おすてん法学４月２１日

1. オステン法学① 4.14
オステンの授業について
オステンのメルアド osten@law.keio.ac.jp
・出席はしなさい。
・学期末のレポート3000 4000字試験期間前に提出(7月上旬)
・2∼3回の即レポ（授業の感想）
・紙媒体の六法を使用しなさい。
・レポートでネット情報を安易に引っぱり出さない。学術的な文献を参考資料にしてね。
・質問は1∼2限の間かメール。
・5/5、6/2、7/21は休講。このため7月14日が最終日
∼法とはなにか∼
・・・社会規範の一種
※規範👉 当為(「べき、べきでない」の法則)
・法と道徳（習俗風習をも含む ex:戦前日本の不敬罪・姦通罪、イスラム圏の伝統的な法 元々
はこの法と道徳は同一視されていた。法と道徳の峻別＝法と宗教との峻別）
：異同・区別・峻別
・法規範の働き
①行為規範
②裁判規範
③組織規範
1
①∼③の例：刑法199条(殺人罪 社会通念上広く認知された道徳でもある)憲法
42条【国会という組織の規定】
法 秩序 立法機関で作られたものだけではない（サークル・部活内の決まりな
どなど）
法は守る義務があり違反時の罰から逃れられない。
法の担い手は人だけではなく、企業、法人、国家法人、天皇なども。「社会あ
るところに法あり」人間社会には必ず法がある。
①行為規範 風習など。反しても白い目で見られるだけで制裁は受けない。
法と道徳の区別はなく、「正しい」という共通概念
19世紀以降に峻別されるようになった。
この両者は区別される必要性もあるときもあれば、法と道徳どちらにも当ては
まる事例もあり、現在も2つは密接な関係にある。
法と道徳が相反する事例もある→ナチスによるユダヤ人差別目的の立法

2. オステン法学① 4.14
2
❐NOTE❐
法的な義務付けと法以外の社会的規範が重なったとき、強力な規範性をもつ→命令規範(行為規範とも
いう)
法は人々の行動を強制できる。
but
この２つが著しく相反するケースもある。ex:軍事独裁政権、ナチス ナチス時代にも法があったが、
「悪法は法ではない」。
Norm Nomos →規範（模範）
当為(sollen)とは実社会にはないものの「あるべき」姿。
規範の名宛人とはだれなのか。通常の場合、それは国民である。
法、行為規範の名宛人は全国民。
↘
「人を殺してはならない」殺人罪は極端な行為規範の例
「借りたものは返せ」「人の所有権を尊重せよ」民法もしかり。
この名宛人は全国民
刑法199条(ポケット六法の頭に法令の索引があるのでそこから引くこと)
(第199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。)
殺人罪を犯した場合、法を実現する機関たる裁判で裁判官が被告人に刑法199条違反の帰結として刑
事罰を適用する。(罪刑法定主義「違反するな、違反した場合⃝⃝になるぞ！」)
刑法民法などは行動規範のみならず裁判規範まで書かれている。つまり法の名宛人が裁判官になって
いる。 法は原則として行為規範と裁判規範の二重構造を持っている。
このような2重構造を持つ法を狭義における「法規範」とされる。

