近世ヨーロッパ科学史
シミュレーションゲームの開発
2016年4月28日
廣田 紳
概要
• はじめに
o 科学史シミュレーションを作り始めた経緯
• 近世ヨーロッパの科学を取り巻く状況
〜1667年とはどんな時代か〜
o コペルニクス、ケプラー、デカルト、ガリレオらの土台
o 2つの科学アカデミー
o ニュートンのライバル達...
自己紹介
廣田 紳 (ひろた しん)
1973年生まれ (42才)
【主な経歴】
2003年 日本大学大学院理工学研究科
量子理工学専攻博士前期課程修了(相澤研)
2005年〜 GEヘルスケア・ジャパン(株) にて MRI (磁気共鳴画像診断
...
はじめに
科学史シミュレーションゲームを
作り始めた経緯
• 過去にないジャンルのゲームを作りたい
• 専門が物理学
× 物理シミュレーションはゲームに広く応用されている
○ 物理学者をテーマにしたゲームは見たことない
→ 実在の物理学者をテーマにしたゲ...
近世ヨーロッパの科学を
取り巻く状況
〜1667年とはどんな時代だったか〜
1667年とはどんな時代か(1)
アリストテレスの『天動説』は2000年の時を経て、大きく揺らいでいた。
1543年「天体の回転について」コペルニクス - 太陽中心の宇宙モデル [天文学]
1609年「新天文学」ケプラー – 惑星の楕円軌道 [...
1667年とはどんな時代か(2)
イギリスとフランスに科学アカデミーが設立されていた。
ロンドン王立協会 (Royal Society)
1660年 設立
主要メンバー
• ロバート・ボイル
• ロバート・フック
フランス科学アカデミー (Ac...
ニュートンの「ライバル」
ニュートンは生涯で何度も激しい論争に巻き込まれている。
• 1672年ごろ 光の理論に関する論争(対フック・ホイヘンスら)
• 1684年ごろ 微積分法の先取権論争(対ライプニッツ)
• 1687年ごろ プリンキピアの...
精度の高い時計の必要性
[背景]
• 17世紀当時、海上で緯度を知ることは比較的たやすかった
(例えば北極星の高度を測定すればよい)
• 海上で経度を知ることは「ほぼ不可能」と考えられていた
(理由)
o 海上で正確な時刻(実用的な精度を保つ)...
17世紀ごろの機械式時計
https://en.wikipedia.org/wiki/Clock
14世紀 錘の落ちる動力で動作する時計
1510年 ゼンマイで動作する時計
1583年 振り子の等時性の発見(ガリレイ)
1656年 サイクロイド...
1589年 望遠鏡の発明(デラ・ポルタ)人類初?
1609年 望遠鏡による天体観測(ガリレイ)
1663年 反射式望遠鏡の原理(グレゴリー)製作には失敗
1729年? 色消しレンズ屈折式望遠鏡の発明(ホール)
1672年 反射式望遠鏡の製作(★...
ニュートンのプリンキピア
1687年 ロンドン王立協会から「自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)」が
出版された。
ニュートンは本書の中で「地動説の数学的証明」を完成させた。
• ケプラー、デカルト、ガリレオらの「正しい部分」を整理
• 逆2...
ニュートンの時代の科学界を
シミュレートする
ゲームシステムの設計
タイトル画面
マップ画面
:大学
:天文台
:科学アカデミー
都市情報
ケンブリッジ大学
(1284年創立)
グリニッジ天文台
(1675年設立)
ロンドン王立協会
(1660年設立)
• 都市毎に存在する施設が異なります
科学アカデミー:「入会希望」が可能
大学:「講...
プレイヤー選択画面
ゲーム開始時に、プレイヤー
として操作する科学者を1人
選択します。
史料を元に、1667年時点で存命
だった著名な科学者を選び出した
(14人)
, etc..
人物データ
各人物の歴史的情報を元に
• 得意分野
• 職業
• 所在地
• 友好度
などを数値化
(例)ニュートン
力学適性S: 万有引力理論などにより
数学適性S: 微積分の確立などにより
生物学適性D: ほとんど業績が見つからな
いため
...
ゲームの進め方
研究テーマ
選択
実験もしくは
推理
発見
•理論
•発明
•スケッチ
•存在
論文提出
• 理論検証
• 発明品試作
• 論文作成
発見
イベント
発生!
