Chao-Chen-(and-others)--DF-FEA-Paper1-(Japanese)
- 1. 2093
論 文No.96-1038日 本 機 械 学 会 論 文 集(C編)
63巻610号(1997-6)
三 角形 要 素 を用 いた ダ イバ ー ジ ェ ンス ・
フ ォー ミュ レー シ ョン法 に よ る流 体 潤滑 数 値 解析 法*
陳 超*1,川 端 信 義*2,立 花 規 良*2
A Numerical Method of Fluid Lubrication
by the Divergence Formulation Method using Triangular Elements
Chao CHEN, Nobuyoshi KAWABATA and Motoyoshi TACHIBANA
The formulation of a general numerical method for fluid film lubrication of irregular bearing
shapes in the high bearing number region is presented. We expand the formulation of the divergence
formulation method to the triangular element used in the finite element method. Here, the pressure
function is not an element-interpolation function but a node-interpolation function. The mass flux
is evaluated along the sides of the triangular elements, so that several calculation schemes, which are
commonly used in the divergence formulation method on structured grid systems, can be introduced
for unstructured grid systems easily. The formulation is suitable not only for acute-angled triangu-
lar elements but also for obtuse-angled triangular elements. Numerical examples demonstrate the
applicability and accuracy of the method.
Key Words : Lubrication, Numerical Analysis, Reynolds Equations, Divergence Formulation
Method, Finite Element Method, Unstructured Grid, Triangular Element
1.ま え が き
流 体 潤 滑 問題 の数 値 解 析で は,質 量 保 存 式 をす き
ま方 向 に積 分 した レイ ノル ズ方 程 式 を基 礎 式 と して
扱 う.レ イ ノル ズ 方程 式 を微 小 潤 滑 面 に つ いて 積 分
し,領 域 的 に 流量 を保存 す るよ うに定 式 化 す る方 法
は,ダ イバ ー ジェンス ・フォー ミュレー ション法(DFM:
DivergenceFormulationMethod)(1),(2)と 有 限要素 法(FEM:
FiniteElementMethod)(3),(4)が あ る.
DFMは 領域 に流 入 ・流出す る流量 を離散 化 して 求 め
る方 法で,物 理 的理解 が容 易で ある ため使用 者が 容 易
に種々の工夫 を加 え ることが出来 る長所 があ る(5),⑥,反
面,分 割要 素 は四角 形(多 くの場合,長 方形 要素 で あ
る)に 限 られ るた め複雑 な形 状の場合 に は適 用で き な
い とい う欠 点が あ る.こ れ に対 して,境 界適 合座 標⑦
をDFMに 導 入す る ことによって,任 意形 状を した潤 滑
面 を取 り扱 うことを可能 にす る方法が提 案 され た③,⑨.
しか し,こ の方 法で も四角 形分割 に 限定 され,計 算格
子 の構造 が規 則 的であ るため,三 角 要素 内の局所 座標
系 を用 い たFEMの 柔 軟性 には まだ及 ばな い.
*原 稿 受 付1996年7月3日
.
*1福 井 大 学 大 学 院(⑰910福 井 市 文 京3-9-1)
.
*2正 員
,福 井 大 学 工 学 部.
一方 ,FEMは 変分 原理が成 り立つ場 の問題 に広 く適
用 で き,三 角形 要素 を初め と して 種々の形状 の分 割要
素 の局所 的な座 標 系に基づ いて定 式化 される ため,形
状 に対 す る柔 軟性 があ る.反 面,使 用 者の物 理 的な考
察 に基づ く工夫 を取 り入れる ことが難 しい という欠点
が あ る.
そ こで 本研 究 で は,三 角 形要 素 に基 づ いて コ ン ト
ロー ルセ ル を生 成 し,局 所 座標 系 を用 いてDFMに よ
る定 式化 を行 う新 しい数値解 析法(DFFEM:Divergence
Formulation.FiniteElementMethod)を 提案す る.こ の方
法 はFEMと 同程 度に形状 に対 する柔軟性 を有 し,DFM
と同程度 に物理 的理解が容 易で ある とい う二つ の方法
の 長所 を合わ せ持 つ方 法で ある.
