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報 告 書 
ジオパークのユニバーサルデザインを考える会 
丸橋  暁 
山本 浩之 
1
1.調査題目 
 ガイド養成及びスキルアップ研修におけるユニバーサルツーリズム(以下UT)の視点の導入 
状況 
2.調査目的と意義 
 各ジオパークのガイド養成やスキルアップ研修にUTに関する項目の有無,現在UTに関する 
内容を組み込みたいという意向の有無,その際に制約となっていることはなにかを明らかに 
し当該項目の導入に有効な方法を考える. 
3.調査方法 
 質問紙法.日本国内のジオパーク25ヶ所に質問紙を郵送・回収した.尚必要に応じて 
e­mail 
にて追加質問を行った 
4.アンケート期間 
 2013年07月30日〜09月02日まで.尚締め切り後2地域からの回収があった 
5.回収率等 
 回収率92%,有効回答率92%,分析対象地域数23地域 
【回答地域】 
 洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,南アルプス,恐竜 
渓谷ふくい勝山,阿蘇,天草御所浦,伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,茨城県北,下仁田 
,秩父,白山手取川,八峰白神,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島 
【非回答地域】 
 白滝,磐梯山 
2
ガイド養成及びスキルアップ研修におけるユニバーサルツーリズム(以下UT)の視点の導入状 
況 
〜アンケート調査結果より〜 
 ユニバーサルツーリズム(以下UT)とは,すべての人が楽しめるよう創られた旅行であり 
,高齢者や障害者等が制約を感じずに,誰もが気兼ねなく参加できる旅行である(例えば,観 
光庁 2013 等). 
 日本の65歳以上の人口は平成24年版高齢社会白書(内閣府)によれば,2011年に23.3%に 
達し,今後も増えると推計されている(国立社会保障・人口問題研究所等).また,身体・知 
的・精神障害児・者について,平成24年版障害者白書(内閣府)では,総数を744.3万人と推計 
している. 
 UTは,これだけ多数の高齢者や障害者の,旅行のニーズを掘り起こす,新しい視点を提供 
する考え方である. 
 日本の各ジオパークは,その特徴的な地質・地形をストーリー化し,町おこし,観光,教 
育等に活用し,2013年07月30日現在,日本では世界ジオパーク5ヶ所,日本ジオパーク20ヶ 
所の計25ヶ所が認定されている.各地のジオパークでは,地元のガイドによる,ガイドツ 
アーが非常に重要である.そのため各ジオパークでは,わが町のジオの魅力を最大限に伝え 
るための,養成や研修が行なわれている. 
 しかしその養成やスキルアップ研修において,ガイドによる,顧客へのUTの視点がどの程 
度導入されているかは不明であり,まとまった調査もない. 
 また各ジオパークは,その地理的特徴から,日本の中でも比較的,高齢化の進んだ地域と 
思われる.従って,ジオパークガイドの養成には,高齢者の積極的な活用が必須であり,む 
しろ高齢の生活者ならではの強みを活かしたガイドとしての役割が期待される. 
 高齢化は通常,何らかの心身機能の低下を伴うので,高齢者=障害者であることも多い. 
そこでUTの視点を,よそから来る顧客のみに適用するのではなく,ガイドを志望する地元の 
高齢者や障害者への配慮としても活かす必要がある.しかし,ガイド養成やスキルアップ研 
修において,どのような配慮が行なわれているかも,まとまった調査はない. 
 そこで我々は,日本の各ジオパークに,アンケート調査を実施し,UT導入の状況をまとめ 
た.これを元に,日本の各ジオパークに必要と思われる,UTの視点を提示する. 
1)【ガイド養成講座の実施状況】 
 1 
)−1 現在ガイド養成講座は行われていますか? 
 1.行われている23/23地域 
洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,南アルプス,恐竜渓 
谷ふくい勝山,阿蘇,天草御所浦,伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,茨城県北,下仁田, 
秩父,白山手取川,八峰白神,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島 
 2.行われていない0/23地域 
3
<1)−1で 1.行われている と回答の場合>23/23地域 
1)−2 現在ガイド養成講座において障害者への介護技術やアプローチ方法等についての講 
習を設けていますか 
 1.ある0/23地域 
 2.ない23/23地域 
洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,南アルプス,恐竜渓 
谷ふくい勝山,阿蘇,天草御所浦,伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,茨城県北,下仁田, 
秩父,白山手取川,八峰白神,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島 
<1)−2で 1.ある と回答の場合>0/23地域 
1)−3 それは具体的にどのような講習でしょうか?あてはまるすべてをお答え下さい 
 1.車椅子の介助の仕方 
 2.視覚障害者の方への介助の仕方 
 3.手話 
 4.点字 
 5.その他 
<1)−2で 2.ない と回答の場合>23/23地域 
1)−4 なぜ行われてないのでしょうか?あてはまるものすべてをお答え下さい 
 1.行う時間がない8地域 
伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,下仁田,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島 
 2.適切な講師が見つからない8地域 
洞爺湖有珠山,島原半島,室戸,南アルプス,恐竜渓谷ふくい勝山,伊豆大島,下仁田,銚 
子, 
 3.予算措置がない3地域 
室戸,下仁田,箱根 
 4.必要性を感じない4地域 
洞爺湖有珠山,アポイ岳,秩父,八峰白神, 
 5.その他8地域 
洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,南アルプス,茨城県北,下仁田,ゆざわ,伊豆半島 
・現在のところでは4(必要性を感じていない)となります.将来的には変わってくる可能 
性もあります 
・このアンケートに回答するまで,そのような発想はありませんでした. 
ちなみに,当ジオパークのガイド養成講座では,中級時に「救急救命講習(AEDの操作を含 
む)」は実施しています. 
・2年間ガイド講習を担当していますが「介護技術・アプローチ方法についての講習を希 
4
望」の声は聞いたことがありません.本来であれば,どのような方でも楽しめるジオパーク 
を作るべき(ハード整備の他ガイド養成も含め)ですが,実際は,健常者への対応すら試行 
錯誤の段階であるのが現状だと思います. 
また,都市部より山間部や交通の悪い場所が多く,要介護者の居住地域からジオパーク圏域 
までの移動の段階で,クリアしなければならない問題もあると感じます.(駅構内,バス 
ターミナル等のバリアフリー対応・車両の乗り降り,未舗装道路など). 
・下仁田ジオパークにおいては,現在世界遺産登録を目指す史跡荒船風穴とジオパークの両 
方のガイドができるようなプログラムでガイド養成が急務となっており,プログラムの中に 
UDの講座まで盛り込めないのが現実のところです 
・必要性に関する議論をしていない 
・山陰海岸ジオパークは,ジオサイトの地形的な状況が様々な上,障害の部位,程度により 
対応が異なるため,統一したマニュアルが困難であり,現在は状況に応じてガイドが対応し 
ています. 
・そこまでの段階にいたっていない 
・「ゆざわジオパークとはどのようなものか」という内容で手一杯であり,現状そこまでは 
手が回っていない 
・本講座では時間数が限られており,ジオパークについての基本的な知識を得てもらうこと 
に主眼をおいているため,介護技術やアプローチ方法のようなものは,伝える技術として, 
ガイド対象のスキルアップ講座の中で取り上げていければと考えています. 
<1)−1で 2.行われていない と回答の場合>23/23地域 
1)−5 今後,ガイド養成講座が行われる際に障害者への介護技術やアプローチ方法等につ 
いての講習を含めたいと思いますか? 
 1.そう思う15/23地域 
洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,恐竜渓谷ふくい勝山 
,阿蘇,霧島,下仁田,秩父,白山手取川,ゆざわ,箱根 
 2.そう思わない8/23地域 
南アルプス,天草御所浦,伊豆大島,男鹿半島・大潟,茨城県北,八峰白神,伊豆半島 
・現時点ではなんとも言えない←それが率直な意見です. 
