2015年9月5日
東電・国の刑事責任を追及する
福島原発告訴団の闘いの現段階と課題
市民の正義が東電・国が隠蔽した
福島原発事故の真実を明らかにする途を開いた!
                               
 
                  
                 
弁護士 海渡雄一
(福島原発告訴団弁護団
                         東電株主代
表訴訟弁護団  
                        脱原発弁護団
全国連絡会共同代表)
2
ついに強制起訴の議決を勝ち取る
!福島第一原発を襲った津波
3
非常用ディーゼル発電機(浜岡原発4号機)
原告は検証時に津波による水没を警告していた
静岡地方裁判所検証調書より
検察審査会は東電会長・副社長の
強制起訴を求めた
 2015年 7 月 31 日、東京第五検察審査会は、
昨年7月31日に引き続き、2013年9月9日
に東京地検が不起訴処分とした東電元幹部のうち
、勝俣恒久元会長、武藤栄、武黒一郎の両元副社
長について、業務上過失致死傷罪で強制起訴を求
める議決を行った。
左から
被疑者勝俣
武藤、武黒
やっとここまで来た!
 告訴団の武藤類子代表「『やっとここまで来た
』という思いです。原発事故は終わったという
雰囲気がありますが、何も終わっていません。
今後、開かれる刑事裁判の中で、事故の真実が
明らかにされ、正当な裁きが下されると信じて
います」とコメントした。
 弁護団の河合弘之弁護士「これだけ重大な事故
が起きて、誰も罪に問われないのはおかしいと
いう市民の正義感が検察の判断を覆した。原発
事故の真実が永久に闇に葬られそうになってい
たところ、再びドアを開かせた意味は非常に大
起訴議決は政府事故調と
検察の描いてきた構図を一変させ
た
 議決の最大のポイントは2007年12
月時点で、東電は推本の長期評価を取り
入れる方針を決め、2009年6月には
耐震バックチェックを終える計画であっ
たとされたことだ。
 2008年7月の武藤指示は、いったん
決定されていた東電の社の方針を土木学
会への検討依頼を口実に、全面転換し、
早期に終えなくてはならないバックチェ
ックを何年も先送りすることを意味して
いた。
津波対策を求める公的な見解の
数々
1997年には福島沖の津波地震
の想定が政府から指示されていた
 7つの省庁がまとめた津波想定方法
 「太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調
査」
 日本海溝の津波地震を予測していた。
 2014年7月に添田孝史氏(岩波新書
『原発と大津波 警告を葬った人々』)
の情報公開によって明らかになった。
2000年電事連報告では福島第一
は日本一津波に脆弱であることが示
されていた
 電事連の「津波に関するプラント概略影響評
価」(甲8 国会事故調参考資料編 41頁
)は,平成9年 ( 1997年 ) 6月の通産省
の指示に対応して,平成14年(2002年
)2月に電事連内の総合部会に提出されたも
のである。
 解析誤差を考慮して想定値の1.2倍,1.
5倍,2倍の津波高さで原発がどう影響を受
けるか調べ、全国の原発の中で,想定値の1
.2倍で影響があるとされているのは福島第
一と島根1,2号の二原発だけである。
警告されていた
地震と津波による原発事故
 2002年7月31日,推本の地震調査委員会によ
り長期評価が公表された。
 これは,三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域内
のどこでもMt(津波マグニチュード)8.2前後
の津波地震が発生する可能性があるというものであ
った。
 長期評価には,現在までに得られている最新の知見
を用いて最善と思われる手法により行ったが,過去
の地震に関する資料が十分にない等の限界があるこ
とから、地震発生確率や予想される地震の規模の数
値には誤差を含んでおり,十分留意する必要がある
と記載されていた。
土木学会の津波評価技術は非科学的
 2002年2月に土木学会の津波評価部
会が公表した津波評価技術は,過去に発
生した領域で繰り返し同じタイプの津波
地震が発生するという考え方によってお
り,過去に津波地震の発生していない領
域については考慮されていなかった。
 しかし、プレートはつながっており、福
島沖だけが大地震を起こさないというこ
とは、テクトニクスの力学上もあり得な
いことであった。
推本の評価を支持する見解の方が多
数
 2003年3月24日には,推本の地震調
査委員会自体が,長期評価についての信頼
度をA(高い),B(中程度), C (や
や低い),D(低い)の4段階のランクの
うちCと公表していた。
 2004年5月に実施した地震学者への重
みづけアンケート調査では,地震学者5名
の回答結果の平均が,三陸沖から房総沖に
かけての海溝寄りの津波地震の発生に関し
,推本の長期評価に基づく考え方が約0.