繰り返し
「テーマ選択」→「実験/推理」(繰り返し)→「発見」→「論文...
「研究テーマ」の選択
天文学
彗星
土星
月の運動
宇宙の構造
力学
振り子の
性質
バネの
性質
物体の落下
熱力学
温度
真空の
性質
燃焼
生物学
植物の観察
昆虫の観察
魚類の観察
哺乳類の
観察
光学
光の性質
光の正体
数学
幾何学...
研究中画面
発見イベント
• 発見毎に「必要実験値」「必要推理値」が定義し
てあり、それを超えると「発見イベントが発生」
発明
「反射式望遠鏡」「振り子時計」など、この時代に発明された装置を、科学者が着想し、
試作を経て『発明』することができます
発明可能なアイテムの例(1)
発明可能なアイテムの例(2)
論文審査画面
論文を科学アカデミーに提出すると、役員による審査が行われます。
論文の完成度のほか、役員との友好度が結果を左右することも・・。
まとめ
まとめ
• ニュートンの時代までに、天動説は大きく揺らいではいたが、決定的
な『統一理論』は完成されていなかった
• ニュートンは著書『プリンキピア』で天体と地上が同じ力学法則で記
述できることを示した
• その時代の、科学的に原理を説明するこ...
参考文献
• 和田純夫(2009)『プリンキピアを読む』講談社.
• ウィリアム・ランキン(1994)『ニュートン』(竹生淑子訳)心交社.
• デーヴァ・ソベル(1997)『経度への挑戦』(藤井留美訳)翔泳社.
• ニュートン(1982)『光学...
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近世ヨーロッパ科学史シミュレーションゲームの開発

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2016年4月28日に日本大学大学院理工学研究科でお話しさせていただいた際に使用した資料です。前半でニュートンの時代のヨーロッパ科学の状況を、後半でそれをテーマにしたシミュレーションゲーム『PRINCIPIA(プリンキピア)』の内容を紹介しています。

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近世ヨーロッパ科学史シミュレーションゲームの開発

  1. 1. 近世ヨーロッパ科学史 シミュレーションゲームの開発 2016年4月28日 廣田 紳
  2. 2. 概要 • はじめに o 科学史シミュレーションを作り始めた経緯 • 近世ヨーロッパの科学を取り巻く状況 〜1667年とはどんな時代か〜 o コペルニクス、ケプラー、デカルト、ガリレオらの土台 o 2つの科学アカデミー o ニュートンのライバル達 o 発展途上の「時計」 o 発展途上の「望遠鏡」 • ニュートンの時代の科学界をシミュレートするゲームシステムの設計 o タイトル画面 o マップ画面 o 人物データ o ゲームの進め方 o 発明可能なアイテム • まとめ
  3. 3. 自己紹介 廣田 紳 (ひろた しん) 1973年生まれ (42才) 【主な経歴】 2003年 日本大学大学院理工学研究科 量子理工学専攻博士前期課程修了(相澤研) 2005年〜 GEヘルスケア・ジャパン(株) にて MRI (磁気共鳴画像診断 装置)制御ソフトウェア開発に従事 2015年〜 個人事業主として活動中 http://tomeapp.jp
  4. 4. はじめに
  5. 5. 科学史シミュレーションゲームを 作り始めた経緯 • 過去にないジャンルのゲームを作りたい • 専門が物理学 × 物理シミュレーションはゲームに広く応用されている ○ 物理学者をテーマにしたゲームは見たことない → 実在の物理学者をテーマにしたゲームを作ろう! → 誰でも知っていそうなニュートンを主人公にしよう! 2000年に第1作『PRINCIPIA(プリンキピア)』を公開 2013年に iOS版をリリース 現在 (2016年)、その続編『PRINCIPIA PERFECTUS』を開発中
  6. 6. 近世ヨーロッパの科学を 取り巻く状況 〜1667年とはどんな時代だったか〜
  7. 7. 1667年とはどんな時代か(1) アリストテレスの『天動説』は2000年の時を経て、大きく揺らいでいた。 1543年「天体の回転について」コペルニクス - 太陽中心の宇宙モデル [天文学] 1609年「新天文学」ケプラー – 惑星の楕円軌道 [天文学] 1637年「方法序説」デカルト – 慣性の法則、デカルト座標 [力学] 1638年「新科学対話」ガリレイ – 落下の法則 [力学] しかし、天界と月下界を同じ法則で説明する『統一理論』には誰も到達してい なかった。 彼らは理論の完成を見ずに世を去る。 ※1687年「プリンキピア」ニュートン コペルニクス (1543年没) ケプラー (1630年没) デカルト (1650年没) ガリレオ・ガリレイ (1642年没)
