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液相スラリー床を用いた
廃食油からの炭化水素系
新バイオディーゼルの製造
平川 哲也・朝見 賢二(北九大)・谷 春樹(名大)
村上 弥生・藤元 薫 (HiBD研)
2B10
背景
HiBD(High quality Bio Diesel)
• 脂肪族炭化水素
• 流動点が低い
• 触媒と生成物の分離が不要
• 様々な原料に使用可能
• 副生成物が炭酸ガス、軽質ガスのみ
2
触媒
脱炭酸分解
CH2-O-C-R1
|
CH-O-C-R2
|
CH2-O-C-R3
O
O
O
CO2
炭化水素
ガス
=
=
= R1~3
3CO2
C3H6
HiBD油
副原料 触媒 反応条件 生成物 副生成物
FAME法 メタノール アルカリ触媒
50~60℃
常圧
脂肪酸メチルエステル
(FAME)
グリセリン
(触媒混合)
BHD法 水素 水素化触媒
260~300℃
60~80気圧
炭化水素油
水、炭酸ガス、
プロパン
HiBD法 なし MgO系触媒
400~430℃
常圧
脂肪族炭化水素
炭酸ガス、
軽質ガス
これまでの成果について
3
He
原料
液相
触媒
+
原料
スラリー床
触媒
触媒
原料He
固定床
気液固相
He
原料
気液固相
撹拌式
パイロットプラント建設
問題点:コーク析出
• 触媒固着
• 撹拌の妨げ
• 触媒固着抑制
液相反応
液相条件下でのHiBD油生成法の開発
I. 液相反応でのHiBD油生成過程の把握
II. スラリー床での運転条件の検討
III. 固定床、撹拌式との性能比較
目的
4
〈反応条件〉
原料:廃食用油 50g
供給量:0.3mL/min
触媒重量:10g
温度:430℃
キャリアガス:He 50mL/min
撹拌速度:150rpm
反応装置
Silica(粒径: 1.18~2.36mm)
〈触媒調製〉
含浸法
Mg(NO3)2・6H2O
Ca (NO3)2・4H2O
ZrO(NO3)2・2H2O
乾燥(100℃,6h) 焼成(500℃,3.5h)
使用触媒 略称
10wt% MgO/SiO2 10M
MFC
反応器
撹拌器
分解油
GC-
TCD
GC-
FID
He
排気
冷却管(0℃)
熱電対
原料
15.5㎝
5.0㎝
( )15wt% MgO/SiO2 :15M
5wt%MgO-5wt%CaO-5wt%ZrO2/SiO2:5M5C5Z
液相反応の把握、運転方法の設定(バッチ式)
5
0
10
20
30
40
50
0 40 80 120 160 200 240
0
100
200
300
400
積算流出量[mL]
時間[min]
温度[℃]
A温度
B温度
A
B
〈積算流出量と温度変化〉
〈反応器の内部状態〉
低流出速度
0.2mL/min
低酸価(5.5)
B:下部加熱
塔頂250-300℃
Rn-COOH Rn
-CO2
-H2O,-CO2
R-C-R
O
=
CH2-O-C-R1
|
CH-O-C-R2
|
CH2-O-C-R3
O
O
O
===
R=C16沸点:376℃
〈HiBD反応機構〉
Rn-1
加熱
高流出速度
0.8mL/min
高酸価(12.4)
A:全体加熱
塔頂 390-420℃
スラリー床と各反応方式の生成油比較
6
スラリー床を用いることで収率が向上し、酸価は低減
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
0 50 100 150 200
液体炭化水素収率[%]
W/F[g-cat・h/ml]
0
10
20
30
40
50
0 100 200
酸価[mg-KOH/mg-HiBD]
W/F[g-cat・h/ml]
〈反応条件〉
温度:430℃
時間:4~5h
目的生成物
0
2
4
6
8
10
12
14
0 5 10 15 20 25 30
選択率[%]
炭素数[-]
7
炭素数分布の比較 〈反応条件〉
温度:430℃
触媒:10M
脂肪酸
ケトン
C5~C20 C10~C20 C20~
スラリー床[%] 92 67 1.6
撹拌式[%] 86 76 14
固定床[%] 66 53 33
スラリー床:50
撹拌式:99
固定床:99
各方式の触媒固着
8
0 1 2 3 4 5 6 7 8
廃食油処理量[g-廃食油/g-触媒]
固定床
撹拌式
スラリー床
炭素析出:約25%
炭素析出:約30%
炭素析出:約50%
• 液相条件における固着の抑制
• 処理量当りの炭素析出量はほぼ同じ
結論
I. 液相反応でのHiBD油生成過程の把握