6,津波評価技術に基づく考え方が約0.
スマトラ津波によるマドラス原発
被災
 2004年末にはスマトラ島沖地震
によるM9.5の巨大地震による大
津波が発生し、プレート境界地震に
よる津波の被害の深刻さを示した。
 インド南部のマドラス原発が大津波
に襲われた。
津波対策の先送りの背景には耐震
バックチェックの大幅先送りが隠
されていた
耐震設計審査指針が改訂される
 原子力安全委員会は、同年9月19日に
「発電用原子炉施設に関する耐震設計審
査指針」(「新指針」)を決定した。そ
こでは、「地震随伴事象に対する考慮」
として、津波について、「施設の供周期
間中に極めてまれではあるが発生する可
能性があると想定することが適切な津波
によっても、施設の安全機能が重大な影
響を受けるおそれがないこと」を「十分
に考慮したうえで設計されなければなら
ない」とされた。
既設原発の運転を認めながら新指
針への適合を求めたバックチェッ
ク
 保安院は、電力各社に対して既設原発について新指針に照ら
した安全性の評価を実施して報告を求める「耐震バックチェ
ック」を指示した。
 原子力安全委員会は、同日付で、このバックチェックの法的
な位置づけについて、委員会決定を行い、新指針は、今後の
安全審査等に用いることを第一義的な目的としており、指針
類の改訂等がなされたからといって、既設の原子力施設の耐
震設計方針に関する安全審査のやり直しを必要とするもので
はなく、許可を無効とするものでもない。既設の原子力施設
に関する耐震安全性の確認は、あくまでも法令に基づく規制
行為の外側で、事業者が自主的に実施すべき活動として位置
づけられるべきであるとしてしまった。
 原子力安全委員会は、保安院からの脅しに屈し、自らの制定
した新指針が既設炉を拘束するものであることを自ら否定し
保安院は「不作為」を問われる
可能性があると考えていた
 しかし、保安院は同じ2006年9月13日に
,保安院の青山伸,佐藤均,阿部清治の3人の
審議官らが出席して開かれた安全情報検討会で
は,津波問題の緊急度及び重要度について「我
が国の全プラントで対策状況を確認する。必要
ならば対策を立てるように指示する。そうでな
いと「不作為」を問われる可能性がある。」と
報告されていた(第54回安全情報検討会資料
)。
 保安院によって対策が指示されていれば,事故
は防ぐことができた。しかし、対策はとられず
、東電など電事連の圧力に保安院が屈していた
2007年中越沖地震を
教訓にできなかった。
 2007年には中越沖地震に見舞わ
れた柏崎原発では想定を大幅に上回
る地震動により、3000カ所の故
障が生じた。
 地下水による地下の浸水なども起き
ていた。
 想定を超える地震・津波にも備えな
ければと教訓にすべきだった。
 しかし、東電は、想定を超えても、
福島県沖海溝沿いで大地震が発生
することは否定できない
 2007年12月には,耐震バックチェックにおい
て,長期評価を取り込む方針で進められることにな
った。
 東電は、 2008 年2月26日,今村文彦教授から,
「福島県沖海溝沿いで大地震が発生することは否定
できないので,波源として考慮すべきである」旨の
指摘を受けた。
15.7メートルの試算は対策の
内容を詰めるための準備であった
 2008 年3月18日には,東電設計から,推本の
長期評価を用い,明治三陸沖地震の津波の波源モ
デルを福島県沖梅溝沿いに設定した場合の津波水
位の最大値が敷地南部で O .P.+15.7メー
トルとなる旨の試算結果が出された。
 これは,福島第一原発の当時の想定津波水位であ
るO.P.+,5.4メートル~5.7メートル