  8. 8. 1667年とはどんな時代か(2) イギリスとフランスに科学アカデミーが設立されていた。 ロンドン王立協会 (Royal Society) 1660年 設立 主要メンバー • ロバート・ボイル • ロバート・フック フランス科学アカデミー (Académie des sciences) 1666年 設立 主要メンバー • ジャン・ピカール • クリスティアン・ホイヘンス 科学アカデミー(=学会)の設立で ・科学者同士の交流が促進された ・組織としての出版、活動増加した
  9. 9. ニュートンの「ライバル」 ニュートンは生涯で何度も激しい論争に巻き込まれている。 • 1672年ごろ 光の理論に関する論争(対フック・ホイヘンスら) • 1684年ごろ 微積分法の先取権論争(対ライプニッツ) • 1687年ごろ プリンキピアの内容が盗用だとするフックの批判 1672年にニュートンが王立協会に提出した「光のスペクトル理論」に対し、フックは自著 「ミクログラフィア」に書かれている内容に近いと主張。ホイヘンスは書簡で論拠が不十分 などと批判。 1684年にライプニッツは「極大と極小に関する新しい方法」を出版し、微積分法を示した。 しかしその内容にニュートンは公表を控えていた自身のアイデアが含まれていると批判した。 なお、現在使用されている微積分の記号はライプニッツが考案したもの。 1687年に「プリンキピア」の出版に際し、フックは「引力に関するアイデアは自分が出した のだから謝辞をいれるべきだ」と要求したがニュートンは拒否。 ホイヘンス フック ライプニッツ
  10. 10. 精度の高い時計の必要性 [背景] • 17世紀当時、海上で緯度を知ることは比較的たやすかった (例えば北極星の高度を測定すればよい) • 海上で経度を知ることは「ほぼ不可能」と考えられていた (理由) o 海上で正確な時刻(実用的な精度を保つ)を知る術がない o 月や星々の観測データが不足している 正確な時計を作ることは当時の科学者達の主要な目的の1つだった
  11. 11. 17世紀ごろの機械式時計 https://en.wikipedia.org/wiki/Clock 14世紀 錘の落ちる動力で動作する時計 1510年 ゼンマイで動作する時計 1583年 振り子の等時性の発見(ガリレイ) 1656年 サイクロイド振り子時計の製作(★ホイヘンス) 1654年 ひげゼンマイが一定の周期で振動することの発見 (★フック) 1675年 ひげゼンマイ式懐中時計の製作(★ホイヘンス) 1737年 クロノメーター(ジョン・ハリソン) ホイヘンスの「振り子時計」 (1656年) サイクロイド振り子 = ニュートンの時代
  12. 12. 1589年 望遠鏡の発明(デラ・ポルタ)人類初? 1609年 望遠鏡による天体観測(ガリレイ) 1663年 反射式望遠鏡の原理(グレゴリー)製作には失敗 1729年? 色消しレンズ屈折式望遠鏡の発明(ホール) 1672年 反射式望遠鏡の製作(★ニュートン) 反射式望遠鏡は高い評価を得て、ニュートンは王立協会への 入会を許された 1673年? 大型望遠鏡(★ヘヴェリウス) 20cmのレンズ・焦点距離46m 1675年? 空中望遠鏡(★ホイヘンス) 17世紀ごろの望遠鏡 https://en.wikipedia.org/wiki/Chester_Moore_Hall ヘヴェリウスの大型望遠鏡 (1673年) ニュートンの反射式望遠鏡 (複製) (1672年) = ニュートンの時代
  13. 13. ニュートンのプリンキピア 1687年 ロンドン王立協会から「自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)」が 出版された。 ニュートンは本書の中で「地動説の数学的証明」を完成させた。 • ケプラー、デカルト、ガリレオらの「正しい部分」を整理 • 逆2乗則が成り立つならば、惑星が楕円軌道を描くことを示した
  14. 14. ニュートンの時代の科学界を シミュレートする ゲームシステムの設計
  15. 15. タイトル画面
  16. 16. マップ画面
  17. 17. :大学 :天文台 :科学アカデミー 都市情報 ケンブリッジ大学 (1284年創立) グリニッジ天文台 (1675年設立) ロンドン王立協会 (1660年設立) • 都市毎に存在する施設が異なります 科学アカデミー:「入会希望」が可能 大学:「講義聴講」が可能 天文台: 「天文観測」コマンド実行時に有利 • 同じ都市にいる別の科学者と「交流」ができます 交流で「友好度」を上げることが可能
  18. 18. プレイヤー選択画面 ゲーム開始時に、プレイヤー として操作する科学者を1人 選択します。 史料を元に、1667年時点で存命 だった著名な科学者を選び出した (14人) , etc..