<1)−5で 1.そう思う と回答の場合>15/22地域 
1)−6 どのような項目を含めたいでしょうか?あてはまるものすべてをお答え下さい 
 1.車椅子の介助の仕方15/15地域 
洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,恐竜渓谷ふくい勝山 
,阿蘇,霧島,下仁田,秩父,白山手取川,ゆざわ,箱根 
 2.視覚障害者の方への介助の仕方11/15地域 
洞爺湖有珠山,山陰海岸,室戸,アポイ岳,恐竜渓谷ふくい勝山,阿蘇,霧島,下仁田,白 
山手取川,ゆざわ,箱根 
 3.手話7/15地域 
洞爺湖有珠山,山陰海岸,島原半島,恐竜渓谷ふくい勝山,下仁田,秩父,白山手取川 
5
 4.点字1/15地域 
洞爺湖有珠山 
 5.その他1/15地域 
山陰海岸 
・外国からの観光客への案内 
・子供にも理解できるわかりやすい説明 
<1)−5で 2.そう思わない と回答の場合>8/23地域 
1)−7 なぜ含めたいと思われないのでしょうか?あてはまるものすべてをお答え下さい 
 1.行う時間がない3/8地域 
天草御所浦,伊豆大島,銚子,伊豆半島 
 2.適切な講師が見つからない1/7地域 
伊豆大島 
 3.予算措置がない1/7地域 
伊豆大島 
 4.必要性を感じない1/7地域 
天草御所浦 
 5.その他5/7地域 
南アルプス,男鹿半島・大潟,茨城県北,八峰白神,伊豆半島 
・ジオパークのほとんどが白神山地の隆起地帯に入り自ずと危険ヶ所が多いため. 
・介護,介助を必要とする方をジオツアーに参加させるかどうか,についてのコンセンサス 
を得ていないから,と考えます.その方たちを排除するのではなく,そもそも,そのような 
事態を想定していません.(参加を認める場合,それに応じたルート上の安全対策(含:施 
設対応)も必要になってきます.) 
・現状,ガイド養成講座に「障害者・高齢者への介護技術」を組み込む余裕がない.これま 
で障害者や高齢者がジオサイトを訪れた場合,介護者が同伴するので問題はなかった. 
・議論したうえで検討 
・本講座では時間数が限られており,ジオパークについての基本的な知識を得てもらうこと 
に主眼をおいているため,介護技術やアプローチ方法のようなものは,伝える技術として, 
ガイド対象のスキルアップ講座の中で取り上げていければと考えています. 
2)【ガイド養成受講における配慮】 
2)−1 ガイド養成講座には,障害者へ何らかの配慮は行われていますか? 
 1.配慮がある1/23地域 
山陰海岸 
6
 2.特に配慮はない22/23地域 
洞爺湖有珠山,糸魚川,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,南アルプス,恐竜渓谷ふくい勝 
山,阿蘇,天草御所浦,伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,茨城県北,下仁田,秩父,白山 
手取川,八峰白神,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島 
<2)−1で 1.配慮がある と回答の場合>1/1地域 
2)−2 どの様な配慮が行われていますか?あてはまるものすべてをお答え下さい 
 1.講座開講の案内等に障害者への配慮がある旨を記載 
 2.会場の物理的配慮(車椅子使用者等への配慮)1/1地域 
山陰海岸 
 3.点字資料等の用意 
 4.手話通訳 
 5.要約筆記 
 6.PC要約 
 7.その他 
<2)−1で 2.特に配慮はない と回答の場合>22/2地域 
2)−3 なぜ障害者への配慮がなされていないのでしょうか?具体的にお書きください 
・障害者用コース設定の計画がないため. 
・ガイド養成については,特に正しい地球科学の知識習得を修了要件としています.来訪者 
への配慮についてはその後の研修等で考えています 
・受講するガイドの中に障害者がいないため 
・ガイドのレベルがまだそこまで達していないため 
・介護,介助を必要とする方をジオツアーに参加させるかどうか,についてのコンセンサス 
を得ていないから,と考えます.その方たちを排除するのではなく,そもそも,そのような 
事態を想定していません.(参加を認める場合,それに応じたルート上の安全対策(含:施 
設対応)も必要になってきます.) 
・救急救命や危険回避,安全対策についての講座は設けたがそこまで配慮ができなかった. 
・障害者をガイド対象にしていないため 
・障害者の受講がない 
・ジオサイトのほとんどは野外であり,海岸や急峻な崖などが多い.危機管理の観点から障 
害者のジオパーク運用には,ジオサイトの環境整備が前提と考える.しかしながら,ジオ 
パークの整備には多額の費用がかかり,現状,実現可能性は低い.以上のことから,健常者 
を対象としてジオパークガイドの養成をしている. 
・環境整備計画とあわせ,障害者ガイドの活躍の場については検討していきたい. 
・現状ではその必要性に直面していないため.しかしそういった配慮も今後考えていかなけ 
ればならないと感じている. 
・当ジオパークでは足場の不安定なジオサイトが多く,身体が不自由な方がジオガイドを務 
めるのは難しいと思われるため. 
・対応のための予算及び人の確保ができていないため 
7
・まずはゆざわジオパーク全体を案内できるガイドの養成が急がれており、現状ではそこま 
で手が回っていない。 
・必要性に関する議論をしていない 
・ガイド養成を行なっているが,障害者の方をガイドするための準備(資料,ツアーコース 
など)ができていない状況である.また隠岐におけるツアーの場合は車(レンタカー,バ 
ス)での移動がほとんどであり障害者の方がガイドとなる為には多くの課題がある. 
・受講者の中に,配慮が必要な方がいらっしゃらなかったため. 
・障害者の参加がないため 
・現在,ガイド養成講座受講生に障害者がいない為 
・現在実施している養成講座は,プロのジオガイドとなって活躍できる方を要請することを 
目的にしている為,もともと受講対象者に制約を設けているから。 
<受講対象者に設けている制約> 
 ・3級ジオ検定合格者であること 
 ・認定ジオガイドとなって活躍していただける方 
 ・養成講座に全日程参加可能な方 
 ・野外実習を取り入れているため健脚な方 
これらの条件を満たしている方を基本的に対象としています。 
・そのレベルに達していない 
3)【ガイドの資質向上のための研修等の実施状況】 
3)−1 現在,ガイドの資質向上のための研修等は行われていますか? 
 1.行われている21/23地域 
洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,南アルプス,恐竜渓 
谷ふくい勝山,阿蘇,伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,茨城県北,下仁田,秩父,八峰白 
神,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島 
 2.行われていない2/23地域 
天草御所浦,白山手取川 
※今後実施予定(白山手取川) 
<3)−1で 1.行われている と回答の場合>21/23地域 
3)−2 現在,ガイドの資質向上のための研修等において,障害者への介護技術やアプロー 
チ方法等についての講習を設けていますか? 
 1.ある0/21地域 
 2.ない21/21地域 
洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,南アルプス,恐竜渓 
谷ふくい勝山,阿蘇,伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,茨城県北,下仁田,秩父,八峰白 
神,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島 
<3)−2で 1.ある と回答の場合>0/21地域 
3)−3 それは具体的にどのような講習でしょうか?あてはまるすべてをお答え下さい 
8
 1.車椅子の介助の仕方 
 2.視覚障害者の方への介助の仕方 
 3.手話 
 4.点字 
 5.その他 
<3)−2で 2.ない と回答の場合>21/21地域 
3)−4 なぜ行われてないのでしょうか?あてはまるものすべてをお答え下さい 
 1.行う時間がない8/21地域 
伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,下仁田,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島 
 2.適切な講師が見つからない6/21地域 
洞爺湖有珠山,島原半島,室戸,南アルプス,伊豆大島,下仁田, 
 3.予算措置がない3/21地域 
室戸,下仁田,箱根 
 4.必要性を感じない5/21地域 
洞爺湖有珠山,アポイ岳,恐竜渓谷ふくい勝山,秩父,八峰白神 
 5.その他8/21地域 
洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,南アルプス,茨城県北,下仁田,ゆざわ,伊豆半島 
・現在のところでは4(必要性を感じていない)となります.将来的には変わってくる可能 
性もあります 
・2年間ガイド講習を担当していますが「介護技術・アプローチ方法についての講習を希 
望」の声は聞いたことがありません.本来であれば,どのような方でも楽しめるジオパーク 
を作るべき(ハード整備の他ガイド養成も含め)ですが,実際は,健常者への対応すら試行 
錯誤の段階であるのが現状だと思います. 
