「ゲームニクス理論」から考
       える
  iPhone向けゲーム

    小野憲史
    2009/11/12
アジェンダ
●   自己紹介
●   「ゲームニクス理論」とは何か?
●   「ゲームニクス理論」から考えるiPhoneゲーム
ゲームニクスとは何か(幻冬舎新書)   ニンテンドーDSが売れる理由(秀和システム)
自己紹介
●   小野憲史(おのけんじ)
●   1971年生まれ 関西大学社会学部卒
●   ゲーム批評(マイクロマガジン社) 94-00
●   フリーライター/ゲームジャーナリスト
     inside
     GAMEWatch
     まんたんウェブ
第1部:ゲームニクス理論とは
ゲームニクス理論とは?
●   ゲームニクス(GAME-NICS)=造語
●   サイトウ・アキヒロ氏が提唱
●   中学生からアニメーターとして活動
●   大学生でファミコンゲーム開発にたずさわる(ハル
    研)
●
    ファミ通の創刊編集者(ゴクラクトンボ斉藤)
●   CMディレクター(サントリー「ペンギン」)
●   ゲーム開発会社「ダイス」設立
●   立命館大学映像学部教授/合同会社1Cプロジェクト
    次世代UI研究所ゲームニクス研究室室長
人を夢中にさせる
  テクニック
ゲームデザインとの違い
●   ゲームデザイン=ルールメイキング
    ゲームのおもしろさの中核となる「楽しさ」(ファン)
    を生み出すメカニズムをいかに作り出すか?
●   ゲームニクス=ファンリーチ
    ルールによって生まれた「楽しさ」を、双方向の操
    作を通して、いかに的確にプレーヤーに伝える
    か?

     UI、HUD、レベルデザイン、演出、
     学習曲線などを包括した概念
ゲームの基本はストレス
と快感のループ構造

コントローラの存在を
限りなくゼロにする
非エンタメ領域への応用
●   エコカーナビ(クラリオン)
●   「ベネッセ×ゲームニクス」プロジェクト
●   「グリーン東大」プロジェクト
ゲームニクスの二大要素

● マニュアルを読まずに使い
  方(遊び方)がわかる
● 難しいことでも自然にでき

  るようになる
ゲームニクスの4原則
●
  直感的なUI
● マニュアル不要のルール理解

● はまる演出と段階的な学習効果

●
  ゲームの外部化
①直感的なUI
●   入力デバイスの特性を理解し、ソフトウェア(ゲーム
    の内容)と適切に関連づける
●   画面レイアウトの基本は「左上→右下」
●   グラフィックとサウンド(SE)で操作ガイダンス
Computer
Space(1971)
右旋回
     噴射   左旋回
発射
最初はPDP-1のトグルスイッチを使っていた(このへん?)
ベタ移植してもダメ
②マニュアル不要の操作理解
●   ボタンの「信頼度」を高める
    Aボタンで決定、Bボタンでキャンセル
    操作方法を一定に保つ
●   汎用ボタン(べんりボタン)
●
    ホームボタンの設定
    迷ったときに、すぐにスタート地点に戻れる
冒頭でルールを理解させる
●   プレイングチュートリアルの活用
    アクションゲーム=スーパーマリオ
    思考型ゲーム=ドラゴンクエスト
●   デモ
●
    ストーリーチュートリアル
●   ヘルプシステム
    ヘルプキャラクター、メッセージ
●   レベルメニュー
③はまる演出と段階的な学習効果
●   長時間遊ぶ上でのストレス低減
    =はまる演出
●   長時間遊ばせるための動機づけ
    =学習効果
はまる演出:ゲームリズムとシーンテンポ
●   ゲームリズム=全体構成から感じる心地よさ
●   シーンテンポ=個々のシーンから感じる心地よさ
●   グラフィック、SE、振動などの総合演出
学習効果:目標設定
●   「お立ち台」に上がってもらう→勇者は君だ
●   最初に大目標を提示する→大魔王を倒せ
●   次に小目標を提示する
    →モンスターを倒せ、コインを集めろ
●
    中目標は自分で設定させる 
    →次の街に行くか、アイテムを揃えるか。。。
●   小目標と中目標のループ構造で進んでいく

