1. 福島第一原発観光地化計画
開沼博

2. 「フクシマ」とは何か
［カタカナフクシマ＝震災をキッカケに漂うイメージ］
過剰な意味付けの中で、現実の「福島」からズレたもの（cf『地方の論理』）
反原発・反体制の言説・運動の象徴（cf斎藤環）
⇒否定・悲劇の物語の強化（cf『フクシマの正義』陰謀論・救済論、再「宗教」
化）
その物語に「乗れる共同体」（ex脱原発、「リベラル・良識派」）の凝縮性を一時的に高める
しかし、「乗れない共同体」にとっては生産的ではない（むしろ、分断や看過を助長）
→「乗れない共同体」をいかに「フクシマ」に巻き込み、
新たな意味付けを生み出すのか

3. 「フクシマ」の捉え直し
「フクシマ」とは、日本及び近代化が進んだ国々が抱える課
題と展望の集合体・宝庫
・産業衰退
・少子高齢化
・市場の「（広義での）失敗」（地域間格差、原発にかぎらない内発的発
展の失敗と外部巨大資本依存経済）
・政治の不健全（医療・福祉の脆弱化、教育人材育成の失敗）
・科学的リスクへの対応（「風評」被害）
本プロジェクトは
日本及び近代化が進んだ国々が抱える課題と展望の集
合体・宝庫としての「フクシマ」を実体験する、
あるいはそのネガティブをポジティブに反転していく契機
であるべき
（もちろん、全てを解決することは無理だろうが‥）

4. 「東京の人は何かあると大騒ぎ
してすぐ帰っていく」問題
とは言え、この設定自体は全然新しくない７０年代から言わ
れてきたこと：エコロジー、「地方の時代」「地域主義」‥
これまでの議論の枠組みとどう差別化し、改善すべきか？
◎「東京の人は何かあると大騒ぎしてすぐ帰っていく」
住民不在と外部者による一時的・短期的・局所的なコミッ
ト、取り上げ方
が問題の根治を遠ざけ、むしろ、より課題をややこしく‥
一村一品運動、「ハワイアンズ」‥
「小さな一歩から」「グラスルーツ」も重要だが、
大規模・トップダウンも否定しない

5. 「内発的発展2.0」（仮）
（国内に用いられてきた）「内発的発展」
環境主義（脱経済成長・脱科学）・地域主義（内部
資源・持続性・住民主体）
（⇔経済発展主義・大規模大量主義）
⇒結構失敗するし、敗者復活もしにくい
「環境主義・地域主義
かつ経済発展主義・大規模大量主義」

6. 例えば、「農泊」村の大規模開発
（会津・喜多方 １泊２食６０００円）
・従業員は農業をしつつ客も迎え入れ
・放射性物質吸収の低いorそもそも放射線と触れない農法
・「重労働・不潔」ではなく「IT＆スマート化・高度な科学」
「被災」状態からの回復：被災者、相双出身者の農業再開
希望・許容者の新たな生活基盤
ニューツーリズム：「短期・非日常」型ではなく「長期滞在＆リ
ピート・新たな日常体験＆発見」型

7. （補足）結局どのくらい人来れば
観光地として成功か？
［日本人の動き］
ディズニーランド年２５００万人（月２０８万人＝日６９３３３人）
熱海市（人口４万人） 年３００万人（月２５万人＝日８３３３人）う
ち外国人年３万人程度
ハワイアンズ 年１６０万人程度（月１３万人＝日４３３３人）
ハワイ 年１２０万人程度（月１０万人＝日３３３３人）
目標：「ハワイアンズ」超えと「熱海」への接近
∵実現可能性
・常磐道再開通によって交通条件の不利はほとんどない
・他国への「知名度」
⇒リピーターも来る「安近短」と外国人ウケ実現がカギ