また,都市部より山間部や交通の悪い場所が多く,要介護者の居住地域からジオパーク圏域 
までの移動の段階で,クリアしなければならない問題もあると感じます.(駅構内,バス 
ターミナル等のバリアフリー対応・車両の乗り降り,未舗装道路など). 
・下仁田ジオパークにおいては,現在世界遺産登録を目指す史跡荒船風穴とジオパークの両 
方のガイドができるようなプログラムでガイド養成が急務となっており,プログラムの中に 
UDの講座まで盛り込めないのが現実のところです 
・ガイドの資質の向上がまだまだ不十分であり,障害者への対応を考えるまでの余裕がない 
.・ 
必要性に関する議論をしていない 
・山陰海岸ジオパークは、ジオサイトの地形的な状況が様々な上、障害の部位、程度により 
対応が異なるため、統一したマニュアルが困難であり、現在は状況に応じてガイドが対応し 
ています。 
・そこまでの段階にいたっていない 
・ガイドの資質向上についての研修はまだまだ数をこなせておらず,現状そこまでは手が 
回っていない 
9
・研修については、現在ガイド協会が発足しその中で実施しております。 
会員は、ガイドになってから日が浅く、講座で学んだものを自分のガイドに活かすための研 
修に徹している状況です。 
現在は、障害をお持ちの方からガイドの要請があった時にお客様とコミュニケーションを図 
る中で、お手伝いできる範囲でガイドを 
るスタンスでお受けしている状況です。 
今後は、さまざまなニーズにお応えしていけるようスキルアップ研修に取り入れていければ 
と考えております。 
<3)−2で 2.ない と回答の場合>21/21地域 
3)−5 今後,ガイドの資質向上のための研修等が行われる際に障害者への介護技術やアプ 
ローチ方法等についての項目を含めたいと思いますか? 
 1.そう思う17/23地域 
洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,阿蘇,天草御所浦, 
伊豆大島,霧島,下仁田,秩父,白山手取川,ゆざわ,箱根,伊豆半島 
 2.そう思わない6/23地域 
南アルプス,恐竜渓谷ふくい勝山,男鹿半島・大潟,茨城県北,八峰白神,銚子, 
・現時点ではなんとも言えない←それが率直な意見です. 
<3)−5で 1.そう思う と回答の場合>17/23地域 
3)−6 どのような項目を含めたいでしょうか?あてはまるものすべてをお答え下さい 
 1.車椅子の介助の仕方17/17地域 
洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,阿蘇,天草御所浦, 
伊豆大島,霧島,下仁田,秩父,白山手取川,ゆざわ,箱根,伊豆半島 
 2.視覚障害者の方への介助の仕方12/17地域 
洞爺湖有珠山,山陰海岸,室戸,アポイ岳,阿蘇,伊豆大島,霧島,下仁田,白山手取川, 
ゆざわ,箱根,伊豆半島 
 3.手話6/17地域 
洞爺湖有珠山,山陰海岸,島原半島,秩父,白山手取川,伊豆半島 
 4.点字2/17地域 
洞爺湖有珠山,下仁田, 
 5.その他 
<3)−5で 2.そう思わない と回答の場合>6/23地域 
3)−7 なぜ含めたいと思われないのでしょうか?あてはまるものすべてをお答え下さい 
 1.行う時間がない2/6地域 
恐竜渓谷ふくい勝山,銚子 
10
 2.適切な講師が見つからない 
 3.予算措置がない 
 4.必要性を感じない 
 5.その他5/6地域 
南アルプス,恐竜渓谷ふくい勝山,男鹿半島・大潟,茨城県北,八峰白神, 
・障害者用コース設定の計画がないため. 
・このアンケートに回答するまで,そのような発想はありませんでした. 
ちなみに,当ジオパークのガイド養成講座では,中級時に「救急救命講習(AEDの操作を含 
む)」は実施しています. 
介護,介助を必要とする方をジオツアーに参加させるかどうか,についてのコンセンサスを 
得ていないから,と考えます.その方たちを排除するのではなく,そもそも,そのような事 
態を想定していません.(参加を認める場合,それに応じたルート上の安全対策(含:施設 
対応)も必要になってきます.) 
・現状,ガイド養成講座に「障害者・高齢者への介護技術」を組み込む余裕がない.これま 
で障害者や高齢者がジオサイトを訪れた場合,介護者が同伴するので問題はなかった. 
・ガイドの資質が十分に向上してから,障害者への対策を考えたい. 
・必要性に関する議論をしていない 
4)【ガイドの資質向上のための研修等における配慮】 
4)−1 ガイドの資質向上のための研修等には,障害者へ何らかの配慮は行われています 
か? 
 1.配慮がある2/21地域 
伊豆大島,男鹿半島・大潟 
 2.特に配慮はない18/21地域 
洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,南アルプス,恐竜渓 
谷ふくい勝山,霧島,茨城県北,下仁田,秩父,八峰白神,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島 
 イレギュラー回答 
 3.阿蘇 
<4)−1で 1.配慮がある と回答の場合>2/20地域 
4)−2 どの様な配慮が行われていますか?あてはまるものすべてをお答え下さい 
 1.講座開講の案内等に障害者への配慮がある旨を記載 
 2.会場の物理的配慮(車椅子使用者等への配慮)1/2地域 
男鹿半島・大潟 
 3.点字資料等の用意 
 4.手話通訳 
 5.要約筆記 
11
 6.PC要約 
 7.その他1/2地域 
伊豆大島 
・各ガイドに最低限の配慮はされている 
<4)−1で 2.特に配慮はない と回答の場合>17/20地域 
4)−3 なぜ障害者への配慮がなされていないのでしょうか?具体的にお書きください 
・障害者用コース設定の計画がないため. 
・障害をもつ人の参加がない 
・ガイドのレベルがまだそこまで達していないため 
・ニーズに対する対応を行うこととしています. 
特に障害をお持ちの方にという対応は今のところありません. 
・受講するガイドの中に障害者がいないため 
・このアンケートに回答するまで,そのような発想はありませんでした. 
ちなみに,当ジオパークのガイド養成講座では,中級時に「救急救命講習(AEDの操作を含 
む)」は実施しています. 
・介護,介助を必要とする方をジオツアーに参加させるかどうか,についてのコンセンサス 
を得ていないから,と考えます.その方たちを排除するのではなく,そもそも,そのような 
事態を想定していません.(参加を認める場合,それに応じたルート上の安全対策(含:施 
設対応)も必要になってきます.) 
・希望がない 
・指導者がいない 
・ガイドとして基本的なことが先行しており,そこまで配慮できていない. 
・認定後2年になろうとしているがその間,ジオツアー等の申込について障害者等の団体で 
の申込を受けた経緯がない. 
・今後は前向きに検討していきたい 
・現状ではその必要性に直面していないため.しかしそういった配慮も今後考えていかなけ 
ればならないと感じている. 
・当ジオパークでは足場の不安定なジオサイトが多く,身体が不自由な方がジオガイドを務 
めるのは難しいと思われるため. 
