研究紹介
(思春期の人間関係)
友だちグループ間の地位と適応
水野 君平(北海道大学大学院 教育学院)
連絡先:kimihira0120@gmail.com
1
スクールカーストとは
• 学級内の児童、生徒の「友だちグループ」間のステータス
を表す言葉。
• いじめの誘因ともなりうる。
• 上位層の生徒ほど支配的で高い学校適応を示す
(森口, 2007; 鈴木, 2012)
• 定義:学級内におけるグループ間の地位格差
2
スクールカースト研究の課題
• 実証的な研究が少ない
- e.g., 堀(2015)や森口(2008)・・・教師や評論家の経験的な論考
- 学術的視点による調査・考察(e.g.,鈴木, 2012)は少数
• 「スクールカースト」の心理的プロセスの不在
- 鈴木(2012)は「スクールカースト」を「権力」と説明したが・・・
3
研究1の提案
• 計量的調査によって実証的な検討をおこなう
- 基礎的知見を蓄積する
- 心理学的観点からの研究
• 「スクールカースト」の心理的プロセスに着目
- 何が地位→学校適応に関係しているのかを明らかにする
- 集団間の地位に関連し、地位格差を是認する志向性に着目
4
社会的支配理論・社会的支配志向性
• 社会に集団間の地位格差を維持・促進するイデオロギー
が存在(Ho et al., 2012;Sidanius&Pratto, 1999)
• 個人差は社会的支配志向性(SDO)によって説明
- 高地位集団の成員はSDOが高い
• 高いSDO=地位格差の是認・正当化
• SDOと生徒の人気(Popularity)は正の相関(Mayeux, 2014)
5
研究1の目的と予測
• 目的
- 「友だちグループ」間の地位とSDO、学級適応感の関
係を検討する
• 予測
- グループ間の地位が高いことは、格差の是認に対す
る態度を通して、学級への適応感を向上させる
6
グループ間地位 学級適応感
社会的支配志向性
+ +
+
調査協力者と内容
• 協力者
- 中学1〜3年生(1179名)
• 時期と方法
- 2015年10月〜11月に実施
• 倫理審査
- 所属機関(教育学院)の倫理委員会の承認
7
グループ間地位とグループ内地位
• 教室内にグループがあると回答した生徒に対し・・・
- 1番関わるグループを想定してもらうように教示
• グループ間地位
- (生徒が知覚した)グループ間の地位
- 「私のいるグループは教室の中で中心的な存在だ」(5件法)
• グループ内地位
- (生徒が知覚した)グループ内の地位
- 「私は自分のグループの中では中心的な存在だ」(5件法)
8
その他の測定項目
• SDO(杉浦他, 2014)
- 原文を中学生に向けた表現に変更(7件法→5件法)
- 「集団支配志向性」:集団間の平等への態度
- 「平等主義志向性」:集団間の格差関係への態度
• 学級適応感
- 大久保(2005)の青年用適応感尺度を改変
- 「居心地の良さ」と「課題・目標の存在」(5件法)
9
構造方程式モデリングによる検討
• グループ間地位とSDO、学級適応感との関係性を検討
• 統制変数
- 学年、性別、グループ内地位
• 分析対象者
- 992名
• 平等主義志向性は項目の多くに天井効果が見られたの
で投入しなかった
10
グループ間
地位
学級
適応感
SDO
(集団支配志向性)
変数間の関係性
• 全ての変数間で正の関係
11
グループ間
地位 居心地の
良さ
SDO
(集団支配志向性)
.14***
課題・目標の
存在
*** p <.001 ** p <.01 * p<.05
.29***
.10**
.17***
.16*** .53***
グループ内地位→居心地: β = .154***
グループ内地位→課題・目標: β = .147***
グループ内地位→集団支配志向性: β = .058 n.s.
χ2(3)=7.57, p = .056, CFI=.995, RMSEA=.039
R2 = .05
R2 = .11
R2 = .19
間接効果の推定(ブートストラップ法)
間接効果(バイアス修正法、リサンプリング数=2000回)
12
グループ間
地位 居心地の
良さ
SDO
(集団支配志向性)
+
課題・目標の
存在
居心地の良さ: β = .026, 95%CI [.012―.046]
課題・目標の存在: β = .017, 95%CI [.010―.042]
+
+
研究1で得られた意義/課題
• 「スクールカースト」のプロセスを解明
- ①グループ間の地位が適応感に関連する直接的なプロセス
- ②地位格差の維持・正当化を媒介する間接的なプロセス