本 論文 で使 われ る記 号は
c:基 準 す きま.
L:基 準 長 さ.
Pα,ρα:基 準 圧力,基 準 密度.
μ:潤 滑 流体 の粘性 係数.
を用 いて無次元化 して いる.以 下に主な記号 を示すが,
0内 の値 は,そ の値 で無次 元化 す るこ とを意味 す る.
ん:潤 滑厚 さ.(c)
P:圧 力.(P。)
273
- 2. 2094 三 角 形 要 素 を用 い た ダ イ バ ー ジ ェ ン ス ・フ ォー ミ ュ レ ー シ ョ ン法 に よ る 流体 潤 滑 数 値 解 析 法
す:質 量 流 量.(ρ αc3pα/12μL)
Q:コ ン ト ロ ー ル セ ル か ら 出 る 流 量.
(ραc3Pα/12μ)
A:二 次 元 ベ ア リ ン グ 定 数.(6μ σL/p。c2)
σ:走 行 面 の 速 度 ベ ク ト ル.
冗:コ ン ト ロ ー ル セ ル 境 界 の 外 法 線 方 向 の 単 位
ベ ク トル
2.多 角 形 セ ル に 対 す る 質 量 保 存
定 常 状 態 の 流 体 潤 滑 問 題 の 圧 力 を 決 定 す る 方 程 式
は,ヴ を す き ま 内 を 流 れ る 質 量 流 量 ベ ク ト ル と す る と
▽ ・ヴ=0(1)
で あ る.
潤 滑 領 域 を 図1の よ う な 有 限 個 の 微 小 コ ン ト ロ ー ル
セ ル に 分 割 し,こ の セ ル に お い て 式(1)を 面 積 積 分 し,
さ ら にGreenの 定 理 を 用 い て 境 界 積 分 に 変 換 す る と 次
式 が 得 ら れ る.
こ こ でrは セ ル5の 境 界 で,反 時 計 回 り を 正 と す る.
ま た,充 は 境 界rの 正 の 方 向 に 向 か っ て 右 手 方 向 を 正
と す る 法 線 方 向 の 単 位 ベ ク ト ル,gπ は π 方 向 の 質 量 流
量 成 分 で あ る.
コ ン ト ロ ー ル セ ル の 形 状 に か か わ らず 式(2)は 成 り立
つ が,通 常 は 多 角 形 セ ル を 用 い る.多 角 形 セ ル を 作 る
方 法 に は,例 え ば,次 の 二 つ が あ る.一 つ はBaliga(10)ら
が 熱 の 対 流 ・拡 散 問 題 に つ い て 提 案 し たCVFEM法 で 用
い た 各 三 角 形 要 素 の 重 心 と 対 応 す る 辺 の 中 点 の 連 接 線
で 作 る 多 角 形 コ ン ト ロ ー ル セ ル,も う 一 つ は 各 三 角 形
要 素 の 外 心 の 連 接 線 で 作 る 多 角 形 コ ン ト ロ ー ル セ ル で
あ る.後 者 は ヴ ォ ロ ノ イ 分 割(VoronoiTriangulation)(11)
と 呼 ば れ る.本 論 文 で はgη の 算 出 が 容 易 で あ る こ と か
ら,後 者 の 方 法 を 用 い る.
Fig. 1 Control cell used for the mass conservation
図2に 示 す よ うに,ま ず潤 滑領 域 をデ ロー ニー 三 角
分割(DelaullayTriangulation)(12)によって三角形 要素 に分
割 す る.デ ローニ ー分割 の最大 の特徴 は作 られ た三 角
形 要素 の外 接 円内に は他 の いずれ の離 散 点 も含 まれ て
いな い こ とに あ る.こ れ は有限 要素解 析に適 した三 角
形 要素 の 幾何学 的条件 で あ る.こ れ らの各 三角形 の外
接 円の 中 心を連 接す る と,多 角形 の コン トロール セル
がで き る.