を大幅に超えるものであり,このような津波が発
生すれば,福島第一原発のタービン建屋の設置さ
れた10m盤を大きく超えて浸水してしまうこと
は明らかであった。
耐震バックチェック最終報告で推本の
長期評価を考慮することは決定されて
いた
 2008 年3月20日に実施された東京電
力の地震対応打合せでは,耐震バックチ
ェックの中間報告書の提出に伴うプレス
発表に関して作成された想定問答集が報
告された。
 津波評価に関して充実した記述が指示さ
れ,同月29日に実施された東京電力の
地震対応打合せでは,耐震バックチェッ
クの最終報告において推本の長期評価を
考慮する旨が記載された修正済みの想定
問答集が報告され,了承された。
2008.6 武藤らは、試算結果を受け、10メー
トルの防潮堤建設など具体的津波対策の検討
を指示
 平成20年6月10日,土木調査グルーフの担当者は,被告
武藤栄副社長(当時)に対し,資料を示しながら,推本の長
期評価を用いた,明治三陸沖地震の津波の波源モデルを福島
県沖梅溝沿いに設定した場合の津波水位の最大値である,敷
地南部O.P.+15.7メートルの試算結果を報告し,合
わせて,原子炉建屋等を津波から守るために敷地上に防潮堤
を設置する場合には, O .P.+10メートルの敷地上に
約10メートルの防潮堤を設置する必要があること等を説明
した。
 武藤副社長(当時)は非常用海水ポンプが設置されている 4
m盤( O.P. + 4 メートルの地盤)への津波の遡上高を低減
する方法、沖合防波堤設置のための許認可など、機器の対策
の検討を指示した。
2008.7 土木学会への検討依頼は耐震
バックチェックの長期先送りを意味
した
 2008 年7月31日には,武藤栄副社長(当時)は、土
木調査グループに対し,これまでの方針を変更し,耐震
バックチェックにおいては推本の長期評価は取り入れず
,津波評価技術に基づいて実施するよう指示した。
 この方針転換こそが、事故の直接的な原因である。
 推本の長期評価については土木学会の検討に委ねること
とし,その方針について津波評価部会の委員や保安院の
理解を得ること等が指示され, 2008 年10月には,そ
れらの了解をおおむね得ることができた。
 その結果,耐震バックチェックの最終報告をする予定で
あった 2009 年6月の期日は延期されることとなった。
25
• 東京電力の役員はこのシミュレーション結果を
政府に提出せず、隠した。
• 2010年11月文部科学省の地震調査研究推
進本部が「活断層の長期評価手法(暫定版)」
を公表したことを契機として,保安院は、東京
電力に対し,津波対策の現状についての説明を
要請した。
• 2011年3月7日東京電力は、15.7メー
トルシミュレーション結果を国に報告した。
• 2002年の地震調査研究推進本部の長期評価
に対応し、明治三陸地震が福島沖で発生した場
合、13.7m~15.7mの津波が襲うとい
東京電力の国への報告は
地震の4日前だった
26
対策が遅いと指摘した保安院小林
審査官
 小林勝は,2011年3月7日に,このシミ
ュレーションの報告が東電から保安院に対し
てなされた際に,次のように警告した。
 土木学会の津波評価技術の改訂に合わせると
いう東電の方針に対して「「それでは遅いの
ではないか。土木学会による津波評価技術の
改訂に合わせるのではなく,もっと早く対策
工事をやらないとだめだ」「このままだと,
推進本部が地震長期評価を改訂した際に,対
外的に説明を求められる状況になってしまう
。」とコメントしたという。
27
• 2011年3月11日 東北地方太平洋沖地
震
 津波の浸水高はO . P . 約+11.5~15.