・受講されるガイドメンバーに配慮が必要であれば,検討します. 
・まずはゆざわジオパーク全体を案内できるガイドの養成が急がれており、現状ではそこま 
で手が回っていない。 
・必要性に関する議論をしていない 
・現在活動しているガイドによる受講希望者の中で,障害者への配慮が求められる状況でな 
いため 
・そこまでの段階にいたっていない 
・現在,ジオガイド団体を設立し,間もな折り込み,研修計画を考案中である.障害者への 
対応・配慮は必要であるため,講座計画に折り込み行なって行きたいと考えている.またジ 
オガイド養成講座受講者の中に福祉タクシーの業の者がおり,協力体制を行なって行きたい 
との考えている. 
・研修については,認定ガイドを対象に実施しており現在ガイドの中に障害者がいない 
12
為. 
・そのレベルに達していない 
*その他* 
・ハード面においては補助事業の関係もあり,UD化できるところは行なっていく計画でいま 
す.基幹施設自然史館も今後の改修でUD化していく考えで計画中です.下仁田町単独で事業 
を推進しています.下仁田町においてはジオパークに限らず行政全体で考えていかなければ 
ならない問題だと思います.ガイド養成講座に参加している人も多くは60代,70代が現状で 
す.答えにならない回答で申し訳ありませんが,下仁田ジオパーク自体の存続も高齢化への 
対応とUD化して行かなければならないのかもしれません. 
・回答させていただきます。山岳ジオパークの当ジオパークでは,まだユニバーサルデザイ 
ンの議論がされておりません.申し訳ありませんがお願いいたします. 
【結果分析】 
 23地域からの回答を得ることができた.(回収率92%,有効回答率92%,分析対象地域23 
地域) 
 ガイド養成,スキルアップ研修において,ガイドによる顧客へのUT視点の導入はなく,同 
研修に於いて受講者への合理的配慮を掲げている地域も少ない.研修にUTに関する項目の導 
入を行なっていない理由は「適切な講師が見つからない」「行う時間がない」,「必要性を 
感じない」,が多い. 
 このアンケートの回答の中で非常に興味深い記述があったので引用しておく. 
 「ハード面においては補助事業の関係もあり,UD化できるところは行なっていく計画でい 
ます.基幹施設自然史館も今後の改修でUD化していく考えで計画中です.下仁田町単独で事 
業を推進しています.下仁田町においてはジオパークに限らず行政全体で考えて行かなけれ 
ばならない問題だと思います.ガイド養成講座に参加している人も多くは60代,70代が現状 
です.答えにならない回答で申し訳ありませんが,下仁田ジオパーク自体の存続も高齢化へ 
の対応とUD化して行かなければならないのかもしれません. 
 超高齢化社会ではUTの視点の導入は待ったなしのである. 
【アンケート以後に得た情報】 
山陰海岸ジオパーク国際学術会議「城崎会議」のポスターセッションにて下記の情報を得た 
. 
・山陰海岸ジオパークの鳥取地域でワイドタイヤの車椅子を利用した車椅子の介助の仕方の 
講習が1回行われていた. 
・伊豆半島にて,青いかば旅行社 http://aoikaba.main.jp/ により大室山で簡単なツアーを企画 
したことがあった.「今後、伊豆半島ジオパークでバリアフリーを意識したツアーを企画し 
ていきたいと希望しています」との由. 
13
【考察】 
 ガイド養成になぜ障害者への配慮がなされていないのか?ガイドの資質向上の研修になぜ 
障害者への配慮がなされていないのか?という質問に対して「当ジオパークでは足場の不安 
定なジオサイトが多く,身体が不自由な方がジオガイドを務めるのは難しいと思われるた 
め」「ジオサイトのほとんどは野外であり,海岸や急峻な崖などが多い.危機管理の観点か 
ら障害者のジオパーク運用には,ジオサイトの環境整備が前提と考える.しかしながら,ジ 
オパークの整備には多額の費用がかかり,現状,実現可能性は低い.以上のことから,健常 
者を対象としてジオパークガイドの養成をしている」等の記述がみられた. 
 危機管理や,実現可能性といった,一見もっともらしい理由で,障害者,高齢者をジオ 
パークから遠ざけるのは,配慮ではなく,排除である.問題は,そのようにして遠ざけるこ 
とが,排除であると気付かず,配慮だと思い込んでいる,その思考であり,これがまさに, 
偏見と呼ばれるものである.常識的にも,学術的にも,行政的にも,偏見はあってはならな 
いはずではないだろうか.また,このことは*ROSの概念を導入し,障害特性や障害程度に応 
じたジオツアーの開発の大きな阻害要因となっているのではなかろうか. 
*ROSとは「Recreation Opportunity Spectrum」の略です.1978年に米国で開発された野外リ 
クリエーション地における計画管理手法で,利用者のニーズや資源の保全を考慮し,利便性 
の高い空間から原始的な空間といったゾーニングを行います.ゾーンごとに明確な管理計画 
を示すことが出来るのが特徴です.(礼文島環境フォーラム2010実施報告書,環境NPO礼文 
島自然情報センター,2010) 
 「ジオツアーでは,地球活動の痕跡であるいくつかのポイントを巡ることで,その地域の 
成り立ちに触れることができます.」(茨城大学地質情報活用プロジェクトのサイト 
https://sites.google.com/site/geonavipj/geotour­2 
2013年09月10日検索)と見られるように,ジ 
オツアーの対象者は特に制約されていない. 
 この考え方は,あらゆる人を排除しない,UTの考え方とも一致する.従って,ジオツアー 
をはじめ,ガイド養成や,スキルアップにおいても,障害者や高齢者を排除しないことを大 
前提にしている.では,排除しないために,どのような工夫をするかという,発想の転換が 
必要である.一つの手段として,ROSの概念に基づき,その人の障害特性や程度を考慮し適 
切なジオツアーのルート設定をするというのも,これからのガイドに求められる大きな役割 
であろう. 
【提言】 
 ジオパークの顧客と一体誰を指すのであろうか.そこに暮らす人々,そこを訪れる人々, 
そこを通過する人々の総てが顧客と言えるであろう.それらの人々は実に様々な身体的背景 
を抱えている.すべての人が楽しめるように創られた旅行であり,高齢者や障害者等が制約 
を感じずに,誰もが気兼ねなく参加できる旅行であるUTが成り立つには,その総ての顧客が 
排除されることなく参加できる事が条件となろう.ジオパーク地域を訪れる人々だけでなく 
,そこに暮らす総ての人がガイドとして活躍できる,完全参加の社会でなければジオツアー 
のUT化は成し得ないであろう.そのためには今後「ジオパークガイドの養成及びスキルアッ 
プ研修等へのUT化視点の導入」が極めて重要になってくると思われる. 
14
 適切な講師が居ないというのは,当該地域で障害当事者との関わりが少ないという事の現 
れであろう.地形的制約等からガイドに相応しくないというのは,逆に言えばROSを考慮し 
適切なコース選択ができるガイドが育つ芽を詰んでいないであろうか.「UTの視点から,ガ 
イド養成やスキルアップを行うにあたっては,障害者,高齢者の参加を受動的に待ち,その 
結果,参加はありませんでした,よって配慮はしませんでした」のような姿勢はありえない 
.ジオパークの運営主体が自ら,障害者や高齢者を積極的に巻き込み,こうした人材を大い 
に活用し,排除しないアクションを起こすことが重要である. 
