@ 大阪（2019年4月17日） https://techplay.jp/event/723550

1. ブロックチェーン
書き換え不可能な記録によって
社会はどう変化するか?
@ 大阪（2019年4月17日）
1
Yoshiharu IKUTANI
MAIL: ikutani.yoshiharu.ip8@is.naist.jp

2. 自己紹介
2
幾谷 吉晴
（いくたに よしはる）
 DoraHacks GHS @ Tokyo
日本側コーディネーター
（参加者として優勝）
 「ブロックチェーンを利用した
ソフトウェア部品記録システム」
発表 & 受賞 (FOSE2018)
 奈良先端大 博士後期課程
日本学術振興会 特別研究員
（専門: 脳科学・人工知能）

3. 3
ブロックチェーンと聞いて
何を思い浮かべますか？
今日のテーマは
「ブロックチェーン」
それでは…

4. 4
仮想通貨
電子政府
ビジネス活用

5. 全体の流れ
1章 ブロックチェーンとは何か？
（& ブロックチェーンを体験してみる）
2章 仕組みの理解
3章 ブロックチェーンの現在と未来
5
いつでも質問OK 資料の写真撮影OK

6. 今日 お伝えしたいこと
 ブロックチェーンとは？
特定の組織に依存しない形の上で
一度記録された情報が書き換え不可能になるよう
工夫された情報記録形式のこと
 Blockchain 1.0 = お金のやりとりを記録
Blockchain 2.0 = プログラム自体を記録
 国や行政のルールをプログラム化して
ブロックチェーン上で記録・執行してしまおう
→ エストニア や Bitnation の考え方
6

7. 7
1章
ブロックチェーンとは何か？

8. ブロックチェーンの定義
（from 日本ブロックチェーン協会）
１）ビザンチン障害を含む不特定多数のノードを用い、
時間の経過とともにその時点の合意が覆る確率が0へ収束するプロトコル、
またはその実装をブロックチェーンと呼ぶ。
２）電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を
持ち、かつ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに
保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現する技術を
広義のブロックチェーンと呼ぶ。
8
参考: http://jba-web.jp/archives/2011003blockchain_definition

9. ブロックチェーンの定義
（幾谷が使っている定義）
9
P2P
ネットワーク
P2P
ネットワーク
一定
時間後
Peer to Peer ネットワークにおいて
一定の規則に従って合意を取りながら
全体としてデータを更新し続ける情報記録方式

10. ブロックチェーンの定義
（もっと簡単なバージョン）
10
P2P
ネットワーク
P2P
ネットワーク
一定
時間後
特定の組織に依存しない形の上で
一度記録された情報が書き換え不可能になるよう
工夫された情報記録形式のこと

11. 補足: P2P ネットワーク
11
参考: https://wakatech.jp/p2p_clientserver
クライアント・サーバ P2P ネットワーク
サービス提供側の
特定のコンピューターへ
利用者側の端末が接続する形式
対等な関係にある端末間を
相互に直接接続した上で
データを送受信する通信方式

12. とりあえず，使ってみる
12

13. Status のインストール方法
まずは，ここへアクセス : https://status.im/
iOS版 :
1. 手順に従って，TestFlight をインストール
3. TestFlight から Status をインストール
Android版 :
GooglePlay store からインストール
https://play.google.com/store/apps/details?id=im.status.ethereum
13
注）念のため，体験が終了したらアプリを削除してください
https://status.im/

14. インストール後の設定
1. 「Create account」からアカウントを作成
（各自 Password と UserName を決めてください）
2. アカウントが出来たら右下の「Profile」をタップ
3. 下にスクロールして「Acvanced」をタップ
4. 「Development mode」を ON にする
5. 「Network」を「Ropsten with upstream RPC」に変更
14

15. インストール後の設定
15
アカウント作成画面 Profile 画面 ネットワーク設定画面

16. テスト用の仮想通貨を貰う
16
1. 「Wallet」をタップ
（各自 確認用3wordをスクリーンショットしておく）
2. 「Deposit」をタップ
3. ”0x” から始まる数字の集まりが ETHアドレスになります
4. ETHアドレスを長押ししてコピーする
5. “ https://faucet.ropsten.be/ ” にアクセスして
自分の ETHアドレスを入力する
https://faucet.ropsten.be/