テトリスなどのシンプルなゲームでも、この構造は当てはまる
(1ラインずつ消すか、長い棒のために積み込むか。。。)
④ゲームの外部化
●   ゲームを現実世界に持ち出す
●   現実世界をゲームで再現する
●   ゲームと現実の境界線で遊ぶ
第2部:ゲームニクス理論から考えるiPhoneゲーム
猫じゃらし=iPhone




人
間                  猫
=                  =
ゲ                  人
ー                  間
ム                  (
                   プ
デ                  レ
ィ                  イ
ベ                  ヤ
ロ                  ー
ッ
パ                  )
ー
ゲームニクスとiPhoneゲーム
●   ゲームニクス理論はゲームの「夢中にさせる」
    テクニックを体系化したもの
●   実際のゲーム開発/ゲームレビューにも応用可能
●   ただしiPhoneならではの課題もある→UIの違い
直感的なUI(DSとの比較)
●   DS=タッチペン入力(シングルタッチ)
●   画面内で自由で正確な曲線を描くのに向く
    (文字など)
●   画面上の正確な1点を示すのには不向き
    (マウスと比較して)
●   強弱の感知により、叩く、なでる、払う、こする、
    などの入力が可能
●   曖昧な入力に適している(十字キーと比較して)
iPhoneのタッチ特性
    タッチペンに加えて、次の点に留意
●   マルチタッチ(静電容量方式)
●   指で操作するので、思い入れが強まる
●   画面の微妙な反応の違いが大切
●
    押し間違いに対する配慮が重要になる
●   指で画面が隠れることの配慮が必要
●   素早く正確な連続操作は不向き
Q:十字キー+ABの不在をどう捉えるか?
A:忘れましょう!
バーチャルパッドの注意
●   大手パブリッシャーの資産価値を生かす
●   指の動きのサポート
●   指で画面が隠れることへの配慮
●   汎用アイコンの活用(アクションアイコンなど)
●
    誤操作を前提としたゲームデザイン
現時点でのTIPS
●   十字キーにとらわれない自由な発想
●   コンソールにありがちな画面デザインからの脱却
●
    汎用アイコンの活用
    →メニューアイコンより小さくしない
●   曖昧さを味方につけたゲームデザイン
●   本体の機能/制約をうまく生かす
●   指の動きのサポート
●   音楽ライブラリなどの活用
●   一画面におさめる努力

そのうえで「ユーザーにおもしろさを伝える配慮」が必要
アーケードゲームとの類似性
●   メインのゲーム画面のデザインが、ゲーム内容と
    深い関係がある
    →誤操作を考えると複数の画面を頻繁に切り替え
    させるのは難しい
●   スクリーンショットが宣伝上、大変重要
    →いかにユーザーの視線を引きつけるか
レビュー事例
●   GAMEWATCHでのiPhoneアプリレビュー
    1:そのゲームの面白さのキモは何か?
     (ゲームデザイン的な側面から紹介)
    2:その面白さは的確に伝わっているか?
     (ゲームニクス的な側面から評価)
    3:まとめ/総合評価
     (ダウンロードする価値があるか)
実際のゲーム例
●   Draw race(なぞる)
●   DoodleJump(かたむける、デモ)
●   FlightControl(なぞる、難易度曲線)
●   iShift(プレイングチュートリアル)
●
    Parking mania(かたむける、音楽活用)
動画投稿サイトの活用
●   ゲームニクス理論の限界
    →突き抜けたゲームが出にくい
●   Matrix Music Pad(楽器アプリ)
    SNSの活用~サポートサイト
    動画投稿サイト~チュートリアル
アイテム課金への対応
●   StoreKit(API) 
●   シェアウェア型/アイテム課金型/月額課金型
●   ビジネスモデルに適したゲームデザイン
    (落としきり=パッケージゲームと同じ)
●
    課金のみサポート
●   自社サーバによるアイテム配信、
    セキュリティ管理
●   iPhoneアプリでは主流に?
まとめ
●
  ゲームニクスはゲームの「人を夢
  中にさせる」テクニックである。
● ゲームデザインでは、iPhoneの曖

  昧でフレンドリーな特性を上手く
  生かす。
●
  ゲームデザインと同じくらい、「楽
  しさ」を伝える努力をする。
補足:iPhoneの未来と業界(妄想)

●   OS3.0で外部デバイスとの連携が可能に
    ドッグコネクタ、ブルートゥース
●   外部デバイスは家電量販店で販売し、操作アプリ
    をiTunesで販売
    FMトランスミッターアプリなど(日本未発売)
●
    iPhoneが汎用リモコンになる日
    ID+汎用リモコン+iTunes=バーチャルハブ
●   ゲームニクス的発想
ありがとうございました。
 kono3478@gmail.com

