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東から西へ!
北国の大学図書館職員が
フィンランドで学んだこと:
情報リテラシー教育への積極的な取り組み
平成27年6月4日(木)
東北大学附属図書館職員研修:フィンランドの図書館事情
室蘭工業大学 図書・学術情報事務室 学術ユニット
千葉 浩之
東から西へ!
北国の
大学図書館職員がフィンランドで
学んだこと:
情報リテラシー教育への積極的な取り組み
東から西へ!
北国の
大学図書館職員がフィンランドで
学 んだこと:
情報リテラシー教育への積極的な取り組み
東
北
大
学 と 私
1978 仙台市出身
1998-2002 文学部
2002-2004 文学研究科
2004-2014 北海道大学勤務
2014- 室蘭工業大学勤務
フィンランド
と 私
2012 フィンランド展を企画
※北海道大学EU情報センター(附属図書館)の
日・EUフレンドシップウィークのイベント
2013 国立大学図書館協会
海外派遣事業で訪問
東から西へ!
北国の
大学図書館職員がフィンランドで
学んだこと:
情報リテラシー教育への積極的な取り組み
はじめに
1. 学習環境
2. 情報リテラシー教育
3. フィンランドで学んだこと
おわりに
東から西へ!
北国の
大学図書館職員がフィンランドで
学んだこと:
情報リテラシー教育への積極的な取り組み
はじめに
1. 学習環境
2. 情報リテラシー教育
3. フィンランドで学んだこと
おわりに
“Japan is your neighbor’s neighbor!”(ややうけ)
東から西へ
5日間で9館(4大学図書館)+α
Helsinki University Library
Pasila Library
Library 10
Meetingpoint@lasipalatsi
北海道大学ヘルシンキオフィス
Turku University Library
Turku City Library
Oulu University Library
Lapland University Library
Santa Claus Village
Rovaniemi City Library
フィンランドの高等教育事情
・14大学+24応用科学大学=38機関
・大学に入学できるのは志望者の3割
・教養教育がない
・学費無料
東から西へ!
北国の
大学図書館職員がフィンランドで
学んだこと:
情報リテラシー教育への積極的な取り組み
はじめに
1. 学習環境
2. 情報リテラシー教育
3. フィンランドで学んだこと
おわりに
Helsinki University Library
学生に人気!:キャスター付きキャビネットのレンタル
ラーニング・センター(Learning Centre Aleksandria)
Turku University Library
University of Oulu
Science and Technology Library Tellus
ラーニング・センター × 図書館
Information Specialistのオフィス
Lapland University Library
クイズ31人に聞きました
“Learning Commonsをご存じですか?”
知っていたのは?
・ 1人?
・11人?
・21人?
・31人?
フィンランドの大学図書館職員
クイズ31人に聞きました
“Learning Commonsをご存じですか?”
知っていたのは?
・ 1人(日本通:CiNii、JAIROもご存じ)
・11人?
・21人?
・31人?
フィンランドの大学図書館職員
フィンランドでも
ラーコモどうでしょう?
・予算がない(政策が違う)?
・スペースがない?
確かに自動化書庫の話が受けていた
・人的サポート、恥ずかしい? …(^^;)
・学習観が違う?
“情報を収集して考えるスタイル”
ー Turku University Libraryでの聞き取り
こんなイメージ?
※Helsinki University Libraryの
Facebookページのプロフィール写真
東から西へ!
北国の
大学図書館職員がフィンランドで
学んだこと:
情報リテラシー教育への積極的な取り組み
はじめに
1. 学習環境
2. 情報リテラシー教育
3. フィンランドで学んだこと
おわりに
情報リテラシー教育と大学図書館
1999 ボローニャ宣言
2004 情報リテラシーネットワーク
情報リテラシー教育を
大学カリキュラムに含める提言
2005 カリキュラム改訂
2012 EMPATICによる勧告
2013 提言を改訂
情報リテラシー教育の
位置付けを高めたい!
教材の共有?
提言=共通認識
学習支援から研究支援まで
2013 提言の改訂
4. Doctoral Level
3. Master’s studies
2. Bachelor studies
1. New students
学内での教育機会
・授業の1コマで
・テーマ別の講習会で
ただし“業者を講師として招くことはしない”
― Helsinki University Library
・自ら開講する授業で
LMSを活用(学生:e-learnig>対面講義)
・担当職員=Information Specialist
Data Management 教育
“重要であるにも関わらず
どの部署も教えていないので
図書館が教えることにした”
― Helsinki University Library
Toolbox of Research
・University of Oulu の研究者支援Wiki
・図書館の発案→各部局を巻き込む
成果の
社会還元
文献の
探し方
論文の
書き方
研究資金
の獲得
東から西へ!
北国の
大学図書館職員がフィンランドで
学んだこと:
情報リテラシー教育への積極的な取り組み
はじめに
1. 学習環境
2. 情報リテラシー教育
3. フィンランドで学んだこと
おわりに
フィンランドで学んだこと
・情報リテラシー教育を軸として
学習支援だけでなく研究支援にも
図書館が関与していける
・Information Specialist vs. 人事異動
・管理部署が持つ知識・ツテの活用
・大学図書館の連携・共通認識の醸成が
積極的な取り組みにつながっている
Toolbox of Researchを
意識した講習会づくり
6/26(金) 講習会「学部生も院生も先生も!夏の英語論文まつり」
研究活動
情報収集
執筆
投稿
公開・発信
リモートアクセス
Web of Science
iThenticate
学術出版社と
本学教員によるレクチャー
文献管理ツールのプレゼンバトル
EndNote basic vs. Mendeley
機関リポジトリ
※資金の獲得に関するコマも
設けたかった……
大学図書館の連携の可能性?
・2004-
Information Literacy Network of
Finnish University Libraries
・「図書館の使い方」から始めるとバラバラ
・まとめてくれるものとして
「高等教育のための情報リテラシー基準
2015年版」
飛躍?
・オープンエデュケーションによる
高等教育の社会への普及
・情報リテラシー教育の需要?
・高等教育に携わる図書館として
ひとつの社会貢献のかたち?
高等教育を学ぶ機会
人生
東から西へ!
北国の
大学図書館職員がフィンランドで
学んだこと:
情報リテラシー教育への積極的な取り組み
はじめに
1. 学習環境
2. 情報リテラシー教育
3. フィンランドで学んだこと
おわりに
“いろんな国のひとたちと話したけれど
情報リテラシー教育は本当に重要”
― Ms. Kaisa Sinikara
前・Helisinki University Library 館長
フィンランドの取り組みは刺激的でした。
それでは、私たちはどうしましょう?
おわりに

