天文学概論(第4回)

星惑星形成1
∼恒星の起源と進化∼

東京工業大学 佐々木貴教
星惑星形成1
∼恒星の起源と進化∼
・星形成と進化の全体像
・小質量星の形成(分子雲から主系列星へ)
・様々な質量の星の最期
次回:星惑星形成2 ∼太陽系形成論∼
・原始惑星系円盤(原始太陽系円盤)
・古典的太陽系形成論モデル
・地球の形成・初期進化
星形成と進化の全体像
星(恒星)とは?
・ガス(H, He)の巨大な塊
・内部で核融合反応
・自ら光り輝いている
・拡張:放射と熱膨張
・収縮:自らの質量による重力
  → このバランスが保たれている
・等級:見かけの明るさ
・絶対等級:星本来の明るさ
・星の色:表面温度
星の明るさ
・等級:見かけの明るさ
  ベガ(こと座アルファ星)を0等と定義
   m = -2.5 log (☆/Vega)
    → 100倍明るいと -5 等級
  同じ星でも距離によって等級が異なる
・絶対等級:星本来の明るさ
  10pc (3.3光年) の距離に星を置いた時の等級
・光度:星の絶対的な明るさ
  1秒あたりのエネルギー放射量
HR図(星の色と明るさ)
青い星:高温
赤い星:低温
主系列星

横軸:温度
  (星の色)
縦軸:光度
  (星の明るさ)
星形成の流れ
星の材料:宇宙に漂うガス(星間分子雲)
(1)星間分子雲の収縮とコアの形成
(2)原始星の形成と成長
(3)主系列星への進化

星形成の
3段階

・星は1個だけで生まれることは少ない
・数10個∼数100個の星が同時に生まれること
 が多い(星雲・星団)
・軽い星ほど多く生まれる
分子雲から主系列星への進化
星形成領域
星の周りの円盤
様々な質量の星の一生
小質量星・大質量星・連星系
・小質量星:太陽質量の0.08倍∼2倍程度の星
  太陽程度の小質量星が全体の9割近くを占める
  進化のタイムスケールが長い(数億年以上)
  観測的・理論的理解が進んでいる
・大質量星:太陽質量の8倍程度以上の星
  絶対数が非常に少ない
  進化のタイムスケールが短い(数千万年以下)
  観測的・理論的理解がまだ進んでいない
・連星系:2つの星が重心の周りを運動している
  連星系の形成は重要な研究課題
小質量星の形成
(分子雲から主系列星へ)
分子雲から主系列星への進化
星間分子雲

宇宙空間に存在する分子ガスの集まり
星間分子雲の収縮とコア形成
星間分子雲中の密度が濃い部分が自己重力で収縮
 → 分子雲コアの形成
星形成のスタート!
典型的な分子雲コア
水素分子密度:104 cm-3
温度:10 K
サイズ:0.05光年
質量:太陽質量の10倍
収縮の時間:105-106年
分子雲コアの観測
分子雲の観測:
 主成分は水素だが電波を放出しないので観測不可
  → 次に存在量の多い一酸化炭素(CO)を観測
分子雲コアの観測:
 高密度過ぎるため12C16Oの放射が飽和してしまう
  → 13CO, C18O, CS, NH3, HCO+, N2H+ を観測
原始星コア(星の種)の観測:
 周囲の星間微粒子を暖めて赤外線を放射する
  → 遠赤外線・赤外線・近赤外線で観測
おうし座にある分子雲コア
原始星の形成と成長
・分子雲コア中心部の密度が1011cm-3を超える
  → 原始星の誕生
・原始星の周囲に原始星円盤が形成
・円盤から原始星にガスが降り積もる
  → 原始星の質量増加
・原始星円盤から垂直方向に
 双極分子流が吹き出す
・約106年でガス降着終了
 原始星の質量が決まる
双極分子流・光ジェット
T タウリ型星:前主系列収縮期
・質量降着を終えた星はゆっくりと収縮する
  → この段階の星を T タウリ型星と呼ぶ
・T タウリ型星の特徴
  星の周囲に星間ガスの名残をとどめている
  若い星であることを示す状況証拠がある
  表面温度は 3000∼7000 K
  表面の磁場を伴う活動が示唆される
・中質量星で対応する星も存在
  → ハービッグ Ae/Be 型星と呼ぶ
主系列星への進化
原始星は約107年かけて収縮、内部温度が上がる
 → 水素燃焼が起こる温度(1.5 107 K)に到達
 → 一人前の恒星(主系列星)になる

T Tauri Star
原始惑星系円盤
分子雲コアの収縮

! 

