 機雷を設置された。 → この行為は米国に帰属。 米国のコントラへの支援の終了後もコントラは単独で活動していたため、完全な支配 従属関係はとまでは至らなかった。 → コントラの行為が完全にアメリカに帰属すると証明するには不十分である。 【適用法】 武力不行使原則:米国の行為は武力不行使原則違反 武力不行使原則が慣習法としての法的確信は友好関係宣言などに対する諸国の態度か ら導かれる。 → 米国とニカラグアはこの点は意見が一致 自衛権:米国による集団的自衛権の要件は満たされていない 慣習法上、攻撃を受けた旨の武力攻撃の犠牲国による宣言と、犠牲国による要請が、 集団的自衛権行使の要件である。 不干渉原則:米国のコントラへの行為は不干渉原則に明白に違反した。 武力攻撃に至らないが武力行使を含む干渉に対して(被害国が)武力で対応できるか の問題の解決は、本件では必須ではない。 → 現行国際法上、武力攻撃でない行為への集団的な武力対応の権利は存在しない。
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