17. テスト用の仮想通貨を貰う
17

18. 誰かに仮想通貨を送付する
18
1. 「Wallet」をタップする
2. 「Send」をタップする
3. 「Choose Recipient 」の「…」をタップする
4. 「Scan QR code」を選択する
5. 誰かのQR code をスキャンして，
送り先の人のアドレスを取得
6. 「Amount」を設定する（なんでもOK．0.2とか）
7. 「Sign transaction」をタップして Password を入力

19. 誰かから仮想通貨を受け取る
19
1. 送って欲しい人にQRコードを見せる
送る側 受け取る側

20. 送金履歴を確認する
20
1. 「Wallet」をタップする
2. 「Transaction history」をタップする
3. どれかの送金履歴をタップする
送信・受信側のアドレスの他に
Block や Hash といった
情報が表示されている（なぜ？）

21. 1章のおわり
（信じられないかもしれませんが…）
みなさんの送金・入金履歴は
理論上，半永久的に記録され，かつ
誰にも書き換えることができません
21
では，なぜそんなことが言えるのでしょうか？

22. 22
2章
ブロックチェーンの仕組み

23. ブロックチェーンは
“Block” と “Chain” から出来ている
23
Tx1 = 0x4AC01
Tx2 = 0xBE772
Bob to Mike (2BTC)
Tx3 = 0x88FE4
Bob to Alice (1BTC)
block #102
1つ前のブロックハッシュ
= 0x00...D5
You to Alice (1BTC)
Tx1 = 0x359BB
Tx2 = 0x22447
Mike to Alice (0.1BTC)
Tx3 =0x1119F
Alice to Bob (0.2BTC)
block #101
ブロックハッシュ = 0x00…D5
マークル・ルート = 0xA3224
乱数 = 0x111111
1つ前のブロックハッシュ
= 0x00...FF
You to Alice (3BTC)
block
#100 ブロックハッシュ = 0x00…A1
マークル・ルート = 0x5F0E7
乱数 = 0x34567

24. 実際のブロック例（BTC）
24
* https://www.blockchain.com/ja/explorer

25. 想定するシチュエーション:
あなたはアリスに1BTCを送りたい
25
1BTC

26. 1st ステップ:
2人の間でやりとりを行う
26
P2P connection
やりとり
Date : 2017/12/13
From : You (0x0001)
To : Alice (0x0002)
Amount : 1BTC
あなたと Alice の
電子署名

27. 次に進む前に… ハッシュ関数
27
参考: https://wa3.i-3-i.info/word11948.html
ハッシュ関数とは…
入力されたデータに対して，決まったルールに基づいて
一定の適当に見える値を返してくれる関数
ハッシュ
生成器
出力
ab9203ge2
ハッシュ値
This is a pen
入力値
入力

28. 次に進む前に… ハッシュ関数
28
参考: https://wa3.i-3-i.info/word11948.html
1. ハッシュ値から元の入力値を推定することが非常に困難
2. 同じハッシュ値が得られる異なる2つの入力を
見つけることが非常に困難
特にこれらの特性が大事
ハッシュ
生成器
出力
ab9203ge2
ハッシュ値
This is a pen
入力値
入力
分からない

29. 2nd ステップ :
作成したやりとりを基にハッシュ値を生成
29
Date : 2017/12/13
From : You (0x0001)
To : Alice (0x0002)
Amount : 1BTC
あなたと Alice の
電子署名
ハッシュ
生成器
入力 出力
0x4AC01
ハッシュ値

30. Date : 2017/12/13
From : You (0x0001)
To : Alice (0x0002)
Amount : 1BTC
あなたと Alice の
電子署名
ハッシュ
生成器
入力 出力
0x4AC01
ハッシュ値
30
Date : 2017/11/01
From : You (0x0001)
To : Alice (0x0002)
Amount : 1BTC
あなたと Alice の
電子署名
ハッシュ
生成器
input output
0xBE772
ハッシュ値
全く異なる値
が出力される
つまり何をしているか？
ひとつひとつのやりとりに特定のIDをつける

31. 3rd ステップ :
やりとりとハッシュ値の組を
ビットコインのコミュニティ全体へ拡散させる
31
0x4AC01
ビットコイン・コミュニティ全体
(= 大量のコンピュータから成るP2P ネットワーク)
0x4AC01
やりとり ハッシュ値
0x4AC01
0x4AC01
0x4AC01

32. ブロックチェーン・ネットワークにおける
2つの役割（ユーザとマイナー）
32
ユーザ マイナー
ブロックチェーンシステムを
利用する役割
（ビットコインを誰かへ送る）
世界中のやりとりの履歴を
ブロックチェーンへ記録する役割
ここからの主役ここまでの主役