• 反応器内の状態を知ることで液相に還流効果を用いることが有効だ
と判断できた。
II. スラリー床を用いた際の運転条件の検討
• 還流効果により液面を維持できる条件設定ができた。
III. 固定床、撹拌式との性能比較
• 液相反応を用いることで他方式と比較し高い収率、同じ選択率、低い
酸価を持つ分解油を生成できた。
• 触媒を変更することで酸価の低減を行うことができた。
• 炭素析出は発生するが、大量処理してもほとんど固着しないため他
反応方式より長時間の反応が可能。
9
謝辞
本研究は、JST-JICA共同研究プログラム地球規模課題対応
国際科学技術協力機構(SATREPS)によるものである。
触媒の最適化(バッチ式)
使用する触媒(予定)
触媒名 担体 粒子径 細孔径
[nm]
担持物 担持量 備考
MgO/Q-50(粉) SiO2(Q-50) 70-150μm 50.0 MgO 10wt% Q3‐50有
MgO/Q-15(粉) SiO2(Q-15) 70-150μm 15.0 MgO 10wt%
MgO/Q-10(粉) SiO2(Q-10) 70-150μm 10.0 MgO 10wt%
MgO/Q-10(粒) SiO2(Q-10) 1.18-2.36㎜ 10.0 MgO 10wt%
ZrO2/Q-10(粒) SiO2(Q-10) 1.18‐2.36㎜ 10.0 ZrO2 10wt%
硫酸アルミニウム Al2(SO4)3 - ― ―
F200 Al2O3 3.2㎜ 5.1 ― ― 粉にして使用
ネオビード Al2O3 3.35‐4.75㎜ 11.1 ― ―
ドロマイト - ― ― CaMg(CO3)2 等
ハイドロタルサイト - ― ― アルミナシリカ
水ガラス SiO2/Na2O - - ― ―
粒径、細孔径、担体、担持物を変更して比較する。
反応と、TPD(NH3,CO2)、比表面積測定等の分析を行う。
結果
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
Q10(粒)流通 Q10粒 Q-50(粉) Q-15(粉)
Yield[wt%]
Craked oil Dry Gas CO CO2 H2O Residue
2016/4/7 12
0
2
4
6
8
10
12
14
0 5 10 15 20 25 30
選択率[wt%]
炭素数[-]
Q-10(粒)
流通式
Q-50(粉)
Q-15(粉)
触媒名 C10~C20選択率(%) AV
Q-10(粒) 71.65 5.5
Q-15(粉) 73.34 4.3
Q-50(粉) 74.67 3.4
生成油収率
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
10M 10M 15M 10M 5M5C5Z 10M
固定床 撹拌流通式 22 21 20 14(バッチ)
Yield[wt%]
Residue
H2O
CO2
CO
Dry Gas
Craked oil
13
14
触媒比較
0
2
4
6
8
10
12
14
0 5 10 15 20 25 30
選択率[wt%]
炭素数[-]
5M5C5Z
10M
15M
触媒
10M 8.9
15M 7.1
5M5C5Z 6.8
触媒 出典:http://hibd.net/summary.html
触媒層と分解油の見た目
154h 8h 12h 16h 20h 24h 28h 30h 34h 36h 40h 42h
30h 36h 42h
16

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第45回石油・石油化学討論会

Editor's Notes

  1. このようなタイトルで朝見研究室平川が発表させていただきます。
  2. 近年石油の代替燃料としてバイオ燃料が注目され、特にバイオディーゼルの研究は盛んに行われています。 我々のグループでは新しいバイオディーゼル燃料製造法として固体触媒を用いて油脂を脱炭酸分解するHiBD法(High Quality Bio Diesel)の研究を進めています。 こちらが反応のコンセプトで、油脂を接触分解によりディーゼル留分と副生成物に分解します。 以下の表のようにFAME法などの従来の製造法と比較して生成物が脂肪族炭化水素であること、流動点が低いこと、触媒と生成物の分離が不要、副生成物が炭酸ガスと炭化水素ガスのみであるなどの利点が挙げられます。
