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オープンサイエンスの倫理的衡平性〜社会とつながる研究の光と陰〜

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2018年11月22日 第25回KYOTO OPEN SCIENCE勉強会発表スライド

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オープンサイエンスの倫理的衡平性〜社会とつながる研究の光と陰〜

  1. 1. オープンサイエンスの倫理的衡平性 〜社会とつながる研究の光と陰〜 近 藤 康 久
  2. 2. 自己紹介 • 出身分野は考古学 • 総合地球環境学研究所(地球研) 研究基盤国際センター 情報基盤部門 准教授 GIS担当、オープンサイエンス推進担当 • オープンチームサイエンスプロジェクト プロジェクトリーダー(2018〜2020年度) • 文部科学省科学技術・学術政策研究所 客員研究官兼任 • http://researchmap.jp/yasuhisa_kondo • Twitter @yaskondo 2
  3. 3. • 2001年に文部科学省附置研究所として創設。京都市北区上賀茂に所在 • 地球環境問題を「人と自然の相互作用環」の視点から研究。 • 文理融合型の共同研究プロジェクトを時限付きで推進。 • 社会の多様な主体と協働して課題を解決する、超学際研究が持ち味。 • 持続可能性国際研究プログラム「Future Earth」のアジアセンター。 3
  4. 4. https://openteamscience.jp/
  5. 5. プロジェクトの研究体制 オマーンにおける コミュニティー主導による 伝統建築活用 ザンビアの サニテーション 衡平な 知識配分の 倫理 研究 理論 実践持ち寄り 生態学の 研究-実務 ギャップ 科学政策 コミュニ ケーション 内集団と 外集団/ 手続的公正 マーシャルの 放射能難民 標津の アイヌ遺産 富良野の 小規模水道 木津川の 里山保全 シビックテックに基づく オープンガバナンス 観光 会社 滋賀県 大津市 フラワー ショップ 民宿 脇田 実務 チーム水宝山 奥田 近藤 中原 腰原林 憲吾 Benkari 林 耕次 山内 熊澤 牛島 大西 福永 中島 太田 宮田 Vienni 大澤 加納 藤澤 びわ湖の水草 問題への対処 科学技術社会論・科学哲学・ 倫理学からみたオープンチーム サイエンスと超学際研究の融合 村山 池内 林 和弘 政 策 立 案 事 業 展 開
  6. 6. 地球研のチームサイエンス 7つの終了プロジェクトのリーダーと主要メンバーに対す るロングインタビューの結果、 • どのプロジェクトも、人文・社会科学と自然科学 の研究者がチームを構成して研究を推進するチー ムサイエンスである。 • どのプロジェクトも、異なる分野の専門家や社会 の多様な主体との間で生じる問題理解のずれに悩 んでいる。 ということが明らかになった。
  7. 7. Moose = = Salad = Apple Plate = チームサイエンスと超学際研究 US National Research Council defined Team Science as scientific collaboration conducted by more than one individual in an interdependent fashion. (Cooke & Hilton eds. 2015) (Adapted from Wang et al. 2017; Rosenfield 1992; Falk-Krzesinski 2014) 超学際研究 学際研究
  8. 8. 社会の課題を解決するための研究方法論 アプローチ 特徴 文献 モードIIサイエンス Mode II Science 学問体系に貢献することを目的とする 従来の知識生産のモード(I)とは異なり、 社会に開かれた知識生産のモード Gibbons et al. 1994 サトウ 2012 トランス・サイエンス Trans-science 科学のみでは解決できない問題群に 対するアプローチ 小林 2007 市民参加科学 Citizen science 市民参加型の共同研究 Leach et al. 2005 Dickinson & Bonney 2012 アクションリサーチ Action Research 現実世界の課題解決を志向する研究 Stinger 2007 矢守 2010 超学際研究 Transdisciplinary research 現実世界の課題を解決するための、 学問の垣根を超えたチームサイエンス Hadorn et al. 2007 Lang et al. 2011 Mauser et al. 2013
  9. 9. 出発点となる問題意識 環境と社会の問題に関する 共同研究の現場で、 異なる分野の研究者どうし、 あるいは研究者とそれ以外の人たちの間で、 問題に対する理解がずれていることがある。 • 問題理解のずれはどうして起こる? • ずれを乗り越えるにはどうすればいい?
