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タンポポに対する認知変容プロセス
2020年4月下旬~6月上旬 埼玉県新座市
昨年(2020年)の4月頃
街に出かける機会が減った
半径500m世界を見る機会が増えた
以前は気に留めなかった花の中を覗き込んでみた
ナ
ガ
ミ
ヒ
ナ
ゲ
シ
の
中
を
覗
い
て
驚
い
た
!
タ
ン
ポ
ポ
の
中
を
覗
い
て
驚
い
た
!
タンポポについて知っていることは...
黄色い花があちこちに咲いているなー
白い綿毛の頭もよく見かけるなー
綿毛はフーっと息をかけると飛んで行く
でも、黄色い花と綿毛の中間ってどうなっている?
???
それで、道端を歩き回って調べてみると...
中間らしきものが見つかった
こんな感じかな?
でも、本当かな?
そして、どのくらい時間がかかって変化するのだろう?
そこで、実験してみることに
道端から満開のタンポポの花を採取
①満開のタンポポ8個(1個は途中で
しぼんでしまった)を水槽に挿す。
②その日の夜までに皆一旦しぼんで、
③翌日も開花したのは一個のみ。
④翌々日以降は8個すべてが蕾のまま
で開花せず。
★タンポポは何日も咲く花では
なかったんだ。
① ②
③ ④
★水槽の上にボール紙を置いて、そこ
にタンポポの花を挿す。
そのまま観察を続けると...
⑤5日目くらいから枯れて茶色
くなった蕾の下の方から綿毛らしき
白い部分が盛り上がって来た。
⑦7日目くらいからいくつかの蕾が
綿毛に膨らみ始め、
⑧10日目にはほぼ全ての綿毛が全開。
成長の悪いのもあるが。
⑤ ⑥
⑦ ⑧
以上の実験で、黄色い花から綿毛になるまでの変化は見えてきた。
???
ん? でも、ちょっと待てよ、黄色い花の後が枯黄蕾
や白蕾なら、黄色い花になるはずの若い蕾はどうなっ
ているのだろう?
枯黄蕾 白蕾
ここはどうなっている?
黄花満開
そこで今度は黄色い花になる前の蕾を探して道端をうろうろ。
なかなか見つからない、でも、とうとう見つけた!
緑色の蕾だ! それはこんな感じで成長するらしい。
緑蕾
こうなると、緑の蕾から綿毛までの全工程が見たく
なる。
それで、道端から緑の蕾を採取し、水槽に挿す。
あらためて実験開始。
これがその結果。
確かに、緑蕾  黄花満開  枯黄蕾 白蕾  綿毛
の全過程が観察できた。
うーん。でも、何んとなくおかしい。
20日くらいかけて、何とか緑の蕾状態から綿毛まで
たどり着いたのだが....
全く元気がない。息も絶え絶えの感じ。
無理もないかな、栄養を一切与えず20日間、水だけ。
それもあまり日当たりのよくない室内で飼い殺し。
野で育っているタンポポとは全然生気が違う。
「花は野にあるように」とは利休七則の一つ。でも、
タンポポを継続的に観察するには、部屋の中で「野に
あるように」と言っても途中で栄養不足に。結局、
「花は野にあるままで」でないとダメそうだ。
そこで、タンポポをちぎって部屋で観察することをあ
きらめ、道端にあるがまま観察するフィールド観察に
方針転換することに。
早速、散歩道沿いの植樹帯に何か所か定点観察の場所を決めた。
ところが予想外の問題があることがわかった
問題1: 植樹帯の場所がわからなくなってしまう。
そんなバカな! 昨日行ったファミマの場所が今日行ってわからなくなる
なんてことは想像できない。でも、植樹帯には個性がない。こっちの植樹
帯だったか、あっちの植樹帯だったか、わからなくなってしまうのだ。
問題2: 植樹帯の中のタンポポの区別ができなくなる。
これも、ちょっと不思議に思われるかも知れないが、タンポポの開花日数
は2~3日と短い。昨日開花していたタンポポは今日はしぼみ、すぐ横に
新しいタンポポが開花することもよくある。さて、どのタンポポが昨日見
ていたタンポポなのかわからなくなってしまうのだ。
そこで解決法を考えた
問題1: 植樹帯の場所がわからなくなってしまう。
解決法  植樹帯の写真を撮って、地図代わりに使う。
問題2: 植樹帯の中のタンポポの区別ができなくなる。
解決法  一本一本のタンポポに番号付きタグを付ける。
これが植樹帯地図
こんな風に番号付きタグを付けて
個別に識別できるようにした。
これが識別タグ
そして...毎日現場に通って観察を続け...
その結果が次頁の表。
タンポポ成長過程: フィールド観察結果
そして、わかったことは
①開花期間は2日~4日。開花中に100%開いたものは開
花日数が2日、開花中に半開き状態だったりすると3~4
日になる傾向がみられる。
②枯黄蕾期間は2~7日。
③白蕾期間は2~5日。
④綿毛期間は1~2日。
⑤開花から坊主になるまでの期間は9~11日。
ここまで観察を続けて来て、初めは「黄花」と「綿毛」のイメージ
しかなかったのが、次第に発展して「緑蕾」「黄花」「枯黄蕾」
「白蕾」「綿毛」のように5段階で成長していく姿がイメージ
できるようになった。
種
緑蕾
黄花
枯黄蕾
白蕾
綿毛
タンポポ環
そして、成長の最終段階の綿毛は、風に吹かれて一個一個、種となって、
世界に飛び立ち、やがて着地した地点で、芽を出し、再び「緑蕾」を生
み出す。その「緑蕾」が成長して、やがて「綿毛」を生み、再び種とな
って飛び立つ。このように「種」から「種」へを繰り返す円環状の成長
を思い浮かべていると、いつの間にか「タンポポ環」という言葉が浮か
び上がって来た。
ところが、この「タンポポ環」モデルには大きな欠陥があることが
次第に明らかになる。
それは、「種」から「緑蕾」への成長は、「緑蕾」から「綿毛」ま
での成長とは本質的に全く異なっているということ。
「種」が直接生み出すのは「緑蕾」ではなく、「ロゼット」という
「インフラ」だということ。そして「緑蕾」から「綿毛」までは、
この「インフラ」の上で動くいわば「アプリ」に過ぎない。
タンポポの本質は「緑蕾」や「黄花」や「綿毛」ではなく、
「ロゼット」にこそあるのではないか。タンポポに対する認知は、
そんな風に変わりつつある(次頁のようなイメージに)。
インフラ
「ロゼット」
アプリ1
アプリ3
アプリ2
設計図
「種」
タンポポ・システムのイメージ

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