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Fundamental Lectures
1 順列・組合せ
2 円順列
3 組分け
4 重複組合せ
5 1 対 1 対応
6 確率の定義
7 確率の基本性質
8 反復試行の確率
9 条件付き確率
10 確率と数列
典型問題
11 同じものを含む円順列
12 スターリング数
13 ボールの分配
14 くじ引きの確率
15 余事象の利用
16 最大値・最小値の確率
17 さいころの目の積
18 ランダムウォーク
19 反復試行の確率の最大値
20 状態の推移
21 条件付き確率
22 原因の確率
23 確率漸化式
有名問題
24 階段ののぼり方
25 破産の確率
26 完全順列
27 ポリアの壺
入試問題
28 2006 京都大
29 2002 東北大
30 2012 東京大
Fundamental Lectures
1 順列・組合せ
1.1 順列 いくつかのものを順序をつけて 1 列に並べる配列を順列 (permutation) といいます.
異なる n 個のものから,異なる k 個 (k  n) を取り出して並べる順列の総数を nPk で表し,
次が成り立ちます.
nPk = n(n − 1)(n − 2) · · · (n − k + 1) = n!
(n − k)!
なお,0! は 0! = 1 と定義され,上の公式は k = n のときも成り立ちます.
たとえば ABCDE から 3 個を取り出して並べる順列の総数は 5P3 = 5 · 4 · 3 = 60 です.
1.2 組合せ いくつかのものを順序を考えないで 1 組にしたものを組合せ (combination) とい
います.異なる n 個のものから,異なる k 個 (k  n) を取る組合せの総数を nCk で表し,
次が成り立ちます.
nCk = nPk
k!
= n!
k!(n − k)!
— 1

たとえば ABCDE から 3 個を取る組合せの総数は 5C3 = 5 · 4 · 3
3 · 2 · 1
= 10 です.
1.3 同じものを含む順列の公式 例として AABBBCCCC の順列の総数 x を考えます.
[方法 1]
1 2 3 4 5 6 7 8 9 と 9 個の場所を用意しておいて,A,B,C の順に配置する
と考えると,2 つの A の配置の仕方が 9C2 通り,次に 3 つの B の配置の仕方が 7C3 通り,
最後に 4 つの C の配置の仕方は 1 通りだから,x = 9C2 · 7C3 · 1 = 1260.
[方法 2]
異なる 9 個のもの A1A2B1B2B3C1C2C3C4 の順列の総数は 9!.これをまず AABBBCCCC
を並べて,そのあとで 2 つの A のところに A1A2 を並べる方法が 2! 通り,3 つの B のとこ
ろに B1B2B3 を並べる方法が 3! 通り,4 つの C のところに C1C2C3C4 を並べる方法が 4!
通りと考えると,9! = x · 2! · 3! · 4!.ゆえに x = 9!
2!3!4!
= 1260.
— — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — —
上の [方法 2] を一般化すると次の公式が得られます.
n 個の中に同じものが p 個,q 個,· · · と含まれるとき,その順列の総数は
n !
p ! q ! · · ·
1.4 二項係数の公式 記号 nCk は自然数 n と 0  k  n の整数 k に対して定義されます.nC0
は組合せとしての意味は分かりにくいですが,便宜的に nC0 = 1 と定義します.nCk は二
項展開の係数として現れるので,二項係数といいます.なお,二項展開は『第 1 章 受験数
学の基本』の section1 で扱っています.
二項係数について,次の公式が成り立ちます.ただし,n, k の範囲はそれぞれ両辺の二項
係数が定義される範囲でとるものとします.
[1] nCk = nCn−k
[2] nCk = n−1Ck−1 + n−1Ck
[3] k nCk = n n−1Ck−1
これらは 1.2 の 1
を用いると簡単に証明できます.
[証明]
[1] nCn−k = n!
(n − k)!k!
= nCk
[2] n−1Ck−1 + n−1Ck =
(n − 1)!
(k − 1)!(n − k)!
+
(n − 1)!
k!(n − 1 − k)!
=
(n − 1)!
(k − 1)!(n − 1 − k)!

