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6 債権の消滅
- 50. 相殺禁止事由
• 相殺禁止特約を締結している場合
• 受働債権が不法行為による損害賠償債権である場合
• 受働債権が差押禁止債権である場合(扶養請求権・賃金請求権等)
• 受働債権が支払の差止め(差押え)を受けた場合
• 自働債権に同時履行の抗弁権や検索の抗弁権が付いている場合
相殺することが
できない場合
受働債権が差押えられた後に、自働債権を取得した場合、相殺することができない。
受働債権が差し押さえられる前に、自働債権を取得した場合、相殺することができる。
受働債権差押え
自働債権
取得
時間の流れ
→ 相殺不可
自働債権
取得 → 相殺可(一時的に相殺適状にあった)
- 51. 相殺禁止事由
• 相殺禁止特約を締結している場合
• 受働債権が不法行為による損害賠償債権である場合
• 受働債権が差押禁止債権である場合(扶養請求権・賃金請求権等)
• 受働債権が支払の差止め(差押え)を受けた場合
• 自働債権に同時履行の抗弁権や検索の抗弁権が付いている場合
相殺することが
できない場合
受働債権が差押えられた後に、自働債権を取得した場合、相殺することができない。
受働債権が差し押さえられる前に、自働債権を取得した場合、相殺することができる。
受働債権差押え
自働債権
取得
時間の流れ
→ 相殺不可
自働債権
取得 → 相殺可(一時的に相殺適状にあった)
もっとも、自働債権が差し押さえられた場合は、相殺することはできない。
Editor's Notes
- 債権の消滅
- 債権の消滅事由を、弁済、相殺(そうさい)、その他の消滅事由の、3つに分類し紹介します。
- 弁済について、弁済の意義、弁済の内容・場所・費用、
弁済の提供、第三者による提供、
弁済による代位、弁済受領者、弁済の充当の順に説明します。
- 弁済とは、債務者その他の第三者により、債務の本旨(ほんし)に従(したが)った債務内容の給付行為です。
売主、買主は、
それぞれ代金債権、引渡債権も有しています。
- 弁済の内容は、債務の本旨に従った内容でなければなりません。
何をもって、「債務の本旨(ほんし)に従っているか」を判定するために、以下の規定を置いています。
まず、弁済の内容について、特定物債権では、引渡しをすべき時の現状でその物(ブツ)を引き渡さなければならない、とされています。
種類物債権では、中等の品質を有する物(ブツ)を給付しなければならない、としています。
- 弁済の場所については、
特定物債権の場合、特約がなければ債権発生時にその物が存在していた場所となります。これを、取立債務(とりたてさいむ)といいます。
種類物債権の場合、特約がなければ債権者の現在の住所となります。これを、持参債務(さいむ)といいます。
- 弁済の費用については、特定物債権、種類物債権、共に、特約がなければ債務者の負担となります。
- 弁済の提供とは、債務者側において、給付を実現するためになしえる必要な準備行為をして、債権者の受領を求める行為です。
原則としては、現実の提供であり、弁済の提供は、債務の本旨に従って(したがって)現実にしなければならない、とされています。
- ただし、債権者があらかじめその受領を拒み(こばみ)、または債務の履行について債権者の行為を要するときは、
弁済の準備をしたことを通知して、その受領の催告をすれば足りるとされています。これを、口頭の提供といいます。
- さらに、債権者が契約そのものの存在を否定する等、弁済を受領しない明確な意思表示が認められる場合には、
債務者は、口頭の提供さえもしなくともよい、とされています。
- 弁済の提供の効果として、債務者は、弁済の提供の時から、債務不履行によって生ずる一切の責任を免(まぬが)れます。
- 債務の弁済は、第三者もすることができます。
- ただし、以下の場合は第三者による弁済は有効となりません。
それは、債務の性質がこれを許さないとき、
当事者が反対の意思を表示したとき
利害関係を有しない第三者が、債務者の意思に反して弁済をした場合です。
- 弁済による代位は、第三者が債務者のために債務を弁済した場合、
債権者が債務者に対して有する一切の権利を、その第三者が取得することをいいます。
- 例えば、抵当権が付されていた債権について、第三者が債務者に代わって弁済をした場合、
- 債務者の代わりに弁済した第三者が、債権者の代わりに一切の権利を取得することになります。
- そして今度は、第三者が債務者に対して求償権(きゅうしょうけん)を有することになります。
- 債務者のために弁済をした者は、その弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができます。
これを任意代位といい、原則的な形態となります。
債権者が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、
債務者その他の第三者に対抗することができません。
これは、債権譲渡の対抗要件と同様です。
- 一方、弁済をすることについて「正当な利益を有する者」は、
弁済によって当然に債権者に代位します。これを、法定代位といいます。
- 正当な利益を有する者とは、
まず、対債権者との関係では自ら債務を負うものの、対債務者との関係では、事実上他人の債務の弁済となる者があたります。
例えば、連帯債務者、保証人というような人たちです。自分の借金のようなものだから、一旦、支払う必要がある人達です。
- また、自らは債務を負わないが、債務者の意思に反してでも弁済しうる利害関係を有する第三者も、
正当な利益を有するものにあたります。
抵当不動産の第三取得者、後順位抵当権者、抵当不動産の賃借人(ちんしゃくにん)、物上(ぶつじょう)保証人がこれにあたります。
自分の借金ではないが、支払われないと自分の立場が危うくなるような人たちが、これにあたります。
- 代位の効果として、自己の権利に基づいて求償(きゅうしょう)をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保として、
