SlideShare a Scribd company logo
1 of 14
Download to read offline
ネット連動アウトリーチ

“百万人のわくわく洞窟ツアー”



     SF 作家  野尻抱介
自然科学のアウトリーチは困難
●   鉄則 : 「人間は人間にしか興味がない」
    補足  ( 大半の ) 人間は人間 ( および人間性 ) にしか興味
    がない。
    一般大衆が論文を面白がるなら SF 作家は失業。


●   論文と SF の違いは人間ドラマの有無。
    はやぶさ映画も結局ヒューマンドラマ。固体惑星科
    学の面白さは語られない。
想像力の支援
●   「わくわく」の本質は「予想」
    予想 ( 予期、期待 ) させるには知識が必要。
●
    溶岩チューブを調べると何がわかるか? 何
    が期待できるか?
●
    写真の読み方。地形、年代、クレーターの調べ
    方。
●
    未解決問題を提示する。それを知ることで科学
    の最前線に立てる。
情報公開
●   論文書くまで黙秘
    はやぶさ、ゲートポジションに来た途端、情報
    公開が止まった。
    ホイヘンスはリアルタイムで生データを提供。
    アマチュアのデータ解析が盛り上がった。
●
    盛り上がっている時に公表すべき
    最大の感動・関心を引き起こす。
    なんとかなりませんか?
アウトリーチ・ペイロード(1)
●   メッセージ系
    名前やメッセージ、イラストの搭載。
    あかつきの団体参加特典→市民側で組織化
    する現象が起きた。
     
●
    ミッション機器
    高専・大学でミッション機器製作。 
    100g 、 5V 、 30mA 、シリアルポート 1 個。
アウトリーチ・ペイロード(2)
●   一般向けサイエンス
    惑星協会「火星の聴音マイク」系。
    月に置いた物は事実上永久保存。未来を想像
    させる触媒に。
    放置型ペイロード。未来に期待する。クマムシ
    のカプセルとか。いつか回収。
ネットを使ったアウトリーチ
●   Twitter
    JAXA 、すでに実績がある。成功。

●   ニコニコ動画
    独自の文化。
    UGC (User Generated Content)
    CGM (Consumer Generated Media)
Twitter
●   クラスター
    フォロー関係で結ばれた、ゆるい組織。
    「宇宙クラスタ」は一番の早耳。
●   JAXA の擬人化衛星キャラ
    大勢に愛された。
●   Twitter 担当者の適性
    裁量権のある、ある程度偉い人。ユーモアが
    あり、自分を笑える人。ネットの空気が読める
    人。フランクに語れる人。叩かれ耐性のある人。
    つまり寺薗さん。
ニコニコ動画
●   宇宙開発の支持者が多い。
●
    十代~二十代にはテレビ並みに浸透。
●   UGC/CGM の一大拠点。
●
    初音ミク現象――創造の連鎖。
    はやぶさ動画の多くは初音ミク現象の一部。
●   ニコニコ動画内に JAXA 公式チャンネル。
●   ニコニコ動画←→ Youtube  相互に転載。
ニコニコ動画 「かぐや(衛星)」タグ

           登録数:62件
3D CG素材の支援
ユーザー作成のCGモデル、多数。
フリーウェア MMD(Miku Miku Dance)
JAXAから図面、動作解説など提供しては。
UGC支援の心得
●   「募集」では始まりにくい。干渉できない。お膳
    立てして待つ姿勢で。
●
    素材提供。画像、キャラクター、ペパクラ。
●   動画素材として使いやすくする配慮。無背景、
    ロゴ分離、英語表記。
●   2D 、 3D のCADデータ、CGモデル
●
    二次創作の権利問題を権利者側がクリアして
    扱いやすくする。
●
    プロジェクト側からの視線、認知を示してモチ
    ベ向上。 blog 掲載、 Twitter でツイート等。
「税金の無駄遣い」恐怖症
●   苦情・批判を恐れていると味方も作れない。
●
    「マスコミに悪く書かれたらおしまい」時代は終
    わった。
●   個人の情報発信力が激増。
    宇宙開発ファンがマスコミを逆襲する時代。
●
    失敗、困難、欠点、弱さを隠さない。
    むしろ感情移入してもらう好材料。ただし愚痴
    はだめ。
ネットでの批判、誤解、嘲笑、罵倒
●   必ずある。慌てず焦らず、人気のバロメーター
    だと思って受け流そう。
●
    叩かれないのは周知が進んでいない証拠。
●   「愛情の反対は憎しみではない。無関心であ
    る」 無関心よりは叩かれたほうがまし。
●   経験則 : ネットで呼び掛けて期待通りに反応
    する人は 1% 程度。 ( イベントに来る、キャン
    ペーンに応募する、など )
    1% でも分母が 100 万人なら 1 万人。いずれ
    宇宙科学の担い手に。

More Related Content

Similar to ネット連動アウトリーチ/月と火星の縦孔・溶岩チューブ研究会

機能としての人工知能、存在としての人工知能(前編)
機能としての人工知能、存在としての人工知能(前編)機能としての人工知能、存在としての人工知能(前編)
機能としての人工知能、存在としての人工知能(前編)Youichiro Miyake
 