1
n − k
+ 1
k

=
(n − 1)!
(k − 1)!(n − 1 − k)!
· n
k(n − k)
= n!
k!(n − k!)
= nCk
[3] nCk = n!
k!(n − k)!
= n
k
·
(n − 1)!
(k − 1)!(n − k)!
= n
k
· n−1Ck−1 [証明終]
また,組合せの意味から解釈することもできて,たとえば次のようになります.
[1] n 人を k 人の A 組と n − k 人の B 組に分けるとき,先に A 組の作り方を考えれば nCk
通り,B 組の作り方を考えれば nCn−k 通りだから,nCk = nCn−k である.
[2] n 人から k 人を選ぶとき,特定の 1 人が選ばれる場合,残りの n − 1 人から k − 1 人を
選ぶから n−1Ck−1 通り,特定の 1 人が選ばれない場合,残りの n − 1 人から k 人を選ぶか
ら,n−1Ck 通り.ゆえに,nCk = n−1Ck−1 + n−1Ck である.
[3] n 人から k 人の組を作り,さらにその k 人の中で 1 人の代表を決める方法は,nCk · k 通
り.同じものを,先に代表を 1 人決めて,そのあとで残りの k − 1 人を選んで組を作ると考
えると,n · n−1Ck−1 通り.ゆえに,k nCk = n n−1Ck−1 である.
問 男子 4 人と女子 3 人を横 1 列に並べる.次の条件を満たす並べ方の総数を求めよ.
(1) 両端が男子 (2) 左から 4 番目が女子 (3) 女子が隣り合わない
(4) 特定の男女 2 人が隣り合う (5) 女子のうち 2 人だけが隣り合う
(6) 男子は左から名前の順
答 男子 4 人を ABCD,女子 3 人を PQR とする.
(1) 両端の男子の決め方が 4 · 3 通り.そのあと,残りの 5 人の並べ方が 5! 通り.ゆえに
4 · 3 · 5! = 1440 通り
(2) まず左から 4 番目の女子の決め方が 3 通り.そのあと,残りの 6 人の並べ方が 6! 通り.
ゆえに
3 · 6! = 2160 通り
(3) まず男子 4 人を並べる.並べ方が 4! 通り.そのあと,男子のすき間 (両端含む) に女子
を配置する方法が 5 · 4 · 3 通り.ゆえに
4! · 5 · 4 · 3 = 1440 通り
(4) 特定の男女 2 人を AP とする.AP の並べ方が 2 通り.これをカタマリで 1 つのものと
見る.カタマリと残りの 5 人の並べ方が 6! 通り.ゆえに
2 · 6! = 1440 通り
(5) 女子 3 人が隣り合う並べ方は,(4) と同様にして,3! · 5! = 720 通り.全体 7! = 5040 通
りから,(3) と 720 通りを除くと
5040 − (1440 + 720) = 2880 通り
[別解] PQ の 2 人だけが隣り合う並べ方は,PQ のカタマリを作り,先に男子 4 人を並べ,
そのすき間 (両端含む) にカタマリと R を配置すると考えて,2 · 4! · 5 · 4 = 960 通り.
QR,RP の 2 人だけが隣り合うものも同様だから,960 · 3 = 2880 通り.
(6) まず KKKKPQR を並べて,そのあと KKKK に左から ABCD を配置すると考えて
7!
4!
· 1 = 210 通り
2 円順列
いくつかのものを円形に並べる配列を円順列といいます.円順列の総数を求める問題では,
特に断りがなくても,回転して同じなる並び方は区別しません.
例として ABCDE の円順列を考えます.
[方法 1] 重複度で割る
まず ABCDE の順列を作り,
そのまま反時計回りに並べて円形を作ると,
たとえば ABCDE,
BCDEA,CDEAB,DEABC,EABCD は同じものになる.このように 5 通りずつ同じも
のができるから,総数は
5!
5
= 4! = 24.
[方法 2] 1 つを固定する
A を固定し,残りの 4 つを A の隣から反時計回りに並べると考えて,総数は 4! = 24.
一般に,n 個の異なるものの円順列の総数は (n − 1)! になりますが,この公式は覚えてもあ
まり役に立ちません.むしろ上記の考え方を理解しておくことが重要で,本書では主に [方
法 2] を用います.この数え方で,数えもれがないこと,および重複がないことに注意しま
しょう.
問 1 ABCDEFGH の 8 人がいる.
(1) 8 人を円形に並べる方法はすべてで何通りか.
(2) 8 人から 5 人を選び,8 人掛けの円形のテーブルにその 5 人を,空席を 3 つ設けて座ら
せる方法はすべてで何通りか.
(3) 8 人を正方形のテーブルの各辺に 2 人ずつ座らせる方法はすべてで何通りか.
答 (1) A を固定し,残りの 7 人を A の隣から反時計回りに並べると考えて
7! = 5040 通り
(2) 5 人の選び方は 8C5 通り.この 5 人を仮に ABCDE とし,ABCDEKKK の円順列を考
える.A を固定し,残りの BCDEKKK を A の隣から反時計回りに並べる方法は 7!/3! 通
り.ゆえに
8C5 · 7!
3!
= 56 · 840 = 47040 通り
(3) A を固定する位置が 2 通りあり,そのそれぞれについて残りの 7 人を A の隣から反時
計回りに並べる方法が 7! 通りだから
2 · 7! = 10080 通り
問 2 立方体の各面に色を塗る.ただし隣り合う面は異なる色で塗るものとし,立方体を転がして
一致するような塗り方は区別しない.次のそれぞれについて,塗り方の総数を求めよ.
(1) 6 色 ABCDEF をすべて使う.
(2) 5 色 ABCDE をすべて使う.
(3) 4 色 ABCD をすべて使う.
答 (1) A を固定して考える.A の向かいの面の塗り方は 5 通り.これを仮に B とすると,残り
の面は CDEF の円順列で 3! 通り.ゆえに
5 · 3! = 30 通り
(2) いずれか 1 色を 2 回使うことになる.2 回使う色の選び方が 5 通り.これを仮に A とす
る.立方体の 6 個の面を AABCDE で塗る.2 つの A は隣り合わないことに注意する.
B を固定して考える.B の向かいの面の塗り方は CDE の 3 通り.これを仮に C とすると,
残りの面は AADE の円順列で 1 通り.以上より
5 · 3 · 1 = 15 通り
(3) いずれか 2 色を 2 回ずつ使うことになる (1 色を 3 回使うことはできないことに注意).
2 回使う 2 色の選び方は 4C2 通り.これを仮に AB とする.立方体の 6 個の面を AABBCD
で塗る.
C を固定して考える.C の向かいの面の塗り方は D の 1 通り.残りの面の塗り方は AABB
の円順列で 1 通り.以上より
4C2 · 1 · 1 = 6 通り
3 組分け
例として 9 人 ABCDEFGHI を 3 人ずつの 3 組に分けることを考えます.ただし組には名
前がなく,区別がないものとします.
もし組に区別があるとすれば,それを α 組,β 組,γ 組として,α 組に入る 3 人の選び方は
9C3 通り,次に β 組に入る 3 人の選び方は 6C3 通り,最後に γ 組に入る 3 人の選び方は 1
通りだから,総数は 9C3 · 6C3 · 1 です.
この中には
α β γ
ABC DEF GHI
ABC GHI DEF
のように組に区別がなければ同じであるものが含まれます.
そこで,3 人ずつの区別のない 3 組に分ける方法を x 通りとし,x 通りのそれぞれについて,
組に α, β, γ の名前を付ける方法が 3! 通りずつあることを利用すると,次のようにして x
を求めることができます.
x · 3! = 9C3 · 6C3 · 1 ∴ x = 9C3 · 6C3 · 1 ÷ 3! = 280
このように「組分け」では「同じ人数の組には区別がない」ことが要点で,まず区別したと
きの総数を考え,それを重複度で割ることで総数を求めることができます.
問 8 人 ABCDEFGH を次のように組分けする方法はすべてで何通りあるか.
(1) 4 人,4 人の 2 組
(2) 2 人,2 人,2 人,2 人の 4 組
(3) 2 人,3 人,3 人の 3 組
答 (1) 8C4 ÷ 2 = 35 通り
(2) 8C2 · 6C2 · 4C2 ÷ 4! = 105 通り
(3) 8C2 · 6C3 ÷ 2 = 280 通り
4 重複組合せ
例として次の問題を考えます.
[問題 1] ボールの分配
10 個の区別のないボールを 3 人 A,B,C に分配する方法の総数を求めよ.ただし 1 個も
もらわない人がいてもよいとする.
ボールを○で表し,3 人に分けるために 2 個のしきり | を用意します.10 個の○と 2 個の |
の順列を作り,しきりで分けられたボールを左から順に A,B,C のものとすれば,題意の
分配の仕方が過不足なくできます.
○○○○ | ○○○ | ○○○
ゆえに 12C2 = 66 通りが求めるものです.
[問題 2] 方程式の整数解
A,B,C のボールの個数をそれぞれ a, b, c とすると,[問題 1] は
a + b + c = 10, a  0, b  0, c  0
を満たす整数 a, b, c の組の総数を求めることと同じです.
[問題 3] 重複組合せ
さらに (a, b, c) = (4, 3, 3) を AAAABBBCCC などとかくことにすれば,[問題 2] は A,
B,C の 3 個から重複を許して 10 個を取る組合せの総数を求めることと同じです.
一般に n 個の異なるものから重複を許して k 個 (k  n でもよい) を取る組合せの総数は,k
個の○と n − 1 個の | の順列の総数に等しく,n+k−1Ck です.これを記号で nHk と表すこ
とがありますが,本書ではこの記号は用いません.
問 1 12 個のボールを 4 人に分ける方法の総数を,次の各場合について求めよ.ただしボールに
区別はないものとする.
(1) 1 個ももらわない人がいてもよい (2) 全員最低 1 個はもらう
答 (1) 12 個の○と 3 個のしきり | の順列を考え,15C3 = 455 通り
(2) 初めに 4 人にボールを 1 個ずつあげておいて,残りの 8 個を (1) と同様に分ければよい.
8 個の○と 3 個のしきり | の順列を考え,11C3 = 165 通り
問 2 ABCDEFGH から重複を許して 5 個を選ぶ組合せの総数を求めよ.
答 5 個のボールを ABCDEFGH の 8 人に分配すると考える.5 個の○と 7 個のしきり | の順
列を考え,12C5 = 792 通り
問 3 (a + b + c)10
を展開してできる同類項は何種類あるか.
答 abc から重複を許して 10 個を選ぶ組合せを作ればよいが,10 個のボールを abc の 3 人に分
配すると考える.10 個の○と 2 個のしきり | の順列を考え,12C2 = 66 通り
問 4 3 個のさいころを投げるとき,次の各場合について目の出方の総数を求めよ.
(1) さいころに区別がある. (2) さいころに区別がない.
答 (1) サイコロを ABC とすると,A が 6 通り,そのそれぞれに対して B が 6 通り,そのそれ
ぞれに対して C が 6 通りだから,63
= 216 通り
(2) 1, 2, 3, 4, 5, 6 から重複を許して 3 個を選ぶ組合せを作ればよい.3 個のボールを 6 人
に分配すると考えて,3 個の○と 5 個のしきり | の順列で,8C3 = 56 通り
[注] 1, 2, 3, 4, 5, 6 から重複を許して 3 個を選ぶ組合せを,素朴な方法で求めると:
3 個が全て異なるときは 6C3 = 20 通り,3 個のうち 2 個だけ同じときは 6 · 5 = 30 通り,3
個が全て同じときは 6 通り,合わせて 56 通り.
問 5 次の条件を満たす整数 a, b, c の組の総数を求めよ.
(1) a + b + c = 10, a  0, b  0, c  0
(2) a + b + c = 10, a  1, b  1, c  1
(3) a + b + c  10, a  0, b  0, c  0
答 (1) 10 個のボールを 3 人に分配すると考えて,10 個の○と 2 個のしきり | の順列で,
12C2 = 66 通り
(2) 10 個のボールを 3 人に最低 1 個ずつ分配すると考える.初めに 3 人に 1 個ずつあげ
ておいて,残りの 7 個を自由に分配すればよいから,7 個の○と 2 個のしきり | の順列で,
9C2 = 36 通り
(3) 10 個のボールを 3 人に余りが出てもよいように分配すると考える.これは 10 個
のボールを 4 人に分配することと同じだから,10 個の○と 3 個のしきり | の順列で,
13C3 = 286 通り
5 1 対 1 対応
2 つの有限集合 A, B の要素の間に 1 対 1 の対応を作ることができるとき,n(A) = n(B)
が成り立ちます.ただし n(A) は A の要素の個数です.
A B
このことは場合の数の問題でよく用いられます.
[例 1] 49 チームでトーナメント戦を行う.引き分けがないとすれば,優勝が決まるまでに何
試合あるか.
各試合にそこで負けたチームを対応させると,これは全ての試合と優勝校を除く全ての参加
チームの間の 1 対 1 対応になります.ゆえに,(試合数) = (チーム数) − 1 = 48 です.
[例 2] 図のような道があるとき,A から B に行く最短経路は何通りあるか.
A
B
経路を矢印の順列と対応させることを考えます.
たとえば,図の太線の経路は ↑→→→↑↑→ という順列に対応するとします.
これは 1 対 1 の対応になるから,(経路数) = (順列の総数) = 7C3 = 35 です.
問 1 下図のように縦に 8 本,横に 6 本の線を引いた格子状の図形を考える.
(1) この図形の線を使ってできる長方形の総数を求めよ.
(2) この図形の線を使ってできる正方形の総数を求めよ.
(3) この図形の頂点 (縦線と横線の交点) を結んでできる正方形の総数を求めよ.たとえば,
図の太線のような正方形も含めて考える.
答 (1) 縦線 8 本から 2 本を選び,横線 6 本から 2 本を選ぶと長方形が 1 つできるから
8C2 · 6C2 = 28 · 15 = 420 個
(2) 正方形の大きさで分類して考える.隣り合う 2 本の平行線の幅を 1 とする.
1 辺が 1 の正方形は,5 × 7 = 35 個
1 辺が 2 の正方形は,4 × 6 = 24 個
1 辺が 3 の正方形は,3 × 5 = 15 個
1 辺が 4 の正方形は,2 × 4 = 8 個
1 辺が 5 の正方形は,1 × 3 = 3 個
合わせて
35 + 24 + 15 + 8 + 3 = 85 個
(3) (2) で考えた 1 辺が n の正方形に,自分自身も含めて n 個の正方形を内接させることが
できるから
35 · 1 + 24 · 2 + 15 · 3 + 8 · 4 + 3 · 5 = 175 個
問 2 図のような道を考える.
(1) A から B に行く最短経路のうち,C も D も通らないものの総数を求めよ.
(2) 右または左または上に進むことができるとき,A から B に行く経路の総数を求めよ.た
だし,同じ道を後戻りすることはできないものとする.
B
A
C
D
答 (1) A から B に行く経路は 13C5 = 1287 通り.
このうち C を通る経路は 3C1 · 10C3 = 360 通り,D を通る経路は 10C4 · 3C1 = 630 通り,
C も D も通る経路は 3C1 · 7C2 · 3C1 = 189 通り.ゆえに,C または D を通る経路は
360 + 630 − 189 = 801 通り
C も D も通らない経路は
1287 − 801 = 486 通り
(2) 上に進む位置だけ考えればよいから
95
= 59049 通り
問 3 次の条件を満たす整数 a, b, c の組の総数を求めよ.
(1) 1  a  b  c  10
(2) 1  a  b  c  10
(3) 1  a, a + 2  b, b + 2  c, c  10
答 (1) 1, 2, · · · , 10 の中から 3 個を選んで小さい順に a, b, c とすればよいから
10C3 = 120 通り
(2) 整数 a, b に対して
a  b ⇐⇒ a  b + 1
であることに注意すると,整数 a, b, c に対して
1  a  b  c  10 ⇐⇒ 1  a  b + 1  c + 2  12
である.この条件を満たす組 (a, b + 1, c + 2) の作り方は,(1) と同様にして,
12C3 = 220 通り.
組 (a, b, c) の総数と組 (a, b + 1, c + 2) の総数は等しいから, 220 通り が求めるもの.
(3) 整数 a, b, c に対して
1  a ∧ a + 2  b ∧ b + 2  c ∧ c  10 ⇐⇒ 1  a  b − 1  c − 2  8
である.この条件を満たす組 (a, b − 1, c − 2) の作り方は,(1) と同様にして,
8C3 = 56 通り.
組 (a, b, c) の総数と組 (a, b − 1, c − 2) の総数は等しいから, 56 通り が求めるもの.
6 確率の定義
6.1 確率の定義 何回も繰り返すことができ,毎回の結果が偶然によって決まる実験や観察な
どを 試行 といいます.ある試行において起こり得ることがらの全体からなる集合 U を 全事
象 (あるいは標本空間) といいます.ただし U は有限集合であり空集合でないとします.U
の部分集合 A を 事象 ,特に要素が 1 個だけである部分集合を 根元事象 といいます.どの
根元事象も同程度に起こりやすいとみなせるとき,それらは 同様に確からしい といいます.
このとき,A の起こる確率 (probability) を P(A) で表し
P (A) =
n(A)
n(U)
と定義します.
[例] さいころを振るという試行において,1 の目が出ることをそのまま 1 とかくことにする
と,全事象 U は
U = {1, 2, 3, 4, 5, 6}
です.根元事象は次の 6 個です.
{1}, {2}, {3}, {4}, {5}, {6}
これらは同様に確からしいと考えられます.このとき素数の目が出るという事象 A は
A = {2, 3, 5}
であり,その確率は
P(A) =
n(A)
n(U)
= 3
6
= 1
2
です.
6.2 同様に確からしい 何をもって同様に確からしいとみなすかは,きちんとした定義があるわ
けではなく,(少なくとも高校数学では) ほとんどの場合に前提として認めた上で確率を考え
ます.したがって,
「常識的にすべての可能性が対等であるとみなせるもの」は同様に確か
らしいと思ってよいです.これは問題文に明記されていることもあれば,いちいち断らない
で暗黙の了解とすることもあります.以下に代表的な例を挙げておきます.
[例 1] 5 枚カード 1, 2, 3, 4, 5 から 1 枚引くという試行において,起こり得る結果はすべ
てで 5 通りで,これらは同様に確からしいです.
これに対して,5 枚カード 1, 1, 2, 3, 4 から 1 枚引くという試行を考えると,起こり得る
結果はすべてで 4 通りですが,これらは同様に確からしいとはいえません.この場合には,
便宜的に 5 枚のカードを 1A, 1B, 2, 3, 4 と区別すれば,起こり得る結果はすべてで 5 通
りで,これらは同様に確からしくなります.
[例 2] 5 枚カード 1, 2, 3, 4, 5 から同時に 2 枚を引くという試行において,起こり得る結
果はすべてで 5C2 = 10 通りで,これらは同様に確からしいです.
[例 3] 非復元抽出
5 枚カード 1, 2, 3, 4, 5 からまず 1 枚を引いて,それを元に戻さずにもう 1 枚を引くとい
う試行において,起こり得る結果はすべてで 5P2 = 20 通りで,これらは同様に確からしい
です.
[例 4] 復元抽出
5 枚カード 1, 2, 3, 4, 5 からまず 1 枚を引いて,それを元に戻してからもう 1 枚を引くと
いう試行において,起こり得る結果はすべてで 52
= 25 通りで,これらは同様に確からしい
です.
一般に,n 個のものがどれも対等であるとき,その中から k 個を取りだすという試行におい
て,組合せ nCk 通り,順列 nPk 通り,重複順列 nk
通りはそれぞれ同様に確からしくなり
ます.
「n 個のものがどれも対等」という状況を作るために,n 個の中に同一のものが含まれ
る場合は,便宜的にそれらを区別した上で確率を考えるのがふつうです.
問 1 [非復元抽出]
袋の中に赤,青,黄,白の球がそれぞれ 3 個ずつ,全部で 12 個ある.この中から順に 3 個
の球を取り出すとき,次の確率を求めよ.ただし,取り出した球は元に戻さないとする.
(1) 2 個だけ同じ色になる.
(2) 1 回目と 3 回目が同じ色になる.
答 12 個の球を
赤 1,赤 2,赤 3,青 1,青 2,青 3,黄 1,黄 2,黄 3,白 1,白 2,白 3
のように全て区別して考える.3 個の球の取り出し方は「順列」とみなしてよく,全てで
12P3 = 12 · 11 · 10 通り — 1
 で,これらは同様に確からしい.
(1) 1
の中で 2 個だけ同じ色になるものは,同じ色になる 2 個の選び方が 4 · 3C2 通り (色が
4 通り,番号が 3C2 通り),もう 1 個の選び方が 9 通りで,3 個の並べ方が 3! 通りだから,
4 · 3C2 · 9 · 3! = 4 · 3 · 9 · 6 通り.ゆえに求める確率は
4 · 3 · 9 · 6
12 · 11 · 10
= 27
55
(2) 1
の中で 1 回目と 3 回目が同じ色になるものは,1 回目と 3 回目が 4 · 3 · 2 通り (色が 4
通り,番号が 3 · 2 通り),2 回目は残った 10 個のどれでもよいから,4 · 3 · 2 · 10 通り.ゆえ
に求める確率は
4 · 3 · 2 · 10
12 · 11 · 10
= 2
11
問 2 [復元抽出]
1 から 5 までの番号の書いてあるカードがある.1 番のカードは 1 枚,2 番のカードは 2 枚,
3 番のカードは 3 枚,4 番のカードは 4 枚,5 番のカードは 5 枚ある.この中からまず 1 枚
を引いて,それを元に戻したあと,さらにもう 1 枚を引く.このとき 1 枚目のカードの数
字と 2 枚目のカードの数字を左から順に並べてできる 2 桁の整数が,素数である確率を求
めよ.
答 15 枚のカードを
1, 21, 22, 31, 32, 33, 41, 42, 43, 44, 51, 52, 53, 54, 55
のように全て区別して考える.たとえば,21, 22 はどちらも 2 番のカードである.
2 枚のカードの取り出し方は「順列」とみなしてよく,全てで 152
通りで,これらは同様に
確からしい.
この中で 2 桁の整数が素数となるものは
11 が 1 通り
13 が 3 通り
23 が 6 通り
31 が 3 通り
41 が 4 通り
43 が 12 通り
53 が 15 通り
合わせて 44 通り.ゆえに求める確率は
44
152 = 44
225
問 3 3 個のさいころを投げるとき,次の各事象の確率を求めよ.
(1) 2 個だけ同じ目になる.
(2) どの 2 つの目の差も 1 以下である.
(3) 3 個の目の和が 15 以上となる.
答 3 個のさいころを全て区別して考える.3 個のさいころの目の出方は「順列」とみなしてよ
く,全てで 63
通り — 1
 で,これらは同様に確からしい. (結局,3 個のさいころを同時に
投げるという試行は,1 個のさいころを順に 3 回投げるという試行と本質的に同じです.)
(1) 1
の中で 2 個だけ同じ目になるものは,組合せが 6 · 5 通り,その並べ方が 3 通りだか
ら,6 · 5 · 3 通り.ゆえに求める確率は
6 · 5 · 3
63 = 5
12
(2) 1
の中でどの 2 つの目の差も 1 以下であるものは
x, x, x のタイプが 6 通り
x, x, x + 1 のタイプが 5 · 3 = 15 通り
x, x + 1, x + 1 のタイプが 5 · 3 = 15 通り
合わせて 36 通り.ゆえに求める確率は
36
63 = 1
6
(3) 1
の中で
和が 18 のものは 6, 6, 6 の 1 通り
和が 17 のものは 5, 6, 6 の順列で 3 通り
和が 16 のものは 4, 6, 6 と 5, 5, 6 の順列で 3 + 3 = 6 通り
和が 15 のものは 3, 6, 6 と 4, 5, 6 と 5, 5, 5 の順列で 3 + 3! + 1 = 10 通り
合わせて 20 通り.ゆえに求める確率は
20
63 = 5
54
7 確率の基本性質
全事象 U の部分集合として定義される 2 つの事象 A, B を考えます.事象 A ∪ B を A と
B の 和事象 ,事象 A ∩ B を A と B の 積事象 といいます.また,空集合に対応する事象
を 空事象 といいます.
A ∩ B = ∅ であるとき,A と B は 排反 であるといいます.3 つ以上の事象に対しても,そ
のうちどの 2 つの事象も排反であるとき,それらの事象は排反であるといいます.
7.1 和事象の確率 全事象 U の 2 つの事象 A, B に対して
n(A ∪ B) = n(A) + n(B) − n(A ∩ B) [包除原理]
が成り立ち,この両辺を n(U) で割ると
P(A ∪ B) = P(A) + P(B) − P(A ∩ B) [和事象の確率公式]
が成り立ちます.特に A と B が排反であるとき,P(A ∩ B) = 0 だから
P(A ∪ B) = P(A) + P(B) [確率の加法定理]
が成り立ちます.同様に,A, B, C が排反な事象であるとき
P(A ∪ B ∪ C) = P(A) + P(B) + P(C)
が成り立ち,4 つ以上の事象についても同様です.
7.2 確率の基本性質 任意の事象 A に対して 0  P(A)  1 が成り立ちます.特に全事象 U の
確率は P(U) = 1,空事象の確率は P(∅) = 0 です.これらと上記の確率の加法定理を合わ
せて,確率の基本性質としてまとめておきます.
 確率の基本性質
[1] 任意の事象 A に対して,0  P (A)  1
[2] 全事象 U の確率は,P (U) = 1
[3] 空事象 ∅ の確率は,P (∅) = 0
[4] 事象 A, B が排反であるとき,P (A ∪ B) = P (A) + P (B)
7.3 根元事象が等確率でない場合の確率の定義 6.1 の確率の定義では,全事象
U = {e1, e2, · · · , eN }
において,全ての根元事象が等確率な (同様に確からしい) 場合しか扱えません.しかし,等
確率な根元事象が作れないようなこともあります.たとえば,図のような白黒の的に矢を投
げるとき,白に当たる確率は全体 a + b のうち a の割合と考えて a/(a + b) とするのが自然
ですが,この試行では 2 つの根元事象 (白か黒か) は等確率ではありません.
a b
別の例として,細工されたさいころで,1 の目だけ他の目より 2 倍だけ出やすいようなもの
を考えてみます.この場合には,k の目が出る確率を pk として
p1
2
= p2 = p3 = p4 = p5 = p6
かつ
p1 + p2 + p3 + p4 + p5 + p6 = 1
より
p1 = 2
7
, p2 = p3 = p4 = p5 = p6 = 1
7
と確率を割り振るのが自然な考え方ですが,この試行では「6 個の根元事象が全て等確率」
ではありません.
このように等確率な根元事象が作れないような場合でも,状況に応じて自然に確率を定義す
ることができますが,いい加減に自由に定義することが許されるわけではなく
7.2 の基本性質 [1][2][3][4] を満たすように
しなければなりません.これが確率を定義するときの規約です.
7.4 余事象の確率 事象 A に対して,
「A が起こらない」という事象を A の 余事象 といい,A
で表します.これは集合としては A の補集合 A に対応しています.余事象の確率について
P (A) = 1 − P (A)
が成り立ちます.これは
n(A) = n(U) − n(A)
の両辺を n(U) で割ったものと考えれば明らかですが,7.2 の基本性質から証明でき,7.3 の
ように定義された確率に対しても成立します.
[証明] A と A は排反だから
P(A) + P(A) = P(A ∪ A) = P(U) = 1
ゆえに,P(A) = 1 − P(A) である.[証明終]
8 反復試行の確率
ここでは単独の試行でなく,試行が 2 回以上継続するときの確率を考えます.
8.1 独立な試行の確率 2 つの試行 T1, T2 が互いに影響を与えないとき,この 2 つの試行は 独
立 であるといいます.このとき試行 T1 では事象 A,試行 T2 では事象 B が起こるという事
象を C とすると
P (C) = P (A)P (B)
が成り立ちます.
たとえば,さいころを 2 回投げるとき,2 回の試行は独立であり (1 回目に何の目が出るか
は 2 回目に出る目に影響しない),1 回目に 1 の目が出て,2 回目に奇数の目が出る確率は
1
6
· 3
6
= 1
12
です.
8.2 反復試行の確率 同じ試行を独立に何回か繰り返すことを 反復試行 といいます.ある試行
を 1 回行うとき,事象 A が起こる確率を p とします (その余事象 A が起こる確率は 1 − p
になります).この試行を独立に n 回繰り返し行うとき,n 回のうち A がちょうど k 回起こ
る確率は
nCk pk
(1 − p)n−k
(k = 0, 1, 2, · · · , n)
です.
問 (1) サイコロを 4 回振るとき,1 の目が 2 回だけ出る確率を求めよ.
(2) サイコロを 9 回振るとき,1 の目が 2 回だけ,2 または 3 の目が 3 回だけ出る確率を求
めよ.
答 (1) 4 回中 2 回だけ 1 の目が出るのは 4C2 通りの場合があり,これらは排反で,各々の確率
は