  10. 10. 問題理解のずれ=非対称性 (原義は経済学における情報非対称性、市場における価格形成、Akerlof 1970) 環境社会課題そのものと、他の主体に対する理解が、 • 情報・知識・技術・知恵 • 思想・価値観 • 社会経済的地位・権力 が不均衡であるがために、非対称になっていること。 → 問題理解の非対称性は与件として、 非対称性を軽減することを考える。
  11. 11. データ・情報・知識・知恵 11(Adapted from Bellinger et al. 2004 http://www.systems-thinking.org/dikw/dikw.htm) Data Information Knowledge Wisdom Understanding Connectedness Understand Relations “what, who, when, where” Understand Patterns “how” Understand Principles “why”
  12. 12. へだたりをこえてつながる - ずらし - 倫理的衡平 - 可視化 - 対話 オープンサイエンス 超学際研究 オープン チームサイエンス このプロジェクトがめざしているのは オープンサイエンスと超学際研究の方法論融合
  13. 13. オープンサイエンスはパラダイムに Global Research Infrastructure 16. We affirm the principle that efforts should be directed to promote a widespread participation of researchers in the network of global research infrastructures, taking account of the opportunities offered by open science paradigms. –– G7科学大臣共同声明(2017.9.28)
  14. 14. オープンサイエンスは集合体 ↓トップダウンのアクション(政策) 北本朝展(2016)「研究データとオープンサイエンスに関する基礎的知識」 http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/01kitamoto.pdf より抜粋 オープンサイエンスへの収束 2016/03/17 研究データとオープンサイエンスフォーラ ム 6 オープ ンサイ エンス オープンデータ オープンアクセス 市民科学・クラウ ドファンディング 研究データ データ出版 データリポジトリ コラボレーション・オー プンイノベーション オープンピアレ ビュー 研究の再現性・ 透明性・研究 データ保存 超学際研究 参加 透明性 協働 共有 ↑ボトムアップのアクション(社会の関与)
  15. 15. オープン とは “Open data and content can be freely used, modified, and shared by anyone for any purpose” (試訳)オープンなデータとコンテンツは誰も があらゆる目的で自由に使用・改変・共有 できるものである。 ––– http://opendefinition.org
  16. 16. オープンリサーチデータ実現に向けた 最大の障壁は、提供側の不安感 2016年9月地球研NII合同ワークショップ グループ対話C NISTEPによる日本版オープン リサーチデータ実態調査で検 証済み(池内ほか 2017)
  17. 17. オープンサイエンスパラダイム これからの学術研究は Open by Default
  18. 18. 「オープン」リサーチデータの現実解は FAIRデータの原則 18https://www.force11.org/group/fairgroup/fairprinciples 見つけられる・アクセスできる・相互に運用できる・再利用できる
  19. 19. へだたりをこえてつながる - ずらし - 倫理的衡平 - 可視化 - 対話 オープンサイエンス 超学際研究 オープン チームサイエンス このプロジェクトがめざしているのは オープンサイエンスと超学際研究の方法論融合
  20. 20. In-between space へだたりをこえてつながる(イメージ) Living Space Living Space Living Space Living Space Living Space Living Space
  21. 21. 知識・行動の分化と統合 《分化》 ひろげる Differentiation 《統合》 まとめる Integration Synthesis 異文化理解 Interculturality 自分ごと世界 Epistemic living spaces (Felt 2009)
  22. 22. Living Space Living Space Living Space Living Space Living Space Living Space へだたりをこえてつながる(イメージ) Living Space Living Space Living Space Living Space
