More Related Content
More from Takayuki Yamazaki (20)
資金調達
- 2. ©Takayuki Yamazaki (2016.06.14)
1. 資金調達の種類 (Types of funding)
資金を調達する方法について話しましょう。起業家にとって避けられない問題です。まず最初は「3 つの F」
です。「友達」「家族」「騙された人」です。彼らは個人的に出資してくれます。「3 つの F」は血縁関係があると
か、愛しているとか、信じているとか、または、あなたに騙されたなど、色々な理由で出資します。3 つの F か
らの出資額は大体 2 万 5000~10 万ドルです。次に個人投資家です。個人投資家は投資会社よりも色んな
理由で出資します。投資会社の目的は金儲けですが、個人投資家は違います。社会貢献したいとか、起業
家に夢を託したいとか、応援したいなど。投資会社にはない目的があります。でも個人投資家が甘い訳では
ありません。投資会社と同じく気合を入れて臨まなければなりません。ただ、個人投資家の方が決断は早い
ですね。会社の場合は 10 人ぐらいの同意が必要でも、個人なら奥さんに相談するぐらいでしょう。個人投資
家の出資額は大体 5 万~50 万ドルです。そして投資会社です。これは一筋縄ではいきません。世界では恐
らく年 3000~4000 件の取引が投資会社によって行われています。それに対して起業する会社の数は僅か
です。投資会社との取引は特殊だと思って下さい。投資会社が投資する可能性と会社の資質は比例しませ
ん。いい会社なら必ず投資を受けられる訳ではないのです。例えばレストランを成功させることは十分に可
能ですが、出資させるのは難しい。投資会社は年間百万ドル単位の売り上げには興味がないからです。彼
らは次のグーグル社を探しています。売り上げが数十億ドルの会社です。つまり、アップルやグーグル、ユ
ーチューブ、ツイッターのような会社を探ししているのです。だから投資会社はレストランや小売店やコンサ
ルタントやウェブデザインの会社などに投資はしません。年間数十億ドル稼ぐことはないからです。ただ、マ
クドナルドのように巨大チェーンに成長する例もあるので不可能とは言えません。でも、グーグルのような会
社に比べたら、そのようなレストランは、ほんのわずかです。だから、投資を断られたからといって、ダメな会
社というわけではありません。逆に投資を受けられたからといって成功するとは限りません。投資会社は似た
ような考え方をするので、似たようなドッグフードのネットショップが 5 つぐらい誕生することもあります。その 5
つ全て失敗することもあるのです。私(Guy Kawasaki)なら、例え投資会社に断られても、いい会社を作ること
にこだわります。やる気があればレストランでも小さなコンサルタント会社でも小売店でも経営を続けて、お金
を稼ぐことはできます。投資を受けるかどうかは重要ではありません。新しい投資方法として注目されるのは
クラウドファンディングです。3 つの F からの出資だけでは足りない時に活用するといいでしょう。このシステム
の面白いところは会社ではなく、会社の製品を売り込むことです。出資者は会社の株ではなく、まだ作られ
ていない製品を買います。株を発行する必要もなく、株主への責任もない。素晴らしいシステムです。自分
のために投資してくれる人を直ぐに見つけられるのも利点です。従来の方法とはずいぶん違います。自社
製品のためにお金を直ぐに払ってくれる人がいることは特別な意味があります。あなたはクラウドファンディ
ングで投資してもらうことができますか?もしできるのなら、少なくとも市場はあるという大きな証拠です。投資
会社の出資を受けられても市場があるという証拠にはなりません。市場があるだろうと投資会社が認めただ
けのことです。幾つかの資金調達の方法を説明しました。投資を受けられる企業の数は限られています。だ
から受けられなくても、くじけずにいい会社を作ることを考えましょう。ロマンチックな考えかもしれませんが、
いい会社には自然とお金が集まってきます。個人投資家が投資会社と違うのは、自分自身のために投資す
ることです。自分のお金を好きなように投資するのに対し、投資会社は他人のために投資します。個人投資