1
6
2
5
6
2
である.ゆえに求める確率は
4C2

1
6
2
5
6
2
= 25
216
(2) 9 回中 1 の目が 2 回だけ,2 または 3 の目が 3 回だけ出るのは 9C2 · 7C3 通りの場合があ
る.これは次のように計算することもできる:1 の目が出ることを A,2 または 3 の目が出
ることを B,4 以上の目が出ることを C で表すと,AABBBCCCC の順列を考えればよく,
9!
2!3!4!
通り.これらは排反で,各々の確率は

1
6
2
2
6
3
3
6
4
だから,求める確率は
9!
2!3!4!

1
6
2
2
6
3
3
6
4
(計算略)
9 条件付き確率
9.1 条件付き確率 さいころを 1 つ投げるという試行において,何らかの事情で奇数の目が出
たと分かったときに,その目が素数である確率は 2/3 です (1,3,5 のうち素数は 2 個だ
から).これは単に素数の目が出る確率 3/6 とは異なります.このように前提として何か起
こったことが分かったときの確率を 条件付き確率 といいます.
一般に,ある試行における全事象を U とし,その部分集合として定義される 2 つの事象
A, B を考えます.ただし,A = ∅ としておきます.分かりやすいように U の根元事象は
全て等確率であると仮定します.このとき,A が起こったと分かったときの B が起こる確
率は,素朴に考えて
n(A ∩ B)
n(A)
であり,これを PA(B) という記号で表します.この式の分母分子を n(U) で割ると
PA(B) =
P (A ∩ B)
P (A)
— 1

が得られます.そこで 1
を「条件付き確率 PA(B) の定義」とすれば, 7.3 のように確率を
定義するときにも (等確率な根元事象を作ることができないときにも),同じように条件付き
確率を考えることができます.
9.2 確率の乗法定理 上の 1
を変形すると次が得られ,これを確率の乗法定理といいます.
P (A ∩ B) = P (A)PA(B)
9.3 事象の独立 2 つの事象が互いに影響するかどうかという問題を考えます.たとえば,52 枚
のトランプカードから 1 枚を引くとき,スペードのカードが出る事象を S,キングのカード
が出る事象を K とします.このとき K の確率は
P(K) = 4
52
= 1
13
であり,S が起こったときの K の確率は
PS(K) = 1
13
だから
P(K) = PS(K)
が成り立ち,S が起こることが K の確率に影響しないと考えられます.これに対して,
ジョーカーを 1 枚入れた 53 枚のトランプカードから 1 枚引く試行で上と同じ事象の確率を
考えてみると,K の確率は
P(K) = 4
53
であり,S が起こったときの K の確率は
PS(K) = 1
13
だから
P(K) = PS(K)
であり,今度は S が起こることが K の確率に影響していると考えられます.
一般に,空事象でない 2 つの事象 A, B に対して
P(B) = PA(B) — 1

が成り立つとき,B は A と 独立 であるといいます.反対に
P(B) = PA(B)
が成り立つとき,B は A と 従属 であるといいます. 1
は
1
 ⇐⇒ P(B) =
P(A ∩ B)
P(A)
⇐⇒ P(A ∩ B) = P(A)P(B)
より P(A ∩ B) = P(A)P(B) と同値であり,同様に考えて P(A) = PB(A) とも同値です.
したがって,3 つの等式
P(A ∩ B) = P(A)P(B), P(B) = PA(B), P(A) = PB(A)
は全て同値であり,結局,これらのうちどれか 1 つが成り立つことが A と B が独立である
ことの定義です.
問 1 (1) [条件付き確率]
ある鉄道の乗客のうち,全体の 40% が定期券利用者で,全体の 15% が学生の定期券利用者
である.定期券利用者の中から任意に 1 人を選び出すとき,その人が学生である確率を求
めよ.
(2) [確率の乗法定理]
白玉 5 個,赤玉 3 個が入っている袋から,玉を 1 個取り出し,それをもとに戻さないで,続
いてもう 1 個を取り出すとき,2 回とも赤玉である確率 p,2 回目が赤玉である確率 q を求
めよ.
答 (1) 定期券利用者である事象を A,学生である事象を B とする.
P(A) = 40
100
, P(A ∩ B) = 15
100
であり,求めるものは
PA(B) =
P(A ∩ B)
P(A)
=
15/100
40/100
= 3
8
(2) 1 回目が赤の事象を A,2 回目が赤の事象を B とする.
p = 3
8
· 2
7
= 3
28
であることはすぐに分かるが,この式は
P(A ∩ B) = P(A)PA(B)
となっていて,確率の乗法定理を用いている.
次に q = P(B) は直接には計算できないから*1
,1 回目が赤か白かで場合分けし,B を排反
な 2 つの事象 A ∩ B と A ∩ B に分ける.
P(A ∩ B) = P(A)PA(B) = 5
8
· 3
7
= 15
56
q = P(B) = P(A ∩ B) + P(A ∩ B) = 3
28
+ 15
56
= 3
8
*1 実は直接計算する方法もあって 14 で扱います.
問 2 [条件付き確率]
重さの異なる 4 個の玉が入っている袋から玉を 1 つ取り出し,もとに戻さずにもう 1 つ取り
出したところ,2 番目の玉の方が重かった.2 番目の玉が 4 個の中で最も重い確率を求めよ.
答 4 個の玉を軽い順に 1
, 2
, 3
, 4
とする.
1 番目より 2 番目が重い事象を A,2 番目が最も重い (すなわち 4
である) 事象を B とする.
2 回の玉の取り出し方は「順列」と見なしてよく,全てで 4 · 3 = 12 通り (同様に確から
しい).
このうち A であるものは
( 1
, 2
), ( 1
, 3
), ( 1
, 4
), ( 2
, 3
), ( 2
, 4
), ( 3
, 4
)
の 6 通り.A ∩ B は 3 通り.ただし,( 1
, 2
) は 1 回目が 1
で,2 回目が 2
であることを表
している.ゆえに求める確率は
PA(B) =
P(A ∩ B)
P(A)
=
3/12
6/12
= 1
2
あるいは (今回は等確率な根元事象が作れるから)
PA(B) =
n(A ∩ B)
n(A)
= 3
6
= 1
2
としてもよい.
問 3 [事象の独立]
大小 2 個のサイコロを同時に投げる試行において,大きい方のサイコロの目が 4 である事象
を A,大小 2 個のサイコロの目の和が 7 である事象を B,大小 2 個のサイコロの目の和が 9
である事象を C とする.
(1) A と B は独立か否か判定せよ.
(2) A と C は独立か否か判定せよ.
答 (1) 全事象 36 通りのうち,A は 6 通り,B は 6 通り,A ∪ B は 1 通りだから
P(A) = 6
36
, P(B) = 6
36
, P(A ∩ B) = 1
36
ゆえに
P(A ∩ B) = P(A)P(B)
であり, A と B は独立である .
(2) 全事象 36 通りのうち,C は 4 通り,A ∩ C は 1 通りだから
P(C) = 4
36
= 1
9
, P(A ∩ C) = 1
36
ゆえに
P(A ∩ C) = P(A)P(C)
であり, A と C は独立でない (従属である)
10 確率と数列
問 1 n を自然数とする.さいころを n 回投げるとき,1 の目が奇数回出る確率を求めよ.
答 求める確率を pn とする.pn を直接求めるのは難しいから,漸化式を作ることを考える.
pn+1 を pn を用いて表したい.さいころを n + 1 回投げて 1 の目が奇数回出る事象は,次の
2 つの排反な事象に分けられる.
(I) n 回目までで 1 の目が奇数回出て,n + 1 回目に 1 以外の目が出る
(II) n 回目までで 1 の目が偶数回出て,n + 1 回目に 1 の目が出る
ゆえに
pn+1 = pn · 5
6
+ (1 − pn) · 1
6
= 2
3
pn + 1
6
が成り立つ.あとはこの漸化式を解けばよい.p1 = 1/6 である.漸化式を変形すると
pn+1 − 1
2
= 2
3

pn − 1
2

ゆえに
pn − 1
2
=

p1 − 1
2

2
3
n−1
= − 1
3

2
3
n−1
= − 1
2

2
3
n
pn = 1
2
− 1
2

2
3
n
問 2 図のような正三角形 ABC の頂点で球を移動させるゲームを考える.最初に球を頂点 A に
おく.1 枚の硬貨を投げて,表が出たときは球を反時計回りに隣の頂点に移動し,裏が出た
ときは球を時計回りに隣の頂点に移動する.硬貨を n 回投げたあと,球が頂点 A にいる確
率を求めよ.ただし,n は自然数とする.
A
B C
答 n 回硬貨を投げたあと,球が頂点 A,B,C にいる確率をそれぞれ an, bn, cn とする.
n + 1 回硬貨を投げたあと球が頂点 A にいる事象は,次の 2 つの排反な事象に分けられる.
(I) n 回硬貨を投げたあと頂点 B にいて,n + 1 回目に裏が出る
(II) n 回硬貨を投げたあと頂点 C にいて,n + 1 回目に表が出る
ゆえに
an+1 = bn · 1
2
+ cn · 1
2
= 1
2
(bn + cn)
が成り立つ.an + bn + cn = 1 より bn + cn = 1 − an だから
an+1 = 1
2
(1 − an)
変形して
an+1 − 1
3
= − 1
2

