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在宅プレアボイドの実践
ミライ☆在宅委員会 三⾕徳昭
〜在宅薬剤師からの処⽅提案〜
2
医療費・社会保障費の限界
薬剤師が⽌める︕
3
内容
•⾼齢者の処⽅提案で考えるべき事
•⾼齢者への多剤併⽤を防ぐためのガイドライン
•プレアボイドの流れ
•実例紹介〜糖尿病〜
4
⾼齢者への処⽅提案で考えるべき事
 ⾼齢者のADME(吸収・分布・代謝・排泄)
 ⽣活環境=⾷事(回数・時間)と服薬時間
 疾患と内服の整合性
 治療薬の優先順位
 患者個々の希望⽬標と医療⽬標の確認
 ⾼齢者の⽣理活性・⽇常ADL・認知機能
5
6
⾼齢者への処⽅提案で考えるべき事
⾼齢者のADME(吸収・分布・代謝・排泄)
 吸収=胃腸管運動の減弱や粘膜⾎流量の減少によりTmaxが延⻑する場合がある
 分布=体脂肪率が増加(筋⾁⽐率低下)のため、脂溶性薬物の分布容積は⼤きく
なり医薬品の⾎液中濃度は低下し効果時間は延⻑する=T1/2延⻑。⽔溶性薬物
の場合、体内⽔分量の減少により⾎中濃度上昇。⾎清アルブミン低下によりタン
パク結合率の⾼い薬物を使⽤する場合、遊離型薬物濃度が増えるため⾎中濃度が
上昇する場合がある。
 代謝=肝重量や肝⾎流量が低下し肝細胞機能の低下が起きるため肝代謝率の⾼い
薬物の⾎中濃度上昇
 排泄=腎⾎流量の減少により腎排泄は低下し腎排泄型の薬物⾎中濃度上昇。
7
8
内容
•⾼齢者の処⽅提案で考えるべき事
•⾼齢者への多剤併⽤を防ぐためのガイドライン
•プレアボイドの流れ
•実例紹介
9
⾼齢者への多剤併⽤を防ぐためのガイドライン
•Beers  Criteria 2012 (⽶国)
(ベアーズリスト⽇本版)
•STOPP / START (欧州)
•⾼齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015        
(⽇本⽼年医学会)
10
内容
•⾼齢者の処⽅提案で考えるべき事
•⾼齢者への多剤併⽤を防ぐためのガイドライン
•プレアボイドの流れ
•実例紹介
11
在宅プレアボイドの流れ
血液
介護記録
文献 添付文書
処方鑑査
処方提案
処方変更
介護記録
患者 家族 介護者
健康目標
医療目標
lan
目標
o 収集
heck
精査
提案 変更 評価
12
ジェネラリスト薬剤師の減薬PDCA
既往歴 薬歴
血液
介護記録
処方 鑑査
患者 家族 介護者
患者目標 薬剤師目標
処方提案
処方変更
介護記録
処方薬 減
回数 減
成分量 減
lan
目標
o 収集
heck
精査
提案 変更 評価
13
内容
•⾼齢者の処⽅提案で考えるべき事
•⾼齢者への多剤併⽤を防ぐためのガイドライン
•プレアボイドの流れ
•実例紹介〜糖尿病プレアボイド〜
14
糖尿病患者 
•年齢85 ⼥性 糖尿病 ⾼脂⾎症 認知症
•3⽉施設⼊所 1⼈暮らし5年 BW45kg
•⾷事全量 要介護1 
•処⽅ 
 アムロジン5mg 1T分1 朝⾷後
 ファスティック90mg 3T分3毎⾷直前
 メトグルコ250mg  3T分3毎⾷後
 クレストール2.5mg 1T分1朝⾷後
 フェブリク10mg 分1朝⾷後
 アリセプト5mg 分1朝⾷後
 マグミット250mg 3T分3毎⾷後
 