5mであった。
• なお、本件事故発生後8月まで、この3月7
日の報告は国・保安院によって秘匿された。
• 東京電力は本件事故は3月13日の清水社長
会見以来事故は「想定外の津波」を原因とす
るものであり、東京電力には法的責任がない
との主張が繰り返した。
• これを明らかにしたのは、読売新聞のスクー
津波想定は事故後も隠された
28
政府事故調調書などによって
明らかになった貞観の津波を
めぐる保安院と東電の暗闘
貞観の津波をめぐる
保安院と東電の暗闘
 2008 年 10 月 佐竹健治・東大教授が東電に
最新の論文を渡す
 2008 年 11 月 東電の担当者は、貞観津波の
計算水位が 8.6 m~ 9.2 m(土木学会手法で
は+3割程度、すなわち敷地高さ超え)にな
ることを知る
 貞観の津波の津波堆積物の調査が進み、20
09年にはこの問題が耐震バックチェック会
議で岡村行信委員から指摘された。
 しかし、名倉審査官は最終報告に盛り込むと
して、問題を先送りした。
「津波にかかわるとクビになるよ
」
○2009 年 9 月 東電が上記の試算結果を保安
院に説明
○ この説明会に小林は欠席している。
○ 小林勝・原子力規制庁安全規制管理官(事故
当時、保安院耐震安全審査室長)の政府事故調
調査には次のやり取りが記録されている。
小林「ちゃんと議論しないとまずい」
野口・審査課長「保安院と原子力安全委の上層
部が手を握っているから余計なことするな」
原・広報課長「あまり関わるとクビになるよ」
2010 年 3 月 24 日午後 8 時 6 分保安院森山善
範審議官が,原子力発電安全審査課長らに送っ
たメール
 1F3の耐震バックチェックでは,貞観の地震による津波評
価が最大の不確定要素である
 貞観の地震は福島に対する影響は大きいと思われる。
 福島は,敷地があまり高くなく,もともと津波に対して注意
が必要な地点だが,貞観の地震は敷地高を大きく超える恐れ
がある。
 津波の問題に議論が発展すると,厳しい結果が予想されるの
で評価にかなりの時間を要する可能性は高く,また,結果的
に対策が必要になる可能性も十二分にある。
 東電は役員クラスも貞観の地震による津波は認識している。
 というわけで,バックチェックの評価をやれと言われても,
何が起こるかわかりませんよ,という趣旨のことを伝えてお
きました
検察審査会の第一次起訴相当
決定をもたらした東電内部資
料
電力会社の高い注意義務を認めた
 「一度事故が起きると被害は甚大で、その影響
は極めて長期に及ぶため、原子力発電を事業と
する会社の取締役らは、安全性の確保のために
極めて高度な注意義務を負っている。」伊方判
決を引用。
 「そもそも自然災害はいつ、どこで、どのよう
な規模で発生するかを確実に予測できるもので
はない」事故以前に、基準地震動を超える地震
動が観測されていることを指摘。
 「根拠のある予測結果に対しては常に謙虚に対
応すべきであるし、想定外の事態も起こりうる
ことを前提とした対策を検討しておくべきもの
土木学会への検討依頼は
時間稼ぎと断定
 東電は、推本の予測に基づいて行った数々の津波の試算につ
いても、現実に起きるとは思わなかった、念のために土木学
会に検討を依頼しただけであるなどと言い訳していた。しか
し、土木学会は電力で固めた言いなり組織であった。検察は
不合理ないいわけをそのまま認めてしまっていた。
 しかし、検察審査会は、第一次議決において、市民的良識を
発揮し、東電の役員たちは、対策が必要であることはわかっ
ていて、途中まではその検討や準備もしたのに、改良工事の
ために原発が長期停止になることをおそれ、時間稼ぎのため
に土木学会に検討を依頼して、問題の先送りをしたと認定し
た。
 事態を正確に理解した、極めて正しい認識だ。
35
 このことを示す証拠が東電株主代表訴訟において
、裁判所の勧告によって、東電から提出された。
 1枚目議事概要の中に,「津波に対する検討状
況(機微情報のため資料は回収,議事メモには
記載しない)」とある。
 その「回収」された資料には何が書かれていたか
。
2008 年9月10日
「耐震バックチェック説明会(福島第一
)議事メモ」
36
 これが回収された資料である。