 ジオパーク運営主体が自ら積極的に,障害当事者等に講師を依頼する中で,障害者がジオ 
ガイドに興味を持ちガイドとなることや,ガイド養成やスキルアップ研修等に,UTに関する 
項目を入れることは,その受講生が自発的にその分野に関心・関わりを持ち,地域で新たな 
ネットワークを産む可能性を秘めている.そのネットワークは,災害時要援護者(災害弱 
者)支援への寄与という側面も生み出すであろう.すなわち,ニーズがないから配慮をしな 
い,という発想は,逆であり,そもそも配慮がないとニーズも生まれないのである.従って 
,新たなニーズを掘り起こすために,障害者や高齢者への配慮を積極的に行い,かつ配慮が 
あることを外部にどんどんアピールしていくという,攻めの姿勢を強く求めたい. 
 このように,UTの視点の導入は,ジオパーク地域の新たな顧客の開拓と,人材の発掘・養 
成に寄与するための,発想の転換を促すものである.ぜひとも積極的な取り組みをお願いし 
たい. 
  
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報告書 (1)

  • 2. 1.調査題目  ガイド養成及びスキルアップ研修におけるユニバーサルツーリズム(以下UT)の視点の導入 状況 2.調査目的と意義  各ジオパークのガイド養成やスキルアップ研修にUTに関する項目の有無,現在UTに関する 内容を組み込みたいという意向の有無,その際に制約となっていることはなにかを明らかに し当該項目の導入に有効な方法を考える. 3.調査方法  質問紙法.日本国内のジオパーク25ヶ所に質問紙を郵送・回収した.尚必要に応じて e­mail にて追加質問を行った 4.アンケート期間  2013年07月30日〜09月02日まで.尚締め切り後2地域からの回収があった 5.回収率等  回収率92%,有効回答率92%,分析対象地域数23地域 【回答地域】  洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,南アルプス,恐竜 渓谷ふくい勝山,阿蘇,天草御所浦,伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,茨城県北,下仁田 ,秩父,白山手取川,八峰白神,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島 【非回答地域】  白滝,磐梯山 2
  • 3. ガイド養成及びスキルアップ研修におけるユニバーサルツーリズム(以下UT)の視点の導入状 況 〜アンケート調査結果より〜  ユニバーサルツーリズム(以下UT)とは,すべての人が楽しめるよう創られた旅行であり ,高齢者や障害者等が制約を感じずに,誰もが気兼ねなく参加できる旅行である(例えば,観 光庁 2013 等).  日本の65歳以上の人口は平成24年版高齢社会白書(内閣府)によれば,2011年に23.3%に 達し,今後も増えると推計されている(国立社会保障・人口問題研究所等).また,身体・知 的・精神障害児・者について,平成24年版障害者白書(内閣府)では,総数を744.3万人と推計 している.  UTは,これだけ多数の高齢者や障害者の,旅行のニーズを掘り起こす,新しい視点を提供 する考え方である.  日本の各ジオパークは,その特徴的な地質・地形をストーリー化し,町おこし,観光,教 育等に活用し,2013年07月30日現在,日本では世界ジオパーク5ヶ所,日本ジオパーク20ヶ 所の計25ヶ所が認定されている.各地のジオパークでは,地元のガイドによる,ガイドツ アーが非常に重要である.そのため各ジオパークでは,わが町のジオの魅力を最大限に伝え るための,養成や研修が行なわれている.  しかしその養成やスキルアップ研修において,ガイドによる,顧客へのUTの視点がどの程 度導入されているかは不明であり,まとまった調査もない.  また各ジオパークは,その地理的特徴から,日本の中でも比較的,高齢化の進んだ地域と 思われる.従って,ジオパークガイドの養成には,高齢者の積極的な活用が必須であり,む しろ高齢の生活者ならではの強みを活かしたガイドとしての役割が期待される.  高齢化は通常,何らかの心身機能の低下を伴うので,高齢者=障害者であることも多い. そこでUTの視点を,よそから来る顧客のみに適用するのではなく,ガイドを志望する地元の 高齢者や障害者への配慮としても活かす必要がある.しかし,ガイド養成やスキルアップ研 修において,どのような配慮が行なわれているかも,まとまった調査はない.  そこで我々は,日本の各ジオパークに,アンケート調査を実施し,UT導入の状況をまとめ た.これを元に,日本の各ジオパークに必要と思われる,UTの視点を提示する. 1)【ガイド養成講座の実施状況】  1 )−1 現在ガイド養成講座は行われていますか?  1.行われている23/23地域 洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,南アルプス,恐竜渓 谷ふくい勝山,阿蘇,天草御所浦,伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,茨城県北,下仁田, 秩父,白山手取川,八峰白神,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島  2.行われていない0/23地域 3
  • 4. <1)−1で 1.行われている と回答の場合>23/23地域 1)−2 現在ガイド養成講座において障害者への介護技術やアプローチ方法等についての講 習を設けていますか  1.ある0/23地域  2.ない23/23地域 洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,南アルプス,恐竜渓 谷ふくい勝山,阿蘇,天草御所浦,伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,茨城県北,下仁田, 秩父,白山手取川,八峰白神,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島 <1)−2で 1.ある と回答の場合>0/23地域 1)−3 それは具体的にどのような講習でしょうか?あてはまるすべてをお答え下さい  1.車椅子の介助の仕方  2.視覚障害者の方への介助の仕方  3.手話  4.点字  5.その他 <1)−2で 2.ない と回答の場合>23/23地域 1)−4 なぜ行われてないのでしょうか?あてはまるものすべてをお答え下さい  1.行う時間がない8地域 伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,下仁田,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島  2.適切な講師が見つからない8地域 洞爺湖有珠山,島原半島,室戸,南アルプス,恐竜渓谷ふくい勝山,伊豆大島,下仁田,銚 子,  3.予算措置がない3地域 室戸,下仁田,箱根  4.必要性を感じない4地域 洞爺湖有珠山,アポイ岳,秩父,八峰白神,  5.その他8地域 洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,南アルプス,茨城県北,下仁田,ゆざわ,伊豆半島 ・現在のところでは4(必要性を感じていない)となります.将来的には変わってくる可能 性もあります ・このアンケートに回答するまで,そのような発想はありませんでした. ちなみに,当ジオパークのガイド養成講座では,中級時に「救急救命講習(AEDの操作を含 む)」は実施しています. ・2年間ガイド講習を担当していますが「介護技術・アプローチ方法についての講習を希 4