その債権者が有していた一切の権利を行使することができるようになります。
- 次は、代位をなすべき者が複数の場合の、 それぞれの関係についてです。
まず、保証人と第三取得者の関係です。
保証人は、あらかじめ担保物権の登記にその代位を付記しなければ、その担保不動産の第三取得者に対して代位することができません。
また、第三取得者は、保証人に対して代位することができません。
- 第三取得者相互間・物上(ぶつじょう)保証人相互間の関係としては、
第三取得者・物上保証人は、各不動産の価格に応じて、他の第三取得者・物上保証人に対して代位します。
- 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位します。
ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位します。
- 弁済を受領する権限を有しない者に対してした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ、その効力を有するのが原則です。
- しかし、「債権の準占有者」に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有します。
- 「債権の準占有者」とは、預金証書と印鑑の持参人、債権譲渡が無効であった場合の譲受人(じょうじゅにん)等であり、
取引通念上、あたかも債権者のような外観を呈する者をいいます。
- 受取証書の持参人は、弁済を受領する権限があるものとみなされます。
ただし、弁済をした者がその権限がないことを知っていたとき、又は過失によって知らなかったときは、この限りではありません。
- 債務者の弁済した内容がその債務の全部を消滅させるのに足りないときに、
どの給付がいずれの債務の弁済にあたるかを定めることを
弁済の充当といいます。
- 弁済の充当は、当事者間の合意があるときは、その合意に従います。
当事者間に合意がないときは、当事者の一方の指定による充当によります。これを、指定充当といいます。
指定充当の適用もないときは、法定充当によります。
- なお、上記は、費用・利息・ 元本といった同一の債務内容同士での順序です。
費用・利息・元本債務がそれぞれ存在するときは、当事者間に合意のない限り、①費用、②利息、③元本の順に充当されます。
- 次に、相殺(そうさい)についてです。
相殺は、相殺の意義、相殺の要件・効果、相殺禁止事由、相殺の方法の順に説明します。
- 相殺(そうさい)とは、2人の者が相互に同種の債権・債務を有する場合に、
- 一方的な意思表示により、双方の債権・債務を対当額( たいとうがく)において消滅させる行為のことをいいます。
- 相殺する側Aの債権を自働債権、相殺される側Bの債権を受働(じゅどう)債権といいます。
- 下記の4つの要件を満たすと、相殺することができます。
なお、これら4つの要件を満たすことを、「相殺適状(そうさいてきじょう)にある」といいます。
まず、2人が互いに債権を有すること、
- ②双方の債権が同種の目的を有すること、
- ③双方の債権が弁済期にあること、
- ④債権の性質上、相殺を許さないものでないこと、の4つです。
- 要件③に関しては、実際には、受働債権の期限の利益は放棄できます。
よって、自働債権が弁済期にあれば、相殺することができます。
- 時効によって消滅した債権が、その消滅以前に相殺適状(そうさいてきじょう)の関係にあった場合には、債権者は相殺をすることができます。
- 相殺することが出来ない場合とは、以下の場合です。
相殺禁止特約を締結している場合、
- 受働債権が不法行為による損害賠償債権である場合、
- 受働債権が差押禁止債権である場合、扶養請求権・賃金請求権等が、これにあたります。
- 受働債権が支払の差止め、差押えを受けた場合、
- 自働債権に同時履行(りこう)の抗弁権や、検索の抗弁権が付いている場合。
- 受働債権が差押えられた後に、自働債権を取得した場合、相殺することができません。
- 受働債権が差し押さえられる前に、自働債権を取得した場合、相殺することができます。
- もっとも、自働債権が差し押さえられた場合は、 相殺することはできません。
- 相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってします。
そのため、相殺適状(そうさいてきじょう)になっても、債権は、当然には消滅しません。
また、相手方の同意は不要です。
- 相殺の意思表示には、条件又は期限を付することができません。
- この効果は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時、つまり相殺適状時にさかのぼって、その効力を生じます。
- ここからは、その他の消滅事由についてです。
- 弁済と相殺以外の債権の消滅事由として、代物(だいぶつ)弁済、供託(きょうたく)、更改(こうかい)、免除、混同(こんどう)があります。
- まず、代物(だいぶつ)弁済とは、債務者(さいむしゃ)が、債権者(さいけんしゃ)の承諾を得て、その負担した給付に代えて他の給付をすることです。
お金の代わりに時計で支払うような場合が、これにあたります。
- 供託とは、弁済者が目的物を債権者のために供託所に寄託(きたく)して、債務を免(まぬが)れることをいいます。
受領拒否等の場合に、供託所に目的物を寄託することによって、債務を免れることが出来ます。
- 更改(こうかい)とは、当事者が債務の要素を変更する契約を締結し、旧債権を消滅させることです。
旧契約を変更して、新契約にする場合などが、これにあたります。
- 免除とは、債権者の一方的意思表示で、債権を無償で消滅させることをいいます。
- 混同(こんどう)とは、債権および債務が同一人(どういつにん)に帰属することをいいます。
相続などによって、債権者と債務者が同一人物となった場合などが、これにあたります。