  3. これまでの研究では固定床と、それを発展させた撹拌式で研究を進めてきており、撹拌式反応器でのパイロットプラントの運転に至っています。 撹拌式とは触媒のみを反応器に入れ加熱と撹拌を行いながら原料を供給する方式です。 しかし、どちらもコーキングにより触媒の固着や撹拌の妨げが問題となっています。 この問題を解決するために液相反応に着目し、検討を行いました。 着目した理由としては、液体中に触媒が分散することで触媒同士の接触を抑え、固着を抑制する狙いがあります。 以下が目的です。 液相では液総状態の維持が必要になるのでその検討、また、他方式との精製油比較を行います。
  4. スラリー床反応器のフロー図をこちらに示します。 (反応条件) これまでと違うところは予め原料の廃食油を仕込んで反応をスタートさせる点です。 (分析法) 生成油は冷却管にて捕集し、ガス分はオンラインのTCD,FIDで分析を、液体分はオフラインのガスクロ、電位差滴定装置で酸価を測定しました。 次に使用触媒について、10wt%マフネシアシリカ、と、一部以下の触媒を使用し、触媒調整については含浸法を用いて以下のように行います。 これ以降は略称として担持割合と担持物の頭文字をとり、右の表記を行います。
  5. 続いて実験結果に移ります。 加熱速度と流出の関係を知るためにバッチ式において加熱条件を変えて実験を行いました。 Aの状態で グラフのオレンジがAの図、ブルーがBの図の加熱条件で点線が温度条件、実践が生成油の流出量です。 スラリー床で反応を行うためにはまず原料供給と生成油の流出速度を調整し、反応器中の液相状態を維持する必要があります。 まず原料供給を行わないバッチ式反応器にて流出速度の調整を行いました。 グラフは縦軸に点線で温度、実線で積算流出量を横軸に経過時間を示しています。 ここでの目標は、なるべく一定の流出量と他方式と比較できる空間速度への設定で、赤の点線が理想のラインとなります この反応では中間生成物の脂肪酸を介して目的の炭化水素となりますが、脂肪酸となった時に沸点が下がるため Aの様に反応器全体の温度が高いと中間生成物が多く流出してしまい、グラフとしてはオレンジとなり、理想ラインと大きく異なっています。 そこでBの様に反応器の下部のみを加熱し、気化した中間生成物が反応器内で再び液化して出ていかないように還流させることで 青の実線となり、理想値ともほぼ一致しました。 この条件でスラリー床反応を行ったところ、±1㎝の範囲で液面を維持することができました。
  6. スラリー床の条件が整ったのでスラリー床と前述の2反応方式との生成油の比較を行いました。 これらのグラフは横軸に液空間速度として、左の縦軸は液体炭化水素収率、右の縦軸は酸価で比較しています。 LHSV0.9で比較すると液体炭化水素収率は他方式の約1.5倍の収率を示しており、触媒を変えてもそれを維持しています。 同じくLHSV0.9の場合酸価は他方式より低減できています。 また、触媒を変更することで酸価は低減していますが、バイオディーゼル油を用いる規格であるニート規格では酸価0.5以下なので更なる検討が必要です。
  7. また、炭素数選択率で比較します。 このグラフは縦軸が選択率、横軸が炭素数を示しています。 スラリー床のみLHSV0.9となっています。 目的生成物のC11~C19はスラリー床と撹拌式では同じ割合であり、 固定床では目的生成物より高炭素数の物質も流出しています。 その分布ではスラリー床にのみ高炭素数の中間生成物が少ないですが、 これは反応方式の特徴によるものだと考えられます。 スラリー床では生成物が排出されにくいという特徴を持ちますが、それと還流の効果により中間体などが 反応器内に長く留まることで炭化水素となり流出します。 これは先ほどの液体炭化水素収率の向上と酸価の低減の理由ともなります。
  8. 最後に課題であった触媒固着の低減についてです。 単位触媒量当たりの廃食油処理量を示していますが、 見ての通り、固定床と撹拌式ではスラリー床より少ない処理量で固着が起きていますが、 スラリー床では固定床の2倍量処理しても触媒同士の固着は見られず、目的を達成できていると言えます。 これはHiBD油製造において撹拌による触媒固着抑制が重要である証拠でもあります。
  9. 結論は以下の通りです。 ご清聴ありがとうございました。
  10. 触媒変化時の炭素数選択率とそれぞれの酸価を示す。 選択率はほぼ同じ分布であると言える。 触媒能より反応器の改良の影響が大きいのでは 酸価…触媒を変えることで低減はできている バイオディーゼルの規格であるニート規格は0.5であり、10倍以上の値である 触媒条件を変更し更に酸価を低減することが必要。…具体的には?