流体 潤 滑問題 の基礎 式で ある レイ ノル ズ方程式 は質
量 保 存式 で あ る.し た がって,各 コン トロール セ ル に
つ いて の質 量保 存 を考 えるので あ るが,も う一つ 大切
な こ とは潤 滑 面全 体 につ い て の質 量保 存 を 満 たす こ
と,す な わ ち個々のセ ル につ いての質 量保 存 を満 たす
こ とに よって 自動 的に全 体の保 存式 を満 たす ことで あ
る.こ の こ とは,DFMやFEMの 様 な レイ ノルズ方 程式
を面積 分す る方法 に とって,大 変 重要 で ある.
図2に 示 す鋭 角 三 角要 素分割 の場 合 に は,各 コン ト
ロー ルセ ル が 重 な り合 わな いの で,簡 単 に式(2)を 用
い て質 量 保存 を満 たす こ とが で きるが,図3に 示す よ
うに三 角要素 に鈍 角三 角形 が混 じる場合 に は,外 心が
三角 形 要素 外 に存在 し,隣 り合った コン トロー ルセ ル
が一 部分 重 な るこ とが あ る.こ の場 合 に対応す るコ ン
Fig. 2 Polygonal control cell by the Voronoi diagram
Fig. 3 Control cells generated from obtuse triangular
elements
274
- 3. 三 角形 要 素 を用 い た ダ イ バ ー ジ ェ ンス ・フ ォ ー ミ ュ レー シ ョン 法 に よ る流 体 潤 滑 数 値 解 析 法
2095
ト ロ ー ル セ ル の 境 界 積 分 は 図4に 示 す よ う に 境 界 線 を
F+とF一 に 分 け て,r+は 反 時 計 回 り の 方 向,Lは 時
計 回 り の 方 向 と す る と,次 式 が 得 ら れ る.
こ こ で,Q+は 境 界r+を 通 っ て 出 る 流 量,Q 一 は 境 界
r一 を 通 っ て 入 る 流 量 で あ る.
式(3)を 具 体 的 に 説 明 す る と 次 の 様 に な る.図3の 重
な っ た 部 分 を 図5の よ う に 各 領 域 に 分 け て 考 え,そ れ
ぞ れ の 領 域 か ら 流 出 す る 流 量 をQ1,(22,…,Q6と す る.
質 量 保 存 式 を 厳 密 に 満 た す た め に は,Q1,Q2,…,Q6は
全 て0に な る が,満 た す べ き 方 程 式 が6つ に な り,節
点 ん,乞,あた の4節 点 圧 力 に 対 し て 条 件 が 過 多 に な る.そ
こ で,節 点 ん ∼ κ の コ ン ト ロ ー ル セ ル に 対 す る 質 量 保
存 式 を 式(3)か ら
と す る.こ の 様 に す る と,上 記 の 四 つ の 式 の 和 は
Fig. 4 Close curve integration for overlapped control cells
Fig. 5 Mass conservation for overlapped control cells
と な り,ん,歪,ゴ冶 の4節 点 を 含 む 領 域 全 体 の 質 量 保 存 を
満 た す こ と に な る.も し,式(4)第1式 お よ び 第3式 の
符 号 を+に 変 え た 場 合,も し く はQ1,Q2,Q3,Q4の そ れ
ぞ れ が0に な る と し た 場 合 に は,そ れ ぞ れ の 和 を と っ
て も 式(5)に は な ら ず,領 域 全 体 の 質 量 保 存 式 を 満 た す
こ と が で き な く な る.
3.離 散 化
3.1セ ル 境 界 長 さ の 評 価 方 法 質 量 保 存 式(2)を 多
角 形 コ ン ト ロ ー ル セ ル に 対 し て 適 用 す る と.
と な る.こ こ で 歪は コ ン ト ロ ー ル セ ル 中 心 の 節 点 番 号,
た は 盛に 隣 接 す る 節 点 番 号 で あ る.ま た,図6に 示 す よ
う に(q1π)幽(q2π 遍 は セ ル 乞 と セ ル た が 接 す る 辺 を 通 っ
て セ ル ゴか ら 流 出 す る 単 位 長 さ 当 た り の 質 量 流 量 成 分
で あ り,辺(Z1π)伽 σ2,、),ん上 で 一 定 と す る.(Z1π)伽(Z2π)、鳶
の 算 出 は,従 来 の 方 法(11)で は 常 に 正 の 値 と し て
で 評 価 し て い た.こ こ でdl,42は 対 応 す る 三 角 形 要 素
の 外 心 と 辺 疏 の 距 離 で あ る.し か し,こ の 様 に す る
と,鈍 角 三 角 形 要 素 分 割 の 場 合 に,式(3)を 正 確 に 評 価
で き な く な る.そ こ で,(11π)煽(Z2π),鳶 に 符 号 を 付 け
と す れ ば 鈍 角 三 角 形 の 場 合 も 正 確 に 式(3)を 評 価 す る
こ と が で き る.こ こ でsigl1(α)は αの 符 号 を 持 つ 単 位 量
を 意 味 す る.
