Young Pioneer's Presentation 第11回発表において使用。カントの認識理論に関する理論と「人間固有の領域」としての叡知界、さらに人間の自由の問題を取り扱っています。

1. 見えないけれども、あるんだよ(？)
カント先生と探る人間の世界
京都大学大学院文学研究科
近世西洋哲学史専修
佐藤 宗大
1

2. 簡単な自己紹介…
佐藤 宗大(さとう たかひろ)
京都大学大学院
文学研究科 近世西洋哲学史専修 M1
専門：I.Kantの自由概念研究
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3. 今日の大テーマ
カントの認識理論を参考にしながら、
「人間の世界」について考える
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4. 構成
1. カントという人
2. カント先生の挑戦
3. カント先生の認識理論
4. 理性の世界へ −自由を求めて−
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5. 構成
1. カントという人
2. カント先生の挑戦
3. カント先生の認識理論
4. 理性の世界へ−自由を求めて−
5

6. Immanuel Kant(1724-1804)
史上初の「職業哲学者」
6

7. T.ホッブズ(1588-1679)
家庭教師
G.W. ライプニッツ(1646-1716)
外交官
従来の哲学者にはパトロンや「本業」があった
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8. Immanuel Kant(1724-1804)
ケーニヒスベルク大学教員(晩年には総長も)
1755 私講師資格授与
1770 教授就任
1786 総長就任
1788 総長再任
1796 講義活動終了
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9. Immanuel Kant(1724-1804)
ドイツ哲学への影響
フィヒテ
ショーペンハウアー
ヘーゲル
福谷茂
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10. Immanuel Kant(1724-1804)
哲学史を一歩先に進めた男
旧来の
哲学史的事実
独自の
哲学的思索
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11. Immanuel Kant(1724-1804)
我々は哲学を学ぶことは出来ない
ただ哲学することのみを学びうる(B866)
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12. では、哲学しましょう
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13. 構成
1. カントという人
2. カント先生の挑戦
3. カント先生の認識理論
4. 理性の世界へ−自由を求めて−
13

14. 14
3つの質問

15. Question 1
好きな人とか気になる人、いたことありますか？
15

16. Question 1
好きな人とか気になる人、いたことありますか？
Question 2
その人のどんなとこが素敵でしたか？
16

17. Question 1
好きな人とか気になる人、いたことありますか？
Question 2
その人のどんなとこが素敵でしたか？
Question 3
その人、ほんとにそんな人でしたか？
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18. 僕たちは普通こう考える
18
女の子(対象)
わたし(認識[の主体])
女の子だ！感覚的情報

19. 僕たちは普通こう考える
19
女の子(対象)
わたし(認識[の主体])
女の子だ！感覚的情報
でも…
こういう風に「見ている」なら
「思い違い」なんて起きないのでは？？？

20. カント先生の疑問
• 「思ってたんと違う…」のはどうして
か？
• 僕らはどうやってモノを見ているのか？
• 僕らに「見えている」のは何か？ 20

21. 構成
1. カントという人
2. カント先生の挑戦
3. カント先生の認識理論
4. 理性の世界へ
21

22. カント先生のお考えでは…
22
こういう認識モデルは無理があるんじゃないのか？
↓
「新しい」認識モデルの模索

23. カント先生の「答え」
対象は「僕らの中」にある！
「認識が対象に従うのではなくて、対象が認識に従う」
23

24. では、カントはどう考えたか？
24
わたし(認識[の主体])

25. では、カントはどう考えたか？
25
わたし(認識[の主体])