  重力と遠心力のつりあい
原子惑星系円盤が形成

! 

原始星

分子雲コア

T タウリ型星

原始惑星系円盤
原始惑星系円盤の観測

実際に様々な形の円盤が観測されている
 → 原始惑星系円盤は確かに存在する!
様々な質量の星の最期
様々な質量の星の一生

3

3
-2

0

2.3

-1

観測から導いた
星の質量分布

-2

.1
-1

.2 .3 .4

.6 .8 1

0

2

4

5

.3

-1

Γ=

太陽は宇宙の中で
典型的な質量を持つ星

1

Γ =-

・0.08 Msolar 以下は
 褐色矮星と呼ばれる

5
.3
-1

・最大で 100 Msolar
 程度まで存在

2

Γ=

・0.1∼1.0 Msolar が
 圧倒的に多い

ξ(log M) stars log -1M pc -2
単位質量・単位体積あたりの星の個数(対数)

初期質量関数(IMF)

6 8 10

1

Log M (M O)
星の質量(対数)

20

40 60 80

2

(Msolar)

Figure 1: Field star IMF in the solar neighborhood. Plotted are star numbers pe
様々な質量の星の寿命
星の質量[太陽質量]

星の寿命[年]

100
50
10
5
2
1
0.7
0.5

6
2.7×10
6
5.9×10
7
2.6×10
8
1.0×10

1.3×109
1.0×1010
4.9×1010
1.7×1011

質量の大きな星ほど寿命が短い
赤色巨星
赤色巨星
・水素を使い果たした中心核はヘリウム核となる
  → 周囲の水素の層で核融合が進行
・外層は自己の重力を振り切り大きく膨張
 中心から離れるため温度が下がり赤色になる
・太陽の約40倍以上の星の場合
  水素の外層が吹き飛び内部の高温部分が残る
   → 青色巨星と呼ぶ
例:アンタレス(さそり座α星), ベテルギウス(オリオン座α星)
惑星状星雲
惑星状星雲
・超新星に至らずに一生を終えた星の残骸
・重力を振り切ったガスが散乱で輝いているもの
 電離による輝線スペクトルが環状に見える
・周囲のガスは星間ガスとして宇宙空間へ
  → 新しい星の材料となる
・惑星状星雲の中心部分には白色矮星が残る
例:こと座の環状星雲(M57), ふたご座のエスキモー星雲
白色矮星
白色矮星
・太陽質量8倍以下の星の最期の姿
・サイズは地球程度・質量は太陽程度
  → 非常に高密度な天体である
・電子の縮退圧で重力による収縮を支えている
  → 支えきれない場合は中性子星になる
・数十億年から数百億年かけて冷却していく
例:シリウス(おおいぬ座α星)の伴星, ヴァン・マーネン星
超新星
超新星
・ 太陽質量8倍以上の星の最期に起きる爆発現象
・炭素核融合反応でネオン・マグネシウムが生成
  → 陽子が電子を捕獲する反応が発生
  → 電子の縮退圧が弱まり一気に重力崩壊
 太陽質量の10倍以上だと核融合で鉄まで生成
  → 鉄の光分解により一気に重力崩壊
・いずれも爆縮的崩壊の反動で大爆発を起こす
例:SN1054(銀河系内), SN1987A(大マゼラン星雲内)
中性子星
中性子星
・太陽質量8倍∼30倍程度の星の最期の姿
・サイズは10km程度・質量は太陽程度
  → とてつもなく高密度な天体である
・パルス状の電磁波を放出しているものもある
  → パルサーと呼ぶ
・中性子星自体は可視光線を発していない
  → パルサーとしてその実在が確認された
例:PSR B1919+21, SGR 1806-20(いずれもパルサーの名前)
ブラックホール
ブラックホール
・太陽質量30倍程度以上の星の最期の姿
・収縮の段階で自己重力を支えきれない
  → 重力崩壊が続き極限までつぶれたもの
・落下する物体は赤方偏移を受ける
  → 可視光→赤外線→電波→不可視と変化
  → ブラックホールの中心は見えない
・ある半径で脱出速度が光速を越える
  → この半径の球面を事象の地平線と呼ぶ
繰り返される星の生と死

20131016