 その2枚目の下段右側に,「今後の予定」とし
て,以下の記載がある。
 「○ 推本がどこでもおきるとした領域に設定
する波源モデルについて,今後2~3年間かけ
て電共研で検討することとし,「原子力発電所
の津波評価技術」の改訂予定。
 ○  電共研の実施について各社了解後,速やか
に学識経験者への推本の知見の取扱について説
明・折衝を行う。
福島第一原子力発電所津波評価の概要(地震
調査研究推進本部の知見の取扱)
37
 ○  改訂された「原子力発電所の津波評価技術
」によりバックチェック を実施。
 ○  ただし,地震及び津波に関する学識経験者
のこれまでの見解及び推本の知見を完全に否定
することが難しいことを考慮すると,現状より
大きな津波高を評価せざるを得ないと想定され
,津波対策は不可避。」
 結局のところ土木学会への検討依頼は不可避の
対策を先送りするものでしかないことをこの文
書は自白している。会議後に回収する予定で作
成された文書であるから東電幹部らの本音が示
されたものとして決定的に重要である。
推本の見解を否定することは困難
津波対策は不可避
東京新聞
39
 「耐震バックチェック説明会(福島第一)」
には、東京電力の福島第一の所長と本店の氏
名不詳の幹部らしか出席していない。
 しかし、会議後に機微情報として回収された
最重要情報に示された認識は、会社の最高幹
部に直ちに知らされ、共有されたことは補助
参加人会社の体質からして明らかである。
 このことは、勝俣社長以下の幹部が出席した
2009年2月の中越沖地震対応打ち合わせ
の次の記述からも裏付けられる。
この認識は東電の最高幹部に共有
されていたか
40
 原子力設備管理部長の発言として,以下の記載がある。
 「土木学会評価でかさ上げが必要となるのは,1F5,6の
RHRSポンプのみであるが,土木学会評価手法の使い方を
良く考えて説明しなければならない。もっと大きな14m程
度の津波がくる可能性があるという人もいて,前提条件とな
る津波をどう考えるかそこから整理する必要がある」
 武黒本部長が「女川や東海はどうなっているのか」と聞いた
のに対して,「女川はもともと高い位置に設置されており,
東海は改造を検討中である。浜岡は以前改造しており,当社
と東海の問題になっている」と担当者は応えている。 
2009年2月11日
中越沖地震対応打ち合わせメモ1
41
 清水社長の発言「バックチェックと耐震強化工事を並行
でやっているという姿は見せなければならないのではな
いか」
 これは、バックチェックの完了時までに耐震補強を完了
できないことがはっきりとしてくる中で,ポーズだけを
取って,耐震補強が完了しなくても,最終報告を行い,
運転を再開できるように求めるという意味に受け取れる
。
2009年2月11日
中越沖地震対応打ち合わせメモ2
42
 資料6頁〈参考〉耐震安全性評価報告書の構成
(一般的構成)の表の枠外に,次のような手書
きのメモがある。
 「地震随伴事象(津波)」の部分について
 「問題あり」
 「出せない」
 「(注目されている)」
2009年2月11日
「福島サイト耐震安全性評価に関する状況
」
43
 この会議では,福島第一原発,第二原発の耐
震バックチェックに関して,津波問題を主に
議論がなされていたことが判明している。
 この書き込み部分も,この会議における誰か
の発言であると考えられる。
 このメモによると,当時福島原発に関しては
津波について「問題あり」「出せない」「(
注目されている)」という状況であったこと
、津波対策をとらなければならない状況とな
っていることを東電が必死に隠蔽しようとし
ていたことがわかる。
津波対策は「問題あり」「出せな
い」「(注目されている)」
44
 被告人ら東電幹部らは、いずれ推本の見解に基づく
対策が不可避であることを完全に認識していた。
 しかし、被告人らは老朽化し、まもなく寿命を迎え
る原子炉の対策のために多額の費用の掛かる工事を
決断することができなかった。
 被告人らは不可避の対策を遅らせることを目的に身
内の土木学会へ検討依頼を行った。
 そして、このことが外部に漏れることを警戒し、所
内の会議でも、津波対策に関する書類は会議後に回
