減損会計のしくみ
近畿大学 経営学部 会計学科
小山亮介
2016 年 5 月 10 日
1
事業用投資をする理由
生産能力の拡大生産能力の拡大
販路、サービス拡充販路、サービス拡充
のためのため
長期にわたっての使用長期にわたっての使用
により、により、
回収をはかる回収をはかる
より多くの利益を獲より多くの利益を獲
得得
2
減損会計とは
事業環境の変化や設備の陳腐化が発生! ( 原因 )
            ↓
それによって投資を行った事業用固定資産について、
予定した将来キャッシュフローの回収ができなくなっ
た!
            ↓
回収不能分を帳簿価額を切り下げる。 ( 手続処理 )
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質問
~投資額以上の回収が見込まれる場合について~
簿価の切り上げはしないの?
4
答
切り上げは行わない。 減損会計≠時価会計
「金融商品会計」は交換価値(トレード目的)を前提として、
売却による利益獲得を目的とする     ex 有価証券
「事業用固定資産」は使用価値を前提とした、長期保有目的の資産
。
投資額を超えた超過回収額の回収を目的としない。
 
 ⇒結果として、評価益に相当するものは、利益に反映されている5
「簿価」=貸借対照表価額
☆ 費用性資産(建物、棚卸資産、固定資産など)とは
 過去に支出をしたが、将来の収益に対応して費用とす
るために、資産として計上されるもの
⇒ 費用だから、収益を獲得するための犠牲である
   =「将来の収益獲得に役立つもの」
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減損会計の適用対象(固定資産)
• 有形固定資産 
    ex  建物、機械装置、土地、建設仮勘定
• 無形固定資産 
    ex  自社利用ソフトウェア、商標権、のれん
• 投資その他の資産
    ex  投資不動産
 ※他の基準に定めのある資産は、対象外
    ex  市場販売目的ソフトウェア、投資有価証券 7
☆ 減損会計の手順☆
Step1  資産のグルーピング
Step2  減損の兆候の把握
Step3  減損損失の認識判定
Step4  減損損失の測定
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Step1  資産のグルーピング
現実には、資産単体で売上を生み出す単位とはなりづ
らい。
通常、複数の資産 ( 土地+建物+機械 ) を使うことで、
売上を生みだしている。
⇒ 資産を「キャッシュを生み出す単位」にグループ
化!
ただし、資産のグルーピングは、他の資産又は資産グループの
キャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出
す最小の単位で行う 9
Step1  資産のグルーピング②
•第1段階 最小単位の識別
•第2段階 相互補完性    
 →関連性があるのか?
  例えば、 A と B の二つの単位がある。 A を廃止すると、
B から生じ るキャッシュフローが減少するなど等、大き
な影響がある場 合は相互補完性がある。
   
