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Boom Technology社事例
- 1. 背景と課題 Boom Technology社は、空の旅を再定義することを目指して いるスタートアップ企業です。同社が取り組んでいるのは、東京・ サンフランシスコ間をわずか5.5時間で結ぶ超音速ジェット旅客 機の開発です。これが実現すれば、海外出張のあり方が一変し、 長年にわたり停滞している産業が活性化されると期待されます。 設立からわずか数年の同社ですが、すでに多額の資金提供を受 けており、世界中の航空会社から75件を超える予約注文を獲得 しています。 Boomのこの革新的技術は、驚異的な技術力で世界を驚かせな がらも経済的には失敗に終わったコンコルドの導入から、実に 40年以上の歳月を経て誕生することになります。同社は、コンコ ルドの導入から長い年月が経った今、最新鋭のシミュレーション とクラウド技術を駆使して、コンコルドが成し得なかった持続可 能な事業モデルの達成という目的に向かっています。しかし、航 空分野で大きな技術的進歩を成し遂げるのは容易なことではあ りません。従来より、莫大な資金を投じての研究開発や、多数の技 術者、大規模な風洞テスト、長年にわたる開発などが必要でした。 近年では、高度な流体や機械的応力のシミュレーションツールの 導入により、物理的試験の必要性やコストは低下していますが、 そのためには、有効な成果を得るため、高額なHPC専用リソース が必須となります。 限られた資金で並外れた夢を実現する第一歩として、Boomはパ ブリッククラウドに目を向けました。自社用のHPCクラスターの構 築には莫大な初期費用がかかるためです。自社で独自のソフトウ ェアのインフラとミドルウェアを開発し、オンデマンドのパブリック クラウドで計算クラスターを稼働させることを検討した時期もあ りましたが、それに必要なITやソフトウェア開発にかかる資金も やはり莫大でした。 時間と費用を投じて独自のソフトウェアとハードウェアのインフラ を設置することなく、高性能な従量課金制の計算クラスターが直 ちに必要であった同社は、設立当初よりRescaleの企業向け大 型計算プラットフォーム上ですべてのシミュレーションを行ってい ます。これによりBoomは、IT設備への資金投入を回避しながら、 実質的に無限の計算能力が得られます。これはどちらも、資金が 限られた新興企業にとっては大きな利点です。つまり、Rescale のサービスが、Boom、そしてその技術の「離陸」を可能にしたの です。 Rescaleのソリューション 現在、BoomはRescaleのプラットフォームScaleX®を、主に航 空機全体の空力解析に用いています。たとえば、最適な温度、圧 力、速度でジェットエンジンへの流入空気を減速させるよう設計 した超音速インレットのシミュレーションを行っています。なお、同 社は、NASAのCart3DとFun3Dという2つのオープンソースの CFDソフトウェアアプリケーションを使用していますが、この2つ は、ScaleXクラウドプラットフォーム上にネイティブに組み込まれ 最適化されている200を超えるソフトウェアアプリケーションの 一部に過ぎません。 Boom Technology社が、クラウドHPCシミュレーションによって 超音速旅客機の「離陸」を可能に www.rescale.com/jp 「Rescaleのクラウドプラットフォームは、工学分野に大きな変革をも たらすものです。当社はこの技術を通して、大規模なHPCセンターを オンプレミスで構築するのに匹敵する計算リソースを得ることができ ました。Rescaleによって、最小限の設備投資と資金で迅速に開発でき るようになりました。」 ジョシュア・クラール（Joshua Krall） Boom社 共同設立者兼最高技術責任者（CTO） Boomは、Rescale上でCFDを使用し、超音速性能に向けた機体の最適 化を図っています。周囲空気に対する断面変動と擾乱の比を低下させる ため、機体は次第に先が細い形状となっています。 CASE STUDY Rescaleは、パブリッククラウド上で高度な工学ソフトウェアと HPCハードウェアをつなぐターンキー型のインターフェースを提 供しているため、Boom社は、IT管理タスクに気を取られることな く自社の中核的な開発能力に注力することができます。 Rescaleのおかげで、Boomは自社内にITリソースを備える必要 がないうえ、ScaleX Enterpriseの管理ポータルでIT管理をこれ までになくシンプルに行えるようになりました。具体的には、プロ ジェクトやチームに対するコストの予算管理や、ハードウェアとソ フトウェアのカスタムパーミッションによるチーム管理、多要素認 証やシングルサインオンなどの機能によるセキュリティ管理など が可能になりました。Boomは、米国の武器国際取引に関する規 制（ITAR）が航空宇宙技術と防衛技術に求める追加的なセキュリ ティーレベルを満たすため、すべてのシミュレーションをRescale が指定したITAR準拠プラットフォーム上で行っています。 Boomは、RescaleのScaleXプラットフォームを使用して、渦揚 力を伴う飛行状態をはじめとする飛行エンベロープのNavi- er-Stokes非構造化CFDシミュレーションを行っています。翼上の 渦のシミュレーションには高密度のメッシュが必要で、2億セルを 超えるものになるため、HPCが必要になります。 Boomの超音速デモ用モデルXB-1のシミュレーションは、AWSのインフ ラを基盤とするクラウドHPC用のRescaleのプラットフォーム上で行われ ました。
