規制委員会人事について
- 2. 3.11後の日本を託す委員会
2012年6月原子力規制委員会設置法が
成立し、委員長と委員の選任手続が進行中
である。
この組織は、福島第1原発事故後の原子力
安全規制を委ねられ、全国の原発の再稼働
の適否や放射性廃棄物の管理処分の方法な
どについて判断していく組織である。
福島第1原発事故によって根底から失われ
た原子力安全行政への国民の信頼の回復が
、新たに選任される委員長・委員の手に委
ねられるはずだった。
- 3. 真に完全独立の機関設置
が求められていた
新たに設置される原子力規制委員会は経
済産業省から完全に独立し、これと明確
に分離されたものとする必要がある。
その実現なくして原発の再稼働の適否の
判断など到底不可能である。
真に独立した規制機関の設立は私たちの
要求だった。しかし現実に起きたことは
?。
- 4. あるべき原子力規制制度
経済産業行政から真に独立した規制機関を速や
かに設立する。規制委員会を設置し、委員の身
分保障を確立させることを目的としてきた。
経済産業省から規制機関には片道切符で。ノー
リターン制を全体に適用するべき。
「バックフィット制度」「過酷事故対策の法規
制化」「原発寿命制限」は危険な原発を止めて
いく武器となるはずだった。
しかし、独立性の高い委員会の委員に原子力ム
ラのボスが居座ったら、原発の永久推進体制が
できてしまう。その悪夢が現実となろうとして
- 5. その重大性にふさわしい手続を
原子力規制委員会設置法第7条は委員長及び
委員は、「人格が高潔であって、原子力利用
における安全の確保に関して専門的知識及び
経験並びに高い識見を有する」ことを求めて
いる。
真にこのような要件に合致したものが選任さ
れるためには、それにふさわしい委員長・委
員の選任基準と選任方法をとる必要があった
。
- 6. 国会事故調の求める選任手続
国会事故調は新たな規制組織の独立性は「①
政府内の推進組織からの独立性、②事業者か
らの独立性、③政治からの独立性を実現(中
略)する。」ものとする。
その委員の選定にあたっては、「第三者機関
に1次選定として、相当数の候補者の選定を
行わせた上で、その中から国会同意人事とし
て国会が最終決定するといった透明なプロセ
スを設定する」とされていた。
- 7. 日弁連7月19日付会長声明
法の定める欠格要件と7月3日要件に従
うだけでなく、委員長・委員が国会の同
意人事となっている趣旨を踏まえ、日弁
連は
「候補者の原子力安全に関する過去の主
要な言動を国会事務局において収集し、
国会に提出した上で、候補者を国会に招
致し、その資質と識見に関して時間をか
けて質疑を行い、そのプロセスを公開し
、さらに、その候補者に対する国民の意
見を聴取するべきである。」との意見を
- 8. 法の欠格要件と
政府が定めた欠格要件
法の欠格要件(法7条7項3号)
原子力事業者等及びその団体の役員、
従業者である者
政府が定めた欠格要件
就任前直近3年間に原子力事業者等及
びその団体の役員、従業者等であった者
更田氏・中村氏はこの二つの要件に該当
する。
- 9. 法の定める欠格事由
設置法7条7項三号は、規制委員会の委
員長及び委員について、「原子力に係る
製錬、加工、貯蔵、再処理若しくは廃棄
の事業を行う者、原子炉を設置する者、
(中略)の従業者」を欠格事由として定
めている。
- 10. 委員の選任に関する政府ガイドライ
ン
政府は、7月3日付要件において、委員
長及び委員について、上記法律上の欠格
要件に加えて、「 ①就任前直近3年間に
、原子力事業者等及びその団体の役員、
従業者等であった者、②就任前直近3年
間に、同一の原子力事業者等から、個人
として、一定額以上の報酬等を受領して
いた者」を不適格とした。
- 11. 「原子力事業者」とは
「原子力事業者」とは、原子炉等規制法
