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20191221tintindensya
- 1. <1> 駿豆電気鉄道物語 島津線 チンチン電車 ◇駿豆線（現伊豆箱根鉄道）の歴史 当時文明開化の花形の一つであった電灯事業を静岡県東部地方にも花咲かせようと、田方郡 函南村の仁田大八郎・小柳津五郎両氏を発起人として、明治29年5月三島町で資本金20万円 の「駿豆電気株式会社」が創立された。 会社は函南村平井の柿沢川に発電能力275kwの水力発電所を建設して、静岡県下最初の電 灯会社として花やかなスタートをきった。 明治３１年(1898)に三島町駅（現・三島田町駅）～南條駅（現・伊豆長岡駅）間に開通し た豆相鉄道と、明治３９年(1906)に六反田駅（現在の三島広小路駅近く）～沼津駅前間に開 通した駿豆電気鉄道株式会社の２つの鉄道線がその発祥となります。 この２つの鉄道会社がやがて１つに合併し富士水力電気株式会社の鉄道部となりました。そ の後、大正5年(1916)に現在の当社の前身である駿豆鉄道株式会社が設立となり、翌大正6 年、駿豆鉄道株式会社は富士水力電気株式会社の鉄道事業を継承しました。<以下略> 駿豆線の前史 豆相鉄道、駿豆電気鉄道 （1893～1916年まで） 昭和33年頃の沼津駅 → 右手前に前年32年開店 の沼津西武百貨店 ＊チンチン電車は、５年後 の昭和38年廃線となる。 ← 操業間もない 明治40年頃の沼津駅
- 2. <2> 駿豆電鉄開業式 （明治39年11月28日） 参観人数万、同地未曾有の盛況なり 前日来の秋雨名残なく晴れて富士の霊峰は裾まで白衣を垂れ、愛鷹、箱根の紅葉錦を織り成して、秋郊の光景三春の 花にも勝るの時、駿豆電鉄の開業式は昨日、盛大に挙行せられたり、沼津停車場前には紅白の布を以て巻き立てたる高 き四足門を設けて「祝開業」の額を掲げ、停車場横には間口十二間の踊舞台を出来（しつ）らへ、又上本町三業組合事務 所の前に一ケ所の踊舞台あり、浪人橋には鳥居形紅白の門をたて「祝開業」の額を掲ぐ、何れも沼津町の寄贈に係れり、 沿道沼津停車場より三島間の人家は何れも球灯紅花の軒飾り美々しく、沼津町は昨今両日花火数百発を打揚げ、東西 より下車する賓客を迎ふる電車の往来頻繁なり、三島町に到れば沿道の装飾一層の美を尽し、茅町及び広小路の入口 に大緑門（アーチ）を造り、それに「祝開通」の額をかゝげたり、又会社入口に大緑門を造り、本社前面に相撲場及びX光線 あり、又本社の裏方田面に式場を設け其の左右コロリらに演劇場、酒店、折詰、紀念品引換所、警察詰所、救護所、煮 〆、茶店、菓物、饅頭店、ビール店、粟餅、甘酒、寿志、そば等何れも紅白の幔幕を以て装飾し之れに球灯、国旗を掲 げ、尤も美事なりし、又式場に向つて左側には音楽隊、芸妓手踊の舞台あり、午後零時三十分、三発の号砲を合図に式 典を初めたるが、来賓は李家知事代理藤崎本県事務官、辻駿東、鈴木田方両郡長、湯山代議士、雨宮敬次郎、大村、 田中前両代代議士堀内半三郎諸氏を初め無慮六、七百名あり、社長藤山雷太氏式辞を述べ常務取締渡辺万介氏工 事報告をなし、夫より藤崎事務官は李家知事の祝辞を代読し、鈴木郡長並に河合三島、小出沼津、大原伊東三町長等 明治35年(1902)から40年代にかけて、多くの電気会社は自社の電気を動力として鉄道を 兼業する傾向が強く、駿豆電気もその後臨時株主総会で新たに電鉄事業経営の方針を打ち出し たのである。 先ず、明治36年11月12日、三島町六反田(現三島広小路)一沼津町三枚橋(現平町)間、続い て明治39年6月25日、沼津町三枚橋一沼津上土間 , 同6月30日、沼津三枚橋平町一志多町 一城内字城ー城内291番地(現沼津駅前)間の特許を受けた。 一方、明治38年に社名も駿豆電気鉄道株式会社と改めている。 その後、三島町六反田より久保町を経て三島町(現三島田町)及び久保町より分岐して三島伝 馬町(現三島神社付近)に至る路線の延長を計画、明治40年9月25日認可、翌41年1月7日伊豆 鉄道踏切交差点を除き工事施行の認可がおり、夏ごろ久保町を経て三島町間が開業した。但し 伊豆鉄道との平面クロスが認可されないため、お客は踏切を挾んで徒走連絡しなければならな かった。