配当政策と将来利益の関係

1. 配当政策と将来利益の関係
山田ゼミ３班
小山、堀内、牧野、藁谷
1

2. 概要
• 目的
– 配当政策と将来利益の関係を分析する
• 分析方法
– 東証一部、非東証一部（東証二部、マザーズ、ジャスダッ
ク）に上場する企業の財務データを用いて配当政策と将来
利益の関係について最小二乗法を用いて分析する
• 結果
– 配当政策と将来利益には正の関係がある。また、前期から
今期の配当の変化額も将来利益と正の関係がある
– 東証一部企業より非東証一部企業の方が配当の将来利
益に与える影響が強い
2

3. INDEX
1. 導入
2. 仮説の展開
3. 検証方法
4. 分析結果
5. まとめ
3

4. 導入｜研究背景①
上場企業(2200社)の配当額が、2014年3月期
は過去最高になる見通しだ。（日経新聞 2013年5
月19日）
4
（日経新聞 2013年2月28日）
企業にとって配当政策
が重要視されている！

5. 導入｜研究背景②
5
(2014/04/21 日本経済新聞)
企業だけでなく投資家にとっても配当政策への
関心が高まっている

6. 導入｜先行研究①
• 日本の企業の約８割が配当を実施しており、その半数が安定配
当をしている（安定配当：約45％、増配：32％、減配：11％、無
配12％）。 （石川,2010）
• 経営者は配当水準を維持するだけの好業績を達成し続けること
に対する不安や、配当額の変動による株価下落を招く可能性を
感じているため、配当額は硬直的になる。（Damodaran,２００６）
– 日本でも同様の傾向が確認されている（野間・本多,2005、諏訪
部,2006）
6
配当の現状：多くの企業の配当政策は硬直的で安定
しており、一部の企業で増減配が行われている

7. 導入｜先行研究②
• 配当政策は情報の非対称性が大きい企業ほど将来
利益に対するシグナルとして機能し、株価も強く反応
する（佐々木,2010）
• 有配企業は無配企業よりも利益持続性が高く、有配
企業の中でもとりわけ増配企業の利益持続性が高い
（青木,2011）
7
配当政策の先行研究には、シグナリング効果や
利益持続性との関わりに注目したものがある

8. 導入｜本研究のポイント
8
• 配当と翌期の利益の関係を分析する１
• 配当の水準と変化額について分析する２
• 情報の非対称性の程度に注目し、上場
場所を区分して分析する３

9. INDEX
1. 導入
2. 仮説の展開
3. 検証方法
4. 分析結果
5. まとめ
9

10. 資産
負債
資本
仮説の展開｜仮説１
配当は内部資金（当期利益）から支払われる。
配当を支払った後は、内部留保となり成長のための投資
に利用することができる。
【内部資金の多くを配当に回した場合】
投資を行うために外部から資金調達をすることがある。
このとき、外部からの資金調達にはコストがかかる。
10
純資産
（内部資金）
外部から
資金調達将来への投資
配当
コスト

11. 配当政策によって差別化ができるのでは…
業績の悪い企業：配当することが大きな負担である。
業績の良い企業：配当することが容易である。
配当政策は将来の業績と関係しているのではないか
仮説の展開｜仮説１
仮説１-a
仮説１-b
配当額と将来利益には正の関係がある
配当の変化額と将来利益には正の関係がある

12. 仮説の展開｜仮説２
上場場所によって情報の非対称性の大きさは異なる
東証一部企業に比べて非東証一部企業は
株価の反応が大きい
市場を区分して分析を行うと非東証一部の方が
配当政策と将来利益の関係が強いのではないか
仮説２
東証一部企業より非東証一部に上場している
企業のほうが配当政策と将来利益の関係が強い

13. INDEX
1. 導入
2. 仮説の展開
3. 検証方法
4. 分析結果
5. まとめ
13

14. 検証方法｜モデルの構築
配当と将来利益がどのように関係しているかを調べるた
め、被説明変数に将来利益、説明変数に配当を用いた
モデルを基礎とする。
14
配当の水準と変化額の分析を行うために、配当総額(DIV)
を前期の配当額と今期の配当額(ΔDIV)に分解する

15. 検証方法｜仮説１
15
基礎のモデルを展開したものにコントロール変数と年次ダミーを加えたモデルを用いる。
・・・(1)
コントロール変数 予想符号 定義
ln(総資産) (＋/－) 企業規模をコントロール
負債比率 (＋/－) 安全性をコントロール
H1a:(+) H1b:(+)

16. 検証方法｜仮説２
• 東証一部と非東証一部を分けて分析する
• モデル(１)を用いて、東証一部と非東証一部の
β₁とβ₂を相互に比較する
• 東証一部のほうが情報の非対称性が小さいた
め、β₁,β₂どちらも東証一部より非東証一部の
方が大きくなると予想される
16
予想
β1 一部＜非一部
β2 一部＜非一部