Fig. 6 Details of the discretization for mass conservation
275
- 4. 2096
三 角形 要 素 を用 い た ダ イ バ ー ジ ェ ン ス ・フ ォー ミ ュ レ ー シ ョ ン法 に よ る 流体 潤 滑 数 値 解 析 法
3.2各 種 ス キ ー ム の 適 用 式(1)の 質 量 流 量 ず は,
と表わ され る.こ とで,非 圧 縮流 体の場 合
で あ り,等 温 変化す る気 体潤 滑の場 合
で あ る.そ の 他 多 く の 流 体 潤 滑 モ デ ル に 対 し て,∫1,∫2
を 適 切 に 与 え る こ と に よ っ て 対 応 す る こ と が で き る.
ま た,コ ン ト ロ ー ル セ ル の 辺 に 直 交 す る 質 量 流 量gη は
と な る.こ こ でA。 はq。 方 向 の 速 度 成 分 を 用 い た ベ ア
リ ン グ 数 で あ る.
式(6)中 の(q1∂,ゐ の 算 出 に は,す き ま ん は 外 心Olに
お け る 値 を,p,∂p/∂ η は 辺 跳 と の 直 交 点m(辺 疏 の 中
点 に な る)に お け る 値 を 用 い る.こ の 様 に す る と,す
き ま が 不 連 続 の 場 合 に も そ の 不 連 続 線 を 三 角 形 要 素 の
辺 に 一 致 さ せ る こ と に よ っ て 対 応 す る こ と が で き る.
非 圧 縮 流 体 の 場 合 に は 辺 齋 上 の 圧 力 分 布 を 線 形 直
線 と 近 似 し,次 式 の 様 に す る.
気 体 潤 滑 の 場 合 のDFMで は い く つ か の ス キ ー ム が
提 案 さ れ る が,こ れ ら の ス キ ー ム は 簡 単 に 本 方 法 に 適
用 で き る.重 み 付 き 上 流 化 ス キ ー ム の 安 定 化 法 ⑥ で は
式(10)の 右 辺 第1項 の ボ ア ズ イ ユ 流 と 第2項 の ク エ ッ ト
流 を 分 離 し て 取 り 扱 い,ボ ア ズ イ ユ 流 は 式(11)の 線 形
直 線 近 似 と し,ク エ ッ ト流 は
で算 出す る.ボ アズイ ユ流 とクエ ット流 をま とめて 取
り扱 う指 数近 似法㈹で は
で 評 価 す る.
上 記 の よ う な 離 散 化 を 行 い,式(10)のq.を 節 点 圧 力
p,,pπ で 表 し,式(6)に 代 入 す る と,節 点 ¢の 多 角 形 コ ン
ト ロ ー ル セ ル に お け る 流 量 保 存 の 離 散 式 は 一 般 的 に,
の 形 で 表 さ れ る.こ こ で,η は 歪点 に 隣 接 す る 周 囲 節
点,pπ は 周 囲 節 点 上 の 圧 力 で あ り,係 数 α,,απ,δ。は 節
点 圧 力 の 関 数 に な る.各 節 点 に つ い て 式(14)を 評 価 す
る と 非 線 形 連 立 代 数 方 程 式 が 得 ら れ る.こ の 代 数 方 程
式 を 数 値 解 析 す る 方 法 と し てNewtonRaphson法 や 逐 次
代 入 法 が あ る が,本 研 究 で は 逐 次 代 入 法 を 用 い て 計 算
し た.
3.3境 界 条 件 実 用 上 よ く 使 わ れ る 境 界 条 件 と し
て 次 の も の が 上 げ ら れ る.