58条1項において「製錬事業者、加工
事業者、原子炉設置者、外国原子力船運
航者、使用済燃料貯蔵事業者、再処理事
業者、廃棄事業者及び使用者(中略以下
「原子力事業者等」という。)(略)」
と定められている。
- 12. 委員候補の更田豊志氏について
政府が提案している委員候補の更田豊志氏
は、現在、独立行政法人日本原子力研究開
発機構の副部門長である。
同機構は、高速増殖炉もんじゅを設置し、
東海再処理工場を保有する原子力事業者で
あり、法7条7項三号の定める再処理事業
者・原子炉設置者に該当することは明らか
である。
更田氏は、現在においても同機構の従業員
であって、上記の欠格要件に該当する。
- 13. 委員候補の中村佳代子氏について
政府が提案している委員候補の中村佳代子氏は、公益
社団法人日本アイソトープ協会のプロジェクトチーム
主査である。
同協会は、研究系・医療系の放射性廃棄物の集荷・貯
蔵・処理を行っており、「原子力に係る貯蔵・廃棄」
の事業を行う者である。
現在は文部科学省の管轄下にあるものの、法の施行後
は原子力規制委員会による規制・監督に服することに
なるのであって、法7条7項3号の定める原子力事業
者等に該当する。
中村氏は、現在においても同協会の従業員であって、
上記の欠格要件に該当する。
- 14. 委員長候補の田中俊一氏の経歴は
実質的に欠格要件に該当する
委員長候補の田中俊一氏は、日本における原
子力発電研究の拠点であった日本原子力研究
所の副理事長まで務め、その後も上記日本原
子力研究開発機構の特別顧問、高度情報科学
技術研究機構(旧(財)原子力データセンタ
ー)の会長、顧問を歴任し、原子力発電の推
進に一貫して関わり、2007年から200
9年まで、原子力委員会委員長代理を務めた
ものである。同機構は、高速増殖炉もんじゅ
を設置し使用済み核燃料の再処理を行う原子
力事業者であることは前述したとおりであり
、田中氏についても、欠格要件に該当する。
- 15. 実際の言動も行動も不適切
在任期間の点で、法及び政府が定める欠格要
件に直ちに該当するものではないとしても、
上記の欠格要件の趣旨に鑑みれば、実質的に
は欠格要件に該当するものといえる。
さらに、田中氏は金額が少ないとはいえ原子
力事業者から最近も相当額の報酬を受け取っ
ていた事実も判明しており、原子力損害賠償
紛争審査会における自主避難者の実情につい
ての無理解な発言なども考慮すると、上記のよ
うな欠格要件を定めた法の趣旨に鑑み、原子
力規制委員会委員長候補としての適格性がな
いといわざるを得ない。
- 16. 委員選任と同時に辞職するからよい
?!
政府は委員選任と同時に辞職予定である
から法の定める欠格事由に該当しないと
説明しているようである
しかし、辞職さえすれば欠格要件に該当
しないのであれば、欠格要件を定めた理
由がなく、このような解釈は法の趣旨に
反する。
- 17. 営利事業でないからよい?!
政府は、7月3日付要件については、独立行
政法人日本原子力研究開発機構・公益社団法
人日本アイソトープ協会は営利企業ではない
ため、「原子力事業者等」に該当しないと説
明している。
しかし、原子力規制委員会とその規制対象と
なる原子力事業者との間の利益相反を防止す
るとの欠格要件の趣旨は、非営利団体にも等
しく妥当する。政府の解釈は、欠格要件を定
めた法と7月3日要件の趣旨を理解せず、「
原子力事業者等」を不当に狭く解するもので
- 18. 選任のプロセスをやり直せ!
法と7月3日要件に定められた政府方針
に反するような者が委員候補とされたこ
とは遺憾である。
このような事態となった原因は現在政府
が進めている委員の選定のプロセスが不
透明であることに求められる。
選任のプロセス自体をやり直すためにも
、政府は法違反の二名だけでなく、人事
案全体を撤回し、委員候補を再提案する
よう強く求める。