(有人)月探査のこれから
(有人)月探査のこれから(有人)月探査のこれから
(有人)月探査のこれからJunya Terazono
 
ILOA Galaxy Forum Japan 2014 -- Junya Terazono
ILOA Galaxy Forum Japan 2014 -- Junya TerazonoILOA Galaxy Forum Japan 2014 -- Junya Terazono
ILOA Galaxy Forum Japan 2014 -- Junya TerazonoILOAHawaii
 
近世ヨーロッパ科学史シミュレーションゲームの開発
近世ヨーロッパ科学史シミュレーションゲームの開発近世ヨーロッパ科学史シミュレーションゲームの開発
近世ヨーロッパ科学史シミュレーションゲームの開発Shin Hirota
 
IPSJ-ONE 『想定外のエンタテインメントを「発掘」する』
IPSJ-ONE 『想定外のエンタテインメントを「発掘」する』IPSJ-ONE 『想定外のエンタテインメントを「発掘」する』
IPSJ-ONE 『想定外のエンタテインメントを「発掘」する』Kazutaka Kurihara
 
海馬と記憶モデル 松岡佑磨
海馬と記憶モデル 松岡佑磨海馬と記憶モデル 松岡佑磨
海馬と記憶モデル 松岡佑磨YumaMatsuoka
 
『人工知能のための哲学塾』を読む 三宅陽一郎×大山匠×犬飼博士 トークイベント
『人工知能のための哲学塾』を読む 三宅陽一郎×大山匠×犬飼博士 トークイベント『人工知能のための哲学塾』を読む 三宅陽一郎×大山匠×犬飼博士 トークイベント
『人工知能のための哲学塾』を読む 三宅陽一郎×大山匠×犬飼博士 トークイベントYouichiro Miyake
 
人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第零夜 資料
人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第零夜 資料人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第零夜 資料
人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第零夜 資料Youichiro Miyake
 
魔法使いの研究室 Vol.1
魔法使いの研究室 Vol.1魔法使いの研究室 Vol.1
魔法使いの研究室 Vol.1Yoichi Ochiai
 
ネットからリアルへ 人工知能の進出(前半)
ネットからリアルへ人工知能の進出(前半)ネットからリアルへ人工知能の進出(前半)
ネットからリアルへ 人工知能の進出(前半)Youichiro Miyake
 
人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第三夜 「仏教と人工知能」
人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第三夜 「仏教と人工知能」人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第三夜 「仏教と人工知能」
人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第三夜 「仏教と人工知能」Youichiro Miyake
 

Similar to ネット連動アウトリーチ/月と火星の縦孔・溶岩チューブ研究会 (12)

機能としての人工知能、存在としての人工知能(前編)
機能としての人工知能、存在としての人工知能(前編)機能としての人工知能、存在としての人工知能(前編)
機能としての人工知能、存在としての人工知能(前編)
 
(有人)月探査のこれから
(有人)月探査のこれから(有人)月探査のこれから
(有人)月探査のこれから
 
ILOA Galaxy Forum Japan 2014 -- Junya Terazono
ILOA Galaxy Forum Japan 2014 -- Junya TerazonoILOA Galaxy Forum Japan 2014 -- Junya Terazono
ILOA Galaxy Forum Japan 2014 -- Junya Terazono
 
近世ヨーロッパ科学史シミュレーションゲームの開発
近世ヨーロッパ科学史シミュレーションゲームの開発近世ヨーロッパ科学史シミュレーションゲームの開発
近世ヨーロッパ科学史シミュレーションゲームの開発
 
IPSJ-ONE 『想定外のエンタテインメントを「発掘」する』
IPSJ-ONE 『想定外のエンタテインメントを「発掘」する』IPSJ-ONE 『想定外のエンタテインメントを「発掘」する』
IPSJ-ONE 『想定外のエンタテインメントを「発掘」する』
 
海馬と記憶モデル 松岡佑磨
海馬と記憶モデル 松岡佑磨海馬と記憶モデル 松岡佑磨
海馬と記憶モデル 松岡佑磨
 
『人工知能のための哲学塾』を読む 三宅陽一郎×大山匠×犬飼博士 トークイベント
『人工知能のための哲学塾』を読む 三宅陽一郎×大山匠×犬飼博士 トークイベント『人工知能のための哲学塾』を読む 三宅陽一郎×大山匠×犬飼博士 トークイベント
『人工知能のための哲学塾』を読む 三宅陽一郎×大山匠×犬飼博士 トークイベント
 
Ouyou2008 Id
Ouyou2008 IdOuyou2008 Id
Ouyou2008 Id
 
人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第零夜 資料
人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第零夜 資料人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第零夜 資料
人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第零夜 資料
 
魔法使いの研究室 Vol.1
魔法使いの研究室 Vol.1魔法使いの研究室 Vol.1
魔法使いの研究室 Vol.1
 
ネットからリアルへ 人工知能の進出(前半)
ネットからリアルへ人工知能の進出(前半)ネットからリアルへ人工知能の進出(前半)
ネットからリアルへ 人工知能の進出(前半)
 