しかし明治41年10月1日伊豆鉄道よりそ の承諾が得られ、明治41年末初めて沼津駅前一三 島町が全通し、三島の中心街と沼津の連絡がほ ぼ完成したが、久保町一伝馬町間は未着工のまま 終わってしまった。 この後、駿豆電気鉄道は明治45年4月1日伊豆 鉄道(三島町一大仁間、現伊豆箱根鉄道の本線の一 部)を傘下におさめて今日の伊豆箱根鉄道株式会社 の基礎を作ったのである。 大正3年(1914)限りで三島広小路一三島町間の 市内線が運転を休止し、大正4年1月限りで廃止さ れている。こうして車庫も三島町に移され、三島 広小路一三島町間は本線に乗入れて沼津一三島町 間の直通運転が行なわれ、大東亜戦争中の数年を 除き昭和24年3月31日まで続いてきたのである。 大正中期のチンチン電車 駿豆電気鉄道（島津線・チンチン電車）の沿革 駿豆電気鉄道の開通式 〔『静岡民友新聞』明治39年11月29日〕
- 3. <3> ▲營業目的▼ 電氣鐵道 経過區域 ○伊豆鐵道三島町停車場前ニ起リ廣小路地藏尊、千貫樋、玉井寺、八幡神杜、木瀬川頼朝義経對面 石、龜鶴観音、黒瀬松原、日枝神社、沼津城趾ヲ経テ官線沼津停車場構内ニ至ル ○三島沼津間八區ニ分チ賃金九銭往復十七銭片道凡ソ廿七分ニシテ達ス ○毎日午前六時ヨリ午後十時迄凡廿六分毎ニ發車運轉ス 電燈電力供給 電氣器具販賣 營業區域 ○田方郡三島町一圓 ○仝郡熱海町一圓 ○仝郡修善寺村修善寺温泉場 ○仝郡田中村大字大仁 ○仝郡函南村大字平井 △大字柏谷 ○仝郡韮山村大字南條 ○駿東郡沼津町一圓 仝郡原町一圓 ○仝郡楊原村大字上香貰ノ内字吉田字市場 ○仝郡清水村大字新宿 △大字伏宛、大字八幡、大字長澤、大字徳倉、△仝郡大岡村木瀬川、下石 田、日吉 △仝郡片濱村一圓 (○印ヲ付シタルモノハ既供給區域ニシテ △印ハ未供給區域) 静岡縣田方郡三嶋町拾貮番地 駿豆電氣鐡道株式會社 （明治四十二年十二月一日発行「沼津案内広告」） 〔解説〕駿豆電気鉄道(現・伊豆 箱根鉄道)の開通式のもようを伝 える新聞記事である。区間は沼 津停車場-三島広小路間で、県下 初(全国で ９番目)の電車線で あったが、昭和38年２月４日に 廃線となった。同社は明治39年 には沼津-鈴川間、翌40年には沼 津-江浦間の軌道施設特許願を提 出したが、営業に至らなかっ た。また沼津-三島間では、明治 29年に石油鉄道敷設許可願が提 出されたこともある。 駿豆電気鉄道開通記念絵はがき（明治38年11月） の祝辞あり、藤山社長之に対して答辞を述べ、右にて式を終り、夫より本日余興中の呼物たる「天の羽車」の手踊を初めと して演劇、角力、楽隊その他種々の余興中に園遊会を催ふし、三島沼津間は絶へず花電車を往復せしめ、午後四時ご ろ園遊会を閉ぢたり、李家知事祝辞の大要、左の如し (前略) 抑も県下に於て鉄道事業たるや、遠江に秋葉城東馬車鉄道あり、駿河に富士、御殿場の二馬車鉄道あり、伊豆 に熱海人車鉄道あるありと雖も、電気鉄道に至りては本線を以て実に之が嚆矢とす、而して本鉄道の創立は帝に駿豆の 交通に利便を加ふるのみならず、併せて全県下の交通利便と交通機関発達の動機とを与へたるものといふべく、本官の 深く欣喜に堪へざる所なり、希くは社員諸氏益励精努力して社業の隆盛を図り、以て交通機関の目的を完全に達せん事 を、聊か一言を述べて祝辞となす。 当日来会の新聞記者は西村才介(報知)、上田芳一郎(東朝)、斎藤謙蔵(日々)、河上哲太(国民)、明石禄一郎(時事)、 金子範二(太平洋)、小山正一(電報通信)諸氏、公報社の山岡昂三氏、本社の森田主筆等なりし ▲式の終る頃より式場 に群衆したる参観人は無慮二万人を以て数ふべく、会社前の往来は一時群衆のために杜絶さるゝ有様なりし ▲沼津町も 同様の賑ひにて、夜に入ては球灯を点じ、花電車往復して頗ぶる美観を添へたり ▲猶ほ本日も引続き諸般の余興を演 じて一般公衆の縦覧に供し、特に手踊は沼津の舞台にて演ずる由
