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とある初等幾何の超難問の解法
- 3. 研究室に突如として舞い込んだ問題 計算機を使わない解法が（研究室内・ネット上で）見つ かっていない この問題に学会前の貴重な時間を費やしたメンバーも 本発表では参考文献の手法を適用して 「初等幾何の範囲で」解いた結果を示す 非常に複雑 一覧表が手元にないと解法を思いつくことは実質不可能 もっとエレガントな解法があるはず！ 3
- 5. ラングレーの問題 1922年にイギリスの数学者ラングレーが最初に紹介 四角形の以下の𝑎, 𝑏, 𝑐, 𝑑の角度が与えられた とき，𝑒の角度を初等幾何の範囲で求める問題 （いずれの角度も有理数とする） 一般解は 𝑒 = arctan sin 𝑏+𝑐+𝑑 sin(𝑎)sin(𝑐) sin 𝑏 sin 𝑑−𝑎 +sin 𝑏+𝑐+𝑑 sin 𝑎 cos(𝑐) で与えられるらしい 全ての問題に共通する一般的な解法は存在しない うまい補助線を引く職人芸 2015年にようやく全問題の 解法が（Yahoo! 知恵ノートで） 発見される 𝑎 𝑏 𝑐 𝑑 𝑒 5
- 6. ラングレーの問題の分類 自由度2の問題（4グループ） 各グループについて一般的な解法あり，比較的簡単 自由度1の問題（17グループ） 各グループについて一般的な解法あり 自由度0の問題（65グループ） 一般的な解法なし 自由度1の問題から変形して解を求める 6
- 7. 自由度0の問題の分類 「近郊地方都市」（49グループ） 自由度1の問題から直接変形して導く 「遠隔地方都市」（8グループ） 「近郊地方都市」から変形して導く 「辺境の集落」（8グループ） 変形方法が（文献出版時点で）見つかっていない 例の問題は，解ける問題の中では最も厄介なグループの1つ 7
- 8. 参考文献におけるアプローチ 1. 解くべき問題のグループを特定する 判別式および一覧表あり 2. 解法が既知の問題からの変形ルートを特定する 一覧表あり 3. もととなる解法が既知の問題を解く 4. 2種類の変形規則を用いて変形し， 解くべき問題に帰着させる 円周角遷移（グループ内変形）：都市の中は徒歩で移動 交線交換（グループ間変形）：隣の都市へは鉄道で移動 8
- 13. 交線交換（グループ間変形） 3点を通る円と四角形について， 対称軸𝐗，直線𝐏と𝑷′ ， 𝐐と𝑸′ のうち3本の直線上に 3点とも乗っているとき，3本のうち1本を他の直線に乗り換える 手法m1（ PP′ Q→ PQQ′ ），手法m2（ PP′ Q→ XPQ）， 手法m3（ XPQ→ PP′ Q），手法m4（ XPQ→ XPQ′ ） X P Q Q′ P′ 13
- 14. 交線交換（グループ間変形） 3点を通る円と四角形について， 対称軸X，直線PとP′ ， QとQ′ のうち3本の直線上に 3点とも乗っているとき，3本のうち1本を他の直線に乗り換える 手法m1（ PP′ Q→ PQQ′ ），手法m2（ PP′ Q→ XPQ）， 手法m3（ XPQ→ PP′ Q），手法m4（ XPQ→ XPQ′ ） X P Q Q′ P′ 新しい四角形に移る （これは手法m1の例） 14
- 16. ①自由度1，グループ1-12-4（𝑥 = 114） ∠ACB=48°を証明せよ A B C D 66° 30° 54° 72° ∠ACB 16
- 17. ①自由度1，グループ1-12-4（𝑥 = 114） 証明の概略 ADに関して Cと対称な点Eをとる △ACEは正三角形かつ B,D,Eは一直線に並ぶ ∠ABE=2∠ACEより A,B,Eを通る円の中心は Cである 円周角の定理より ∠ACB=2∠AEB=48° 17
- 18. ①自由度1，グループ1-12-4（𝑥 = 114） 証明の概略 ADに関して Cと対称な点Eをとる △ACEは正三角形かつ B,D,Eは一直線に並ぶ ∠ABE=2∠ACEより A,B,Eを通る円の中心は Cである 円周角の定理より ∠ACB=2∠AEB=48° 18
