第55回日本小児神経学会総会
小児神経疾患における
血清・髄液中バイオマーカーの検討
(第五報):
急性疾患を対象に
群馬県立小児医療センター
神経内科
椎原隆、渡辺美緒、杉原進
2013年5月 大分
開示すべき利益相反は
ありません
方法・目的
➲ 小児急性神経疾患を対
象に、血清/髄液
S100B、NSE、tTau 測定
➲ 0−5病日検体、症例>5例
疾患群を抽出
➲ 診断・予後推定の補助的
マーカーとしての有用性
➲ 統計解析には統計解析
用ソフト”R“使用
http://www.R-project.org.
予後評価
点数 内容
1 後遺症なし
2 軽度後遺症
3 重度後遺症
4 死亡
表1. Modified Rankin Scale
結果
対象者
診断 例数
AEE 88 3 (1 – 6) 37:51 1 (0 – 3) 2 (1 – 3)
AM 15 4 (2.5 – 8.5) 10:5 0 (0 – 1) 1 (1 – 1)
AS 52 2 (0.75 – 4) 20:32 0 (0 – 0) 1 (1 – 1)
CTR 85 3.5 (1 – 8) 40:45 Not available 1 (1 – 1)
FS 51 1 (1 – 3) 40:11 0 (0 – 1) 1 (1 – 1)
SM 22 1 (0 – 2.5) 13:9 1 (0 – 2) 1 (1 – 1)
合計 333 2 (1 – 5) 160:153
表 2. 対象症例概要
年齢* 性、男:女* 検体採取日、病日* 予後、mRS*
AEE, 急性脳炎/脳症; AM, 無菌性髄膜炎; AS, 無菌性髄膜炎; CTR, 対照;
FS, 熱性痙攣; SM, 化膿性髄膜炎; mRS, modified Rankin scale.
数値変数は中央値 (四分位数範囲)で記載. *群間で有意差あり
血清/髄液バイオマーカー
疾患群毎の相違
血清/髄液バイオマーカー
予後による相違
診断(急性脳炎/脳症と
熱性けいれんの鑑別)・
予後推定における有用性
ROC曲線による検討
曲線下面積(AUC) > 0.75の
マーカーについて
至適しきい値
Youden index (YI)
= sensitivity + specificity – 1
による検討
感受性 < 特異性
“ruling in”
マーカー  AUC しきい値 YI 感受性 特異性
診断 0.76 156.7 pg/ml 0.59 63% 80%
予後 0.78 68.8 pg/ml 0.50 65% 85%
表3. しきい値の検討
髄液tTau
血清tTau
考察
● 検体・バイオマーカー種類により差異はある
が、各々は疾病特異的と言うよりは、より神経
障害の強い疾患(AEEあるいはSM)あるいは予後不
良群で高値を示している傾向
● ROCによる検討では、急性脳炎/脳症と熱性痙攣
の鑑別には髄液tTauが有用、予後判定には血清
tTauが有用
– 感受性 < 特異性であり(”ruling in”)、しきい値
より高値であればより重篤な疾患あるいは予後不良
である可能性を示唆
● 血清tTauによる経時的評価は次の課題
結語
● 血清・髄液S100B、 NSE、 tTau の
診断・予後推定における有用性につ
いて報告した。
● 本研究に御協力頂いた医師・患者さ
ん・御家族に深く感謝します。

小児神経疾患における血清・髄液中バイオマーカーの検討(第五報): 急性疾患を対象に