an − 1
3

これと p1 = 0 より
an − 1
3
=

a1 − 1
3

− 1
2
n−1
= − 1
3

− 1
2
n−1
an = 1
3
− 1
3

− 1
2
n−1
典型問題
11 同じものを含む円順列
(1) AAAABBBC の円順列の総数を求めよ.
(2) AAAABBCC の円順列の総数を求めよ.
12 スターリング数
1, 2, · · · , n の番号がついたボールが 1 個ずつ合計 n 個ある.
(1) n 個のボールを 3 個の箱 A,B,C に入れる方法の総数を求めよ.ただし,n  3 とし,
どの箱にも少なくとも 1 個のボールを入れるものとする.
(2) n 個のボールを 4 個の区別のない箱に入れる方法の総数を求めよ.ただし,n  4 とし,
どの箱にも少なくとも 1 個のボールを入れるものとする.
13 ボールの分配
n を自然数とし,n 個のボールを 3 つの箱に分けて入れる問題を考える.ただし,1 個の
ボールも入らない箱があってもよいものとする.
(1) 1 から n までの異なる番号のついた n 個のボールを,A,B,C と区別された 3 つの箱
に入れる場合,その入れ方は全部で何通りあるか.
(2) 互いに区別のない n 個のボールを,A,B,C と区別された 3 つの箱に入れる場合,そ
の入れ方は全部で何通りあるか.
(3) 1 から n までの異なる番号のついた n 個のボールを,区別のない 3 つの箱に入れる場
合,その入れ方は全部で何通りあるか.
(4) m を自然数とし,n = 6m であるとする.互いに区別のない n 個のボールを,区別のな
い 3 つの箱に入れる場合,その入れ方は全部で何通りあるか.m を用いて表せ.
14 くじ引きの確率
10 本のくじの中に 3 本の当たりくじが入っている.10 人が順にくじを 1 本ずつ引いてい
く.ただし引いたくじは元に戻さない.
(1) 7 番目の人が当たりを引く確率を求めよ.
(2) 当たる確率が最大であるのは何人目か.
(3) 7 番目の人が 2 本目の当たりくじを引く確率を求めよ.
(4) 2 本目の当たりくじを引く確率が最大であるのは何人目か.
15 余事象の利用
サイコロを n 回投げるとき,次の各事象の確率を求めよ.
(1) 1 の目が少なくとも 1 回出る.
(2) 1 の目も 2 の目も少なくとも 1 回出る.
(3) 1,2,3 の目がそれぞれ少なくとも 1 回出る.
16 最大値・最小値の確率
さいころを n 回投げるとき,次の各事象の起こる確率を求めよ.
(1) 出る目の最大値が 5 である.
(2) 出る目の最大値が 5 で,最小値が 2 である.
17 さいころの目の積
さいころを n 回振り,第 1 回目から第 n 回目までに出たさいころの目の数 n 個の積を Xn
とする.
(1) Xn が 5 で割り切れる確率を求めよ.
(2) Xn が 4 で割り切れる確率を求めよ.
(3) Xn が 20 で割り切れる確率を求めよ.
18 ランダムウォーク
x 軸の原点から出発して,次の規則にしたがって点を移動する.硬貨を 2 枚投げて,2 枚と
も表ならば正方向へ 1 進み,そうでないならば負方向へ 1 進む.
(1) この試行を 6 回繰り返したとき,点 2 にいる確率を求めよ.
(2) この試行を 6 回繰り返したとき,点 3 にいる確率を求めよ.
(3) この試行を n 回繰り返したとき,点 k にいる確率を求めよ.ただし,n は自然数,k は
整数とする.
19 反復試行の確率の最大値
袋の中に赤球が 3 個,白球が 2 個入っている.この袋から無作為に 1 個の球を取り出しては
元に戻すという試行を 25 回繰り返す.25 回中ちょうど n 回だけ赤球が取り出される確率
を pn とする.pn が最大となる n の値を求めよ.
20 状態の推移
3 人が次の [I],[II] に従って勝負を行う.
[I] 3 人で勝負をするとき,引き分けで 3 人が残る確率が
1
6
,2 人が勝つ確率が
1
2
,1 人が勝
つ確率が
1
3
であるとする.引き分けで 3 人が残った場合は,またその 3 人で同じ勝負を行
う.2 人が勝った場合は,その 2 人で勝負を行う.1 人が勝った場合はそこで終わりにする.
[II] 2 人で勝負をするとき,引き分けで 2 人が残る確率が
1
3
,1 人が勝つ確率が
2
3
である
とする.引き分けで 2 人が残った場合は,またその 2 人で同じ勝負を行う.1 人が勝った場
合はそこで終わりにする.
1 回目は 3 人で勝負をする.このとき次の問いに答えよ.
(1) ちょうど 3 回目で勝負が終わる確率を求めよ.
(2) ちょうど n 回目で勝負が終わる確率を求めよ.ただし n は自然数とする.
21 条件付き確率
A,B,C の 3 人はそれぞれ確率
1
2
,
1
3
,
3
4
で真実を言う.1 枚の硬貨を投げ,A と B は
表が出たと言い,C は裏が出たと言ったときの,表が出ている確率を求めよ.ただし,硬貨
は表と裏が等確率で出るものとする.
22 原因の確率
ある病原菌の検査薬は,病原菌に感染しているが誤って陰性と判断する確率が 1%,感染し
ていないが誤って陽性と判断する確率が 2% である.全体の 1% がこの病原菌に感染してる
集団から 1 つの個体を取り出して検査を行ったところ陽性と判断された.この個体が実際に
は病原菌に感染していない確率を求めよ.
23 確率漸化式
2 つの袋 A,B と赤玉,白玉それぞれ 3 個ずつが用意されている.各々の袋の中に玉が 3 個
ずつ入っている状態に対して次の操作を考える.
[操作] 各々の袋から玉を同時に無作為に 1 個ずつ取り出した後,袋 A から取り出した玉を
袋 B の中に,袋 B から取り出した玉を袋 A の中に入れる.
いま,袋 A の中に赤玉 2 個と白玉 1 個が,袋 B の中に赤玉 1 個と白玉 2 個が入っている状
態から始め,上記の操作を繰り返し行う.また n を自然数とし,n 回目の操作を終えたと
きに袋 A の中に赤玉が 3 個入っている確率を an,2 個だけ入っている確率を bn,1 個だけ
入っている確率を cn とする.
(1) a1, b1, c1 を求めよ.
(2) pn = bn + cn と定義する.pn+1 を pn を用いて表し,pn を求めよ.
(3) En = 3an + 2bn + cn と定義する.En+1 を En を用いて表し,En を求めよ.
有名問題
24 階段ののぼり方
10 段の階段を次のようにのぼるとき,のぼり方は何通りあるか.
(1) 一歩で 1 段または 2 段のぼることができるとき.
(2) 一歩で 1 段または 2 段または 3 段のぼることができるとき.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
答 (1) n 段ののぼり方の総数を an とする.
n + 2 段をのぼるとき,最初の一歩が 1 段なら an+1 通り,最初の一歩が 2 段なら an 通り
ののぼり方があるから
an+2 = an+1 + an
a1 = 1,a2 = 2 より
a3 = 3, a4 = 5, a5 = 8, a6 = 13, a7 = 21, a8 = 34, a9 = 55, a10 = 89
答は 89 通り
(2) n 段ののぼり方の総数を bn とする.(1) と同様にして
bn+3 = bn+2 + bn+1 + bn
b1 = 1,b2 = 2,b3 = 4 より
b4 = 7, b5 = 13, b6 = 24, b7 = 44, b8 = 81, b9 = 149, b10 = 274
答は 274 通り
25 破産の確率
A,B の 2 人が合計 10 枚のコインを持っている.1 回のゲームで勝者が敗者から 1 枚のコ
インをもらうことを,どちらかのコインがなくなる (破産する) まで繰り返す.各ゲームに
おいて A,B が勝つ確率はそれぞれ
1
2
である.A が n 枚のコインを持つところから始め
て,B が破産する確率を pn (0  n  10) とする.ただし,p0 = 0,p10 = 1 とする.
(1) 1  n  9 のとき,pn を pn+1 と pn−1 を用いて表せ.
(2) pn を求めよ.
答 (1) 1  n  9 のとき,A が n 枚から始めて
(I) 1 回目に A が勝って B が破産する確率は
1
2
pn+1
(II) 1 回目に B が勝って B が破産する確率は
1
2
pn−1
ゆえに
pn = 1
2
pn+1 + 1
2
pn−1 — 1

(2) 1
より
pn+1 = 2pn − pn−1
pn+1 − pn = pn − pn−1
ゆえに {pn − pn−1} (n = 1, 2, · · · , 10) は定数数列だから,{pn} (n = 0, 1, · · · , 10) は
等差数列であり,公差を d とすると
pn = p0 + dn = dn
p10 = 10d = 1 ∴ d = 1
10
pn = n
10
26 完全順列
n は自然数とする.1, 2, · · · , n を並べかえてできる順列のうち,どの数も元の位置に来な
いようなものを完全順列といい,その総数を dn とする.
(1) dn+2 = (n + 1)(dn+1 + dn) が成り立つことを示せ.
(2) pn =
dn
n !
とおく.pn =
n

k=0
(−1)k
k !
であることを示せ.
(3) lim
n→∞
pn を求めよ.ただし実数 x に対し ex
=
∞

n=0
xn
n !
であることを用いてよい.
答 (1) 1, 2, · · · , n + 2 の完全順列を a1, a2, · · · , an+2 とかく.このうち
(I) a1 = 2,a2 = 1 であるものは dn 通り.
(II) a1 = 2,a2 = 1 であるものは dn+1 通り.
(a2, a3, · · · , an+2 が 1, 3, · · · , n + 2 の完全順列だから)
ゆえに a1 = 2 であるものは dn + dn+1 通り.
a1 = 3 であるものも,a3 = 1 と a3 = 1 で場合分けして考えれば,a1 = 2 のときと同様で
あり,dn + dn+1 通り.a1 = 4, · · · , n + 2 についても同様.
よって,dn+2 = (n + 1)(dn+1 + dn) である.[証明終]
(2) (1) の等式の両辺を (n + 2) ! で割ると
dn+2
(n + 2) !
= n + 1
n + 2
·
dn
(n + 1) !
+ 1
n + 2
·
dn
n !
pn+2 = n + 1
n + 2
pn+1 + 1
n + 2
pn — 1

d1 = 0,d2 = 1 より
p1 = 0, p2 = 1
2
— 2

1
, 2
により定義される数列 {pn} について
pn =
n

k=0
(−1)k
k !
— 3

であることを,数学的帰納法で示す.
(I) 2
より n = 1, 2 のとき 3
は成り立つ.
(II) n = m, m + 1 のとき 3
が成り立つと仮定する.このとき 1
を用いると
pm+2 = m + 1
m + 2
pm+1 + 1
m + 2
pm
= m + 1
m + 2
m+1

k=0
(−1)k
k !
+ 1
m + 2
m

k=0
(−1)k
k !
=

m + 1
m + 2
+ 1
m + 2
 m

k=0
(−1)k
k !
+ m + 1
m + 2
·
(−1)m+1
(m + 1) !
=
m

k=0
(−1)k
k !
+
(m + 2) − 1
m + 2
·
(−1)m+1
(m + 1) !
=
m

k=0
(−1)k
k !
+
(−1)m+1
(m + 1) !
+
(−1)m+2
(m + 2) !
=
m+2

k=0
(−1)k
k !
となり 3
は n = m + 2 のときも成り立つ.[証明終]
(3) lim
n→∞
pn =
∞

k=0
(−1)k
k !
= e−1
= 1
e
27 ポリアの壺
最初に壺の中に a 個の赤玉と b 個の白玉が入っている.ただし a,b は自然数とする.
1 回の試行につき,壺から 1 個の玉を取り出して,取り出した玉と同じ色の玉を新たに 1 つ
壺に入れて,取り出した玉を壺の中に戻す.
n 回目の試行で赤玉が取り出される確率 pn を求めよ.
答 n = 1, 2 などを調べてみると,全ての n に対し pn = a
a + b
と推測できる.
赤玉 x 個,白玉 y 個から始めて,n 回目の試行で赤玉が取り出される確率を f(x, y, n) と
かく.すべての自然数 x,y,n に対し
f(x, y, n) = x
x + y
であることを,n についての数学的帰納法で示す.
n = 1 のとき成り立つことは明らか.
n = m のとき成り立つと仮定する.試行を m + 1 回行うとき,1 回目が赤か白かで場合分
けすることにより
f(x, y, m + 1) = x
x + y
· f(x + 1, y, m) +
y
x + y
· f(x, y + 1, m) — 1

が成り立つ.帰納法の仮定より
f(x + 1, y, m) = x + 1
(x + 1) + y
, f(x, y + 1, m) = x
x + (y + 1)
これを 1
に代入して
f(x, y, m + 1) = x
x + y
· x + 1
x + y + 1
+
y
x + y
· x
x + y + 1
=
x(x + y + 1)
(x + y)(x + y + 1)
= x
x + y
となり,n = m + 1 のときも成り立つ.[証明終]
本問の答は,pn = a
a + b
入試問題
28 (1) [2006 京都大文系]
さいころを n 個同時に投げるとき,出た目の数の和が n + 2 になる確率を求めよ.
(2) [2006 京都大理系]
さいころを n 個同時に投げるとき,出た目の数の和が n + 3 になる確率を求めよ.
答 (1) n 個のさいころの目を a1, a2, · · · , an とする.
a1 + a2 + · · · + an = n + 2 (各 ak は 1 以上 6 以下の整数)
を満たす組 (a1, a2, · · · , an) の個数は, 4 問 5 (2) と同様にして
n+1C2 =
(n + 1)n
2
ゆえに求める確率は
n+1C2
6n =
(n + 1)n
2 · 6n
[注] 2 の目が 2 個で残りは全て 1 の目,3 の目が 1 個で残りは全て 1 の目,と場合分けして
解くこともできる.
(2) (1) と同様にして
n+2C3
6n =
(n + 2)(n + 1)n
6n+1
29 [2002 東北大]
図のような格子状の道路がある.左下の A 地点から出発し,サイコロを繰り返し振り,次
の規則にしたがって進むものとする.1 の目が出たら右に 2 区画,2 の目が出たら右に 1 区
画,3 の目が出たら上に 1 区画進み,その他の場合はそのまま動かない.ただし,右端で 1
または 2 の目が出たとき,あるいは上端で 3 が出たときは,動かない.また,右端の 1 区画
手前で 1 の目が出たときは,右端まで進んで止まる.
n を 8 以上の自然数とする.A 地点から出発し,サイコロを n 回振るとき,ちょうど 6 回
目に,B 地点以外の地点から進んで B 地点で止まり,n 回目までに C 地点に到達する確率
を求めよ.ただし,サイコロはどの目が出るのも,同様に確からしいものとする.
A
B
C
答 1,2,3,それ以外の目が出ることをそれぞれ (右 2),(右 1),(上 1),(不動) とかく.
ちょうど 6 回目に,B 以外の点から進んで B で止まる確率を p とする.6 日目に B にいた
とき,n 回目までに C に到達する確率 (条件付き確率) を q とする.
(p について) 次の 3 つの場合がある.
(I) 5 回目までに B の 2 区画左に来て,6 回目に B にいく.
(II) 5 回目までに B の 1 区画左に来て,6 回目に B にいく.
(III) 5 回目までに B の 1 区画下に来て,6 回目に B にいく.
(I) 5 回目までに (上 1)2 回,(不動)3 回で,6 回目が (右 2) だから,確率は
5C2

1
6
2
1
2
3
· 1
6
= 5
63
· 22 — 1

(II) 5 回目までに (上 1)2 回,(右 1)1 回,(不動)2 回で,6 回目が (右 1) だから,確率は
5 !
2 ! 2 !