  • 5. 望」の声は聞いたことがありません.本来であれば,どのような方でも楽しめるジオパーク を作るべき(ハード整備の他ガイド養成も含め)ですが,実際は,健常者への対応すら試行 錯誤の段階であるのが現状だと思います. また,都市部より山間部や交通の悪い場所が多く,要介護者の居住地域からジオパーク圏域 までの移動の段階で,クリアしなければならない問題もあると感じます.(駅構内,バス ターミナル等のバリアフリー対応・車両の乗り降り,未舗装道路など). ・下仁田ジオパークにおいては,現在世界遺産登録を目指す史跡荒船風穴とジオパークの両 方のガイドができるようなプログラムでガイド養成が急務となっており,プログラムの中に UDの講座まで盛り込めないのが現実のところです ・必要性に関する議論をしていない ・山陰海岸ジオパークは,ジオサイトの地形的な状況が様々な上,障害の部位,程度により 対応が異なるため,統一したマニュアルが困難であり,現在は状況に応じてガイドが対応し ています. ・そこまでの段階にいたっていない ・「ゆざわジオパークとはどのようなものか」という内容で手一杯であり,現状そこまでは 手が回っていない ・本講座では時間数が限られており,ジオパークについての基本的な知識を得てもらうこと に主眼をおいているため,介護技術やアプローチ方法のようなものは,伝える技術として, ガイド対象のスキルアップ講座の中で取り上げていければと考えています. <1)−1で 2.行われていない と回答の場合>23/23地域 1)−5 今後,ガイド養成講座が行われる際に障害者への介護技術やアプローチ方法等につ いての講習を含めたいと思いますか?  1.そう思う15/23地域 洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,恐竜渓谷ふくい勝山 ,阿蘇,霧島,下仁田,秩父,白山手取川,ゆざわ,箱根  2.そう思わない8/23地域 南アルプス,天草御所浦,伊豆大島,男鹿半島・大潟,茨城県北,八峰白神,伊豆半島 ・現時点ではなんとも言えない←それが率直な意見です. <1)−5で 1.そう思う と回答の場合>15/22地域 1)−6 どのような項目を含めたいでしょうか?あてはまるものすべてをお答え下さい  1.車椅子の介助の仕方15/15地域 洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,恐竜渓谷ふくい勝山 ,阿蘇,霧島,下仁田,秩父,白山手取川,ゆざわ,箱根  2.視覚障害者の方への介助の仕方11/15地域 洞爺湖有珠山,山陰海岸,室戸,アポイ岳,恐竜渓谷ふくい勝山,阿蘇,霧島,下仁田,白 山手取川,ゆざわ,箱根  3.手話7/15地域 洞爺湖有珠山,山陰海岸,島原半島,恐竜渓谷ふくい勝山,下仁田,秩父,白山手取川 5
  • 6.  4.点字1/15地域 洞爺湖有珠山  5.その他1/15地域 山陰海岸 ・外国からの観光客への案内 ・子供にも理解できるわかりやすい説明 <1)−5で 2.そう思わない と回答の場合>8/23地域 1)−7 なぜ含めたいと思われないのでしょうか?あてはまるものすべてをお答え下さい  1.行う時間がない3/8地域 天草御所浦,伊豆大島,銚子,伊豆半島  2.適切な講師が見つからない1/7地域 伊豆大島  3.予算措置がない1/7地域 伊豆大島  4.必要性を感じない1/7地域 天草御所浦  5.その他5/7地域 南アルプス,男鹿半島・大潟,茨城県北,八峰白神,伊豆半島 ・ジオパークのほとんどが白神山地の隆起地帯に入り自ずと危険ヶ所が多いため. ・介護,介助を必要とする方をジオツアーに参加させるかどうか,についてのコンセンサス を得ていないから,と考えます.その方たちを排除するのではなく,そもそも,そのような 事態を想定していません.(参加を認める場合,それに応じたルート上の安全対策(含:施 設対応)も必要になってきます.) ・現状,ガイド養成講座に「障害者・高齢者への介護技術」を組み込む余裕がない.これま で障害者や高齢者がジオサイトを訪れた場合,介護者が同伴するので問題はなかった. ・議論したうえで検討 ・本講座では時間数が限られており,ジオパークについての基本的な知識を得てもらうこと に主眼をおいているため,介護技術やアプローチ方法のようなものは,伝える技術として, ガイド対象のスキルアップ講座の中で取り上げていければと考えています. 2)【ガイド養成受講における配慮】 2)−1 ガイド養成講座には,障害者へ何らかの配慮は行われていますか?  1.配慮がある1/23地域 山陰海岸 6
  • 7.  2.特に配慮はない22/23地域 洞爺湖有珠山,糸魚川,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,南アルプス,恐竜渓谷ふくい勝 山,阿蘇,天草御所浦,伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,茨城県北,下仁田,秩父,白山 手取川,八峰白神,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島 <2)−1で 1.配慮がある と回答の場合>1/1地域 2)−2 どの様な配慮が行われていますか?あてはまるものすべてをお答え下さい  1.講座開講の案内等に障害者への配慮がある旨を記載  2.会場の物理的配慮(車椅子使用者等への配慮)1/1地域 山陰海岸  3.点字資料等の用意  4.手話通訳  5.要約筆記  6.PC要約  7.その他 <2)−1で 2.特に配慮はない と回答の場合>22/2地域 2)−3 なぜ障害者への配慮がなされていないのでしょうか?具体的にお書きください ・障害者用コース設定の計画がないため. ・ガイド養成については,特に正しい地球科学の知識習得を修了要件としています.来訪者 への配慮についてはその後の研修等で考えています ・受講するガイドの中に障害者がいないため ・ガイドのレベルがまだそこまで達していないため ・介護,介助を必要とする方をジオツアーに参加させるかどうか,についてのコンセンサス を得ていないから,と考えます.その方たちを排除するのではなく,そもそも,そのような 事態を想定していません.(参加を認める場合,それに応じたルート上の安全対策(含:施 設対応)も必要になってきます.) ・救急救命や危険回避,安全対策についての講座は設けたがそこまで配慮ができなかった. ・障害者をガイド対象にしていないため ・障害者の受講がない ・ジオサイトのほとんどは野外であり,海岸や急峻な崖などが多い.危機管理の観点から障 害者のジオパーク運用には,ジオサイトの環境整備が前提と考える.しかしながら,ジオ パークの整備には多額の費用がかかり,現状,実現可能性は低い.以上のことから,健常者 を対象としてジオパークガイドの養成をしている. ・環境整備計画とあわせ,障害者ガイドの活躍の場については検討していきたい. ・現状ではその必要性に直面していないため.しかしそういった配慮も今後考えていかなけ ればならないと感じている. ・当ジオパークでは足場の不安定なジオサイトが多く,身体が不自由な方がジオガイドを務 めるのは難しいと思われるため. ・対応のための予算及び人の確保ができていないため 7
  • 8. ・まずはゆざわジオパーク全体を案内できるガイドの養成が急がれており、現状ではそこま で手が回っていない。 ・必要性に関する議論をしていない ・ガイド養成を行なっているが,障害者の方をガイドするための準備(資料,ツアーコース など)ができていない状況である.また隠岐におけるツアーの場合は車(レンタカー,バ ス)での移動がほとんどであり障害者の方がガイドとなる為には多くの課題がある. ・受講者の中に,配慮が必要な方がいらっしゃらなかったため. ・障害者の参加がないため ・現在,ガイド養成講座受講生に障害者がいない為 ・現在実施している養成講座は,プロのジオガイドとなって活躍できる方を要請することを 目的にしている為,もともと受講対象者に制約を設けているから。 <受講対象者に設けている制約>  ・3級ジオ検定合格者であること  ・認定ジオガイドとなって活躍していただける方  ・養成講座に全日程参加可能な方  ・野外実習を取り入れているため健脚な方 これらの条件を満たしている方を基本的に対象としています。 ・そのレベルに達していない 3)【ガイドの資質向上のための研修等の実施状況】 3)−1 現在,ガイドの資質向上のための研修等は行われていますか?  1.行われている21/23地域 洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,南アルプス,恐竜渓 谷ふくい勝山,阿蘇,伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,茨城県北,下仁田,秩父,八峰白 神,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島  2.行われていない2/23地域 天草御所浦,白山手取川 ※今後実施予定(白山手取川) <3)−1で 1.行われている と回答の場合>21/23地域 3)−2 現在,ガイドの資質向上のための研修等において,障害者への介護技術やアプロー チ方法等についての講習を設けていますか?  1.ある0/21地域  2.ない21/21地域 洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,南アルプス,恐竜渓 谷ふくい勝山,阿蘇,伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,茨城県北,下仁田,秩父,八峰白 神,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島 <3)−2で 1.ある と回答の場合>0/21地域 3)−3 それは具体的にどのような講習でしょうか?あてはまるすべてをお答え下さい 8