Sig App4

  • 1.
    「ゲームニクス理論」から考 える iPhone向けゲーム 小野憲史 2009/11/12
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    アジェンダ ● 自己紹介 ● 「ゲームニクス理論」とは何か? ● 「ゲームニクス理論」から考えるiPhoneゲーム
  • 3.
    ゲームニクスとは何か(幻冬舎新書) ニンテンドーDSが売れる理由(秀和システム)
  • 4.
    自己紹介 ● 小野憲史(おのけんじ) ● 1971年生まれ 関西大学社会学部卒 ● ゲーム批評(マイクロマガジン社) 94-00 ● フリーライター/ゲームジャーナリスト  inside  GAMEWatch  まんたんウェブ
  • 5.
  • 6.
    ゲームニクス理論とは? ● ゲームニクス(GAME-NICS)=造語 ● サイトウ・アキヒロ氏が提唱 ● 中学生からアニメーターとして活動 ● 大学生でファミコンゲーム開発にたずさわる(ハル 研) ● ファミ通の創刊編集者(ゴクラクトンボ斉藤) ● CMディレクター(サントリー「ペンギン」) ● ゲーム開発会社「ダイス」設立 ● 立命館大学映像学部教授/合同会社1Cプロジェクト 次世代UI研究所ゲームニクス研究室室長
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    ゲームデザインとの違い ● ゲームデザイン=ルールメイキング ゲームのおもしろさの中核となる「楽しさ」(ファン) を生み出すメカニズムをいかに作り出すか? ● ゲームニクス=ファンリーチ ルールによって生まれた「楽しさ」を、双方向の操 作を通して、いかに的確にプレーヤーに伝える か? UI、HUD、レベルデザイン、演出、 学習曲線などを包括した概念
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  • 11.
    非エンタメ領域への応用 ● エコカーナビ(クラリオン) ● 「ベネッセ×ゲームニクス」プロジェクト ● 「グリーン東大」プロジェクト
  • 12.
    ゲームニクスの二大要素 ● マニュアルを読まずに使い 方(遊び方)がわかる ● 難しいことでも自然にでき るようになる
  • 13.
    ゲームニクスの4原則 ● 直感的なUI ●マニュアル不要のルール理解 ● はまる演出と段階的な学習効果 ● ゲームの外部化
  • 14.
    ①直感的なUI ● 入力デバイスの特性を理解し、ソフトウェア(ゲーム の内容)と適切に関連づける ● 画面レイアウトの基本は「左上→右下」 ● グラフィックとサウンド(SE)で操作ガイダンス
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    右旋回 噴射 左旋回 発射
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    ②マニュアル不要の操作理解 ● ボタンの「信頼度」を高める Aボタンで決定、Bボタンでキャンセル 操作方法を一定に保つ ● 汎用ボタン(べんりボタン) ● ホームボタンの設定 迷ったときに、すぐにスタート地点に戻れる
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    冒頭でルールを理解させる ● プレイングチュートリアルの活用 アクションゲーム=スーパーマリオ 思考型ゲーム=ドラゴンクエスト ● デモ ● ストーリーチュートリアル ● ヘルプシステム ヘルプキャラクター、メッセージ ● レベルメニュー
  • 25.
    ③はまる演出と段階的な学習効果 ● 長時間遊ぶ上でのストレス低減 =はまる演出 ● 長時間遊ばせるための動機づけ =学習効果
  • 26.
    はまる演出:ゲームリズムとシーンテンポ ● ゲームリズム=全体構成から感じる心地よさ ● シーンテンポ=個々のシーンから感じる心地よさ ● グラフィック、SE、振動などの総合演出
  • 27.
    学習効果:目標設定 ● 「お立ち台」に上がってもらう→勇者は君だ ● 最初に大目標を提示する→大魔王を倒せ ● 次に小目標を提示する →モンスターを倒せ、コインを集めろ ● 中目標は自分で設定させる  →次の街に行くか、アイテムを揃えるか。。。 ● 小目標と中目標のループ構造で進んでいく テトリスなどのシンプルなゲームでも、この構造は当てはまる (1ラインずつ消すか、長い棒のために積み込むか。。。)
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    ④ゲームの外部化 ● ゲームを現実世界に持ち出す ● 現実世界をゲームで再現する ● ゲームと現実の境界線で遊ぶ