1
6
2
1
6

1
2
2
· 1
6
= 5
63
· 22 — 2

(III) 5 回目までに (上 1)1 回,(右 2)1 回,(不動)3 回,または (上 1)1 回,(右 1)2 回,
(不動)2 回で,6 回目が (上 1) だから

5 !
3 !
1
6
1
6

1
2
3
+ 5 !
2 ! 2 !
1
6

1
6
2
1
2
2
· 1
6
= 15
63
· 22 — 3

以上より
p = 1
 + 2
 + 3
 = 25
63
· 22 = 25
864
(q について) 1 または 2 の目が出ることを (右) とかく.
7 回目から n 回目までの n − 6 回中,(右) が少なくとも 1 回,(上 1) が少なくとも 1 回だか
ら,15 (2) と同様にして
q = 1 −

2
3
n−6
+

5
6
n−6
−

1
2
n−6
求める確率は
pq = 25
864

1 −

2
3
n−6
−

5
6
n−6
+

1
2
n−6
30 [2012 東京大]
図のように,正三角形を 9 つの部屋に辺で区切り,部屋 P,Q を定める.1 つの球が部屋 P
を出発し,1 秒ごとに,そのまま部屋にとどまることなく,辺を共有する隣の部屋に等確率
で移動する.球が n 秒後に部屋 Q にある確率を求めよ.
P
Q
答 奇数秒後は上向き三角形の部屋にいて,偶数秒後は下向き三角形の部屋にいる.ゆえに n が
奇数のとき,n 秒後に Q にいる確率は 0 である.
以下では n が偶数のときを考え,n = 2k とおく.下向き三角形の部屋は 3 つあり,P,Q
以外の部屋を R とする.
2k 秒後に部屋 P,Q,R にいる確率を ak,bk,ck とする.対称性より bk = ck である.ま
た ak + bk + ck = 1 だから
bk = ck = 1
2
(1 − ak)
ak の漸化式を作る.
• 2k 秒後に P にいたときに,2(k + 1) 秒後に P にいる確率 (条件付き確率) は
1
3
· 1 + 1
3
· 1
2
+ 1
3
· 1
2
= 2
3
• 2k 秒後に Q または R にいたときに,2(k + 1) 秒後に P にいる確率 (条件付き確率) は
1
3
· 1
2
= 1
6
ゆえに
ak+1 = ak · 2
3
+ (1 − ak) · 1
6
= 1
2
ak + 1
6
これを初期条件 a0 = 1 の下で解くと
ak = 1
3
+ 2
3

1
2
k
bk = 1
2
(1 − ak) = 1
3
− 1
3

1
2
k
= 1
3

1 −

1
2
n
2

以上より求める確率は
⎧
⎪
⎨
⎪
⎩
0 (n は奇数)
1
3

1 −

1
2
n
2

(n は偶数)