17. 検証方法｜サンプル選択
条件
１ 2010～2013年のデータであること
２ 東証一部、東証二部、東証マザーズ、ジャスダックに上場している企業であること
３ 決算月数が12ヶ月であること
４ 証券、保険業を除く一般事業会社であること
５ 分析に必要な変数が欠損していないこと
17
上記の条件を満たすサンプルは、東証一部上場企業が3012
企業-年、非東証一部企業が2320企業-年となった。
Nikkei NEEDS Financial QUESTより収集

18. INDEX
1. 導入
2. 仮説の展開
3. 検証方法
4. 分析結果
5. まとめ
18

19. 分析結果｜仮説１
【仮説1-ａ】配当額と将来利益には正の関係がある
【仮説1-ｂ】配当の変化額と将来利益には正の関係がある
19
予想符号 係数 ｔ値
切片 -0.399 -2.635 ***
配当ｔ-1 (+) 1.464 1.884 *
⊿配当ｔ (+) 1.099 1.687 *
ln(総資産) (+/-) 0.058 4.211 ***
負債比率 (+/-) -0.494 -4.473 ***
年次ダミー YES
Adj.R2 0.006
サンプルサイズ 5,332
***,**,*はそれぞれ統計的に1％,5％,10％水準で有意であることを示す。
将来当期利益
予想 結果
仮説１-a β1＞0 β1＞0
仮説１-b β2＞0 β2＞0

20. 分析結果｜仮説２
【仮説２】
東証一部企業より非東証一部企業のほうが配当政策が将来利益に与える
影響は大きい
20
被説明変数：将来当期利益
予想符号 係数 ｔ値 係数 ｔ値
切片 0.221 5.975 *** -1.403 -3.187 ***
配当ｔ-1 (+) 1.755 5.964 *** 8.019 2.144 **
⊿配当ｔ (+) 0.751 7.164 *** 7.861 2.071 **
ln(総資産) (+/-) -0.019 -5.714 *** 0.180 3.857 ***
負債比率 (+/-) 0.073 3.164 *** -0.950 -4.130 ***
年次ダミー YES YES
Adj.R2 0.029 0.013
サンプルサイズ 3,012 2,320
***,**,*はそれぞれ統計的に1％,5％,10％水準で有意であることを示す。
非東証一部上場企業東証一部上場企業
予想 結果
β1 一部＜非一部 一部＜非一部
β2 一部＜非一部 一部＜非一部

21. INDEX
1. 導入
2. 仮説の展開
3. 検証方法
4. 分析結果
5. まとめ
21

22. まとめ｜含意①
配当額と将来利益には正の関係がある。
また、配当の変化額も正の関係があるため、配当
額と配当変化額はどちらも将来利益を説明する。
22
増配や減配、安定配当など有配であることが
投資家に将来利益の有用な情報を与える

23. まとめ｜含意②
東証一部企業と比べて非東証一部企業の方が
配当政策に関する将来利益の関係が強い。
23
新興企業が多く含まれる非東証一部企業こそ
配当政策をすることが企業の価値を高める可
能性がある

24. まとめ｜今後の展望
先行研究のシグナリング効果の裏付けがとれた。
本研究では決定係数が低いため将来利益は
配当だけでは完全には説明することができない。
24
追加情報を併記することでより効果的な配当政策
となる可能性がある

25. ご清聴ありがとうございました
25

26. 補足｜語句説明
【シグナリング】 市場において情報の非対称性を伴った
場合、私的情報を保有している者(経営者)が、情報を
持たない者(投資家)に情報を開示するような行動をとり
、それが評価の基準になること。
【情報の非対称性】 利害関係者で保有する情報が不
均衡であること。
Ex)経営者と投資家間では経営者のほうが多く情報を
握っている
26

27. 補足｜配当政策の具体例
上場場所 企業名 2012年 2013年 2014年 配当政策
東証一部
上場企業
江崎グリコ 15 15 15 安定配当
資生堂 50 50 20 減配
東芝 8 8 8 安定配当
日産自動車 20 25 30 増配
日立製作所 8 10 10.5 増配
非東証一部
上場企業
大泉製作所 0 0 0 無配
篠崎屋 0 0 2.5 増配(復配)
ピープル 39 20 27 増配
光ビジネスフォーム 15 15 18 増配
フリージア・マクロス 0.05 0.05 0.05 安定配当
27
一株当たり配当金（円）

28. 補足｜モデルの具体例

29. 参考文献
• 青木康晴(2011) 「配当の情報効果と利益持続性, 利益調整行動に関す
る実証分析」 『経営財務研究』第31巻第1号
• 石川博行(2010) 『株価を動かす配当政策-コロボレーション効果の実証
分析』中央経済社。
• 佐々木寿記(2010) 「わが国における配当政策変更の情報効果」
• 諏訪部貴嗣(2006) 「株主価値を向上させる配当政策」 『証券アナリスト
ジャーナル』
• 野間幹晴・本多俊毅(2005) 『コーポレイトファイナンス入門』共立出版。
• Damodaran, A.(2006) Applied Corporate Finance: A User’s Manual,2nd
edition,John Wiley&Sons.
29