3. オステン法学① 4.14
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❐NOTE❐
法と道徳がまったく無関係なケース
・普通の人が到底守れないような水準の法的な設定をあえてする道徳（理想論）
→（ex.聖書の規範。「右の頬を打たれたら左を差し出せ」は法とは無関係な道徳！道徳は法を超えた高
い模範を示すものである）
・逆に、道徳とは全く無縁の法律
たとえば道路交通法。左側通行、赤信号守れなどなど、道徳とは無関係で、極めて機械的に定められた、
論理的必然性のない法律もある。国によってルールは様々。
あるいは憲法42条43条の国会に関する規定。
道徳や人々の生活とは全く関係ない。国家機関行政機関の組織・手続きに関する規範を「組織規範」とい
う。これは行為規範や裁判規範とはいえない。
[憲法第42条]
国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
[憲法第43条]
両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを構成する。
２ 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
では法と道徳はなにがちがうのか
・他の社会規範との決定的な違いとは？
→公的に制度化された強制によってその効力が担保されていること。
裁判を起こし、判決が下ったとき、つまり実体法と公的な手続き法（民事訴訟法）の両者があわさったと
き初めて法的強制力が生まれる。この「強制」力が重要。法は道徳ほど「高い模範」ではないが、倫理的
最小限度の模範を「全国民」に強制する。この強制とは組織化された力による強制である。
この強制が可能で、社会的に許容される、また違反した際の「力による」制裁が正当化されうるのは、法
が「だれでも順守できる」倫理的最小限での規範だからである。
↕
法は人間の外面的な行為に対する規範、道徳は内面に関する規範は不正確。
なぜなら法が人間の内心に関わることもあるから。「故意」がある場合に限り処罰の対象になる刑法。
(刑法38条、民法162条)
第38条
1.罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
2.重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することは
できない。
3.法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽
することができる。
【民法162条2項】
第2項は短期取得時効の要件を定める。占有開始時に善意・無過失であったときは、10年での時効取得が認められる。
善意・無過失
占有開始時に善意・無過失である必要がある。善意は民法第186条1項により推定される。
↘
法は人の内面、内心に関わっている！！
道徳
倫理的
最小限の法

4. オステン法学① 4.14
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❐NOTE❐
様々な「強制」の形態
→刑罰、強制執行、損害賠償、行政罰etc
総則(一般的な広い規定、罪刑法定主義など)と各則（個別具体的な詳細のルール、民法における相続法、家
族法、刑法における殺人罪などなど 行為者に対する刑事罰）
ex.
債務の返済を法権力によって強制的に執行させられるケース。裁判所から委託を受けた執行官が債務者の差
し押さえをする。債務不履行や民事法上の不法行為については行為者が賠償責任を負う。名誉毀損の場合謝
罪広告をだせ、という命令が損害賠償の一種として裁判所からくだされることがある。
第３回続・法と法学の基礎
前回のポイント👉 法的規範と道徳的規範が一致する場合、しない場合、どう区別されるべきか
・法規を「よむ」こと
①「要件」と「効果」
「 という要件が満たされれば という効果」が発生する。これが法の条文の基本的な形態
民法95条
【民法第95条】
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張す
ることができない。
→民法９５条の要件は「法律行為の要素に錯誤があったとき」で効果は「無効」。
ただし、「表意者に重大な過失があった」という要件の場合、効果は「無効を主張することができない」となる。
刑法２３５条
(刑法第235条)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
→刑法２３５条の窃盗罪の要件は「他人の財物を窃取した者」であり、効果は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」である。
↳民法刑法は「要件」「効果」についてかかれた「実体法」、裁判の手続きと規範的枠組みを提示している
「手続法」この２つの法分野をあわせて民事法(民法・民事訴訟法)、刑事法（刑法・刑事訴訟法）
・手続法について
ex 刑訴法1５４条
刑訴法１５４条 証人には、この法律に特別の定のある場合を除いて、宣誓をさせなければならない
↳「宣誓をさせなければならない」とはあるものの、宣誓をしなかった場合、どうなるかという「効果」が
書かれていない。
宣誓をさせないで証言をさせた場合どうなるのか？、証人が宣誓を拒否した場合、どうなるのか？は、この
条文だけではわからない。
証言を事実認定する場合、証拠に依拠しなければならない(刑法３１７条)。
→刑訴法１６０条「宣誓証言の拒絶と過料等」
刑訴法１６１条「宣誓証言の拒絶と刑罰」によって１５４条の効果が約束されている。この２つの「過料」
と「刑罰」の違いに注目。
民訴法243条の要件と250条にある「効果」
②「解釈」の必要性→法の抽象性
「要件」しか書いてない刑訴法、154条
民法７３０条の「家族は扶け合わなければならない」という条項は「努力目標」であり
違反した場合の「効果」が規定されていない。