- 19. ①自由度1，グループ1-12-4（𝑥 = 114） 証明の概略 ADに関して Cと対称な点Eをとる △ACEは正三角形かつ B,D,Eは一直線に並ぶ ∠ABE=2∠ACEより A,B,Eを通る円の中心は Cである 円周角の定理より ∠ACB=2∠AEB=48° 19
- 20. ①自由度1，グループ1-12-4（𝑥 = 114） 証明の概略 ADに関して Cと対称な点Eをとる △ACEは正三角形かつ B,D,Eは一直線に並ぶ ∠ABE=2∠ACEより A,B,Eを通る円の中心は Cである 円周角の定理より ∠ACB=2∠AEB=48° 20
- 21. ①自由度1，グループ1-12-4（𝑥 = 114） 証明の概略 ADに関して Cと対称な点Eをとる △ACEは正三角形かつ B,D,Eは一直線に並ぶ ∠ABE=2∠ACEより A,B,Eを通る円の中心は Cである 円周角の定理より ∠ACB=2∠AEB=48° 21
- 22. ∠CADの二等分線に関して Bと対称な点Eをとる B,C,Dを通る円と EAの交点をC’とする ②自由度0，グループ8[A]への変形 24° 54° 18° 66° 6° 自由度0，グループ8[A] 22
- 23. ∠CADの二等分線に関して Bと対称な点Eをとる B,C,Dを通る円と EAの交点をC’とする ②自由度0，グループ8[A]への変形 24° 54° 18° 66° 6° 自由度0，グループ8[A] 23
- 24. ③自由度0，グループ8[T]への変形 B,C,Dを通る円と BAの交点をB’とする A,B’,C,を通る円と B’Dの交点をB’’とする 42° 42° 18° 66° 12° 自由度0，グループ8[T] 24
- 25. ③自由度0，グループ8[T]への変形 B,C,Dを通る円と BAの交点をB’とする A,B’,C,を通る円と B’Dの交点をB’’とする 42° 42° 18° 66° 12° 自由度0，グループ8[T] 25
- 26. ④自由度0，グループ28[A]への変形 ∠CADの二等分線と B,C,Dを通る円の交点のうち Aから遠い方をC’とする 42° 21° 15° 69° 12° 自由度0，グループ28[A] 26
- 27. ④自由度0，グループ28[A]への変形 ∠CADの二等分線と B,C,Dを通る円の交点のうち Aから遠い方をC’とする 42° 21° 15° 69° 12° 自由度0，グループ28[A] 27
- 28. ⑤自由度0，グループ28[T]への変形 B,C,Dを通る円と BAの交点をB’とする A,B’,C,を通る円と B’Dの交点をB’’とする 21° 3° 87° 63° 75° 自由度0，グループ28[T] 28
- 29. ⑤自由度0，グループ28[T]への変形 B,C,Dを通る円と BAの交点をB’とする A,B’,C,を通る円と B’Dの交点をB’’とする 21° 3° 87° 63° 75° 自由度0，グループ28[T] 29
- 30. なんか形が違う？ 例の問題の図形が適当 自由度0，グループ28[T] 21° 3° 87° 63° 75° 30
- 31. 正しい問題の図形 3° 21° AC⊥BD D C A B 27° ∠ACB=? 自由度0，グループ28[T] 21° 3° 87° 63° 75° 15° 31
- 32. 正しい問題の図形 3° 21° AC⊥BD D C A B 27° ∠ACB=? 自由度0，グループ28[T] 21° 3° 87° 63° 75° 完全に一致 15° 15° ＝ 32
- 33. 結論と今後の展望 ∠ACB=15°だった！ 解法既知の問題から， 交線交換・円周角遷移による変形を繰り返す より簡単な解法の発見が望まれる 対角線が直交するという条件を活用？ Contact: kittaka@robot.t.u-tokyo.ac.jp AC⊥BD 33