33. 4th ステップ :
マイナーはいくつかのやりとりを自分の手元へ集める
そして，集めたやりとりをひとつにまとめる
33
マイナーが集めたやりとりの集合
0x4AC01
You to Alice (1BTC)
0xBE772 0x88FE4 0xCCD90
Bob to Mike (2BTC) Bob to Alice (1BTC) Alice to Bob(3BTC)

34. 34
0x4AC01
You to Alice (1BTC)
0xBE772 0x88FE4 0xCCD90
Bob to Mike (2BTC) Bob to Alice (1BTC) Alice to Bob(3BTC)
＋
0x09373 0x55D74
＋
0x5F0E7
マークル・ルート
(やりとりの集合の代表値)
* このデータ構造を「マークル木」と呼びます
4th ステップ :
マイナーはいくつかのやりとりを自分の手元へ集める
そして，集めたやりとりをひとつにまとめる
＋

35. 5th ステップ :
マイナーは マークル・ルートと組み合わせると
N個の ”0” で始まるハッシュ値を生成する乱数を探し当てる
35
0x4AC01
You to Alice (1BTC)
0xBE772
Bob to Mike (2BTC)
0x88FE4
Bob to Alice (1BTC)
0xCCD90
Alice to Bob(3BTC)
マークル・ルート = 0x5F0E7
ハッシュ化マークル・ルート
0x5F0E7 + 乱数
0x12345
0x24EF09
+ 乱数
0x23456
0x3E0711
+ 乱数
0x34567
0x000AB1
* ルール :3つの “0” から始まるハッシュ値
Block 1
マークル・ルート
0x5F0E7
マークル・ルート
0x5F0E7

36. 36
ハッシュ化
+ 乱数
0x12345
0x24EF0924EF ... EF0924EF09
+ 乱数
0x23456
0x3E0711E32 .... EF00098174
+ 乱数
0x34567 0x000000000000000000 … DE981
5th ステップ :
マイナーは マークル・ルートと組み合わせると
N個の ”0” で始まるハッシュ値を生成する乱数を探し当てる
* 現在のビットコインのルール : 18 個 の “0” から始まるハッシュ値
（BTCコミュニティに参加する全コンピュータの計算で約10分かかる）
マークル・ルート
0x5F0E7
マークル・ルート
0x5F0E7
マークル・ルート
0x5F0E7

37. 6th ステップ :
正しい乱数を見つけた人はブロックを作って
新たにチェーンへつなげることができる
37
Tx1 = 0x4AC01
Tx2 = 0xBE772
Bob to Mike (2BTC)
Tx3 = 0x88FE4
Bob to Alice (1BTC)
block #102
1つ前のブロックハッシュ
= 0x00...D5
You to Alice (1BTC)
Tx1 = 0x359BB
Tx2 = 0x22447
Mike to Alice (0.1BTC)
Tx3 =0x1119F
Alice to Bob (0.2BTC)
block #101
ブロックハッシュ = 0x00…D5
マークル・ルート = 0xA3224
乱数 = 0x111111
1つ前のブロックハッシュ
= 0x00...FF
You to Alice (3BTC)
block
#100 ブロックハッシュ = 0x00…A1
マークル・ルート = 0x5F0E7
乱数 = 0x34567

38. 7th ステップ :
新ブロックを見つけた人は，コミュニティ全体へ拡散させる
新ブロックを受け取った人は，その正しさを確認する
38
新ブロックを見つけた人は，
自分の残高を12BTCだけ増やすことができる
見つけた！

39. （振り返り）送金履歴を確認する
39
1. 「Wallet」をタップする
2. 「Transaction history」をタップする
3. どれかの送金履歴をタップする
送信・受信側のアドレスの他に
Block や Hash といった
情報が表示されている（なぜ？）
改ざん不可能になるように
ブロックチェーンへの
記録プロセスが実行されたから

40. え？！
やっぱりやりとりを書き換えたい？
40
1. やりとりを書き換えます
2. やりとり自体のハッシュ値が変更になります
3. マークル木が変わってしまいます
4. 正しい乱数の値が変わってしまいます
5. 書き換え後のやりとりが正しいと
コミュニティ全体に信用させる必要が出てきます
現実的には不可能です