  • 9.  1.車椅子の介助の仕方  2.視覚障害者の方への介助の仕方  3.手話  4.点字  5.その他 <3)−2で 2.ない と回答の場合>21/21地域 3)−4 なぜ行われてないのでしょうか?あてはまるものすべてをお答え下さい  1.行う時間がない8/21地域 伊豆大島,霧島,男鹿半島・大潟,下仁田,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島  2.適切な講師が見つからない6/21地域 洞爺湖有珠山,島原半島,室戸,南アルプス,伊豆大島,下仁田,  3.予算措置がない3/21地域 室戸,下仁田,箱根  4.必要性を感じない5/21地域 洞爺湖有珠山,アポイ岳,恐竜渓谷ふくい勝山,秩父,八峰白神  5.その他8/21地域 洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,南アルプス,茨城県北,下仁田,ゆざわ,伊豆半島 ・現在のところでは4(必要性を感じていない)となります.将来的には変わってくる可能 性もあります ・2年間ガイド講習を担当していますが「介護技術・アプローチ方法についての講習を希 望」の声は聞いたことがありません.本来であれば,どのような方でも楽しめるジオパーク を作るべき(ハード整備の他ガイド養成も含め)ですが,実際は,健常者への対応すら試行 錯誤の段階であるのが現状だと思います. また,都市部より山間部や交通の悪い場所が多く,要介護者の居住地域からジオパーク圏域 までの移動の段階で,クリアしなければならない問題もあると感じます.(駅構内,バス ターミナル等のバリアフリー対応・車両の乗り降り,未舗装道路など). ・下仁田ジオパークにおいては,現在世界遺産登録を目指す史跡荒船風穴とジオパークの両 方のガイドができるようなプログラムでガイド養成が急務となっており,プログラムの中に UDの講座まで盛り込めないのが現実のところです ・ガイドの資質の向上がまだまだ不十分であり,障害者への対応を考えるまでの余裕がない .・ 必要性に関する議論をしていない ・山陰海岸ジオパークは、ジオサイトの地形的な状況が様々な上、障害の部位、程度により 対応が異なるため、統一したマニュアルが困難であり、現在は状況に応じてガイドが対応し ています。 ・そこまでの段階にいたっていない ・ガイドの資質向上についての研修はまだまだ数をこなせておらず,現状そこまでは手が 回っていない 9
  • 10. ・研修については、現在ガイド協会が発足しその中で実施しております。 会員は、ガイドになってから日が浅く、講座で学んだものを自分のガイドに活かすための研 修に徹している状況です。 現在は、障害をお持ちの方からガイドの要請があった時にお客様とコミュニケーションを図 る中で、お手伝いできる範囲でガイドを るスタンスでお受けしている状況です。 今後は、さまざまなニーズにお応えしていけるようスキルアップ研修に取り入れていければ と考えております。 <3)−2で 2.ない と回答の場合>21/21地域 3)−5 今後,ガイドの資質向上のための研修等が行われる際に障害者への介護技術やアプ ローチ方法等についての項目を含めたいと思いますか?  1.そう思う17/23地域 洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,阿蘇,天草御所浦, 伊豆大島,霧島,下仁田,秩父,白山手取川,ゆざわ,箱根,伊豆半島  2.そう思わない6/23地域 南アルプス,恐竜渓谷ふくい勝山,男鹿半島・大潟,茨城県北,八峰白神,銚子, ・現時点ではなんとも言えない←それが率直な意見です. <3)−5で 1.そう思う と回答の場合>17/23地域 3)−6 どのような項目を含めたいでしょうか?あてはまるものすべてをお答え下さい  1.車椅子の介助の仕方17/17地域 洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,阿蘇,天草御所浦, 伊豆大島,霧島,下仁田,秩父,白山手取川,ゆざわ,箱根,伊豆半島  2.視覚障害者の方への介助の仕方12/17地域 洞爺湖有珠山,山陰海岸,室戸,アポイ岳,阿蘇,伊豆大島,霧島,下仁田,白山手取川, ゆざわ,箱根,伊豆半島  3.手話6/17地域 洞爺湖有珠山,山陰海岸,島原半島,秩父,白山手取川,伊豆半島  4.点字2/17地域 洞爺湖有珠山,下仁田,  5.その他 <3)−5で 2.そう思わない と回答の場合>6/23地域 3)−7 なぜ含めたいと思われないのでしょうか?あてはまるものすべてをお答え下さい  1.行う時間がない2/6地域 恐竜渓谷ふくい勝山,銚子 10
  • 11.  2.適切な講師が見つからない  3.予算措置がない  4.必要性を感じない  5.その他5/6地域 南アルプス,恐竜渓谷ふくい勝山,男鹿半島・大潟,茨城県北,八峰白神, ・障害者用コース設定の計画がないため. ・このアンケートに回答するまで,そのような発想はありませんでした. ちなみに,当ジオパークのガイド養成講座では,中級時に「救急救命講習(AEDの操作を含 む)」は実施しています. 介護,介助を必要とする方をジオツアーに参加させるかどうか,についてのコンセンサスを 得ていないから,と考えます.その方たちを排除するのではなく,そもそも,そのような事 態を想定していません.(参加を認める場合,それに応じたルート上の安全対策(含:施設 対応)も必要になってきます.) ・現状,ガイド養成講座に「障害者・高齢者への介護技術」を組み込む余裕がない.これま で障害者や高齢者がジオサイトを訪れた場合,介護者が同伴するので問題はなかった. ・ガイドの資質が十分に向上してから,障害者への対策を考えたい. ・必要性に関する議論をしていない 4)【ガイドの資質向上のための研修等における配慮】 4)−1 ガイドの資質向上のための研修等には,障害者へ何らかの配慮は行われています か?  1.配慮がある2/21地域 伊豆大島,男鹿半島・大潟  2.特に配慮はない18/21地域 洞爺湖有珠山,糸魚川,山陰海岸,島原半島,室戸,隠岐,アポイ岳,南アルプス,恐竜渓 谷ふくい勝山,霧島,茨城県北,下仁田,秩父,八峰白神,ゆざわ,銚子,箱根,伊豆半島  イレギュラー回答  3.阿蘇 <4)−1で 1.配慮がある と回答の場合>2/20地域 4)−2 どの様な配慮が行われていますか?あてはまるものすべてをお答え下さい  1.講座開講の案内等に障害者への配慮がある旨を記載  2.会場の物理的配慮(車椅子使用者等への配慮)1/2地域 男鹿半島・大潟  3.点字資料等の用意  4.手話通訳  5.要約筆記 11
  • 12.  6.PC要約  7.その他1/2地域 伊豆大島 ・各ガイドに最低限の配慮はされている <4)−1で 2.特に配慮はない と回答の場合>17/20地域 4)−3 なぜ障害者への配慮がなされていないのでしょうか?具体的にお書きください ・障害者用コース設定の計画がないため. ・障害をもつ人の参加がない ・ガイドのレベルがまだそこまで達していないため ・ニーズに対する対応を行うこととしています. 特に障害をお持ちの方にという対応は今のところありません. ・受講するガイドの中に障害者がいないため ・このアンケートに回答するまで,そのような発想はありませんでした. ちなみに,当ジオパークのガイド養成講座では,中級時に「救急救命講習(AEDの操作を含 む)」は実施しています. ・介護,介助を必要とする方をジオツアーに参加させるかどうか,についてのコンセンサス を得ていないから,と考えます.その方たちを排除するのではなく,そもそも,そのような 事態を想定していません.(参加を認める場合,それに応じたルート上の安全対策(含:施 設対応)も必要になってきます.) ・希望がない ・指導者がいない ・ガイドとして基本的なことが先行しており,そこまで配慮できていない. ・認定後2年になろうとしているがその間,ジオツアー等の申込について障害者等の団体で の申込を受けた経緯がない. ・今後は前向きに検討していきたい ・現状ではその必要性に直面していないため.しかしそういった配慮も今後考えていかなけ ればならないと感じている. ・当ジオパークでは足場の不安定なジオサイトが多く,身体が不自由な方がジオガイドを務 めるのは難しいと思われるため. ・受講されるガイドメンバーに配慮が必要であれば,検討します. ・まずはゆざわジオパーク全体を案内できるガイドの養成が急がれており、現状ではそこま で手が回っていない。 ・必要性に関する議論をしていない ・現在活動しているガイドによる受講希望者の中で,障害者への配慮が求められる状況でな いため ・そこまでの段階にいたっていない ・現在,ジオガイド団体を設立し,間もな折り込み,研修計画を考案中である.障害者への 対応・配慮は必要であるため,講座計画に折り込み行なって行きたいと考えている.またジ オガイド養成講座受講者の中に福祉タクシーの業の者がおり,協力体制を行なって行きたい との考えている. ・研修については,認定ガイドを対象に実施しており現在ガイドの中に障害者がいない 12