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20150604_東から西へ!北国の大学図書館職員がフィンランドで学んだこと:情報リテラシー教育への積極的な取り組み

Editor's Notes

  1. 旅程は、せっかくなので、ものすごいタイトに組んでみました。初日、ヘルシンキ大学。2日目、3つの公共図書館と北大ヘルシンキオフィス。3日目トゥルクの2館。4日目、オウル大学。5日目、ラップランド大学とサンタクロースヴィレッジとロバニエミ市立図書館。
  2. さて、情報リテラシー教育について話す前に、高等教育事情を紹介します。人口500万人強のフィンランドには、研究を中心とする大学が14、職業人の養成を行う応用科学大学が24あります。大学進学は狭き門で入学できるのは志望者の3割。教養教育はなく、すぐに専門科目を学びます。また、学費が無料というのも日本と大きく違うところです。
  3. まず、ヘルシンキ大学図書館。都心にあります。2012年にできたばかりです。
  4. 玄関です。吹き抜けがあって、この上のフロアは閲覧室。入口は回転扉で、入館ゲートはありません。この規模、この立地でカウンターもばたばたしていません。
  5. メインの階段は螺旋階段。閲覧席は北大のようにずらっと並んでおらず、ぽつぽつとある感じです。
  6. ゆったりと勉強?しています。
  7. 人気の設備がこちら。本箱のレンタルです。よく使う資料を入れて。
  8. こんな感じで利用します。これはオウル大学でも見られました。
  9. しかし、オウル大学でラーニング・コモンズに似た空間を見つけました。
  10. こんな感じでひとりから、グループまで。賑やかな学習空間がありました。一方、サイレント・ゾーンはどこの大学にもありましたが、奥まったところに隔離されていて、利用も少なかったです。
  11. この学習空間に隣接して、情報リテラシー教育の専門家たちのオフィスがあります。困ったら、相談できます。ガラス張りで、最小限のプライバシーを担保しつつ、相談している様子が見えるのは大事だと思います。
  12. さて、情報リテラシー教育について話す前に、高等教育事情を紹介します。人口500万人強のフィンランドには、研究を中心とする大学が14、職業人の養成を行う応用科学大学が24あります。大学進学は狭き門で入学できるのは志望者の3割。教養教育はなく、すぐに専門科目を学びます。また、学費が無料というのも日本と大きく違うところです。
  13. さて、情報リテラシー教育について話す前に、高等教育事情を紹介します。人口500万人強のフィンランドには、研究を中心とする大学が14、職業人の養成を行う応用科学大学が24あります。大学進学は狭き門で入学できるのは志望者の3割。教養教育はなく、すぐに専門科目を学びます。また、学費が無料というのも日本と大きく違うところです。
  14. さて、情報リテラシー教育について話す前に、高等教育事情を紹介します。人口500万人強のフィンランドには、研究を中心とする大学が14、職業人の養成を行う応用科学大学が24あります。大学進学は狭き門で入学できるのは志望者の3割。教養教育はなく、すぐに専門科目を学びます。また、学費が無料というのも日本と大きく違うところです。
  15. さて、情報リテラシー教育について話す前に、高等教育事情を紹介します。人口500万人強のフィンランドには、研究を中心とする大学が14、職業人の養成を行う応用科学大学が24あります。大学進学は狭き門で入学できるのは志望者の3割。教養教育はなく、すぐに専門科目を学びます。また、学費が無料というのも日本と大きく違うところです。
  16. まずは、大学教育との、日常的、一般的な関わりです。図書館が大学で情報リテラシー教育を行う機会は3つあります。授業の1コマを借りて。これは日本でもよく行われています。講習会を開くこともあります。これもよくありますが、教えるのはあくまで図書館職員であり、データベース提供元から講師を招くことはしないとのことでした。来週本学ではElsevierの方にScopusの使い方を説明してもらうのですが、ちょっと耳が痛いですね。また、授業を開講することも珍しくありません。日本との一番の違いは、教える職員が「Information Specialist」と呼ばれる専門職であることでしょう。
  17. 一方、図書館の情報リテラシー教育は、大学の教育・研究のエアポケット、穴になっている部分を埋める役割も果たしています。例えば、ヘルシンキ大学図書館のデータマネジメント教育が挙げられます。
  18. 情報リテラシー教育を通して学内を巻き込んだ事例を紹介します。オウル大学のToolbox of Researchです。Wiki上に、研究資金の獲得から、文献の収集、論文の執筆、成果の社会還元まで、研究活動にまつわるあれこれを、学内の関係部署が分担して執筆しています。図書館が研究者向けの情報リテラシー教育を行いたいと、学内の各部署に働きかけたのが始まりで、情報リテラシー教育の範疇を超えて、研究活動全般をサポートするWikiが出来上がりました。