- 「スクールカースト」の実証的知見の蓄積
• 学校適応が社会的に望ましくない態度・価値観と関連
- 適応してない生徒だけではなく、適応している生徒にも注目
- 「学校に適応する」の意味を再考することを示唆
• 本研究は「スクールカースト」における態度レベルの検討
- 実際の行動指標(e.g. 攻撃行動、いじめ)を検討する必要
13
研究2
• 目的
- 「友だちグループ」間の地位といじめ被害の関係を明
らかにする
• 予測
- グループ間の地位が低いといじめ被害を受けやすい
- 性別・教師との関係の良さが効果を調整する
- いじめの発生頻度は女子<男子(e.g., Berger, 2007)
- 教師関係は援助要請を予測(e.g., 加藤他, 2016)
水野・加藤・太田(準備中) 14
調査協力者と内容
• 協力者
- X県Y市の中学1〜3年生(2388名)
• 時期と方法
- 2016年7月に実施
• 倫理審査
- 所属機関(教育学院)の倫理委員会の承認を得た
水野・加藤・太田(準備中 15
測定内容(今報告分のみ抜粋)
• グループ間地位(5件法)
- 研究1と同様
• いじめ被害の項目(5件法)
- 殴られる・蹴られる(身体的いじめ)
- 直接悪口を言われる(言語的いじめ)
- 陰口を言われる(関係性いじめ)
- ネットでいじめられる(ネットいじめ)
• 教師との関係の良さ(5件法,うち3項目:α=.93)
- 大久保・青柳(2004)
水野・加藤・太田(準備中) 16
結果(ポアソン回帰)
身体的いじめ 言語的いじめ 関係性いじめ ネットいじめ
Coef.(b) Coef.(b) Coef.(b) Coef.(b)
性別(A) -.22*** -.10*** .15*** .00
教師との関係(B) -.03* -.06* -.07 ** -.01
グループ間地位 (C) -.00 -.02 -.04* .00
A×C .02 .05 .04 .00
A×B .05* -.01 -.04 .01
B×C -.01 -.01 -.01 -.01
A×B×C .00 .00 .02 -.03*
決定係数 .09 .04 .06 .01
水野・加藤・太田(準備中) 17
*** p <.001 ** p <.01 * p<.05
注1) 男子=1,女子=2
注2) 変数は中心化処理
注3) 学年は共変量で投入
単純傾斜検定
水野・加藤・太田(準備中) 18
*
• 教師との関係が悪い
(-1SD)群
- 男子は非有意な傾き
(b = -.01, n.s. )
- 女子は有意な傾き
(b = .03, p <.01)
• 教師との関係が良い
(+1SD)群
- 男女とも非有意
(bs = -.03―-.02, n.s.)0.00
0.05
0.10
0.15
-1SD +1SD
ネ
ッ
ト
い
じ
め
の
被
害
グループ間地位
男子
女子
**
単純傾斜検定
水野・加藤・太田(準備中) 19
• 男子は有意な傾き
(b = -.05, p<.01)
• 女子は非有意の傾き
(b = -.01, n.s.)
0.00
0.05
0.10
0.15
0.20
0.25
0.30
0.35
0.40
-1SD +1SD
言
語
的
い
じ
め
の
被
害
教師との関係の良さ
男子
女子
**
研究2の結果のまとめ・考察
• スクールカーストといじめ被害の関連
- ①男女とも陰口の被害に遭いやすい
- ②教師関係が悪い女子高地位グループでネットいじめ被害増
- ③目に見えるようないじめ被害とは関連しなかった
• 性別と教師関係による調整効果
- 教師との関係の悪さは援助要請を打ち消す
- 人気な生徒は評判(reputational)いじめの対象(Closson et al., 2016)
- ネットいじめでも噂の攻撃は女子に多い(Abeele & Cock, 2004)
- 本研究では「どのグループにいじめられたか」は考慮してない
水野・加藤・太田(準備中) 20

心科研2016 水野

Editor's Notes

  • #2 ポインター。 モデル図に行くまでを早くする
  • #3 スクールカーストの説明 研究で扱う現実の現象はスクールカーストである 本研究では、友達グループの地位が集団支配指向性を媒介し、学級適応感に与える影響を検討することを目的とする
  • #5 本研究では特に、媒介の要因に着目する。
  • #9 グループ内地位は、グループ間の地位の影響を取り出すために用いた。
  • #10 学級適応感は学級に対する認知・情動的な適応の側面を測定する
  • #14 直接的なプロセスは人気生徒が自尊心が高いなど、これまでの研究と整合的