(a)境 界 上 の 圧 力 が 既 知(=PB)で あ る:P,=PB
(b)境 界 を 通 過 す る 質 量 流 量 が 既 知(=qB):π ●ヴ=9B
対 称 境 界 の 場 合:9B=0
(c)周 期 境 界 条 件
(d)境 界 上 の 圧 力 が 一 定 か つ 境 界 を 通 過 す る 総 質 量
流 量が既 知:
境 界 条 件(a)の 場 合,式(14)で α,=1,αn=0,δ,=PBと
置 く.境 界 条 件(b)の 場 合,図7の セ ル(b)の 境 界 上 のq,、
をqBと し て 式(6)を 適 用 す る.境 界 条 件(c)の 場 合,図
7の 歪と ゴ に 関 す る 二 つ の セ ル(c)を 一 つ の コ ン ト ロ ー
ル セ ル と し て 式(6)を 適 用 す る.境 界 条 件(d)は,Qo=0
と し て 極 座 標 の 中 心 点 に 適 用 す る こ と が 多 い.こ の 場
合,セ ル(d)の 境 界 上 の 節 点 圧 力 を 全 て 等 し い と 置 き,
セ ル(d)を 一 つ の コ ン ト ロ ー ル セ ル と し て 式(6)を 適 用
す る.
Fig. 7 Boundary condition
4.計 算 例
4.1三 角 形要素 の 形状 に よる影響 本 節 では 三角
形分 割要 素形状 の違 いの影 響 につい て傾 斜平 面軸 受 に
対 して調 べ る.図8に,用 いた4種 類の 三角形 要素形 状
(節点 数は 同数)を 示 す。要素(a)は 直 角三角形,(b)は 鋭
角三 角形,(c),(d)は 鈍 角三角形 を含 む分割 要素 であ る.
(a),(b)中の塗 りつぶ し部 分は コン トロー ルセル であ る.
無 限 幅 の場 合 と比 較す るた めにB/L=10(L:す べ り
276
- 5. 三 角形 要 素 を用 い た ダ イ バ ー ジ ェ ン ス ・フ ォ ー ミ ュ レー シ ョン法 に よ る流 体 潤 滑 数 値 解 析 法
2097
方 向 軸 受 長 さ,・B:軸 受 幅)と し,軸 受 の 滑 り(の 方 向
に16等 分 割,幅(〃)方 向 は160等 分 割 し た.図9は 軸 受
の 幅 中 央 部 の 圧 力 分 布 を 示 し た 図 で,本 研 究 の 結 果 は
図8の 要 素 形 状 の 図 号(a),(b),(c),(d)と コ ン ト ロ ー ル セ
ル の 辺 の 長 さZの 計 算 式 の 番 号(7),(8)を 付 け て 表 し た.
○ はDFMの 解,● は 上 流 化FEM(13)の 結 果 で あ り,い ず
れ も 無 限 幅 受(B/ム=oo)の 場 合 で あ る.図 か ら コ ン
ト ロ ー ル セ ル の 辺 長 の 正 負 を 考 慮 し な い 式(7)を 用 い
た 場 合 の 鈍 角 三 角 形 分 割(c),(d)で は 正 し く 計 算 し な い
が 、 正 負 を 考 慮 し た 式(8)を 用 い る と 鈍 角 三 角 形 分 割
で も 正 し く 計 算 で き る こ と が 分 か る 。 本 方 法 に よ る 結
果 と 従 来 のDFMとFEMの 結 果 は よ く 一 致 し て い る.
