山の木版画
⽇本⼭岳画協会
⽇本板画院
吉⽥版画アカデミー 杉⼭修 1
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顔料
ブラシ
⾺連
椿油
刷⽑
版⽊ 朴 シナベニア 和紙 彫刻⼑ 3
山の多色摺リ木版画
⽊版画の作品の制作過程を、南アルプスの観⾳岳からの薄暮の富
⼠を臨んだ⾵景を描いた「沈みゆく富⼠・観⾳岳より」を題材に
説明していきます。
この作品は、8枚の版⽊を使った39⾊摺りです。
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「沈みゆく富⼠」
版⽊ 朴 シナベニヤ
紙 越前和紙 ⽣漉奉書
顔料 ⽔⼲絵具
版⽊⼑ バレン ブラシ
和糊 椿油
まず、版画ですから線描からはじめます。 右は彩⾊途中です。
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下絵が出来上がります。つまり原画です。
アクリル絵の具で描いています。
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次の⼯程は、下絵の版⽊への複写です。
まず、トレーシングペーパーを使い、下絵の線を写しとります。
写し取ったトレーシングペーパーを裏返しにして、カーボン紙をはさんで、
第⼀版に必要な線を版⽊に複写します。摺った際に正しい向きになるよう
に、裏返しにして複写することがポイントです。
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第⼀版を彫ります。版⽊は朴材。左。
この第⼀版を摺ると次のようになります。汎⽤品の「⿃の⼦紙」に摺った
ものです。なお、本摺りには「越前和紙⽣摺奉書紙」を使⽤します。
第⼀版は、空、中景、⼿前の岩と3⾊分彫りました。
第1版を使い12枚同じものを摺ります。
この摺りを校合摺(きょうごうずり)と⾔います。
その中の1枚に第2版として彫る部分の線を描き込みます。
図の中央の紙が書き込んだものです。 10
書き込んだ第2版⽤の紙を裏返しにして、⼤和のりで版⽊に張ります。
そして、少し乾いたころに、ゆっくりとはがずと、薄紙に次の彫る部分が
残ります。 11
これをもとに、富⼠⼭の線と、中景の⼭稜の線を彫ります。
彫り終わると右のようになります。
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この版⽊を使って摺ってみます。
右側が第1版を摺ったものに、この第2版を摺り重ねたものです。左側が
原画です。
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なぜ何版重ねても、ずれない版がつくれるのでしょう?
版の右下にカギ⾒当、左下に引きつけ⾒当という溝を彫っておきます。
すべての版、紙をこの溝に合わせて摺りあげることでずれない版がつくれ
ます。
左側が第2版まで摺ったもの、右側が第3版を摺り重ねたものです。
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第⼀版
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だいだい
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第⼆版
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第三版
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第四版
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第五版
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第六版
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第七版
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第⼋版
こうして次々に8版、合計39⾊を
摺り重ねていきます。
同じ版⽊を使って、ぼかし摺り等を
重ねて摺ったりもします。そのため
版⽊の数より摺り数は増えます。
例えば空は同じ版⽊で3回摺重ねて
います。
その結果、8版39⾊摺りの作品が
完成します。
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これが私の摺の作業場です。
摺る和紙は湿らせておくのですが、版台の奥に乾かないようにビニールを
かぶせてあります。
そして、和紙を摺っては、左⼿の台に重ねていきます。 25
絵の具は「⽔⼲絵の具」です。粉末の顔料です。
⽔に溶いてブラシで版⽊に広げていきます。この時に少量の⼤和のりを加
えます。
紙の乾きを嫌って、冬でも暖房を⼊れません。作業を進めていくうちには
じめは寒くてもだんだん体が温まってきます。
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和紙を版⽊に重ねて、バレンで円を描くようにこすっていきます。
このとき、すべりをよくするために⽵⽪に極少量の椿油を塗っておきます。
紙は福井の越前和紙 ⽣摺奉書(きずきぼうしょ)紙を使います。たいへん丈
夫な紙です。 27
閑話休題
⾃宅の2階の彫りの作業場です。 ところがーー 28
私の仲良しな家族が仕事場にたびたび遊びに来るのです。
しかも⽊くずを体中にくっつけて歩き回るので我が家はゴミだらけになっ
てしまうのです。 29
⼋ヶ岳厳冬
7版32⾊
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五⻯岳閃光
7版25⾊
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槍ヶ岳 ⼣景
8版26⾊
槍ヶ岳 初夏
12版34⾊
槍ヶ岳 朝陽
7版29⾊
⼣映えの
ユングフラウ
7版24⾊
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マッターホルン秋⽇
8版41⾊
エベレスト街道
を⾏く
6版25⾊
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朝の⾵ ネパール ゴラパ⼆峠
11版30⾊
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有難うございました。
⼭の版画家 杉⼭ 修
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日本山岳文化学会口演 - 山の木版画