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『上級演習』確率

  • 1. Fundamental Lectures 1 順列・組合せ 2 円順列 3 組分け 4 重複組合せ 5 1 対 1 対応 6 確率の定義 7 確率の基本性質 8 反復試行の確率 9 条件付き確率 10 確率と数列 典型問題 11 同じものを含む円順列 12 スターリング数 13 ボールの分配 14 くじ引きの確率 15 余事象の利用 16 最大値・最小値の確率 17 さいころの目の積 18 ランダムウォーク 19 反復試行の確率の最大値 20 状態の推移 21 条件付き確率 22 原因の確率 23 確率漸化式 有名問題 24 階段ののぼり方 25 破産の確率 26 完全順列 27 ポリアの壺 入試問題 28 2006 京都大 29 2002 東北大 30 2012 東京大
  • 2. Fundamental Lectures 1 順列・組合せ 1.1 順列 いくつかのものを順序をつけて 1 列に並べる配列を順列 (permutation) といいます. 異なる n 個のものから,異なる k 個 (k n) を取り出して並べる順列の総数を nPk で表し, 次が成り立ちます. nPk = n(n − 1)(n − 2) · · · (n − k + 1) = n! (n − k)! なお,0! は 0! = 1 と定義され,上の公式は k = n のときも成り立ちます. たとえば ABCDE から 3 個を取り出して並べる順列の総数は 5P3 = 5 · 4 · 3 = 60 です. 1.2 組合せ いくつかのものを順序を考えないで 1 組にしたものを組合せ (combination) とい います.異なる n 個のものから,異なる k 個 (k n) を取る組合せの総数を nCk で表し, 次が成り立ちます. nCk = nPk k! = n! k!(n − k)! — 1 たとえば ABCDE から 3 個を取る組合せの総数は 5C3 = 5 · 4 · 3 3 · 2 · 1 = 10 です. 1.3 同じものを含む順列の公式 例として AABBBCCCC の順列の総数 x を考えます. [方法 1] 1 2 3 4 5 6 7 8 9 と 9 個の場所を用意しておいて,A,B,C の順に配置する と考えると,2 つの A の配置の仕方が 9C2 通り,次に 3 つの B の配置の仕方が 7C3 通り, 最後に 4 つの C の配置の仕方は 1 通りだから,x = 9C2 · 7C3 · 1 = 1260. [方法 2] 異なる 9 個のもの A1A2B1B2B3C1C2C3C4 の順列の総数は 9!.これをまず AABBBCCCC を並べて,そのあとで 2 つの A のところに A1A2 を並べる方法が 2! 通り,3 つの B のとこ ろに B1B2B3 を並べる方法が 3! 通り,4 つの C のところに C1C2C3C4 を並べる方法が 4! 通りと考えると,9! = x · 2! · 3! · 4!.ゆえに x = 9! 2!3!4! = 1260. — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — — 上の [方法 2] を一般化すると次の公式が得られます. n 個の中に同じものが p 個,q 個,· · · と含まれるとき,その順列の総数は n ! p ! q ! · · · 1.4 二項係数の公式 記号 nCk は自然数 n と 0 k n の整数 k に対して定義されます.nC0 は組合せとしての意味は分かりにくいですが,便宜的に nC0 = 1 と定義します.nCk は二 項展開の係数として現れるので,二項係数といいます.なお,二項展開は『第 1 章 受験数 学の基本』の section1 で扱っています. 二項係数について,次の公式が成り立ちます.ただし,n, k の範囲はそれぞれ両辺の二項 係数が定義される範囲でとるものとします. [1] nCk = nCn−k [2] nCk = n−1Ck−1 + n−1Ck [3] k nCk = n n−1Ck−1 これらは 1.2 の 1 を用いると簡単に証明できます. [証明] [1] nCn−k = n! (n − k)!k! = nCk [2] n−1Ck−1 + n−1Ck = (n − 1)! (k − 1)!(n − k)! + (n − 1)! k!(n − 1 − k)! = (n − 1)! (k − 1)!(n − 1 − k)! 1 n − k + 1 k = (n − 1)! (k − 1)!(n − 1 − k)! · n k(n − k) = n! k!(n − k!) = nCk [3] nCk = n! k!(n − k)! = n k · (n − 1)! (k − 1)!(n − k)! = n k · n−1Ck−1 [証明終] また,組合せの意味から解釈することもできて,たとえば次のようになります. [1] n 人を k 人の A 組と n − k 人の B 組に分けるとき,先に A 組の作り方を考えれば nCk 通り,B 組の作り方を考えれば nCn−k 通りだから,nCk = nCn−k である. [2] n 人から k 人を選ぶとき,特定の 1 人が選ばれる場合,残りの n − 1 人から k − 1 人を 選ぶから n−1Ck−1 通り,特定の 1 人が選ばれない場合,残りの n − 1 人から k 人を選ぶか ら,n−1Ck 通り.ゆえに,nCk = n−1Ck−1 + n−1Ck である. [3] n 人から k 人の組を作り,さらにその k 人の中で 1 人の代表を決める方法は,nCk · k 通 り.同じものを,先に代表を 1 人決めて,そのあとで残りの k − 1 人を選んで組を作ると考 えると,n · n−1Ck−1 通り.ゆえに,k nCk = n n−1Ck−1 である.
  • 3. 問 男子 4 人と女子 3 人を横 1 列に並べる.次の条件を満たす並べ方の総数を求めよ. (1) 両端が男子 (2) 左から 4 番目が女子 (3) 女子が隣り合わない (4) 特定の男女 2 人が隣り合う (5) 女子のうち 2 人だけが隣り合う (6) 男子は左から名前の順 答 男子 4 人を ABCD,女子 3 人を PQR とする. (1) 両端の男子の決め方が 4 · 3 通り.そのあと,残りの 5 人の並べ方が 5! 通り.ゆえに 4 · 3 · 5! = 1440 通り (2) まず左から 4 番目の女子の決め方が 3 通り.そのあと,残りの 6 人の並べ方が 6! 通り. ゆえに 3 · 6! = 2160 通り (3) まず男子 4 人を並べる.並べ方が 4! 通り.そのあと,男子のすき間 (両端含む) に女子 を配置する方法が 5 · 4 · 3 通り.ゆえに 4! · 5 · 4 · 3 = 1440 通り (4) 特定の男女 2 人を AP とする.AP の並べ方が 2 通り.これをカタマリで 1 つのものと 見る.カタマリと残りの 5 人の並べ方が 6! 通り.ゆえに 2 · 6! = 1440 通り (5) 女子 3 人が隣り合う並べ方は,(4) と同様にして,3! · 5! = 720 通り.全体 7! = 5040 通 りから,(3) と 720 通りを除くと 5040 − (1440 + 720) = 2880 通り [別解] PQ の 2 人だけが隣り合う並べ方は,PQ のカタマリを作り,先に男子 4 人を並べ, そのすき間 (両端含む) にカタマリと R を配置すると考えて,2 · 4! · 5 · 4 = 960 通り. QR,RP の 2 人だけが隣り合うものも同様だから,960 · 3 = 2880 通り. (6) まず KKKKPQR を並べて,そのあと KKKK に左から ABCD を配置すると考えて 7! 4! · 1 = 210 通り 2 円順列 いくつかのものを円形に並べる配列を円順列といいます.円順列の総数を求める問題では, 特に断りがなくても,回転して同じなる並び方は区別しません. 例として ABCDE の円順列を考えます. [方法 1] 重複度で割る まず ABCDE の順列を作り, そのまま反時計回りに並べて円形を作ると, たとえば ABCDE, BCDEA,CDEAB,DEABC,EABCD は同じものになる.このように 5 通りずつ同じも のができるから,総数は 5! 5 = 4! = 24. [方法 2] 1 つを固定する A を固定し,残りの 4 つを A の隣から反時計回りに並べると考えて,総数は 4! = 24. 一般に,n 個の異なるものの円順列の総数は (n − 1)! になりますが,この公式は覚えてもあ まり役に立ちません.むしろ上記の考え方を理解しておくことが重要で,本書では主に [方 法 2] を用います.この数え方で,数えもれがないこと,および重複がないことに注意しま しょう. 問 1 ABCDEFGH の 8 人がいる. (1) 8 人を円形に並べる方法はすべてで何通りか. (2) 8 人から 5 人を選び,8 人掛けの円形のテーブルにその 5 人を,空席を 3 つ設けて座ら せる方法はすべてで何通りか. (3) 8 人を正方形のテーブルの各辺に 2 人ずつ座らせる方法はすべてで何通りか. 答 (1) A を固定し,残りの 7 人を A の隣から反時計回りに並べると考えて 7! = 5040 通り (2) 5 人の選び方は 8C5 通り.この 5 人を仮に ABCDE とし,ABCDEKKK の円順列を考 える.A を固定し,残りの BCDEKKK を A の隣から反時計回りに並べる方法は 7!/3! 通 り.ゆえに 8C5 · 7! 3! = 56 · 840 = 47040 通り (3) A を固定する位置が 2 通りあり,そのそれぞれについて残りの 7 人を A の隣から反時 計回りに並べる方法が 7! 通りだから 2 · 7! = 10080 通り
  • 4. 問 2 立方体の各面に色を塗る.ただし隣り合う面は異なる色で塗るものとし,立方体を転がして 一致するような塗り方は区別しない.次のそれぞれについて,塗り方の総数を求めよ. (1) 6 色 ABCDEF をすべて使う. (2) 5 色 ABCDE をすべて使う. (3) 4 色 ABCD をすべて使う. 答 (1) A を固定して考える.A の向かいの面の塗り方は 5 通り.これを仮に B とすると,残り の面は CDEF の円順列で 3! 通り.ゆえに 5 · 3! = 30 通り (2) いずれか 1 色を 2 回使うことになる.2 回使う色の選び方が 5 通り.これを仮に A とす る.立方体の 6 個の面を AABCDE で塗る.2 つの A は隣り合わないことに注意する. B を固定して考える.B の向かいの面の塗り方は CDE の 3 通り.これを仮に C とすると, 残りの面は AADE の円順列で 1 通り.以上より 5 · 3 · 1 = 15 通り (3) いずれか 2 色を 2 回ずつ使うことになる (1 色を 3 回使うことはできないことに注意). 2 回使う 2 色の選び方は 4C2 通り.これを仮に AB とする.立方体の 6 個の面を AABBCD で塗る. C を固定して考える.C の向かいの面の塗り方は D の 1 通り.残りの面の塗り方は AABB の円順列で 1 通り.以上より 4C2 · 1 · 1 = 6 通り 3 組分け 例として 9 人 ABCDEFGHI を 3 人ずつの 3 組に分けることを考えます.ただし組には名 前がなく,区別がないものとします. もし組に区別があるとすれば,それを α 組,β 組,γ 組として,α 組に入る 3 人の選び方は 9C3 通り,次に β 組に入る 3 人の選び方は 6C3 通り,最後に γ 組に入る 3 人の選び方は 1 通りだから,総数は 9C3 · 6C3 · 1 です. この中には α β γ ABC DEF GHI ABC GHI DEF のように組に区別がなければ同じであるものが含まれます. そこで,3 人ずつの区別のない 3 組に分ける方法を x 通りとし,x 通りのそれぞれについて, 組に α, β, γ の名前を付ける方法が 3! 通りずつあることを利用すると,次のようにして x を求めることができます. x · 3! = 9C3 · 6C3 · 1 ∴ x = 9C3 · 6C3 · 1 ÷ 3! = 280 このように「組分け」では「同じ人数の組には区別がない」ことが要点で,まず区別したと きの総数を考え,それを重複度で割ることで総数を求めることができます. 問 8 人 ABCDEFGH を次のように組分けする方法はすべてで何通りあるか. (1) 4 人,4 人の 2 組 (2) 2 人,2 人,2 人,2 人の 4 組 (3) 2 人,3 人,3 人の 3 組 答 (1) 8C4 ÷ 2 = 35 通り (2) 8C2 · 6C2 · 4C2 ÷ 4! = 105 通り (3) 8C2 · 6C3 ÷ 2 = 280 通り
  • 5. 4 重複組合せ 例として次の問題を考えます. [問題 1] ボールの分配 10 個の区別のないボールを 3 人 A,B,C に分配する方法の総数を求めよ.ただし 1 個も もらわない人がいてもよいとする. ボールを○で表し,3 人に分けるために 2 個のしきり | を用意します.10 個の○と 2 個の | の順列を作り,しきりで分けられたボールを左から順に A,B,C のものとすれば,題意の 分配の仕方が過不足なくできます. ○○○○ | ○○○ | ○○○ ゆえに 12C2 = 66 通りが求めるものです. [問題 2] 方程式の整数解 A,B,C のボールの個数をそれぞれ a, b, c とすると,[問題 1] は a + b + c = 10, a 0, b 0, c 0 を満たす整数 a, b, c の組の総数を求めることと同じです. [問題 3] 重複組合せ さらに (a, b, c) = (4, 3, 3) を AAAABBBCCC などとかくことにすれば,[問題 2] は A, B,C の 3 個から重複を許して 10 個を取る組合せの総数を求めることと同じです. 一般に n 個の異なるものから重複を許して k 個 (k n でもよい) を取る組合せの総数は,k 個の○と n − 1 個の | の順列の総数に等しく,n+k−1Ck です.これを記号で nHk と表すこ とがありますが,本書ではこの記号は用いません. 問 1 12 個のボールを 4 人に分ける方法の総数を,次の各場合について求めよ.ただしボールに 区別はないものとする. (1) 1 個ももらわない人がいてもよい (2) 全員最低 1 個はもらう 答 (1) 12 個の○と 3 個のしきり | の順列を考え,15C3 = 455 通り (2) 初めに 4 人にボールを 1 個ずつあげておいて,残りの 8 個を (1) と同様に分ければよい. 8 個の○と 3 個のしきり | の順列を考え,11C3 = 165 通り 問 2 ABCDEFGH から重複を許して 5 個を選ぶ組合せの総数を求めよ. 答 5 個のボールを ABCDEFGH の 8 人に分配すると考える.5 個の○と 7 個のしきり | の順 列を考え,12C5 = 792 通り 問 3 (a + b + c)10 を展開してできる同類項は何種類あるか. 答 abc から重複を許して 10 個を選ぶ組合せを作ればよいが,10 個のボールを abc の 3 人に分 配すると考える.10 個の○と 2 個のしきり | の順列を考え,12C2 = 66 通り 問 4 3 個のさいころを投げるとき,次の各場合について目の出方の総数を求めよ. (1) さいころに区別がある. (2) さいころに区別がない. 答 (1) サイコロを ABC とすると,A が 6 通り,そのそれぞれに対して B が 6 通り,そのそれ ぞれに対して C が 6 通りだから,63 = 216 通り (2) 1, 2, 3, 4, 5, 6 から重複を許して 3 個を選ぶ組合せを作ればよい.3 個のボールを 6 人 に分配すると考えて,3 個の○と 5 個のしきり | の順列で,8C3 = 56 通り [注] 1, 2, 3, 4, 5, 6 から重複を許して 3 個を選ぶ組合せを,素朴な方法で求めると: 3 個が全て異なるときは 6C3 = 20 通り,3 個のうち 2 個だけ同じときは 6 · 5 = 30 通り,3 個が全て同じときは 6 通り,合わせて 56 通り. 問 5 次の条件を満たす整数 a, b, c の組の総数を求めよ. (1) a + b + c = 10, a 0, b 0, c 0 (2) a + b + c = 10, a 1, b 1, c 1 (3) a + b + c 10, a 0, b 0, c 0 答 (1) 10 個のボールを 3 人に分配すると考えて,10 個の○と 2 個のしきり | の順列で, 12C2 = 66 通り (2) 10 個のボールを 3 人に最低 1 個ずつ分配すると考える.初めに 3 人に 1 個ずつあげ ておいて,残りの 7 個を自由に分配すればよいから,7 個の○と 2 個のしきり | の順列で, 9C2 = 36 通り (3) 10 個のボールを 3 人に余りが出てもよいように分配すると考える.これは 10 個 のボールを 4 人に分配することと同じだから,10 個の○と 3 個のしきり | の順列で, 13C3 = 286 通り
  • 6. 5 1 対 1 対応 2 つの有限集合 A, B の要素の間に 1 対 1 の対応を作ることができるとき,n(A) = n(B) が成り立ちます.ただし n(A) は A の要素の個数です. A B このことは場合の数の問題でよく用いられます. [例 1] 49 チームでトーナメント戦を行う.引き分けがないとすれば,優勝が決まるまでに何 試合あるか. 各試合にそこで負けたチームを対応させると,これは全ての試合と優勝校を除く全ての参加 チームの間の 1 対 1 対応になります.ゆえに,(試合数) = (チーム数) − 1 = 48 です. [例 2] 図のような道があるとき,A から B に行く最短経路は何通りあるか. A B 経路を矢印の順列と対応させることを考えます. たとえば,図の太線の経路は ↑→→→↑↑→ という順列に対応するとします. これは 1 対 1 の対応になるから,(経路数) = (順列の総数) = 7C3 = 35 です. 問 1 下図のように縦に 8 本,横に 6 本の線を引いた格子状の図形を考える. (1) この図形の線を使ってできる長方形の総数を求めよ. (2) この図形の線を使ってできる正方形の総数を求めよ. (3) この図形の頂点 (縦線と横線の交点) を結んでできる正方形の総数を求めよ.たとえば, 図の太線のような正方形も含めて考える. 答 (1) 縦線 8 本から 2 本を選び,横線 6 本から 2 本を選ぶと長方形が 1 つできるから 8C2 · 6C2 = 28 · 15 = 420 個 (2) 正方形の大きさで分類して考える.隣り合う 2 本の平行線の幅を 1 とする. 1 辺が 1 の正方形は,5 × 7 = 35 個 1 辺が 2 の正方形は,4 × 6 = 24 個 1 辺が 3 の正方形は,3 × 5 = 15 個 1 辺が 4 の正方形は,2 × 4 = 8 個 1 辺が 5 の正方形は,1 × 3 = 3 個 合わせて 35 + 24 + 15 + 8 + 3 = 85 個 (3) (2) で考えた 1 辺が n の正方形に,自分自身も含めて n 個の正方形を内接させることが できるから 35 · 1 + 24 · 2 + 15 · 3 + 8 · 4 + 3 · 5 = 175 個
  • 7. 問 2 図のような道を考える. (1) A から B に行く最短経路のうち,C も D も通らないものの総数を求めよ. (2) 右または左または上に進むことができるとき,A から B に行く経路の総数を求めよ.た だし,同じ道を後戻りすることはできないものとする. B A C D 答 (1) A から B に行く経路は 13C5 = 1287 通り. このうち C を通る経路は 3C1 · 10C3 = 360 通り,D を通る経路は 10C4 · 3C1 = 630 通り, C も D も通る経路は 3C1 · 7C2 · 3C1 = 189 通り.ゆえに,C または D を通る経路は 360 + 630 − 189 = 801 通り C も D も通らない経路は 1287 − 801 = 486 通り (2) 上に進む位置だけ考えればよいから 95 = 59049 通り 問 3 次の条件を満たす整数 a, b, c の組の総数を求めよ. (1) 1 a b c 10 (2) 1 a b c 10 (3) 1 a, a + 2 b, b + 2 c, c 10 答 (1) 1, 2, · · · , 10 の中から 3 個を選んで小さい順に a, b, c とすればよいから 10C3 = 120 通り (2) 整数 a, b に対して a b ⇐⇒ a b + 1 であることに注意すると,整数 a, b, c に対して 1 a b c 10 ⇐⇒ 1 a b + 1 c + 2 12 である.この条件を満たす組 (a, b + 1, c + 2) の作り方は,(1) と同様にして, 12C3 = 220 通り. 組 (a, b, c) の総数と組 (a, b + 1, c + 2) の総数は等しいから, 220 通り が求めるもの. (3) 整数 a, b, c に対して 1 a ∧ a + 2 b ∧ b + 2 c ∧ c 10 ⇐⇒ 1 a b − 1 c − 2 8 である.この条件を満たす組 (a, b − 1, c − 2) の作り方は,(1) と同様にして, 8C3 = 56 通り. 組 (a, b, c) の総数と組 (a, b − 1, c − 2) の総数は等しいから, 56 通り が求めるもの.