4.2高 ベ ア リ ン グ 数 に 対 す る ス キ ー ム の 比 較 本
節 で は 高 ベ ア リ ン グ 数 に 対 す る テ ー パ フ ラ ッ トス ラ イ
ダ の 圧 力 分 布 を 計 算 し,従 来 の 高 ベ ア リ ン グ 数 ス キ ー
ム と の 比 較 を 行 う.高 ベ ア リ ン グ 数 に 対 す るFEMと し
て 今 ま で に 三 つ の 方 法 が 提 案 さ れ て い る.一 つ 目 は 主
に 圧 力pに 着 目 し,一 つ の 要 素 内pの 高 次 補 間(14)値,
或 は 高 階 微 分 補 間(15)の ス プ ラ イ ン を 使 う 方 法,二 つ 目
は 形 状 関 数 と 異 な る 重 み 関 数 を 用 い る ペ ト ロ フ ・ガ ラ ー
キ ン 法(16),三 つ 目 は 係 数 マ ト リ ッ ク ス の 要 素 を 移 流 項
と 拡 散 項 を 分 け て,四 角 形 ア イ ソ パ ラ メ ト リ ッ ク 要 素
の 中 に 積 分 点 を 選 ぶ 上 流 化 法(13)で あ る.な お,本 報 の
Fig. 8 Triangular element shapes
Fig. 9 Effect of triangular element shapes and discretized
equations
DFFEMは 高 ベ ア リ ン グ 数 ス キ ー ム と し て 安 定 化 法(式
(12))を 用 い て い る.
図10は 細 長 テ ー パ フ ラ ッ トス ラ イ ダ 軸 受(1λ1=1000,
β/ム=0.1)の 幅 中 央 部 の 圧 力 分 布 を 示 し た 図 で,実 線
は 細 か い 分 割(30分 割 以 上 に な る と ほ と ん ど 一 致 す る)
を 用 い た 精 密 解 で 本 法 とDFMの 結 果 は 一 致 し て い る.
破 線 は ス ラ イ ダ 長 さ(の 方 向 に16分 割,幅(〃)方 向 に14
分 割 の そ れ ぞ れ 不 等 分 割 を 用 い たDFFEMに よ る 結 果
で あ る.○ は 同 じ 分 割 のDFMの 結 果,● は 同 じ 分 割
Fig. 10 Comparison of the pressure distribution along
centerline of tapered-flat slider
Fig. 11 Comparison between (a) present DFFEM and
(b) P-Version FEM
277
- 6. 2098 三 角形 要 素 を用 い た ダ イバ ー ジ ェ ン ス ・フ ォ ー ミ ュ レー シ ョ ン法 に よ る流 体 潤 滑 数 値 解 析 法
数 のGarcia.Suarezら の 上 流 化FEM(13)の 結 果 で あ る.な
お,図 中 のNτ は τ 方 向 の 分 割 数 で あ る.図 か ら,DFM
は テ ー パ 部 に 近 い フ ラ ッ ト部 の 圧 力 が 低 く な り,上 流 化
FEMとDFFEMは 流 出 端 で 圧 力 が 若 干 高 く な る こ と が
分 か る.図11は 分 割 数 に よ る 影 響 を 調 べ た も の で,(a)
はDFFEMの 場 合,(b)はNguyenの ∬ 方 向 に5分 割(不
等 分 割)し,m階 の 微 係 数 を 用 い た ス プ ラ イ ンFEM(15)
の 結 果 で あ る.mx5がDFFEMの 凡 に 対 応 す る が,
m=2の 結 果 とAi♂10の 結 果 を 比 べ る と 本 報 のDFFEM
の 方 が 精 密 解(m=6,7,8,N。=40)に 近 く,DFFEMは
粗 い 分 割 で も 精 度 が 良 い こ と が 分 か る.
5.結 論
流 体 潤 滑 レ イ ノ ル ズ 方 程 式 の 数 値 解 析 手 法 と し て,
三 角 要 素 分 割 に 基 づ い たDFM(DFFEM)を 新 し く 提 案
し た.本 方 法 は 従 来 のDFMの 特 長 で あ る ス キ ー ム に
対 す る 柔 軟 性 とFEMの 特 長 で あ る 形 状 に 対 す る 柔 軟
性 を 合 せ 持 つ 方 法 で あ る.ま た,従 来 のFEMで は 不 得
手 で あ る 鈍 角 三 角 形 要 素 に 対 し て も 適 用 可 能 と な る 工
夫 も さ れ て い る.従 来 のFEMやDFMと 比 較 し た 結 果,
計 算 精 度 の 点 で 特 に 劣 る こ と は な く,粗 い 分 割 で も 精
度 良 い 結 果 が 得 ら れ る こ と が 分 か っ た.
文 献
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278