収するという徹底した情報の隠蔽工作がなされてい
た。

福島第一のバックチェックの最高
の難問は、津波対策であった
東電の実務担当者と保安院担
当を追加告訴
福島原発告訴団第二次津波告訴
 添田孝史「原発と大津波-警告を葬った人々
」
 政府事故調の調書の一部公開
 国土交通省による推本長期評価に基づく津波
対策が実施されていた。
 新たに東電や経済産業省旧原子力安全・保安
院、電事連、原子力安全委員会の当時の幹部
らについて東京地検に追加告訴した。 
東電の被告訴人ら
 酒井俊朗  東電の津波対策の責任者・
マイアミレポートの作成者・土木学会委
員
 高尾誠  東電の津波対策のサブ責任者
・土木学会幹事
2008年-2009年当時の
保安院担当幹部
 森山善範  ,保安院原子力発電安全審査課
長,ついで保安院審議官
 名倉繁樹  保安院原子力発電安全審査課審
査官 2008年-2009年
 野口哲男  保安院原子力発電安全審査課長
 (2008年-2009年)
第二次告訴について早くも不起訴
 告訴団の武藤類子さんは記者会見で「政府の
事故調査委員会の調書が公開されるなど、新
たな証拠が次々と出てきている。検察はきち
んと調べて真実を明らかにしてほしい」と話
した。
 2015年4月3日の午後5時すぎに東京地
検古宮検察官から弁護士宛に不起訴裁定が郵
送されてきた。
 被疑者らに対する取調が実施されたかすら疑
わしい。はじめに結論ありきの捜査であった
。
第二次検察審査会でも強制起訴を
 我々は東電の勝俣、武藤、武黒の3名の強制起訴
を実現した。
 彼らと同様に本件において中枢的役割を果たした
東電2名と保安院関係者3名についても、検察審
査会に申立て、その刑事責任を追及している。
 東電役員の刑事責任を追及する裁判との併合審理
を目指している。
検察審査会の強制起訴決定を
もたらした事実と論理
電力会社の高い注意義務を認めた
 原子力発電に関わる責任ある地位にある者であれば,一般
的には,万がーにも重大で過酷な原発事故を発生させては
ならず,本件事故当時においても,重大事故を発生させる
可能性のある津波が「万が一」にも,「まれではあるが」
発生する場合があるということまで考慮して,備えておか
なければならない高度な注意義務を負っていたというべき
である。
 その設計においては,当初の想定を大きく上回る災害が発
生する可能性があることまで考えて,「万がーにも」,「
まれではあるが」津波,災害が発生する場合までを考慮し
て,備えておかなければならない。
長期評価は決して無視できない
 「大規模地震の発生について推本の長期評価は一定程度の
可能性を示していることは極めて重く,決して無視するこ
とができないと考える。」
 そして、チェルノブイリ事故では数十キロメートル以上の
地域が放射能で汚染され長い期間そこには何人も出入りす
ることができなくなってしまう。加えて,放射能が人体に
及ぼす多大なる悪影響は,人類の種の保存にも危険を及ぼ
す。
 原発事故は,ひとたび発生してしまうと事故が発生する以
前の状態を取り戻すことが非常に困難で,取り返しのつか
ない極めて重大な事故である。
 原発事故の本質を捉えた的確な議決である。
いったん決めた津波対策を反故に
したことが事故の原因である
 長期評価に基づいて津波対策を執ること
がいったん東電の社の方針として決定さ
れていた。
 このいったん決定されていた社の方針を
覆したことが事故の原因である。
 この方針転換を主導したのは武藤、これ
を追認したのが武黒であり、二人の事故
の具体的な予見可能性と回避可能性は、
決定的に明らかになった。
原子炉が浸水すれば致命的である
ことはわかっていた
 91年10月30日の福島第一原発において海水の漏え
い事故、2007年7月に発生した新潟県中越沖地震に
おける,柏崎刈羽原発1号機の消火用配管の破裂による
建屋内への浸水事故、1999年12月のフランスのル
ブレイエ原子力発電所の浸水事故,2004年12月の
スマトラ島沖地震の津波によるマドラス原子力発電所2
号機の非常用海水ポンプが水没する事故
 2006年5月第3回溢水勉強会では,福島第一原発5
号機において敷地高を1メートル超える高さ(0.P.