26. では、カントはどう考えたか？
26
わたし(認識[の主体])
感覚的情報

27. では、カントはどう考えたか？
27
感覚的情報
「考える」わたし

28. では、カントはどう考えたか？
28
感覚的情報
「考える」わたし

29. では、カントはどう考えたか？
29
感覚的情報
「考える」わたし
これは何だ…？

30. では、カントはどう考えたか？
30
感覚的情報
「考える」わたし
あっあの子だ！

31. では、カントはどう考えたか？
31
対象の認識
「考える」わたし
あっあの子だ！

32. では、カントはどう考えたか？
32
対象の認識
「考える」わたし
あっあの子だ！

33. では、カントはどう考えたか？
33
対象の認識
「考える」わたし
あっあの子だ！
あの子の姿は情報を整理した
「イメージ」である！

34. では、カントはどう考えたか？
34
感覚的情報
「考える」わたし

35. では、カントはどう考えたか？
35
感覚的情報
「考える」わたし
「物自体(Ding an sich)」

36. では、カントはどう考えたか？
36
対象の認識
「考える」わたし
「現象(Erscheinung)」

37. では、カントはどう考えたか？
37
感覚的情報
「考える」わたし
「物自体(Ding an sich)」
物自体は不可知
→存在が推論されるだけ

38. では、カントはどう考えたか？
38
対象の認識
「考える」わたし
「現象(Erscheinung)」
我々に与えられるのは「現象」

39. こっちのモデルが「ダメ」なのは…
39
「物自体」である対象を直接認識している
↓
「物自体」が何なのかは私たちには分からない

40. 40
カント哲学の功績は…
「現象」と「物自体」との区別
現象
(イメージ)
物自体
感覚的情報
対象の認識

41. • 僕たちは「現象」の世界に生きている
• 「現象」の世界で、科学も正当性を得る
→「現象」の世界は自然法則が支配
↓
「自然法則が支配する世界に住んでいて、
人間の自由はどうなってしまうんだ…？」
→人間の自由をどこかに確保する必要性
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42. もし…
42
推論で想定される
物自体
「物自体」は
「思考すること」で
存在する
「物自体」の空間が
あったとしたら？

43. カント先生はこう考えた
「物自体の空間に、自由を確保できないか？」
物自体の空間＝人間の思考(理性)の世界
→人間固有の世界
ここでなら、自然法則の影響を受けないはず…
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44. カント先生の次なる課題
「物自体の領域では一体何が出来るか？」
→人間の自由を守る最後の戦いへ
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45. 構成
1. カントという人
2. カント先生の挑戦
3. カント先生の認識理論
4. 理性の世界へ−自由を求めて−
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46. カント先生の次なるプロジェクト
「人間固有の領域」に自由を求める
↓
カントの狙い
「人間固有の領域」＝「理性の世界」に
人間が倫理的に生きる指針を求めること
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47. 47
推論
「物自体」概念を積極的に理解すると…
不可知、思考によって推定
↓
思考によって領域が開かれる？
↓
「理性の世界」の可能性？
物自体

48. 48
認識論では不可知な「物自体」
現象
(イメージ)
物自体
感覚的情報
対象の認識

49. 49
物自体の「世界」化→アクセス可能性
現象
(イメージ)
物自体
思考
対象の認識

50. 物自体の「世界」化→２つの「世界」
• 「現象」＝経験の世界
→いわゆる「世界」や「自然」
→現象界(感覚、感情の世界)
• 「積極的物自体」＝理性の世界
→人間固有の領域
→叡知界(合理的思考の世界)
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51. 現象界の「私」
→「自然」の一部、自然法則の支配下
→感覚・感情に振り回される
もし人間が「感覚界」にしか存在しなかったら…
• 自然法則に従うだけ、自由は無い
• 理性的・倫理的に振る舞うのは不可能！
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52. 叡知界の「私」
→合理的思考の世界、自分の理性に基づく
→感覚・感情の影響を受けない
つまり叡知界の「私」は…
• 自然法則の及ばない世界で自由に行為
• むしろ理性的・倫理的にのみ振る舞う！
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2つの世界の「私」
感覚界の「私」
自然法則の支配
感情などに左右
参照する
実際の行為
考える「私」
叡知界の「私」
理想的・合理的
「自由」に行為

54. • 叡知界では、人間は自然法則に振り回さ
れずに行為できる
＝理性の合理的な判断のみに従う
→人間の自由
• 叡知界の「私」は、現象界の「私」が倫
理的に振る舞う手本となる
→自由こそが人間の道徳を可能にする！
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55. 55
Q.「物自体の領域で一体何が出来るか？」
→A1. 人間はそこで「自由」にふるまえる
→A2. 神さまいらずの倫理体系が確立できる
人間は、自分の理性の力によって、
自由に正しく生きることができる
↓
「人間らしい」在り方の提案

56. まとめ
• 僕らは自分たちが作り出した「イメー
ジ」の世界に住んでいる
• 本当の「モノ」は知り得ない
• 「見えない世界」が、僕らの自由や正し
い生き方を支えている
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57. しかし…
目に見えない理性の世界なんて、
あなたは信じますか？
信じませんか？
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58. ご静聴ありがとうございました
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59. 参考文献
カント(石川文康訳)(2014)
『純粋理性批判』、筑摩書房
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