5. オステン法学① 4.14
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❐NOTE❐
法解釈の必要性
ex.民法９５条「法律行為の要素に錯誤があったとき」にある「錯誤」というのはどういうことをい
うのか。→あらゆるケースに適用させるためにあえて「錯誤」という抽象的な文言を用い、法の適
用者による解釈の余地を残している。(大陸法)ここに解釈（判例と学説）の必要性がある。
簡潔な文言と「要件」「効果」をまとめた大陸法
英米法:とにかく条文のあらゆる文言について具体的な定義がなされており、抽象的な言葉がない
ため、柔軟ではない。
★要件と効果について実際にみてみよう。★
ex.民法７０９条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害したものは、これによって(←
他人の利益侵害のみによって)生じた損害を賠償する責任を負う」
要件＝「故意又は過失」で「他人の権利・他人の法律上保護される利益を侵害した」
法的効果＝「損害賠償責任が生じる」
ex.会社法49条「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」
要件＝「登記をする」
法的効果＝「株式会社として認められる」
ex.刑法２５６条「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得されたものを無償で譲り受けた者は、３年以
下の懲役に処する」
要件＝「盗品その他財産に対する罪に当たる行為(横領など)により領得されたものを無償で譲り受け
た者」
法的効果＝「３年以下の懲役に処する」
法学には正解がなく、論理的で説得力のある「解釈」が学説になる。
ex.民法７７０条１項、２項
枝番号(ex.刑法７条の２)は、あとで追加された項目
①②..は項

6. オステン法学① 4.14
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法はどのような形で存在するのか
①制定法(法規)②慣習(③判例 ④条理)
これらが「法源」
1. 制定法:(成文法としての)法規
・・・権限ある機関によって文字による表記の形式で制定された法
※大陸法(制定法を重要な法源とする)と英米法（判例を重要な法源とする）：成文法と不文法
※日本における法の継受
・明治期・・・ドイツ・フランスの強い影響(成文法主義、世界の大多数 判例主義 イギリスの植民地
はコモンローを引き継いでいる。)
・戦後・・・アメリカの影響
制定法のメリット・・・はっきり文章になっていること。ex.罪刑法定主義
デメリット・・・社会の変化による要請に対応しきれない。柔軟性に限界。
❐NOTE❐
制定法を法源としながらある程度判例を重視する日本
州レベルでは制定法をつくろうとする動きのあるアメリカ
日本の法の継受プロセス
・明治日本
文明国家として列強に認めてもらうために法制度の早急な導入を決めた。
当初はフランスの法典を参考にした。(当時、ドイツ帝国がやっと誕生。)
１９世紀後半の「出遅れた国家」であった日本とドイツは事情が似ていた。
なぜドイツの法典を輸入したのか？
・フランスは共和国制、イギリスは憲法がない(←不文法)その一方で、それまでバラバラだったドイ
ツは地方を一つの法で統一する必要があった。日本はドイツの状況と似ていた。
・ドイツの法典が洗練されていたこと
ボアソナード民法 民法典論争 ドイツ民法派勝利
法の継受と学説の継受は必ずしも同時期ではなかった。(明らかにドイツ法に由来する法をフランス法の
法解釈で解釈する、みたいな。)
・戦後日本
軍国主義的法制度の撤廃、アメリカ法の影響が強まる。ex.会社法(アメリカ法そのもの、ただし日本が
従来持っていたドイツ商法のほうが馴染んでいた。アメリカ法的会社法は日本では矛盾がある)

7. オステン法学① 4.14
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・制定法の諸形式
①憲法
憲法９６条
「この憲法の改正は、各議員の総議員の３分の２以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なけれ
ばならない。この証人には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票においてその過半数の賛成を必要とす
る。」
憲法９８条参照
②法律＝憲法４１条に基づいて国会が制定する法。
憲法４１条
「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」
日常用語的な意味での「法律」 法規
③命令(政令、府令、省令、庁令）
※政令・・・憲法７３条６号にもとづき内閣が発するもの。
「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。ただし政令には特にその法律の
委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。」(罰則を設ける場合は法律による委任が必
要。例えば「政令の定めるところによりOOXXという罰則を課す」などなど)
法律の細かい部分を政令に委ねている。
・執行命令(「∼法の命令により」というように命令の中に根拠となる法律について言及するだけでよ
い)と委任命令(罰則を伴う時、法律上の「委任」が必要)
次回 条例など異なる命令形式について。
条約
↓
②法律
③政令

8. オステン法学① 4.14
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