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  • 31.
    猫じゃらし=iPhone 人 間 猫 = = ゲ 人 ー 間 ム ( プ デ レ ィ イ ベ ヤ ロ ー ッ パ ) ー
  • 32.
    ゲームニクスとiPhoneゲーム ● ゲームニクス理論はゲームの「夢中にさせる」 テクニックを体系化したもの ● 実際のゲーム開発/ゲームレビューにも応用可能 ● ただしiPhoneならではの課題もある→UIの違い
  • 33.
    直感的なUI(DSとの比較) ● DS=タッチペン入力(シングルタッチ) ● 画面内で自由で正確な曲線を描くのに向く (文字など) ● 画面上の正確な1点を示すのには不向き (マウスと比較して) ● 強弱の感知により、叩く、なでる、払う、こする、 などの入力が可能 ● 曖昧な入力に適している(十字キーと比較して)
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    iPhoneのタッチ特性 タッチペンに加えて、次の点に留意 ● マルチタッチ(静電容量方式) ● 指で操作するので、思い入れが強まる ● 画面の微妙な反応の違いが大切 ● 押し間違いに対する配慮が重要になる ● 指で画面が隠れることの配慮が必要 ● 素早く正確な連続操作は不向き
  • 35.
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    バーチャルパッドの注意 ● 大手パブリッシャーの資産価値を生かす ● 指の動きのサポート ● 指で画面が隠れることへの配慮 ● 汎用アイコンの活用(アクションアイコンなど) ● 誤操作を前提としたゲームデザイン
  • 38.
    現時点でのTIPS ● 十字キーにとらわれない自由な発想 ● コンソールにありがちな画面デザインからの脱却 ● 汎用アイコンの活用 →メニューアイコンより小さくしない ● 曖昧さを味方につけたゲームデザイン ● 本体の機能/制約をうまく生かす ● 指の動きのサポート ● 音楽ライブラリなどの活用 ● 一画面におさめる努力 そのうえで「ユーザーにおもしろさを伝える配慮」が必要
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    アーケードゲームとの類似性 ● メインのゲーム画面のデザインが、ゲーム内容と 深い関係がある →誤操作を考えると複数の画面を頻繁に切り替え させるのは難しい ● スクリーンショットが宣伝上、大変重要 →いかにユーザーの視線を引きつけるか
  • 40.
    レビュー事例 ● GAMEWATCHでのiPhoneアプリレビュー 1:そのゲームの面白さのキモは何か?  (ゲームデザイン的な側面から紹介) 2:その面白さは的確に伝わっているか?  (ゲームニクス的な側面から評価) 3:まとめ/総合評価  (ダウンロードする価値があるか)
  • 44.
    実際のゲーム例 ● Draw race(なぞる) ● DoodleJump(かたむける、デモ) ● FlightControl(なぞる、難易度曲線) ● iShift(プレイングチュートリアル) ● Parking mania(かたむける、音楽活用)
  • 45.
    動画投稿サイトの活用 ● ゲームニクス理論の限界 →突き抜けたゲームが出にくい ● Matrix Music Pad(楽器アプリ) SNSの活用~サポートサイト 動画投稿サイト~チュートリアル
  • 46.
    アイテム課金への対応 ● StoreKit(API)  ● シェアウェア型/アイテム課金型/月額課金型 ● ビジネスモデルに適したゲームデザイン (落としきり=パッケージゲームと同じ) ● 課金のみサポート ● 自社サーバによるアイテム配信、 セキュリティ管理 ● iPhoneアプリでは主流に?
  • 47.
    まとめ ● ゲームニクスはゲームの「人を夢 中にさせる」テクニックである。 ● ゲームデザインでは、iPhoneの曖 昧でフレンドリーな特性を上手く 生かす。 ● ゲームデザインと同じくらい、「楽 しさ」を伝える努力をする。
  • 48.
    補足:iPhoneの未来と業界(妄想) ● OS3.0で外部デバイスとの連携が可能に ドッグコネクタ、ブルートゥース ● 外部デバイスは家電量販店で販売し、操作アプリ をiTunesで販売 FMトランスミッターアプリなど(日本未発売) ● iPhoneが汎用リモコンになる日 ID+汎用リモコン+iTunes=バーチャルハブ ● ゲームニクス的発想
  • 49.