- 2. Boomは、ScaleXプラットフォームを通してクラウド上のカスタ マイズしたクラスターでジョブの処理能力を拡大させており、高 度な計算集約型ジョブを、その複雑性に応じて数分から数時間で 完了することができます。 同社は、翼全体にわたるパラメーター設計調査を頻繁に実施す ることで、設計上の目的を達成すべく、さまざまな形状の可能性 を追求しています。 こうした計算集約型のシミュレーションでは、現実的にHPCクラ スターを実行する必要がありますが、Boomは、Rescaleの大規 模なコンピュートプラットフォームを通してクラウド上でこうした ジョブを立ち上げることができます。クラウドのハードウェア構成 はスケーラブルで、従量課金制となっています。このため同社は、 予算やプロジェクト期間といった制約に応じてシミュレーション をスケールアウトしたり、実行時間を短縮したりすることができま す。同社は定期的に512のコア上でシミュレーションを行ってい ますが、Rescaleが誇るクラウドリソースのグローバルネットワー クにより、さらなるスケールアウトも可能です。 メリット Rescaleの導入により、Boomは革新的な工学設計を通して、停 滞する業界セグメントを活性化することができました。同社は、リ ーンスタートアップ企業としてのこれまでの実績や発展を武器 に、ボーイング社やエアバス社などの業界の大手企業と競争す るには大規模な先行投資が必要であるとの従来の考え方に挑戦 しています。 Rescaleについて Rescale™は、エンタープライズ ビッグコンピュート分野のグロ ーバルリーダー企業です。 RescaleのScaleXプラットフォーム は、数百を超えるソフトウェアと世界最大かつ最も強力なHPCネ ットワーク上に構築された柔軟なハイブリッド、プライベート、パ ブリックのクラウドリソースを活用するスケーラブルでセキュアな オンデマンド・クラウドHPC環境です。ScaleXを利用することで 設計者や研究者は、工学設計から科学技術計算、およびディープ ラーニング（深層学習）に至る幅広い分野において、より速く、より 良い成果を得ることができます。 Rescaleの詳細については以下をご覧ください。 www.rescale.com/jp ©2017 Rescale, Inc. Rescale, Inc. 944 Market Street Suite 300 San Francisco, CA 94102 Rescale Japan株式会社 150-0002 東京都渋谷区渋谷1-23-21 co-lab渋谷キャスト 03-6427-2800 Produced in the United States of America All Rights Reserved Boomは、オンデマンドでシミュレーションを拡大し、従量課金によ り支出を抑えることで、以下を実現しています。 • シミュレーションのスループットを高め、製品化までの時間を短 縮：Boomの技術者は、一名につき100の設計構成を一度に 評価できるようになり、各ジョブの実行を通常のワークステーシ ョンの6倍以上の速さで遂行しています。複数のジョブを並行処 理するため、シミュレーションのターンアラウンドタイムが飛躍 的に向上しました。 • 事業の迅速な拡張： 会社の急速な成長に伴い、シミュレーショ ンのスループットを継続的に加速する一方で、新人技術者の研 修時間を最小限に抑えることが重要です。新入社員のラーニン グカーブ（学習曲線）を抑えるうえで、社内のシミュレーションワ ークフローの自動化や、RescaleのScaleXプラットフォーム上 での集中データ管理が欠かせないものになっています。 • IT諸経費を排除： 社内にIT部門に設置してデータ管理のため の開発やメンテナンスを行うことを回避できました。その代わり に、製品開発に全力を傾けることができました。 CASE STUDY Rescale、ScaleX は米国における Resale, Inc. の商標または登録商標です。その他の名称は，米国およびその他の国における登録商標または商標です。 Rescaleによって、Boom社のシミュレーション技術者は、AWSクラウド 上でジョブをスケールアウトし並行処理を行っています。このため、通常 のワークステーションの600倍の速度でジョブを実行できます。 3,300万ドル以上を調達したBoomは、2017年6月にパリで開催された 航空ショーで、すでに航空会社から76件を受注しており、2023年に納品 予定であることを公表しました。