  ex 製品工場と部品工場、大阪製品工場と東京製品工場
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[設例 1-1 ] 製造業-機能別の区分を基礎にした資産のグルーピング  資産のグルーピング(第 7 項参照)
( 1 )前提条件
甲社は、製品群 A 及び B を製造・販売し、商品群 D を販売している。
Y 工場(所有)では、原材料 C を加工し、 X 工場に供給するとともに外部へも販売している。
X 工場(所有)では、仕入れた原材料 C を中心に製造ライン A で製品群 A を製造し、本社(土地
建物は外部から賃借)にある営業部を通じて販売している。また、 X 工場では、外部から仕入れた原
材料により製造ライン B で製品群 B を製造して、外部へ直接販売している。
本社営業部では、製品群 A を X 工場から、商品群 D を外部から仕入れ、各々、小売店へ卸している
甲社は、合理的な社内価格(内部振替価額)を用いて、 Y 工場、 X 工場製造ライン A 及び B 、営業
部に分けて管理している。なお、製品群 A 及び製品群 B には多種の製品が含まれている。
原材料 C
X 工場(所有) 本社 営業部Y 工場(所有)
外部
(市場)
製品群
A
製品群
B
製品群
A
商品群
D
Step2  減損の兆候の把握
•営業活動から生じる損益が継続してマイナス(2期
連続)
•回収可能額を著しく低下させる変化がある
•経営環境の著しい悪化がある
•市場環境の著しい下落がある
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新聞「大手5商社、減損1兆円」 
大手商社は資源・エネルギーのビジネスに注力していた。
 住友商事(ニッケル)、三井物産(銅)、丸紅(原油)
 三菱商事( LNG )、伊藤忠商事( LNG )
各商社はエネルギー開発のために、プラント建設に莫大な建設費を
投資していた。
しかし、今年に入って原油などの資源価格の下落 + 新興国の需要量
の低下により、予定した投資額の回収が困難になり減損損失を計上
をした。
閲覧日 2016/4/26   「 2016/3/25  日本経済新聞社総合商社、「資源頼み」曲がり角 5社減損1兆円 13
Step3  減損損失の認識判定
「投資のもとがとれるか」の回収可能性テストを行
う。
《割引前将来 CF <資産グループの簿価合計》の場合
は、
減損を認識!
{固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 36}
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において見積られる将来キャ ッ
シュ・フローを、企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定及び予測に基づい14
割引前 CF の見積 
〈期間〉
 経済的残存耐用年数=見込みの使用期間(20年まで)
 資産グループの中から、質と量において最重要の資産を基準とす
る
〈金額〉
 合理的で説明可能な仮定および予測の基づくもの 
   ex  中期経営計画など
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Step4  減損損失の測定
減損損失計上額=簿価-回収可能価額
① 使用価値(事業に使って、収益を生み出す)
② 正味売却価額
 いずれか大きいほうの金額を回収可能価額とする
{固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 25}
減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額
を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とする(減損会計基
準 二 3  参照)。回収可能価額を算定するにあたっては、正味売却価額の算定(第 28
項 参照)及び使用価値の算定(第 31 項参照)の考え方に基づいて行う。
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① 使用価値の算定
• 将来 CF を現在価値に引き直したもの(=割引後将来 CF )
• 実績が見積より乖離するリスク
  貨幣の時間価値のみ反映されたレート+リスクプレミアム
〈 A 法算定式〉
 割引前 CF÷ (1+リスクフリー・レート+リスクプレミアム) ^ n
{固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 25}
資産又は資産グループに係る将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリス
ク について、将来キャッシュ・フローの見積りに反映されていない場合、使用価値
の算定に 際して用いられる割引率は、貨幣の時間価値と将来キャッシュ・フローが
その見積値から 乖離するリスクの両方を反映したもの(減損会計基準 二 5. 参照)
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② 正味売却価額
=資産グループの時価―処分見込額
時価→観測可能な市場価格→事業用資産はなし
→ 合理的に算定された価額
 不動産:不動産鑑定士による鑑定評価額(重要性大)
  市場価額を反映する指標    ex 路線価(重要性小)
 動産;インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、コス
ト・アプローチを
併用または選択して算定
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{固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 107-115} 一部
108. 正味売却価額を算定するにあたって、固定資産においては、観察可能な市場価格が存在
する場合は多くはないが、存在するときには、金融資産と同様に、原則として、市場価格 に
基づく価額を時価とする(第 28 項 (1) 参照)。当該市場価格は、会計制度委員会報告第 14
号「金融商品会計に関する実務指針」第 48 項から第 52 項に準ずる。
109. 市場価格が観察できない場合に求められる資産又は資産グループの合理的に算定された
価額は、一般に、以下に示すようなコスト・アプローチやマーケット・アプローチ、インカ
ム・アプローチによる見積方法が考えられ、資産の特性等によりこれらのアプローチ を併用
又は選択して算定することとなると考えられる(第 28 項 (2) 参照)。
110. 「不動産鑑定評価基準」において、不動産の鑑定評価によって求める価格のうち、減損
処理を行うにあたって時価に対応するものは正常価格(市場性を有する不動産について、 現
実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう 市場価
値を表示する適正な価格)である(「不動産鑑定評価基準」第 5 章 第 3 節 Ⅰ参照)。 正常
価格を求めるにあたっても、第 109 項に掲げられた 3 手法の適用により求められた価 格
(試算価格)を調整して、鑑定評価額を決定する(「不動産鑑定評価基準」第 8 章参照)。
その他の固定資産についても、例えば、船舶・航空機、建設機械等、同種の資産に中古市 場
があればマーケット・アプローチを基礎として、また、その資産に汎用性があれば第三 者の
利用を前提としたインカム・アプローチを基礎として、合理的に算定された価額を見 積るこ
とが考えられる。
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共用資産の減損
• グルーピングは「より大きな単位」
• 兆候は「より大きな単位」または「共用資産自体」あるか?
• 測定して、新たに減損が計上された場合は、優先的に共用資産
に配分する
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Step1 共用資産がサポートする資産グループ自体の減損を判定、測定
Step2  より大きな単位について、兆候・認識の判定、測定
Step3  減損処理額の配分
のれんと減損
• 基本的には共用資産と同じ
• 複数の事業があるのれんは、のれん分割をする
要件;取得対価が事業別に決定され、かつ、独立した単位で管理されてい
る場合
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Step1 共用資産がサポートする資産グループ自体の減損を判定、測定
Step1.5  のれんの分割
Step2  より大きな単位について、兆候・認識の判定、測定
Step3  減損処理額の配分
固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 129-133} 一部
129. 一般に、共用資産の帳簿価額を合理的な基準で各資産又は資産グループ
に配分すること は困難であると考えられるため、共用資産を含む、より大きな
単位又は共用資産自体に減 損の兆候がある場合の共用資産に係る減損損失を認
識するかどうかの判定及び減損損失 の測定は、共用資産が関連する複数の資産
又は資産グループに共用資産を加えた、より大きな単位で行うこととされてい
る(減損会計意見書 四 2.(7)② 及び減損会計基準 二 7. 参照)
131. のれんの帳簿価額を分割し帰属させる事業の単位は、取得の対価が概ね
独立して決定さ れ、かつ、取得後も内部管理上独立した業績報告が行われる単
位(減損会計基準 注解(注 9 )参照)であり、通常、資産グループよりは大
きいが、開示対象セグメントの基礎となる事業区分と同じか小さいこととなる
と考えられる(第 51 項 (1) 参照)
133. のれんの帳簿価額を当該のれんが帰属する事業に関連する各資産グルー
プに合理的に 配分することができる場合には、のれんの帳簿価額を各資産グ
ループに配分する方法を採用することができる(減損会計基準 二 8. 参照)
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減損損失は戻入れ?~収益性が回復した場合~
23
問 
かつて、減損損失を計上をしたが、当年度において収益性が回復をした
(簿価<回収可能価額になった)
答
戻入れしない!
① 減損損失計上時には。減損の存在が相当程度確実な場合のみとしており、
このようなケースは多くはないと考えられるから。
② 実務負担が大きいため  
ex 収益性回復のモニタリング、回収可能価額の再評価、減価償却の見直しな
ど

減損会計のしくみ 完成版