  
15
糖尿病 数値 一般
• ⾎糖 HbA1c 7.0%未満 
• 空腹時⾎糖 130mg/dl未満
• ⾷後2時間⾎糖 180mg/dl未満
• ⾎圧 130/80mmHg(140/90の⾒解も2015年に出てます)
• LDL 120mg/dl未満 冠動脈疾患合併は100mg/dl
• 空腹時中性脂肪(TG) 150mg/dl未満
• HDL 40mg/dl以上
16
糖尿病 数値 高齢者
• ⾎糖 HbA1c 7.4%未満 
• 空腹時⾎糖 140mg/dl未満
• ⾷後2時間⾎糖 180mg/dl未満
• ⾎圧 130/80mmHg
• LDL 120mg/dl未満 冠動脈疾患合併は100mg/dl
• 空腹時中性脂肪(TG) 150mg/dl未満
• HDL 40mg/dl以上
17
高齢者 血糖値最近 話題
•低⾎糖を⼀度でも起こすと予後が不良になる場合が多い
•⾼齢者の低⾎糖症状は薬物代謝の遅延で起きやすくなっている
•神経障害や多種の疾患により低⾎糖症状が出にくく、低⾎糖の⾃覚症状に乏しい場合がある
•⾼齢者の低⾎糖症状はめまい・ふらつき・ろれつ・⽚⿇痺が出やすく、冷や汗・動悸・⼿の震えは
 出にくい
•糖尿病において⾻質の劣化(⾻量は不変)がみられ⼤腿部⾻折などの⾻折リスクが⾼まる。
•DPP4が他の治療薬に⽐べて⾻折リスクを40%減少したというRCTのメタアナリシスがある
•アクトスは特に⼥性において2倍以上の⾻折リスクがあったというRCTが5つ以上ある
•欧州や⽶国では健康⾼齢者はA1c7.0以下、フレイルや低⾎糖リスクがある⾼齢者はA1c8.0以下が⽬標
•死亡率はA1c6.4%未満ではむしろ上昇する。
•A1c6.9%以下で網膜症・認知機能低下・感染症の頻度が減少したという研究結果もある。
•⾼齢者や低リスクではA1c6.4〜8.4%以下 ⾼リスク者(認知症・虚弱)ではA1c7.9〜8.9%
•⽇本は⾼齢者 空腹時⾎糖140mg/dl以下 A1c7.4%を⽬標 
•厳格 A1c6.0%以下 寛容 A1c8.0%以下
18
厳格 A1c6.0%以下   寛容 A1c8.0%以下
厳格
• 理解度↑・⾃⼰管理能⼒↑
• ⼗分
• 低い
• 短い
• ⻑い
• なし
• なし
寛容
社会・⼼理
経済・⽀援
低⾎糖リスク
罹患期間
余命
⼤⼩⾎管症
併発疾患
• モチベーション↓アドヒア↓
• 不⼗分
• ⾼い
• ⻑い
• 短い
• 重篤、既往あり
• 多疾患、重篤
19
糖尿病 医薬品
• ⾷事運動・運動療法は有効。低⾎糖を起こさない治療が優先。
• 第⼀選択薬はビグアナイド(メトグルコ)Cr1.2mg/d以上、   
年齢80歳以上には投与しない。                  
75歳以上の新規の患者には投与しない。(推奨)
• 第⼆選択薬はDPP4、SU剤、α-グルコシダーゼ阻害薬
• ⾼齢者の第⼀選択薬はDPP4(8種)腎機能や既往歴、原疾患に合わせて
• 無効は アマリール0.5mg〜2mg 分1〜分2 ⾷後併⽤ 
• または アクトス7.5mg〜15mg 分1〜分2 ⾷後併⽤ 
• 海外ではメトグルコが第⼀選択(⾼齢者以外)。その次にDPP4とSGLT2
追加併⽤
20
血糖値 ADME 考
高齢者 後 方
21
22
糖尿病患者 
•年齢85 ⼥性 糖尿病 ⾼脂⾎症 認知症
•3⽉施設⼊所 1⼈暮らし5年 BW45kg
•⾷事全量 要介護1 
•処⽅ 
 アムロジン5mg 1T分1 朝⾷後
 ファスティック90mg 3T分3毎⾷直前
 メトグルコ250mg  3T分3毎⾷後
 クレストール2.5mg 1T分1朝⾷後
 フェブリク10mg 分1朝⾷後
 アリセプト5mg 分1朝⾷後
 マグミット250mg 3T分3毎⾷後
 
  
23
• Hba1cが低いことが最善ではない
• 厳格 A1c6.0%以下 寛容 A1c8.0%以下 
• A1cが6.0前後であればDPP4への変更を考える
• DPP4は体重、クレアチニンから腎機能を評価し選択する=CCr
• SU剤、アクトス、メトグルコは⾼齢者に対して⼀定のリスクがある
• 施設⼊所の場合、⾷⽣活は安定。低⾎糖リスクは低い
• 個⼈宅の場合、糖尿病薬のノンコンプラが多い
• ⾷前の薬があるということは服薬回数・服⽤に費やす時間も倍

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