- 4. 年 月 日 摘 要 事 項 明治２９年 ５月 ３日 駿豆電気株式会社 創立 資本金50万円 ３６年１１月１２日 三島町六反田（現三島広小路）～沼津町三枚橋（現平町）間、免許 ３８年１１月 １日 三島町六反田より沼津駅前間のうち、５．９ｋｍの敷設工事開始 工費約15万円 ３９年 ４月～ 車庫建設工事完了 ５月電車専用の黄瀬川架橋工事完了 ６月～ 道路拡張工事着手 ３９年 ６月２５日 沼津三枚橋～上土間、免許 ３９年 ６月３０日 沼津三枚橋平町～志多町～城内字城内～城内字城内２９１番地（現沼津駅前）間、免許 ３９年 ７月～ 軌道敷設工事に着手 ９月～架線工事に着手 ３９年１１月 １日 社名を駿豆電気鉄道株式会社と改称 ３９年１１月１０日 鉄道敷設工事 竣工 軌間１，０６７ｍｍ 架線電圧600ボルト、シングルトロリー式 ４輪電動車６両 付随車１両 付随４輪貨車４両 待避線４箇所 ３９年１１月２８日 営業開始 開通祝賀式行う（日本で９番目、静岡県下では初） 三島町六反田(現広小路町）から沼津三枚橋間を運転開始しました。 ４０年１０月 ５日 三枚橋から沼津駅まで延長きれる。 ４１年 ７月 三島町六反田～久保町～三島町（現三島田町）間、開業。 ＊伊豆鉄道（三島駅〔現下土狩駅〕～大仁駅）との平面クロスが認可されていなかったため、乗 客は踏み切りをはさんで徒歩連絡をした。 明治４１年１０月 １日 伊豆鉄道より平面クロスの承諾受ける。 ４１年末 沼津駅前～三島町（田町）間が全通。 ４５年 ４月 １日 駿豆電気鉄道は伊豆鉄道を合併、現在の伊豆箱根鉄道の基礎ができる。 大正 ３年 三島広小路～三島町間の市内線 運転休止。 ４年 １月１８日 三島広小路～三島町間の市内線 廃線。 ＊沼津から三島広小路を経由し、駿豆線に乗り入れ三島町まで直通運転され、沼津と三島を 結ぶ足として、昭和２４年３月３１日まで重要な役割を果たした。 ５年１０月 駿豆電気鉄道は富士水力電気株式会社と合併 富士水力電気株式会社鉄道部となる。 ５年１１月 同社から鉄道部が分離独立 駿豆鉄道株式会社 設立。 ６年１１月 ５日 会社設立登記。現伊豆箱根鉄道の基礎となった駿豆鉄道が正式に誕生。資本金１００万円 昭和１３年 ４月 箱根遊船株式会社と合併 社名を駿豆鉄道箱根遊船株式会社と改称。 １５年１１月 社名を駿豆鉄道株式会社と改称。 １６年 ８月２３日 大雄山鉄道株式会社（小田原～大雄山）を合併。 ＊駿豆線、沼津～三島広小路間の軌道線（チンチン電車）、大雄山線の３線を有する。 ２０年 ７月１７日 沼津市石田坂で激しい空襲にあい、モハ１型Ｎｏ．２が戦災車となる ＊戦争で男子社員が減 少、大半の従業員が女性となり、軌道線のハンドルも女性が握ることが多かった。 ３２年 ６月 １日 社名を伊豆箱根鉄道株式会社と改称。 ３６年 ６月２８日 大雨により黄瀬川橋流失 バスによる代行運転開始（沼津駅前～国立病院前）。 ＊その後も国立病院前～三島広小路は電車運転を続けたが、競走路線のバスの跳梁、モータ リゼーションの発達、国道１号線三島バイパスとの交差問題など、その他諸問題もある。 昭和３７年 廃線を決定 ３８年 ２月 ４日 沼津～三島広小路間軌道線 廃止 ＊５７年間にわたる歴史に幕を閉じる バスによる代行運転開始（１日８０往復を運転） <4>
- 8. <8> 参考文献 ：『ふるさと三島』：土屋寿山・稲木久男著 ：『鉄道ピクトリアル』通巻第145号（1963年) ：森信勝『静岡県鉄道興亡史』静岡新 聞社(1997年) ：県内初の電車 駿豆電気鉄道Vol.24No,2通巻第94号明治史料館通信 ：駿豆電気鉄道の開通式明治39年11月28日 (1906)『静岡民友新聞』明治39・11・29 ：「沼津案内広告」（明治42年12月日発行） 画像＝沼津市立図書館資料室所蔵各写真集より 昭和38年2月5日 伊豆箱根鉄道軌道線（島津線）最終運行記念花電車 『国立病院前』停留所の近くに 『長沢車庫』に は、モ ハ８・15・16・17・201・202・203・204・ 205・206の10両の車両を有していた。 社 章 モハ204号車 ← 駿豆鉄道軌道線切符 （青木隆俊氏蔵） 昭和31年頃の切符で 上が大人、下が小人用 である。 本『駿豆電気鉄道物語』は「沼津ふるさと講座」のプレゼン資料として編集・作成したものである。 ★資料調査・プレゼンテーター：長谷川 徹（沼津史談会会員） ★編集・割付：飯田 善行（沼津史談会会員） 軌道線路線図