人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第三夜 「仏教と人工知能」
人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第三夜 「仏教と人工知能」人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第三夜 「仏教と人工知能」
人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 第三夜 「仏教と人工知能」
 

ネット連動アウトリーチ/月と火星の縦孔・溶岩チューブ研究会

  • 2. 自然科学のアウトリーチは困難 ● 鉄則 : 「人間は人間にしか興味がない」 補足  ( 大半の ) 人間は人間 ( および人間性 ) にしか興味 がない。 一般大衆が論文を面白がるなら SF 作家は失業。 ● 論文と SF の違いは人間ドラマの有無。 はやぶさ映画も結局ヒューマンドラマ。固体惑星科 学の面白さは語られない。
  • 3. 想像力の支援 ● 「わくわく」の本質は「予想」 予想 ( 予期、期待 ) させるには知識が必要。 ● 溶岩チューブを調べると何がわかるか? 何 が期待できるか? ● 写真の読み方。地形、年代、クレーターの調べ 方。 ● 未解決問題を提示する。それを知ることで科学 の最前線に立てる。
  • 4. 情報公開 ● 論文書くまで黙秘 はやぶさ、ゲートポジションに来た途端、情報 公開が止まった。 ホイヘンスはリアルタイムで生データを提供。 アマチュアのデータ解析が盛り上がった。 ● 盛り上がっている時に公表すべき 最大の感動・関心を引き起こす。 なんとかなりませんか?
  • 5. アウトリーチ・ペイロード(1) ● メッセージ系 名前やメッセージ、イラストの搭載。 あかつきの団体参加特典→市民側で組織化 する現象が起きた。   ● ミッション機器 高専・大学でミッション機器製作。  100g 、 5V 、 30mA 、シリアルポート 1 個。
  • 6. アウトリーチ・ペイロード(2) ● 一般向けサイエンス 惑星協会「火星の聴音マイク」系。 月に置いた物は事実上永久保存。未来を想像 させる触媒に。 放置型ペイロード。未来に期待する。クマムシ のカプセルとか。いつか回収。
  • 7. ネットを使ったアウトリーチ ● Twitter JAXA 、すでに実績がある。成功。 ● ニコニコ動画 独自の文化。 UGC (User Generated Content) CGM (Consumer Generated Media)
  • 8. Twitter ● クラスター フォロー関係で結ばれた、ゆるい組織。 「宇宙クラスタ」は一番の早耳。 ● JAXA の擬人化衛星キャラ 大勢に愛された。 ● Twitter 担当者の適性 裁量権のある、ある程度偉い人。ユーモアが あり、自分を笑える人。ネットの空気が読める 人。フランクに語れる人。叩かれ耐性のある人。 つまり寺薗さん。
  • 9. ニコニコ動画 ● 宇宙開発の支持者が多い。 ● 十代~二十代にはテレビ並みに浸透。 ● UGC/CGM の一大拠点。 ● 初音ミク現象――創造の連鎖。 はやぶさ動画の多くは初音ミク現象の一部。 ● ニコニコ動画内に JAXA 公式チャンネル。 ● ニコニコ動画←→ Youtube  相互に転載。
  • 11. 3D CG素材の支援 ユーザー作成のCGモデル、多数。 フリーウェア MMD(Miku Miku Dance) JAXAから図面、動作解説など提供しては。
  • 12. UGC支援の心得 ● 「募集」では始まりにくい。干渉できない。お膳 立てして待つ姿勢で。 ● 素材提供。画像、キャラクター、ペパクラ。 ● 動画素材として使いやすくする配慮。無背景、 ロゴ分離、英語表記。 ● 2D 、 3D のCADデータ、CGモデル ● 二次創作の権利問題を権利者側がクリアして 扱いやすくする。 ● プロジェクト側からの視線、認知を示してモチ ベ向上。 blog 掲載、 Twitter でツイート等。
  • 13. 「税金の無駄遣い」恐怖症 ● 苦情・批判を恐れていると味方も作れない。 ● 「マスコミに悪く書かれたらおしまい」時代は終 わった。 ● 個人の情報発信力が激増。 宇宙開発ファンがマスコミを逆襲する時代。 ● 失敗、困難、欠点、弱さを隠さない。 むしろ感情移入してもらう好材料。ただし愚痴 はだめ。
  • 14. ネットでの批判、誤解、嘲笑、罵倒 ● 必ずある。慌てず焦らず、人気のバロメーター だと思って受け流そう。 ● 叩かれないのは周知が進んでいない証拠。 ● 「愛情の反対は憎しみではない。無関心であ る」 無関心よりは叩かれたほうがまし。 ● 経験則 : ネットで呼び掛けて期待通りに反応 する人は 1% 程度。 ( イベントに来る、キャン ペーンに応募する、など ) 1% でも分母が 100 万人なら 1 万人。いずれ 宇宙科学の担い手に。