  • 8. 6 確率の定義 6.1 確率の定義 何回も繰り返すことができ,毎回の結果が偶然によって決まる実験や観察な どを 試行 といいます.ある試行において起こり得ることがらの全体からなる集合 U を 全事 象 (あるいは標本空間) といいます.ただし U は有限集合であり空集合でないとします.U の部分集合 A を 事象 ,特に要素が 1 個だけである部分集合を 根元事象 といいます.どの 根元事象も同程度に起こりやすいとみなせるとき,それらは 同様に確からしい といいます. このとき,A の起こる確率 (probability) を P(A) で表し P (A) = n(A) n(U) と定義します. [例] さいころを振るという試行において,1 の目が出ることをそのまま 1 とかくことにする と,全事象 U は U = {1, 2, 3, 4, 5, 6} です.根元事象は次の 6 個です. {1}, {2}, {3}, {4}, {5}, {6} これらは同様に確からしいと考えられます.このとき素数の目が出るという事象 A は A = {2, 3, 5} であり,その確率は P(A) = n(A) n(U) = 3 6 = 1 2 です. 6.2 同様に確からしい 何をもって同様に確からしいとみなすかは,きちんとした定義があるわ けではなく,(少なくとも高校数学では) ほとんどの場合に前提として認めた上で確率を考え ます.したがって, 「常識的にすべての可能性が対等であるとみなせるもの」は同様に確か らしいと思ってよいです.これは問題文に明記されていることもあれば,いちいち断らない で暗黙の了解とすることもあります.以下に代表的な例を挙げておきます. [例 1] 5 枚カード 1, 2, 3, 4, 5 から 1 枚引くという試行において,起こり得る結果はすべ てで 5 通りで,これらは同様に確からしいです. これに対して,5 枚カード 1, 1, 2, 3, 4 から 1 枚引くという試行を考えると,起こり得る 結果はすべてで 4 通りですが,これらは同様に確からしいとはいえません.この場合には, 便宜的に 5 枚のカードを 1A, 1B, 2, 3, 4 と区別すれば,起こり得る結果はすべてで 5 通 りで,これらは同様に確からしくなります. [例 2] 5 枚カード 1, 2, 3, 4, 5 から同時に 2 枚を引くという試行において,起こり得る結 果はすべてで 5C2 = 10 通りで,これらは同様に確からしいです. [例 3] 非復元抽出 5 枚カード 1, 2, 3, 4, 5 からまず 1 枚を引いて,それを元に戻さずにもう 1 枚を引くとい う試行において,起こり得る結果はすべてで 5P2 = 20 通りで,これらは同様に確からしい です. [例 4] 復元抽出 5 枚カード 1, 2, 3, 4, 5 からまず 1 枚を引いて,それを元に戻してからもう 1 枚を引くと いう試行において,起こり得る結果はすべてで 52 = 25 通りで,これらは同様に確からしい です. 一般に,n 個のものがどれも対等であるとき,その中から k 個を取りだすという試行におい て,組合せ nCk 通り,順列 nPk 通り,重複順列 nk 通りはそれぞれ同様に確からしくなり ます. 「n 個のものがどれも対等」という状況を作るために,n 個の中に同一のものが含まれ る場合は,便宜的にそれらを区別した上で確率を考えるのがふつうです. 問 1 [非復元抽出] 袋の中に赤,青,黄,白の球がそれぞれ 3 個ずつ,全部で 12 個ある.この中から順に 3 個 の球を取り出すとき,次の確率を求めよ.ただし,取り出した球は元に戻さないとする. (1) 2 個だけ同じ色になる. (2) 1 回目と 3 回目が同じ色になる. 答 12 個の球を 赤 1,赤 2,赤 3,青 1,青 2,青 3,黄 1,黄 2,黄 3,白 1,白 2,白 3 のように全て区別して考える.3 個の球の取り出し方は「順列」とみなしてよく,全てで 12P3 = 12 · 11 · 10 通り — 1 で,これらは同様に確からしい. (1) 1 の中で 2 個だけ同じ色になるものは,同じ色になる 2 個の選び方が 4 · 3C2 通り (色が 4 通り,番号が 3C2 通り),もう 1 個の選び方が 9 通りで,3 個の並べ方が 3! 通りだから, 4 · 3C2 · 9 · 3! = 4 · 3 · 9 · 6 通り.ゆえに求める確率は 4 · 3 · 9 · 6 12 · 11 · 10 = 27 55 (2) 1 の中で 1 回目と 3 回目が同じ色になるものは,1 回目と 3 回目が 4 · 3 · 2 通り (色が 4 通り,番号が 3 · 2 通り),2 回目は残った 10 個のどれでもよいから,4 · 3 · 2 · 10 通り.ゆえ に求める確率は 4 · 3 · 2 · 10 12 · 11 · 10 = 2 11
  • 9. 問 2 [復元抽出] 1 から 5 までの番号の書いてあるカードがある.1 番のカードは 1 枚,2 番のカードは 2 枚, 3 番のカードは 3 枚,4 番のカードは 4 枚,5 番のカードは 5 枚ある.この中からまず 1 枚 を引いて,それを元に戻したあと,さらにもう 1 枚を引く.このとき 1 枚目のカードの数 字と 2 枚目のカードの数字を左から順に並べてできる 2 桁の整数が,素数である確率を求 めよ. 答 15 枚のカードを 1, 21, 22, 31, 32, 33, 41, 42, 43, 44, 51, 52, 53, 54, 55 のように全て区別して考える.たとえば,21, 22 はどちらも 2 番のカードである. 2 枚のカードの取り出し方は「順列」とみなしてよく,全てで 152 通りで,これらは同様に 確からしい. この中で 2 桁の整数が素数となるものは 11 が 1 通り 13 が 3 通り 23 が 6 通り 31 が 3 通り 41 が 4 通り 43 が 12 通り 53 が 15 通り 合わせて 44 通り.ゆえに求める確率は 44 152 = 44 225 問 3 3 個のさいころを投げるとき,次の各事象の確率を求めよ. (1) 2 個だけ同じ目になる. (2) どの 2 つの目の差も 1 以下である. (3) 3 個の目の和が 15 以上となる. 答 3 個のさいころを全て区別して考える.3 個のさいころの目の出方は「順列」とみなしてよ く,全てで 63 通り — 1 で,これらは同様に確からしい. (結局,3 個のさいころを同時に 投げるという試行は,1 個のさいころを順に 3 回投げるという試行と本質的に同じです.) (1) 1 の中で 2 個だけ同じ目になるものは,組合せが 6 · 5 通り,その並べ方が 3 通りだか ら,6 · 5 · 3 通り.ゆえに求める確率は 6 · 5 · 3 63 = 5 12 (2) 1 の中でどの 2 つの目の差も 1 以下であるものは x, x, x のタイプが 6 通り x, x, x + 1 のタイプが 5 · 3 = 15 通り x, x + 1, x + 1 のタイプが 5 · 3 = 15 通り 合わせて 36 通り.ゆえに求める確率は 36 63 = 1 6 (3) 1 の中で 和が 18 のものは 6, 6, 6 の 1 通り 和が 17 のものは 5, 6, 6 の順列で 3 通り 和が 16 のものは 4, 6, 6 と 5, 5, 6 の順列で 3 + 3 = 6 通り 和が 15 のものは 3, 6, 6 と 4, 5, 6 と 5, 5, 5 の順列で 3 + 3! + 1 = 10 通り 合わせて 20 通り.ゆえに求める確率は 20 63 = 5 54
  • 10. 7 確率の基本性質 全事象 U の部分集合として定義される 2 つの事象 A, B を考えます.事象 A ∪ B を A と B の 和事象 ,事象 A ∩ B を A と B の 積事象 といいます.また,空集合に対応する事象 を 空事象 といいます. A ∩ B = ∅ であるとき,A と B は 排反 であるといいます.3 つ以上の事象に対しても,そ のうちどの 2 つの事象も排反であるとき,それらの事象は排反であるといいます. 7.1 和事象の確率 全事象 U の 2 つの事象 A, B に対して n(A ∪ B) = n(A) + n(B) − n(A ∩ B) [包除原理] が成り立ち,この両辺を n(U) で割ると P(A ∪ B) = P(A) + P(B) − P(A ∩ B) [和事象の確率公式] が成り立ちます.特に A と B が排反であるとき,P(A ∩ B) = 0 だから P(A ∪ B) = P(A) + P(B) [確率の加法定理] が成り立ちます.同様に,A, B, C が排反な事象であるとき P(A ∪ B ∪ C) = P(A) + P(B) + P(C) が成り立ち,4 つ以上の事象についても同様です. 7.2 確率の基本性質 任意の事象 A に対して 0 P(A) 1 が成り立ちます.特に全事象 U の 確率は P(U) = 1,空事象の確率は P(∅) = 0 です.これらと上記の確率の加法定理を合わ せて,確率の基本性質としてまとめておきます. 確率の基本性質 [1] 任意の事象 A に対して,0 P (A) 1 [2] 全事象 U の確率は,P (U) = 1 [3] 空事象 ∅ の確率は,P (∅) = 0 [4] 事象 A, B が排反であるとき,P (A ∪ B) = P (A) + P (B) 7.3 根元事象が等確率でない場合の確率の定義 6.1 の確率の定義では,全事象 U = {e1, e2, · · · , eN } において,全ての根元事象が等確率な (同様に確からしい) 場合しか扱えません.しかし,等 確率な根元事象が作れないようなこともあります.たとえば,図のような白黒の的に矢を投 げるとき,白に当たる確率は全体 a + b のうち a の割合と考えて a/(a + b) とするのが自然 ですが,この試行では 2 つの根元事象 (白か黒か) は等確率ではありません. a b 別の例として,細工されたさいころで,1 の目だけ他の目より 2 倍だけ出やすいようなもの を考えてみます.この場合には,k の目が出る確率を pk として p1 2 = p2 = p3 = p4 = p5 = p6 かつ p1 + p2 + p3 + p4 + p5 + p6 = 1 より p1 = 2 7 , p2 = p3 = p4 = p5 = p6 = 1 7 と確率を割り振るのが自然な考え方ですが,この試行では「6 個の根元事象が全て等確率」 ではありません. このように等確率な根元事象が作れないような場合でも,状況に応じて自然に確率を定義す ることができますが,いい加減に自由に定義することが許されるわけではなく 7.2 の基本性質 [1][2][3][4] を満たすように しなければなりません.これが確率を定義するときの規約です.
  • 11. 7.4 余事象の確率 事象 A に対して, 「A が起こらない」という事象を A の 余事象 といい,A で表します.これは集合としては A の補集合 A に対応しています.余事象の確率について P (A) = 1 − P (A) が成り立ちます.これは n(A) = n(U) − n(A) の両辺を n(U) で割ったものと考えれば明らかですが,7.2 の基本性質から証明でき,7.3 の ように定義された確率に対しても成立します. [証明] A と A は排反だから P(A) + P(A) = P(A ∪ A) = P(U) = 1 ゆえに,P(A) = 1 − P(A) である.[証明終] 8 反復試行の確率 ここでは単独の試行でなく,試行が 2 回以上継続するときの確率を考えます. 8.1 独立な試行の確率 2 つの試行 T1, T2 が互いに影響を与えないとき,この 2 つの試行は 独 立 であるといいます.このとき試行 T1 では事象 A,試行 T2 では事象 B が起こるという事 象を C とすると P (C) = P (A)P (B) が成り立ちます. たとえば,さいころを 2 回投げるとき,2 回の試行は独立であり (1 回目に何の目が出るか は 2 回目に出る目に影響しない),1 回目に 1 の目が出て,2 回目に奇数の目が出る確率は 1 6 · 3 6 = 1 12 です. 8.2 反復試行の確率 同じ試行を独立に何回か繰り返すことを 反復試行 といいます.ある試行 を 1 回行うとき,事象 A が起こる確率を p とします (その余事象 A が起こる確率は 1 − p になります).この試行を独立に n 回繰り返し行うとき,n 回のうち A がちょうど k 回起こ る確率は nCk pk (1 − p)n−k (k = 0, 1, 2, · · · , n) です. 問 (1) サイコロを 4 回振るとき,1 の目が 2 回だけ出る確率を求めよ. (2) サイコロを 9 回振るとき,1 の目が 2 回だけ,2 または 3 の目が 3 回だけ出る確率を求 めよ. 答 (1) 4 回中 2 回だけ 1 の目が出るのは 4C2 通りの場合があり,これらは排反で,各々の確率 は 1 6 2 5 6 2 である.ゆえに求める確率は 4C2 1 6 2 5 6 2 = 25 216 (2) 9 回中 1 の目が 2 回だけ,2 または 3 の目が 3 回だけ出るのは 9C2 · 7C3 通りの場合があ る.これは次のように計算することもできる:1 の目が出ることを A,2 または 3 の目が出 ることを B,4 以上の目が出ることを C で表すと,AABBBCCCC の順列を考えればよく, 9! 2!3!4! 通り.これらは排反で,各々の確率は 1 6 2 2 6 3 3 6 4 だから,求める確率は 9! 2!3!4! 1 6 2 2 6 3 3 6 4 (計算略)
  • 12. 9 条件付き確率 9.1 条件付き確率 さいころを 1 つ投げるという試行において,何らかの事情で奇数の目が出 たと分かったときに,その目が素数である確率は 2/3 です (1,3,5 のうち素数は 2 個だ から).これは単に素数の目が出る確率 3/6 とは異なります.このように前提として何か起 こったことが分かったときの確率を 条件付き確率 といいます. 一般に,ある試行における全事象を U とし,その部分集合として定義される 2 つの事象 A, B を考えます.ただし,A = ∅ としておきます.分かりやすいように U の根元事象は 全て等確率であると仮定します.このとき,A が起こったと分かったときの B が起こる確 率は,素朴に考えて n(A ∩ B) n(A) であり,これを PA(B) という記号で表します.この式の分母分子を n(U) で割ると PA(B) = P (A ∩ B) P (A) — 1 が得られます.そこで 1 を「条件付き確率 PA(B) の定義」とすれば, 7.3 のように確率を 定義するときにも (等確率な根元事象を作ることができないときにも),同じように条件付き 確率を考えることができます. 9.2 確率の乗法定理 上の 1 を変形すると次が得られ,これを確率の乗法定理といいます. P (A ∩ B) = P (A)PA(B) 9.3 事象の独立 2 つの事象が互いに影響するかどうかという問題を考えます.たとえば,52 枚 のトランプカードから 1 枚を引くとき,スペードのカードが出る事象を S,キングのカード が出る事象を K とします.このとき K の確率は P(K) = 4 52 = 1 13 であり,S が起こったときの K の確率は PS(K) = 1 13 だから P(K) = PS(K) が成り立ち,S が起こることが K の確率に影響しないと考えられます.これに対して, ジョーカーを 1 枚入れた 53 枚のトランプカードから 1 枚引く試行で上と同じ事象の確率を 考えてみると,K の確率は P(K) = 4 53 であり,S が起こったときの K の確率は PS(K) = 1 13 だから P(K) = PS(K) であり,今度は S が起こることが K の確率に影響していると考えられます. 一般に,空事象でない 2 つの事象 A, B に対して P(B) = PA(B) — 1 が成り立つとき,B は A と 独立 であるといいます.反対に P(B) = PA(B) が成り立つとき,B は A と 従属 であるといいます. 1 は 1 ⇐⇒ P(B) = P(A ∩ B) P(A) ⇐⇒ P(A ∩ B) = P(A)P(B) より P(A ∩ B) = P(A)P(B) と同値であり,同様に考えて P(A) = PB(A) とも同値です. したがって,3 つの等式 P(A ∩ B) = P(A)P(B), P(B) = PA(B), P(A) = PB(A) は全て同値であり,結局,これらのうちどれか 1 つが成り立つことが A と B が独立である ことの定義です.
  • 13. 問 1 (1) [条件付き確率] ある鉄道の乗客のうち,全体の 40% が定期券利用者で,全体の 15% が学生の定期券利用者 である.定期券利用者の中から任意に 1 人を選び出すとき,その人が学生である確率を求 めよ. (2) [確率の乗法定理] 白玉 5 個,赤玉 3 個が入っている袋から,玉を 1 個取り出し,それをもとに戻さないで,続 いてもう 1 個を取り出すとき,2 回とも赤玉である確率 p,2 回目が赤玉である確率 q を求 めよ. 答 (1) 定期券利用者である事象を A,学生である事象を B とする. P(A) = 40 100 , P(A ∩ B) = 15 100 であり,求めるものは PA(B) = P(A ∩ B) P(A) = 15/100 40/100 = 3 8 (2) 1 回目が赤の事象を A,2 回目が赤の事象を B とする. p = 3 8 · 2 7 = 3 28 であることはすぐに分かるが,この式は P(A ∩ B) = P(A)PA(B) となっていて,確率の乗法定理を用いている. 次に q = P(B) は直接には計算できないから*1 ,1 回目が赤か白かで場合分けし,B を排反 な 2 つの事象 A ∩ B と A ∩ B に分ける. P(A ∩ B) = P(A)PA(B) = 5 8 · 3 7 = 15 56 q = P(B) = P(A ∩ B) + P(A ∩ B) = 3 28 + 15 56 = 3 8 *1 実は直接計算する方法もあって 14 で扱います. 問 2 [条件付き確率] 重さの異なる 4 個の玉が入っている袋から玉を 1 つ取り出し,もとに戻さずにもう 1 つ取り 出したところ,2 番目の玉の方が重かった.2 番目の玉が 4 個の中で最も重い確率を求めよ. 答 4 個の玉を軽い順に 1 , 2 , 3 , 4 とする. 1 番目より 2 番目が重い事象を A,2 番目が最も重い (すなわち 4 である) 事象を B とする. 2 回の玉の取り出し方は「順列」と見なしてよく,全てで 4 · 3 = 12 通り (同様に確から しい). このうち A であるものは ( 1 , 2 ), ( 1 , 3 ), ( 1 , 4 ), ( 2 , 3 ), ( 2 , 4 ), ( 3 , 4 ) の 6 通り.A ∩ B は 3 通り.ただし,( 1 , 2 ) は 1 回目が 1 で,2 回目が 2 であることを表 している.ゆえに求める確率は PA(B) = P(A ∩ B) P(A) = 3/12 6/12 = 1 2 あるいは (今回は等確率な根元事象が作れるから) PA(B) = n(A ∩ B) n(A) = 3 6 = 1 2 としてもよい.
  • 14. 問 3 [事象の独立] 大小 2 個のサイコロを同時に投げる試行において,大きい方のサイコロの目が 4 である事象 を A,大小 2 個のサイコロの目の和が 7 である事象を B,大小 2 個のサイコロの目の和が 9 である事象を C とする. (1) A と B は独立か否か判定せよ. (2) A と C は独立か否か判定せよ. 答 (1) 全事象 36 通りのうち,A は 6 通り,B は 6 通り,A ∪ B は 1 通りだから P(A) = 6 36 , P(B) = 6 36 , P(A ∩ B) = 1 36 ゆえに P(A ∩ B) = P(A)P(B) であり, A と B は独立である . (2) 全事象 36 通りのうち,C は 4 通り,A ∩ C は 1 通りだから P(C) = 4 36 = 1 9 , P(A ∩ C) = 1 36 ゆえに P(A ∩ C) = P(A)P(C) であり, A と C は独立でない (従属である) 10 確率と数列 問 1 n を自然数とする.さいころを n 回投げるとき,1 の目が奇数回出る確率を求めよ. 答 求める確率を pn とする.pn を直接求めるのは難しいから,漸化式を作ることを考える. pn+1 を pn を用いて表したい.さいころを n + 1 回投げて 1 の目が奇数回出る事象は,次の 2 つの排反な事象に分けられる. (I) n 回目までで 1 の目が奇数回出て,n + 1 回目に 1 以外の目が出る (II) n 回目までで 1 の目が偶数回出て,n + 1 回目に 1 の目が出る ゆえに pn+1 = pn · 5 6 + (1 − pn) · 1 6 = 2 3 pn + 1 6 が成り立つ.あとはこの漸化式を解けばよい.p1 = 1/6 である.漸化式を変形すると pn+1 − 1 2 = 2 3 pn − 1 2 ゆえに pn − 1 2 = p1 − 1 2 2 3 n−1 = − 1 3 2 3 n−1 = − 1 2 2 3 n pn = 1 2 − 1 2 2 3 n