41. 41
え？！
やっぱりやりとりを書き換えたい？
Tx1 = 0x4AC01
Tx2 = 0xBE772
Bob to Mike (2BTC)
Tx3 = 0x88FE4
Bob to Alice (1BTC)
block #102
1つ前のブロックハッシュ
= 0x00...D5
You to Alice (1BTC)
Tx1 = 0x359BB ⇨ 0x234AA
Tx2 = 0x22447
Mike to Alice (0.1BTC)
Tx3 =0x1119F
Alice to Bob (0.2BTC)
block #101
ブロックハッシュ = 0x00…D5
マークル・ルート = 0xA3224
乱数 = 0x111111
1つ前のブロックハッシュ
= 0x00...FF
You to Alice(3BTC ⇨100BTC)
block
#100 ブロックハッシュ = 0x00…A1
マークル・ルート = 0x5F0E7
乱数 = 0x34567

42. 2章のおわり
42
よく勘違いされるポイント…
ブロックチェーンに一度記録された情報を
書き換えることは非常に困難（実践的には不可能）
ブロックチェーンに記録された情報は
すべて正しく，信用できる
（そもそも間違った情報が記録される可能性が存在する）
正しい
間違い

43. 2章のおわり
43

44. 44
3章
ブロックチェーンの
現在と未来

45. 1.0 : 書き換え不可能なお金のやりとり
2.0 : 書き換え不可能なプログラムソースコード
ブロックチェーン上に
一度記録された情報は書き換えられない
それなら...
1.0 : お金のやりとりを記録しよう
2.0 : プログラムを記録しよう
45
参考: https://medium.com/@UnibrightIO/blockchain-evolution-from-1-0-to-4-0-3fbdbccfc666
ビットコイン
スマート
コントラクト

46. スマートコントラクト
ブロックチェーン上に記録された
書き換え不可能なプログラムソースコード
スマート = 「電子化された」
コントラクト = 「契約書」
46
参考: https://medium.freecodecamp.org/developing-an-ethereum-decentralized-voting-application-a99de24992d9

47. スマートコントラクト
47
参考: https://medium.freecodecamp.org/developing-an-ethereum-decentralized-voting-application-a99de24992d9
電子投票用の
コントラクト
(Ethereum)

48. DApps (Decentralized Applications)
P2P ネットワーク上で
ブロックチェーンに情報を記録しながら動作する
アプリケーションの総称
48
DApps
 特定の管理者が存在しない
（全員が平等な立場になっている）
 アプリケーションの動作はすべて
ブロックチェーン上に記録された
書き換え不可能なソースコードに従う

49. 電子国家 エストニア
世界で最もブロックチェーンが活用されている国家
49
 人口: 134万人
 面積: 九州の約1.2倍
 首都: タリン
 通貨: ユーロ
 公用語: エストニア語

50. 参考: https://e-estonia.com/solutions/

51. Bitnation:
国家・行政サービスの分散化
BITNATIONは独自のIDカードやブロックチェーン上での結婚など
今まで国家が提供してきたサービスを提供する。
BITNATIONは伝統的な政府が提供する、紛争解決や保険、
安全保障（その他さまざまなサービス）を提供する。
これは国籍や住んでいる場所は問わず、
分散的に、自発的に受けられるサービスだ。
51
参考: http://cryptocurrencymagazine.com/bitnation-governance-2-0

52. 基本的な考え方
 行政サービスは決められたルール（法律）に
したがい 国民全員へ平等な支援を提供するもの
 ルールは言語やソースコードとして表現できる
 人間がルールを執行すると
間違い や えこひいき が起こる可能性が残る
52
 ルールの実装ソースコードを国民全員へ公開
（オープンソース化）
 スマートコントラクトによるルールの執行
（書き換え不可能性・透明性の担保）

53. エストニアが得たメリット
 管理コストの大幅削減
 先進技術のノウハウ蓄積
 物理的な制約に依存しない国家の構築
53
オススメ！「e-Estonia：｢国｣の概念を覆すエストニアの壮大な電子国家戦略」
http://www.nowhere.co.jp/blog/archives/20180525-110027.html
国とは何なのでしょうか？
行政とは何なのでしょうか？

54. まとめ
54
 ブロックチェーンとは？
特定の組織に依存しない形の上で
一度記録された情報が書き換え不可能になるよう
工夫された情報記録形式のこと
 Blockchain 1.0 = お金のやりとりを記録
Blockchain 2.0 = プログラム自体を記録
 国や行政のルールをプログラム化して
ブロックチェーン上で記録・執行してしまおう
→ エストニア や Bitnation の考え方