家は自分のお金なので、投資額は投資会社より少ないですが、出資するかどうかの決定は投資会社よりも
ずっと早いです。投資会社は金額が大きく時間がかかり、多くの人を説得しなければなりません。必ずしもそ
- 3. ©Takayuki Yamazaki (2016.06.14)
うとは限りませんが、個人投資家は比較的近づきやすく、投資会社よりはカジュアルに話を進められます。と
は言っても、どちらも同じようにきちんと準備して売り込みをしましょう。あなたは投資については素人なので
す。個人投資家と投資会社では考えていることが違います。大抵n起業家はまず個人投資家へアプローチ
から始めて、会社の原型ができたら、それを拡大するため、投資会社にアタックしています。
2. 投資家の探し方 (Finding investors)
投資家はどのように探したらいいでしょう。一番確実な方法は、投資に詳しい仲介者に紹介してもらうことで
しょう。投資家たちは常に投資先を探しています。「もう投資するのは飽きた」とは決して言いません。でも彼
らは、嫌というほど売り込みを聞いています。だから、ふるいにかけるためにも仲介者からの紹介は重宝なの
です。2 トンの土から 1 カラットのダイヤモンドを探すより、10 キロの土から探す方手間が省けますからね。仲
介者となるのは、まず企業財務専門の弁護士です。多くの企業を相手にしている弁護士は投資先を探す手
助けになるはずです。有名な大手法律事務所で働くような弁護士は、投資先を探す専門家で、起業家から
の相談に慣れています。弁護士は素晴らしい人材やアイデア、技術や市場を持った起業家を見つけると投
資会社にいる経験豊富な知り合いに電話してこう言います。「面白い技術を持っていて、人柄もいいクライア
ントがいる、会ってみてくれ」。ベテランの弁護士から電話をもらった投資家は間違いなく、その起業家に興
味を持ちます。これが 1 人目、財務専門の弁護士です。2 人目の仲介者は大学の教授です。例えば、自分
の出身校の教授とかね。勿論、東洋美術史の教授ではなく、コンピューター科学や電気工学、材料研究や
工学系の数字、物理学の教授のことです。起業を目指す若者たちは、そうした教授に会って、アイデアを話
します。実はその教授は Google の創始者や Yahoo の創始者たちをスタンフォード大学で教えていたとしま
す。沢山の起業家を指導したその教授が投資家の知り合いに電話します。「私はYahooやGoogleの創設者
を指導した教授だ。紹介したい教え子がいる。20年教えてきた中でも特に優秀な学生だ」信頼できる教授か
ら優れた教え子を紹介されたら、シリコンバレーの投資家は間違いなく教授が推選する学生に会うでしょう。
スタンフォード大学の教授が、いや別のどこの大学でもいいのですが、教授が「面白いアイデアを持ってい
る」と太鼓判を押すなら説得力がありますからね。そして 3 人目の仲介者は、その投資家が投資した企業に
勤めている人物です。それが CEO なら理想的です。何かのコネで、その CEO にアプローチできれば有利
になりますね。同窓会とか友達の友達とか、どんなコネでも構いません。CEO が投資を受けている会社に電
話します。「面白い製品やサービスを作っている連中がいるから会ってみてくれ」。自分達が投資している会
社の CEO が推選するなら、投資家も確実に信用するでしょう。「起業家が推選するなら、いい起業家だろう、
会ってみよう」と思うはずです。3 人の仲介者を覚えておいて下さい。弁護士、そして教授。投資家が投資し
た企業の人物です。
3. 投資ラウンド (Rounds of financing)
投資ラウンドについてお話しします。投資の段階にはシリーズ ABCD があります。簡単にそれぞれの段階を
説明します。シリーズ A に先立って、個人投資家が融資してくれることがあります。この場合は大体、無担保
で融資を受けられます。投資家は会社の評価額が決まった時、株を安く買うことができます。理由は、彼らが
リスクを負っているからです。まだ価値も分からない会社に融資してくれたお礼のようなものです。シリーズ A
で株価が決まったら、例えば、株を 2 割引きで買えます。これがシリーズ A の前に受ける融資です。シリーズ
