gの天秤はネットワーク連動のインスタレーションです。 天秤の両端の皿に液晶ディスプレイが載っています。それぞれの画面には一定時間ごと、8ヶ国語の中からランダムに選ばれる人間の評価に関わることばと、そのことばのGoogleでの検索ヒット数が表示されます。都度リアルタイムに取得される検索ヒット数1件を1グラムに置き換え、ことばの重みをフィジカルな天秤の傾きによって視覚化します。 時代と場所によって人間の優劣を決定する尺度はさまざまです。たとえば、弥生時代の邪馬台国では、農耕文化への移行に伴い、国家の存亡を決めるのは天気予報でした。その結果、神の声を聞くことができる司祭者が国家の頂点に君臨するようになったといいます。今日、人間の優劣を決定する評価尺度は、容姿、運動神経、TOEICスコアなど、ますます多様化しています。検索ヒット数はウェブの世界でのプレゼンスを示す指標ですが、無数の異なる価値観を横断して一意に序列するメタな尺度であるともいえるでしょう。さらに、ウェブメディアの社会への浸透に伴って、 実世界とウェブの世界との区別は無意味になりつつあるとも指摘されています。そのような状況に鑑みると、瞬時に、しかも定量的に答えを出してくれるGoogleこそ、現代の神の声にほかなりません。 gの天秤はただひたすら、刻々と変化する検索結果に応じてことばの重みを比べ、動き続けます。