+14メートル)の津波が無制限に襲来した場合には,
非常用電源設備や各種非常用冷却設備が水没して機能喪
失し,全電源喪失に至る危険性があることが明らかとな
ったとしている。
勝俣氏は虚偽を述べており、起訴
できる
 勝俣は,推本の長期評価を用いた15.7メートルの試算結
果の報告を受けていないと主張している。
 地震対応打合せは,勝俣への説明を行う「御前会議」と言わ
れて、出席できなかったときも資料には目を通していたと述
べている
 津波対策には少なくとも数百億円以上の規模の費用がかかる
可能性があり,最高責任者である勝俣に説明しないことは考
えられない。
 2009年6月開催の株主総会の資料には,「巨大津波に関
する新知見」が記載され,「参考」として,推本の長期評価
のことや津波により浸水し,非常用海水ポンプが水没する事
故が発生する可能性があることが記されている。
 知らなかったという供述には信用性がないとして強制起訴と
したのである。
世紀の裁判で裁かれるのは
東電・保安院そして
原子力ムラに取り込まれた検
察庁
原子力ムラの情報隠蔽を打ち破っ
た市民の正義
 福島原発事故に関してはたくさんの事柄が隠さ
れてきた。
 この議決の根拠となった東電と国による津波対
策の方針転換に関する情報の多くは2011年
夏には検察庁と政府事故調の手にあったはずで
ある。
 しかし、これらの情報は徹底的に隠された。
 この隠蔽を打ち破ったのが、今回の検察審査会
の強制起訴の議決である。
 市民の正義が政府と検察による東電の刑事責任
告訴団の事故の真実を明らかにし、責任を問
う真摯な態度が検審の委員の心を揺り動かし
た
 東電を中心とする原子力ムラや検察から
の圧力のもとで検審の委員11人のうち
の8人の起訴議決への賛同を得た。
 原発事故で人生を根本から変えられた皆
さんの切実な思いに答えることができ、
心からホッとした。
 今回の強制起訴は奇跡のように貴重なも
のだ。
津波対策の先送りを裏付ける証拠
はまだまだたくさんある。
 「朝日新聞吉田調書報道は誤報
ではない」(彩流社刊)は吉田
調書をめぐる「誤報」報道と朝
日新聞の謝罪によって傷つけら
れた記者の名誉回復のために書
いた。
 そして、東電の強制起訴を願う
福島原発告訴団のためにも書い
た。
 津波対策に関して明らかになっ
た証拠のすべてを盛り込んだ。
指定弁護士を支え、
裁判の内容を市民に伝えよう
 今後開かれる公開の法廷において、福島原発事故
に関して隠されてきた事実を明らかにする作業が
可能となった。
 強制起訴は弁護士会の推薦を受けて、裁判所が任
命した検察官役の弁護士が行う。
 第二東京弁護士会の推薦を受け、東京地裁は石田
省三郎、神山啓史、山内久光の三名を検察官役に
指定した。
 石田・神山コンビは無実のゴビンダさんの再審無
罪を実現した刑事弁護のプロ
 望みうる最高の刑事弁護士が検察官役に選任され
、検察官役の体制は整った。
市民の正義を現実のものにしよう
!
 長期の裁判を遂行するため検察官役を市民が物心
両面で支えるネットワークを作り、裁判の過程を
時々刻々と市民に知らせていく体制も作りたい。
 被害者とされた人々の委任を受けて、裁判に参加
する途も追求したい。
 市民の正義を現実のものとするために、多くの市
民の支えが必要だ。これまで以上の支援を!

2015.9告訴団強制起訴議決