  • 15. 問 2 図のような正三角形 ABC の頂点で球を移動させるゲームを考える.最初に球を頂点 A に おく.1 枚の硬貨を投げて,表が出たときは球を反時計回りに隣の頂点に移動し,裏が出た ときは球を時計回りに隣の頂点に移動する.硬貨を n 回投げたあと,球が頂点 A にいる確 率を求めよ.ただし,n は自然数とする. A B C 答 n 回硬貨を投げたあと,球が頂点 A,B,C にいる確率をそれぞれ an, bn, cn とする. n + 1 回硬貨を投げたあと球が頂点 A にいる事象は,次の 2 つの排反な事象に分けられる. (I) n 回硬貨を投げたあと頂点 B にいて,n + 1 回目に裏が出る (II) n 回硬貨を投げたあと頂点 C にいて,n + 1 回目に表が出る ゆえに an+1 = bn · 1 2 + cn · 1 2 = 1 2 (bn + cn) が成り立つ.an + bn + cn = 1 より bn + cn = 1 − an だから an+1 = 1 2 (1 − an) 変形して an+1 − 1 3 = − 1 2 an − 1 3 これと p1 = 0 より an − 1 3 = a1 − 1 3 − 1 2 n−1 = − 1 3 − 1 2 n−1 an = 1 3 − 1 3 − 1 2 n−1 典型問題 11 同じものを含む円順列 (1) AAAABBBC の円順列の総数を求めよ. (2) AAAABBCC の円順列の総数を求めよ. 12 スターリング数 1, 2, · · · , n の番号がついたボールが 1 個ずつ合計 n 個ある. (1) n 個のボールを 3 個の箱 A,B,C に入れる方法の総数を求めよ.ただし,n 3 とし, どの箱にも少なくとも 1 個のボールを入れるものとする. (2) n 個のボールを 4 個の区別のない箱に入れる方法の総数を求めよ.ただし,n 4 とし, どの箱にも少なくとも 1 個のボールを入れるものとする. 13 ボールの分配 n を自然数とし,n 個のボールを 3 つの箱に分けて入れる問題を考える.ただし,1 個の ボールも入らない箱があってもよいものとする. (1) 1 から n までの異なる番号のついた n 個のボールを,A,B,C と区別された 3 つの箱 に入れる場合,その入れ方は全部で何通りあるか. (2) 互いに区別のない n 個のボールを,A,B,C と区別された 3 つの箱に入れる場合,そ の入れ方は全部で何通りあるか. (3) 1 から n までの異なる番号のついた n 個のボールを,区別のない 3 つの箱に入れる場 合,その入れ方は全部で何通りあるか. (4) m を自然数とし,n = 6m であるとする.互いに区別のない n 個のボールを,区別のな い 3 つの箱に入れる場合,その入れ方は全部で何通りあるか.m を用いて表せ.
  • 16. 14 くじ引きの確率 10 本のくじの中に 3 本の当たりくじが入っている.10 人が順にくじを 1 本ずつ引いてい く.ただし引いたくじは元に戻さない. (1) 7 番目の人が当たりを引く確率を求めよ. (2) 当たる確率が最大であるのは何人目か. (3) 7 番目の人が 2 本目の当たりくじを引く確率を求めよ. (4) 2 本目の当たりくじを引く確率が最大であるのは何人目か. 15 余事象の利用 サイコロを n 回投げるとき,次の各事象の確率を求めよ. (1) 1 の目が少なくとも 1 回出る. (2) 1 の目も 2 の目も少なくとも 1 回出る. (3) 1,2,3 の目がそれぞれ少なくとも 1 回出る. 16 最大値・最小値の確率 さいころを n 回投げるとき,次の各事象の起こる確率を求めよ. (1) 出る目の最大値が 5 である. (2) 出る目の最大値が 5 で,最小値が 2 である. 17 さいころの目の積 さいころを n 回振り,第 1 回目から第 n 回目までに出たさいころの目の数 n 個の積を Xn とする. (1) Xn が 5 で割り切れる確率を求めよ. (2) Xn が 4 で割り切れる確率を求めよ. (3) Xn が 20 で割り切れる確率を求めよ. 18 ランダムウォーク x 軸の原点から出発して,次の規則にしたがって点を移動する.硬貨を 2 枚投げて,2 枚と も表ならば正方向へ 1 進み,そうでないならば負方向へ 1 進む. (1) この試行を 6 回繰り返したとき,点 2 にいる確率を求めよ. (2) この試行を 6 回繰り返したとき,点 3 にいる確率を求めよ. (3) この試行を n 回繰り返したとき,点 k にいる確率を求めよ.ただし,n は自然数,k は 整数とする. 19 反復試行の確率の最大値 袋の中に赤球が 3 個,白球が 2 個入っている.この袋から無作為に 1 個の球を取り出しては 元に戻すという試行を 25 回繰り返す.25 回中ちょうど n 回だけ赤球が取り出される確率 を pn とする.pn が最大となる n の値を求めよ. 20 状態の推移 3 人が次の [I],[II] に従って勝負を行う. [I] 3 人で勝負をするとき,引き分けで 3 人が残る確率が 1 6 ,2 人が勝つ確率が 1 2 ,1 人が勝 つ確率が 1 3 であるとする.引き分けで 3 人が残った場合は,またその 3 人で同じ勝負を行 う.2 人が勝った場合は,その 2 人で勝負を行う.1 人が勝った場合はそこで終わりにする. [II] 2 人で勝負をするとき,引き分けで 2 人が残る確率が 1 3 ,1 人が勝つ確率が 2 3 である とする.引き分けで 2 人が残った場合は,またその 2 人で同じ勝負を行う.1 人が勝った場 合はそこで終わりにする. 1 回目は 3 人で勝負をする.このとき次の問いに答えよ. (1) ちょうど 3 回目で勝負が終わる確率を求めよ. (2) ちょうど n 回目で勝負が終わる確率を求めよ.ただし n は自然数とする.
  • 17. 21 条件付き確率 A,B,C の 3 人はそれぞれ確率 1 2 , 1 3 , 3 4 で真実を言う.1 枚の硬貨を投げ,A と B は 表が出たと言い,C は裏が出たと言ったときの,表が出ている確率を求めよ.ただし,硬貨 は表と裏が等確率で出るものとする. 22 原因の確率 ある病原菌の検査薬は,病原菌に感染しているが誤って陰性と判断する確率が 1%,感染し ていないが誤って陽性と判断する確率が 2% である.全体の 1% がこの病原菌に感染してる 集団から 1 つの個体を取り出して検査を行ったところ陽性と判断された.この個体が実際に は病原菌に感染していない確率を求めよ. 23 確率漸化式 2 つの袋 A,B と赤玉,白玉それぞれ 3 個ずつが用意されている.各々の袋の中に玉が 3 個 ずつ入っている状態に対して次の操作を考える. [操作] 各々の袋から玉を同時に無作為に 1 個ずつ取り出した後,袋 A から取り出した玉を 袋 B の中に,袋 B から取り出した玉を袋 A の中に入れる. いま,袋 A の中に赤玉 2 個と白玉 1 個が,袋 B の中に赤玉 1 個と白玉 2 個が入っている状 態から始め,上記の操作を繰り返し行う.また n を自然数とし,n 回目の操作を終えたと きに袋 A の中に赤玉が 3 個入っている確率を an,2 個だけ入っている確率を bn,1 個だけ 入っている確率を cn とする. (1) a1, b1, c1 を求めよ. (2) pn = bn + cn と定義する.pn+1 を pn を用いて表し,pn を求めよ. (3) En = 3an + 2bn + cn と定義する.En+1 を En を用いて表し,En を求めよ. 有名問題 24 階段ののぼり方 10 段の階段を次のようにのぼるとき,のぼり方は何通りあるか. (1) 一歩で 1 段または 2 段のぼることができるとき. (2) 一歩で 1 段または 2 段または 3 段のぼることができるとき. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 答 (1) n 段ののぼり方の総数を an とする. n + 2 段をのぼるとき,最初の一歩が 1 段なら an+1 通り,最初の一歩が 2 段なら an 通り ののぼり方があるから an+2 = an+1 + an a1 = 1,a2 = 2 より a3 = 3, a4 = 5, a5 = 8, a6 = 13, a7 = 21, a8 = 34, a9 = 55, a10 = 89 答は 89 通り (2) n 段ののぼり方の総数を bn とする.(1) と同様にして bn+3 = bn+2 + bn+1 + bn b1 = 1,b2 = 2,b3 = 4 より b4 = 7, b5 = 13, b6 = 24, b7 = 44, b8 = 81, b9 = 149, b10 = 274 答は 274 通り
  • 18. 25 破産の確率 A,B の 2 人が合計 10 枚のコインを持っている.1 回のゲームで勝者が敗者から 1 枚のコ インをもらうことを,どちらかのコインがなくなる (破産する) まで繰り返す.各ゲームに おいて A,B が勝つ確率はそれぞれ 1 2 である.A が n 枚のコインを持つところから始め て,B が破産する確率を pn (0 n 10) とする.ただし,p0 = 0,p10 = 1 とする. (1) 1 n 9 のとき,pn を pn+1 と pn−1 を用いて表せ. (2) pn を求めよ. 答 (1) 1 n 9 のとき,A が n 枚から始めて (I) 1 回目に A が勝って B が破産する確率は 1 2 pn+1 (II) 1 回目に B が勝って B が破産する確率は 1 2 pn−1 ゆえに pn = 1 2 pn+1 + 1 2 pn−1 — 1 (2) 1 より pn+1 = 2pn − pn−1 pn+1 − pn = pn − pn−1 ゆえに {pn − pn−1} (n = 1, 2, · · · , 10) は定数数列だから,{pn} (n = 0, 1, · · · , 10) は 等差数列であり,公差を d とすると pn = p0 + dn = dn p10 = 10d = 1 ∴ d = 1 10 pn = n 10 26 完全順列 n は自然数とする.1, 2, · · · , n を並べかえてできる順列のうち,どの数も元の位置に来な いようなものを完全順列といい,その総数を dn とする. (1) dn+2 = (n + 1)(dn+1 + dn) が成り立つことを示せ. (2) pn = dn n ! とおく.pn = n k=0 (−1)k k ! であることを示せ. (3) lim n→∞ pn を求めよ.ただし実数 x に対し ex = ∞ n=0 xn n ! であることを用いてよい. 答 (1) 1, 2, · · · , n + 2 の完全順列を a1, a2, · · · , an+2 とかく.このうち (I) a1 = 2,a2 = 1 であるものは dn 通り. (II) a1 = 2,a2 = 1 であるものは dn+1 通り. (a2, a3, · · · , an+2 が 1, 3, · · · , n + 2 の完全順列だから) ゆえに a1 = 2 であるものは dn + dn+1 通り. a1 = 3 であるものも,a3 = 1 と a3 = 1 で場合分けして考えれば,a1 = 2 のときと同様で あり,dn + dn+1 通り.a1 = 4, · · · , n + 2 についても同様. よって,dn+2 = (n + 1)(dn+1 + dn) である.[証明終]
  • 19. (2) (1) の等式の両辺を (n + 2) ! で割ると dn+2 (n + 2) ! = n + 1 n + 2 · dn (n + 1) ! + 1 n + 2 · dn n ! pn+2 = n + 1 n + 2 pn+1 + 1 n + 2 pn — 1 d1 = 0,d2 = 1 より p1 = 0, p2 = 1 2 — 2 1 , 2 により定義される数列 {pn} について pn = n k=0 (−1)k k ! — 3 であることを,数学的帰納法で示す. (I) 2 より n = 1, 2 のとき 3 は成り立つ. (II) n = m, m + 1 のとき 3 が成り立つと仮定する.このとき 1 を用いると pm+2 = m + 1 m + 2 pm+1 + 1 m + 2 pm = m + 1 m + 2 m+1 k=0 (−1)k k ! + 1 m + 2 m k=0 (−1)k k ! = m + 1 m + 2 + 1 m + 2 m k=0 (−1)k k ! + m + 1 m + 2 · (−1)m+1 (m + 1) ! = m k=0 (−1)k k ! + (m + 2) − 1 m + 2 · (−1)m+1 (m + 1) ! = m k=0 (−1)k k ! + (−1)m+1 (m + 1) ! + (−1)m+2 (m + 2) ! = m+2 k=0 (−1)k k ! となり 3 は n = m + 2 のときも成り立つ.[証明終] (3) lim n→∞ pn = ∞ k=0 (−1)k k ! = e−1 = 1 e 27 ポリアの壺 最初に壺の中に a 個の赤玉と b 個の白玉が入っている.ただし a,b は自然数とする. 1 回の試行につき,壺から 1 個の玉を取り出して,取り出した玉と同じ色の玉を新たに 1 つ 壺に入れて,取り出した玉を壺の中に戻す. n 回目の試行で赤玉が取り出される確率 pn を求めよ. 答 n = 1, 2 などを調べてみると,全ての n に対し pn = a a + b と推測できる. 赤玉 x 個,白玉 y 個から始めて,n 回目の試行で赤玉が取り出される確率を f(x, y, n) と かく.すべての自然数 x,y,n に対し f(x, y, n) = x x + y であることを,n についての数学的帰納法で示す. n = 1 のとき成り立つことは明らか. n = m のとき成り立つと仮定する.試行を m + 1 回行うとき,1 回目が赤か白かで場合分 けすることにより f(x, y, m + 1) = x x + y · f(x + 1, y, m) + y x + y · f(x, y + 1, m) — 1 が成り立つ.帰納法の仮定より f(x + 1, y, m) = x + 1 (x + 1) + y , f(x, y + 1, m) = x x + (y + 1) これを 1 に代入して f(x, y, m + 1) = x x + y · x + 1 x + y + 1 + y x + y · x x + y + 1 = x(x + y + 1) (x + y)(x + y + 1) = x x + y となり,n = m + 1 のときも成り立つ.[証明終] 本問の答は,pn = a a + b
  • 20. 入試問題 28 (1) [2006 京都大文系] さいころを n 個同時に投げるとき,出た目の数の和が n + 2 になる確率を求めよ. (2) [2006 京都大理系] さいころを n 個同時に投げるとき,出た目の数の和が n + 3 になる確率を求めよ. 答 (1) n 個のさいころの目を a1, a2, · · · , an とする. a1 + a2 + · · · + an = n + 2 (各 ak は 1 以上 6 以下の整数) を満たす組 (a1, a2, · · · , an) の個数は, 4 問 5 (2) と同様にして n+1C2 = (n + 1)n 2 ゆえに求める確率は n+1C2 6n = (n + 1)n 2 · 6n [注] 2 の目が 2 個で残りは全て 1 の目,3 の目が 1 個で残りは全て 1 の目,と場合分けして 解くこともできる. (2) (1) と同様にして n+2C3 6n = (n + 2)(n + 1)n 6n+1 29 [2002 東北大] 図のような格子状の道路がある.左下の A 地点から出発し,サイコロを繰り返し振り,次 の規則にしたがって進むものとする.1 の目が出たら右に 2 区画,2 の目が出たら右に 1 区 画,3 の目が出たら上に 1 区画進み,その他の場合はそのまま動かない.ただし,右端で 1 または 2 の目が出たとき,あるいは上端で 3 が出たときは,動かない.また,右端の 1 区画 手前で 1 の目が出たときは,右端まで進んで止まる. n を 8 以上の自然数とする.A 地点から出発し,サイコロを n 回振るとき,ちょうど 6 回 目に,B 地点以外の地点から進んで B 地点で止まり,n 回目までに C 地点に到達する確率 を求めよ.ただし,サイコロはどの目が出るのも,同様に確からしいものとする. A B C
  • 21. 答 1,2,3,それ以外の目が出ることをそれぞれ (右 2),(右 1),(上 1),(不動) とかく. ちょうど 6 回目に,B 以外の点から進んで B で止まる確率を p とする.6 日目に B にいた とき,n 回目までに C に到達する確率 (条件付き確率) を q とする. (p について) 次の 3 つの場合がある. (I) 5 回目までに B の 2 区画左に来て,6 回目に B にいく. (II) 5 回目までに B の 1 区画左に来て,6 回目に B にいく. (III) 5 回目までに B の 1 区画下に来て,6 回目に B にいく. (I) 5 回目までに (上 1)2 回,(不動)3 回で,6 回目が (右 2) だから,確率は 5C2 1 6 2 1 2 3 · 1 6 = 5 63 · 22 — 1 (II) 5 回目までに (上 1)2 回,(右 1)1 回,(不動)2 回で,6 回目が (右 1) だから,確率は 5 ! 2 ! 2 ! 1 6 2 1 6 1 2 2 · 1 6 = 5 63 · 22 — 2 (III) 5 回目までに (上 1)1 回,(右 2)1 回,(不動)3 回,または (上 1)1 回,(右 1)2 回, (不動)2 回で,6 回目が (上 1) だから 5 ! 3 ! 1 6 1 6 1 2 3 + 5 ! 2 ! 2 ! 1 6 1 6 2 1 2 2 · 1 6 = 15 63 · 22 — 3 以上より p = 1 + 2 + 3 = 25 63 · 22 = 25 864 (q について) 1 または 2 の目が出ることを (右) とかく. 7 回目から n 回目までの n − 6 回中,(右) が少なくとも 1 回,(上 1) が少なくとも 1 回だか ら,15 (2) と同様にして q = 1 − 2 3 n−6 + 5 6 n−6 − 1 2 n−6 求める確率は pq = 25 864 1 − 2 3 n−6 − 5 6 n−6 + 1 2 n−6 30 [2012 東京大] 図のように,正三角形を 9 つの部屋に辺で区切り,部屋 P,Q を定める.1 つの球が部屋 P を出発し,1 秒ごとに,そのまま部屋にとどまることなく,辺を共有する隣の部屋に等確率 で移動する.球が n 秒後に部屋 Q にある確率を求めよ. P Q 答 奇数秒後は上向き三角形の部屋にいて,偶数秒後は下向き三角形の部屋にいる.ゆえに n が 奇数のとき,n 秒後に Q にいる確率は 0 である. 以下では n が偶数のときを考え,n = 2k とおく.下向き三角形の部屋は 3 つあり,P,Q 以外の部屋を R とする. 2k 秒後に部屋 P,Q,R にいる確率を ak,bk,ck とする.対称性より bk = ck である.ま た ak + bk + ck = 1 だから bk = ck = 1 2 (1 − ak) ak の漸化式を作る. • 2k 秒後に P にいたときに,2(k + 1) 秒後に P にいる確率 (条件付き確率) は 1 3 · 1 + 1 3 · 1 2 + 1 3 · 1 2 = 2 3 • 2k 秒後に Q または R にいたときに,2(k + 1) 秒後に P にいる確率 (条件付き確率) は 1 3 · 1 2 = 1 6 ゆえに ak+1 = ak · 2 3 + (1 − ak) · 1 6 = 1 2 ak + 1 6 これを初期条件 a0 = 1 の下で解くと ak = 1 3 + 2 3 1 2 k bk = 1 2 (1 − ak) = 1 3 − 1 3 1 2 k = 1 3 1 − 1 2 n 2 以上より求める確率は ⎧ ⎪ ⎨ ⎪ ⎩ 0 (n は奇数) 1 3 1 − 1 2 n 2 (n は偶数)