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More from Masaya Fukumoto (12) 業界3位の歩む道 -銅メダリストの苦悩-1. 業界 3 位の歩む道
-銅メダリストの苦悩-
ボーダーゼロ
2008 年 8 月
北京オリンピックもあと僅か。 日常生活での格差が叫ばれて久しいがビジネス
オリンピックの表彰台に上ることのできる選手は僅 での格差もここ数年進んでおり、その証左として 1 位
か 3 人であり、ビジネスシーンも同様で業界に君臨 品目のシェアが図 1 のとおり逓増している。また、上
できるのは僅かに限られている。当レポートでは、表 位 3 品目合計では、59.8%(2002 年)→61.1%
彰台の当落線上にある 3 位品目を製造・販売してい (2006 年)と上位へのシェア集中が加速している。
る企業(銅メダリスト)に焦点を当て、彼らが業界で置
【図 1 シェア 1 位品目のシェア推移】
かれている位置づけを明らかにしてみる。
(%)
30.2
なお、分析に当たってのデータは日経産業新聞
30.0
「市場占有率」の 2004 年版(2002 年集計データ)
29.8
から 2008 年版(2006 年集計データ)の 5 年分
(135 品目)を参照している。シェア算出については 29.6
「売上金額」「販売数量」など参照データを単純平均 29.4
している(「売上金額」もしくは「販売数量」に統一して
29.2
いない)。
29.0
2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
しかし、上位 3 品目の各々の推移に目を転じると、
銅メダリストのシェアは伸びるどころか、2002 年か
ら 2006 年にかけて低下している。つまり、上位 3 品
目合計のシェア拡大は上位 2 品目の伸びが 3 位品
目の衰退を補うほどの伸びを示しているのである。さ
らに注目すべきは、2 位と 3 位との差が拡大している
のに反し、3 位と 4 位の差が縮小するという、3 位に
とっては上位をうかがうどころか下位からの脅威にさ
らされるという苦しい状況にある(次ページ図 2 参
照)。
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2. 要因を 3 位品目の成長・衰退、および上位品目の衰
【図 2 シェア 3 位品目と 2 位品目・4 位品目の差】
退、下位品目の成長に分類してまとめてみた(図 3)。
(%)
7.0 なお、「成長」「衰退」の定義は表 1 のとおり。
6.5
6.0 【図 3 3 位品目のランク推移要因】
3 位品目と 2 位品目のシェア差
5.5
(件)
5.0 60
3 位の衰退
4.5 50
3 位品目と 4 位品目のシェア差
4.0 2 位の衰退
40
3.5 3 位の成長
30
3.0
2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
20
4 位の成長
10
3 位品目にとって上記のような厳しい状況がなぜ
0
生まれつつあるのか。シェア増減に伴うランク上下の 1位←3位 2位←3位 3位→4位 3位→5位以下
【表 1 用語定義】
シェア増減の向き
定義
上位品目 下位品目
下位の増大シェア幅>上位の増減シェア幅
成長 ↑/ -/↓ ↑ 上位の成長を下位が上回る場合
例:M&A や商品のヒットなど
上位の減少シェア幅>下位の増大シェア幅
衰退 ↓ ↑/ -/↓ 下位の成長後シェアが上位の成長前シェアを下回る場合
例:事業撤退や商品ライフサイクルの後期など
図 3 から次の 3 点が特徴として挙げられる。 2).図 3 から、3 位のランクが上昇したケースの内
の約 2/3 が、3 位品目の成長によって勝ち取ったも
1) 2 位品目と3位品目とのシェア差拡大にも関
のであり、その事実は 3 位品目が 1 位に大躍進する
わらず、2 位と 3 位の逆転件数が最も多い
ときにはより顕著である。すなわち、1)で示したよう
2) 3 位品目の上昇は自らの成長により実現 に 2 位品目とのシェア差拡大の中で逆転するために
は、3 位品目企業による努力なくして実現はないとい
3) 3 位品目の転落の要因は、下位の成長よりも
うことを示している。
3 位自らの衰退による
3).2)とは異なり 4 位との逆転では約 1/2 が 3
1).図 2 では 2 位品目とでここ数年の間にシェア
位の衰退による転落(4 位品目自らの成長努力が逆
差が拡大傾向にあることを示したが、実際は 2 位と 3
転の要因であるというケースは 2 位と 3 位の間ほど
位が逆転するケース件数は 3 位と 4 位が逆転する
多くない)が占め、3 位が 5 位以下に転落するケース
ケースよりも多い。このことから、シェア拡大傾向に
にではほとんどが 3 位の衰退によるものとなってい
ある 2 位と 3 位が逆転するためには、両者の間で大
る。一方で、2)で示したとおり 3 位が上位に食い込
幅なシェアの増減が生じていると判断できる。
むには自らの成長によるケースが多く、上位品目の
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3. 衰退による棚ぼた的な逆転は 3 位品目とその下位 かつてのように売上至上主義という風潮は薄らぎ、
品目との関係ほど期待できない。 それがためにシェアの位置づけも幾分変化が生じて
いる。だが、シェアや業界内での順位はわかりやす
上記 3 つの特徴の通り、3 位品目を扱う企業は上
いという特徴も手伝って未だに注目を集めていること
位との差が拡大する一方で下位との差が縮小し、油
は紛れもない事実である。3 位品目を扱う銅メダリス
断すればすぐに逆転を許してしまうという極めて厳し
トたる経営者にとって、自らの商品を表彰台に立た
い環境での舵取りが求められる存在である。
せるべく経営努力を行うのか(2 位を追い越すには
従来以上の努力が必要)、表彰台を守るための経営
ではなく別の指標に基づいた経営を行うべく勇んで
表彰台を降りるかの検討・意思決定を行うべき時期
に差し掛かっている。
以上
《お問合せ先》
ボーダーゼロ Border Zero 福元 聖也(ふくもと まさや)
URL:http://www.borderzero.com U
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