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日本の食は発展したのか     それとも衰退したのか  ~健康・栄養面からみた食の変遷~
・はじめに   今日世界は交通技術や通信技術の進歩によりますます一体化が進んでいる。それは日本においてもグローバリゼーションの波として押し寄せているのはもはや周知の事実である。それによって多様な文化や価値観が流入してきたがそれは「食」においても同様である。それによって日本の食は一昔前と比べて大きく変化した。今回はその変化が日本の食に発展をもたらしたのかそれとも衰退に向かわせているのかについて考察していきたい。 ※ 以後、一昔前とは大正期から戦前までとする。  
 一般に現代の日本の食と一昔前のものをくらべてみると、一昔前のものの方が体によさそうなイメージがある。それは例えば昔のほうが肉や油の量が少なく、逆に魚や野菜の量が多いことや、家庭で調理する頻度が多いので添加物の心配もあまりないことから想像されるのだろう。      http://tsuma.hi-culture.com/2007/06/images/diner_070625.jpg http://cache.walkerplus.com/155157194001/image/file_l/43730_l.jpg
 だがそのイメージは本当に合っているのだろうか。現在は外国からの食文化の流入により、さまざまな外国の料理や食材が食べられるようになってきた。インドのカリーや中国の薬膳料理など、健康によいとされる料理を食べられる機会も多くなり、食の選択肢は昔より格段に増えている。それは栄養状態の向上にも繋がったとは言えないだろうか。 http://www.umai-aomori.jp/know/sanchi-report/img/109/1.jpg http://1961.blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_1a2/diary_freedom/089071.jpg
 実際に脚気や結核など栄養状態の悪さから引き起こされる病気は現代では大分患者数が減っている。また、日本人男性 30 歳の平均身長は 1950 年から 2005 年まで 10.5 cmも伸びている。一慨にはいえないだろうがこれらは食の多様化によって栄養状態が改善したことが影響しているのは確実であろう。  一昔前の日本の食と現代のものを栄養などの健康面から比較し、検討をすることによって今の自分たちの食を見直し、さらによりよい食生活をおくるきっかけになるのではないだろうか。食は身体の資本である。おろそかにしては健康な日常生活は望めない。この問題を調査し、考察することにより筆者はもちろん、読者が今後数多の食の選択肢の中から最善の選択ができるように役立てほしい。
  前述したように昔の日本の食事は、健康食であったというイメージが強く、実際そのように主張している方も多い。では、戦前の一人一日当たりの食品群別摂取量を見てみよう。 ※科学技術庁:戦前の食糧消費より
この表を基にして、明治から大正初期について計算してみると、動物性たんぱく質は3~4g程度であり、資質も13~14g程度であったようだ。これは集団の平均であろうから、肉や魚を全く食べていない人もいるのではないだろうか。伝統的な日本食では魚を食べていた印象があるが、一般的にスーパーで売っているような魚の切り身が約80gである。これでは当時の日本人は魚食であったとはいえないだろう。
次に当時の日本の主食について考察してみる。当時の日本人は玄米食を中心的に食べていた。現在のパンや白米を主食とする生活と比較すると、当時の玄米食の方が健康にはよさそうな気がするが、実際のところどうなのだろうか。
 玄米がより栄養価が高いイメージがあるのは、お米を精白することにより、栄養価が高い部分まで削がれてしまうことを多くの人が知っているからであろう。実際お米に含まれるビタミン B1はお米のぬかの部分に多く存在していて、精白するとその多くが失われてしまう。だが、白米が中心の食生活をしている現代にはあまり見られなく、ビタミンB1欠乏症を原因としながら当時流行った病気があった。そう、脚気である。脚気による死亡者も当時は多く、大正から昭和初期にかけて毎年1万人以上で、多い年は2万人を超えていた。  それでは一体なぜ当時は玄米を主食とした食生活だったのに脚気になる人が多く、白米を主食として食べる現代ではあまり患者が見られないのだろうか。
 それはビタミンB1が別の食品から確保できるからである。例えばビタミンB1を多く含む食品の代表格である豚肉も、100g食べれば1日の必要量を補うことができる。ここで先ほど掲載した戦前の食品群別摂取量を見てほしい。穀類が主体の食事であるから炭水化物の占める割合は多くなるが、炭水化物が多い食事では、ビタミンB1の必要量が多くなってしまうのだ。
 炭水化物は消化吸収されエネルギーに変えられるが、その時にビタミンB1が不足するとエネルギーになりきれず、乳酸に変わり不完全燃焼を引き起こし、結果疲労の素になってしまう。当時は炭水化物が極端に偏った食事で、決まった食品を食べていたことから特定の栄養素欠乏が起きたのではないかと考えられる。 http://www.kikkoman.co.jp/homecook/kenkou_column/img/040720_illust.gif
・まとめ  以上2つの点から昔と現代の日本食を比較し、検討した。昔の日本食は健康食だというイメージが根強いが、必ずしもそうではないことがわかった。現代はスーパーに行けば昔では手に入れられなかった数多の食材を目にすることができる。選択肢が増えたことは栄養状態を豊かにできることにつながるだろう。だが栄養の過不足ない食を摂るには、自分の体と向き合って正しい選択ができなければならない。それはとても難しいことであるが、私達は今の恵まれた状況に感謝し自己の健康に努めなければならないだろう。読者が自分の食生活を見直すきっかけになれば幸いである。  

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