- 4. ©Takayuki Yamazaki (2016.06.14)
ABCD についてですが、シリーズ A は初期段階です。起業したばかりで、夢や可能性を売りにしている段階
です。例えるなら、肉を焼き始めたところです。これからいよいよ動き始めます。製品の試作品などはあって
も、まだ実際の利益は出ていません。シリーズ B は肉が焼けた状態で、今までとは違います。口先だけでな
く、具体的な結果を出さなければいけません。「利益がこれぐらい」とか、「試供品を使った客の 2 割が契約し
た」とか。実際に成果を見せる時です。シリーズ C は拡大の時期。つまり資本金を増やす時です。もう夢を語
る時期は過ぎ、肉は焼き上がり、テーブルに配られています。問題はその肉の大きさです。会社の規模を拡
大し、知名度を上げるため、次のレベルに突入しました。億単位を稼ぐ企業を目指すのです。シリーズ D で
はもう実績を上げていて、更に増資が必要な段階です。公開市場に上場するためとか、買収されないため
の増資です。ここまでくれば会社は成功したと言えます。周囲の誰もがあなたの会社に進んで投資したがる
でしょう。もはや株を売る立場ではなく、買う立場になっています。復習しましょう。まずシリーズ A の前に融
資を受けます。シリーズ A は会社の準備段階。シリーズ B は本格的に稼働する段階。シリーズ C は会社の
規模を大きくして、更に成功を目指す段階。シリーズ D は成功した会社の株を誰もが買いたがる段階です。
既に電車は駅を出発し、後は、より大きな成功に向けて増資するだけです。以上がシリーズ ABCD という資
金調達の段階です。
4. 投資家へのメール (Emailing investors)
投資家を探すには、弁護士や大学教授などの「仲介者」が必要だという話をしました。そうした仲介者に依
頼するには、やはり E メールが効果的でしょう。そこでメールの書き方についてお話しします。私ならどんなメ
ールに心を動かされるでしょう?まず、件名で印象の 8 割が決まります。ここで相手の心を掴みましょう。「あ
なたを知っています」と伝えることが大事です。「耳寄りなお話があります」のようなスパムメールまがいの件
名はやめましょう。もし私ならどんな件名にグッとくるでしょう?「あなたの新刊は最高でした」とか、「あなたの
スピーチに感動しました」なら、絶対にメールを読みます。心に響くかどうかがポイントですね。相手を理解し、
敬意を払うことが大事です。その人の背景を調べておきましょう。「助けて下さい」とか「大儲けの機会をお見
逃しなく!」とか、「締め切り間近」みたいなのはダメな件名の例です。件名を見て相手はメールを開けます。
メールの分は簡潔な方がいいでしょう。5 行ぐらいが理想です。「何を頼みたいのか」「事業の内容」「あなた
の自己紹介」「今後のプラン」以上の 4 つのことを 4~5 行にまとめて下さい。1 ページでも長いぐらいです。
生い立ちを全て語る必要はありません。あなたが売り込みをしようとする相手は 1 日に 200~300 通のメール
を受け取ります。1 通で 2 ページなら合計で 500 ページ。誰も読もうとは思いません。さっさと本題に入りまし
ょう。そして要点は簡潔にまとめて下さい。ある意味、メールは売り込みの縮小版です。「またその例えか」と
思われるでしょうが、もう 1 度言います。「空母から飛び立つ戦闘機になれ」。もたもたせずに素早く要点に入
ることが上手なメールを書くコツです。重い添付ファイルは送らないこと。40MB のプレゼン資料なんて送られ
ても開くまでに時間が掛かり過ぎます。相手には迷惑なだけです。シンプルなメールが一番。いい件名と導
入部分に 3~4 行の文章。それで十分です。メールの目的を忘れないで下さい。あなたがピュリッツァー賞も
のの素晴らしい文章が書ける人でも、メールを送った相手がその内容にとても感動し、直ぐに返信をくれる
でしょうか?こんな風に。「メールを読んで君の素晴らしさに感動したよ。一刻も早く送金させてくれ」。こんな
ことは、おとぎ話の中でさえ絶対に起こりません。メールの目的は出資を頼むのではなく、会って話を聞いて
欲しいと頼むことだからです。断られないように相手を説得し続けましょう。断られさえしなければ、まだ望み