  • 13. 為. ・そのレベルに達していない *その他* ・ハード面においては補助事業の関係もあり,UD化できるところは行なっていく計画でいま す.基幹施設自然史館も今後の改修でUD化していく考えで計画中です.下仁田町単独で事業 を推進しています.下仁田町においてはジオパークに限らず行政全体で考えていかなければ ならない問題だと思います.ガイド養成講座に参加している人も多くは60代,70代が現状で す.答えにならない回答で申し訳ありませんが,下仁田ジオパーク自体の存続も高齢化への 対応とUD化して行かなければならないのかもしれません. ・回答させていただきます。山岳ジオパークの当ジオパークでは,まだユニバーサルデザイ ンの議論がされておりません.申し訳ありませんがお願いいたします. 【結果分析】  23地域からの回答を得ることができた.(回収率92%,有効回答率92%,分析対象地域23 地域)  ガイド養成,スキルアップ研修において,ガイドによる顧客へのUT視点の導入はなく,同 研修に於いて受講者への合理的配慮を掲げている地域も少ない.研修にUTに関する項目の導 入を行なっていない理由は「適切な講師が見つからない」「行う時間がない」,「必要性を 感じない」,が多い.  このアンケートの回答の中で非常に興味深い記述があったので引用しておく.  「ハード面においては補助事業の関係もあり,UD化できるところは行なっていく計画でい ます.基幹施設自然史館も今後の改修でUD化していく考えで計画中です.下仁田町単独で事 業を推進しています.下仁田町においてはジオパークに限らず行政全体で考えて行かなけれ ばならない問題だと思います.ガイド養成講座に参加している人も多くは60代,70代が現状 です.答えにならない回答で申し訳ありませんが,下仁田ジオパーク自体の存続も高齢化へ の対応とUD化して行かなければならないのかもしれません.  超高齢化社会ではUTの視点の導入は待ったなしのである. 【アンケート以後に得た情報】 山陰海岸ジオパーク国際学術会議「城崎会議」のポスターセッションにて下記の情報を得た . ・山陰海岸ジオパークの鳥取地域でワイドタイヤの車椅子を利用した車椅子の介助の仕方の 講習が1回行われていた. ・伊豆半島にて,青いかば旅行社 http://aoikaba.main.jp/ により大室山で簡単なツアーを企画 したことがあった.「今後、伊豆半島ジオパークでバリアフリーを意識したツアーを企画し ていきたいと希望しています」との由. 13
  • 14. 【考察】  ガイド養成になぜ障害者への配慮がなされていないのか?ガイドの資質向上の研修になぜ 障害者への配慮がなされていないのか?という質問に対して「当ジオパークでは足場の不安 定なジオサイトが多く,身体が不自由な方がジオガイドを務めるのは難しいと思われるた め」「ジオサイトのほとんどは野外であり,海岸や急峻な崖などが多い.危機管理の観点か ら障害者のジオパーク運用には,ジオサイトの環境整備が前提と考える.しかしながら,ジ オパークの整備には多額の費用がかかり,現状,実現可能性は低い.以上のことから,健常 者を対象としてジオパークガイドの養成をしている」等の記述がみられた.  危機管理や,実現可能性といった,一見もっともらしい理由で,障害者,高齢者をジオ パークから遠ざけるのは,配慮ではなく,排除である.問題は,そのようにして遠ざけるこ とが,排除であると気付かず,配慮だと思い込んでいる,その思考であり,これがまさに, 偏見と呼ばれるものである.常識的にも,学術的にも,行政的にも,偏見はあってはならな いはずではないだろうか.また,このことは*ROSの概念を導入し,障害特性や障害程度に応 じたジオツアーの開発の大きな阻害要因となっているのではなかろうか. *ROSとは「Recreation Opportunity Spectrum」の略です.1978年に米国で開発された野外リ クリエーション地における計画管理手法で,利用者のニーズや資源の保全を考慮し,利便性 の高い空間から原始的な空間といったゾーニングを行います.ゾーンごとに明確な管理計画 を示すことが出来るのが特徴です.(礼文島環境フォーラム2010実施報告書,環境NPO礼文 島自然情報センター,2010)  「ジオツアーでは,地球活動の痕跡であるいくつかのポイントを巡ることで,その地域の 成り立ちに触れることができます.」(茨城大学地質情報活用プロジェクトのサイト https://sites.google.com/site/geonavipj/geotour­2 2013年09月10日検索)と見られるように,ジ オツアーの対象者は特に制約されていない.  この考え方は,あらゆる人を排除しない,UTの考え方とも一致する.従って,ジオツアー をはじめ,ガイド養成や,スキルアップにおいても,障害者や高齢者を排除しないことを大 前提にしている.では,排除しないために,どのような工夫をするかという,発想の転換が 必要である.一つの手段として,ROSの概念に基づき,その人の障害特性や程度を考慮し適 切なジオツアーのルート設定をするというのも,これからのガイドに求められる大きな役割 であろう. 【提言】  ジオパークの顧客と一体誰を指すのであろうか.そこに暮らす人々,そこを訪れる人々, そこを通過する人々の総てが顧客と言えるであろう.それらの人々は実に様々な身体的背景 を抱えている.すべての人が楽しめるように創られた旅行であり,高齢者や障害者等が制約 を感じずに,誰もが気兼ねなく参加できる旅行であるUTが成り立つには,その総ての顧客が 排除されることなく参加できる事が条件となろう.ジオパーク地域を訪れる人々だけでなく ,そこに暮らす総ての人がガイドとして活躍できる,完全参加の社会でなければジオツアー のUT化は成し得ないであろう.そのためには今後「ジオパークガイドの養成及びスキルアッ プ研修等へのUT化視点の導入」が極めて重要になってくると思われる. 14
  • 15.  適切な講師が居ないというのは,当該地域で障害当事者との関わりが少ないという事の現 れであろう.地形的制約等からガイドに相応しくないというのは,逆に言えばROSを考慮し 適切なコース選択ができるガイドが育つ芽を詰んでいないであろうか.「UTの視点から,ガ イド養成やスキルアップを行うにあたっては,障害者,高齢者の参加を受動的に待ち,その 結果,参加はありませんでした,よって配慮はしませんでした」のような姿勢はありえない .ジオパークの運営主体が自ら,障害者や高齢者を積極的に巻き込み,こうした人材を大い に活用し,排除しないアクションを起こすことが重要である.  ジオパーク運営主体が自ら積極的に,障害当事者等に講師を依頼する中で,障害者がジオ ガイドに興味を持ちガイドとなることや,ガイド養成やスキルアップ研修等に,UTに関する 項目を入れることは,その受講生が自発的にその分野に関心・関わりを持ち,地域で新たな ネットワークを産む可能性を秘めている.そのネットワークは,災害時要援護者(災害弱 者)支援への寄与という側面も生み出すであろう.すなわち,ニーズがないから配慮をしな い,という発想は,逆であり,そもそも配慮がないとニーズも生まれないのである.従って ,新たなニーズを掘り起こすために,障害者や高齢者への配慮を積極的に行い,かつ配慮が あることを外部にどんどんアピールしていくという,攻めの姿勢を強く求めたい.  このように,UTの視点の導入は,ジオパーク地域の新たな顧客の開拓と,人材の発掘・養 成に寄与するための,発想の転換を促すものである.ぜひとも積極的な取り組みをお願いし たい.   15