  19. 19. 人物データ 各人物の歴史的情報を元に • 得意分野 • 職業 • 所在地 • 友好度 などを数値化 (例)ニュートン 力学適性S: 万有引力理論などにより 数学適性S: 微積分の確立などにより 生物学適性D: ほとんど業績が見つからな いため 所在地=ケンブリッジ 職業=学生 当時ケンブリッジ大学の学生だったこと による 所属=無所属 当時まだアカデミー会員ではなかった
  20. 20. ゲームの進め方 研究テーマ 選択 実験もしくは 推理 発見 •理論 •発明 •スケッチ •存在 論文提出 • 理論検証 • 発明品試作 • 論文作成 発見 イベント 発生! 繰り返し 「テーマ選択」→「実験/推理」(繰り返し)→「発見」→「論文提出」が基本的な流れ
  21. 21. 「研究テーマ」の選択 天文学 彗星 土星 月の運動 宇宙の構造 力学 振り子の 性質 バネの 性質 物体の落下 熱力学 温度 真空の 性質 燃焼 生物学 植物の観察 昆虫の観察 魚類の観察 哺乳類の 観察 光学 光の性質 光の正体 数学 幾何学 数論 級数 • 6分野19テーマからテーマを選択 • 「電磁気学」「化学」はこのころ (1667年) はまだ確立していたとは言えないので含 まず
  22. 22. 研究中画面
  23. 23. 発見イベント • 発見毎に「必要実験値」「必要推理値」が定義し てあり、それを超えると「発見イベントが発生」
  24. 24. 発明 「反射式望遠鏡」「振り子時計」など、この時代に発明された装置を、科学者が着想し、 試作を経て『発明』することができます
  25. 25. 発明可能なアイテムの例(1)
  26. 26. 発明可能なアイテムの例(2)
  27. 27. 論文審査画面 論文を科学アカデミーに提出すると、役員による審査が行われます。 論文の完成度のほか、役員との友好度が結果を左右することも・・。
  28. 28. まとめ
  29. 29. まとめ • ニュートンの時代までに、天動説は大きく揺らいではいたが、決定的 な『統一理論』は完成されていなかった • ニュートンは著書『プリンキピア』で天体と地上が同じ力学法則で記 述できることを示した • その時代の、科学的に原理を説明することが可能になったことなども あり、機械時計、望遠鏡などが大きく発展した • またイギリスとフランスに科学アカデミーが設立されたのもこのころ で、これによって今の「学会」のような活動が促進された • 上記のような当時の科学界をシミュレートする ゲームの概要を紹介しました
  30. 30. 参考文献 • 和田純夫(2009)『プリンキピアを読む』講談社. • ウィリアム・ランキン(1994)『ニュートン』(竹生淑子訳)心交社. • デーヴァ・ソベル(1997)『経度への挑戦』(藤井留美訳)翔泳社. • ニュートン(1982)『光学』(島尾永康訳)岩波書店. • 小山啓太(1985)『科学の思想と歩み』学術図書出版社. • 佐崎良雄(1990)『科学技術史概説』日本教育研究センター. • アイザック・アシモフ(1971)『科学技術 人名辞典』(皆川義雄訳)共立出版. • 『世界を変えた科学10大理論』(1994)学研. • 『朝日百科 世界の歴史』(7)〜(9) (1991)朝日新聞社. • Wikipedia, アイザック・ニュートン, https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%B6%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%8 B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%B3, (参照 2016-04-27) • その他の Wikipedia ページ(参照 2016-04-27)

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