  23. 23. へだたりをこえてつながるための 4つのアプローチ ずらし Transcend 一緒に取り組む目標へ位相し、行動を起こす (対立点はずらせばいいし、道筋は複数あっ てよい) 倫理的衡平 Ethical Equity • 千客万来(inclusive) • 多様な主体の参加をうながし、その潜在能 力を引き出す(empowerment) • 非対称(搾取)の構造を極力排除する 可視化 Visualization 言説やデータを見える化して共有する • アンケート, 半構造化インタビュー, GIS, オントロジー(共通語彙), グラフィックファシリテーション など 対話 Dialogue 対等な立場で互いの意見を聞き、 考えを深める(Bohm 1996) • ハテナソン(質問づくりワークショップ), アンカンファレンス(当日論題設定型ワークショップ) など
  24. 24. 総合アプローチとしてのシビックテック • 情報通信技術(ICT)とオープンガバメントデータを用いて、 市民自らが地域の課題を解決する取り組み(松崎2017) • 市民と行政が協働して政策課題の解決に取り組む オープンガバナンスの主要形態 グラフィックレコーディング&ファシリテーション by あるがゆう
  25. 25. オープンガバナンスとオープンサイエンス オープンガバメント データ Open Government Data オープンリサーチ データ Open Research Data オープンガバナンス Open Governance オープンサイエンス Open Science 社会課題の解決 Solution to Societal Issues シビックテック Civic Tech 超学際研究 Transdisciplinary Research このプロジェクトの射程 This Project
  26. 26. シビックテックの射程 研究のプロセス 現在のTD理論 (Mauser et al. 2013) オープン サイエンス シビック テック 問題を設定する Co-design of research agenda --- ✔︎ 問題を解くための 方法を決める --- (研究者の専決) --- (研究者の専決) ✔︎ 問題を解く Co-production of knowledge 市民参加 ✔︎ 成果を公表する Co-dissemination of results オープン データ ✔︎
  27. 27. 実践・びわ湖の水草問題 (三井物産環境基金|栄養循環プロジェクトと協働) 分布図:水資源機構ホームページ https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/report/report_03_2.html より転載 1997年 2002年 2007年 2013年 • マザーレイク21計画(第2期改訂版)の目標:水草群落面積を1930〜50年代の水準に戻す
  28. 28. 主体によって問題認識が異なる 主体 研究者 県庁 湖岸住民 市役所 漁業者 学生団体 その他住民 問題認識 環境問題 迷惑問題 (異臭・ごみ) 生活の糧 イベント 他人ごと (びわ湖は好き) 水草対策費:年6億円 滋賀県琵琶湖政策課HPより 提供:山田英二氏
  29. 29. チーム水宝山の結成 (水草は宝の山) • 研究プロジェクトを始めたことがきっかけの一 つとなって、大津市で水草の堆肥化と循環利用 に取り組む市民グループが結成された。 https://suihozan.net • メンバーは民宿経営者、現地在住の大学教授、 IT企業社長、観光会社社長、広告代理店、県と 市の環境政策担当者、公園緑地協会、花屋さん。 • チャレンジ!オープンガバナンス2017の ファイナリストに選出された。 • 小さな成功例を積み重ねて、大きな動きに。 • 市民に寄り添う研究者(accompanying researcher)
  30. 30. オープンサイエンスと超学際研究の方法論融合 びわ湖の水草問題対処にあてはめると 知識生産システムの 開放 へだたりをこえて つながる (これからの) オープンチーム サイエンス びわ湖アンケート 《FAIRデータ》 Findable, Accessible, Interoperable, Reusable 水草アイディアソン 《シビックテック》 Outcome リソース 経験をフィードバック 知識生産 Knowledge production 行動 Action Input Output Networking = KAN 研究者とエンジニア、 地域の人たちが一緒に 水草の価値転換 《自分ごと世界の拡張》 水草問題 《現実世界の問題》 自分たちで実現可能な 仕組みをつくる 超学際研究オープンサイエンス
  31. 31. びわ湖の水草ワークショップ(シビックテック) –第1回 2017年11月 草津(試行) –第2回 2018年4月 大津(試行) –第3回 2018年7月 大津(本番) –第4回 2018年8月 大津(びわコミ会議) • 自分たちの人脈と予算で実現可能なアイディアが出てきた グラフィックレコーディング&ファシリテーション
  32. 32. • これからはローカル ニュースが面白い! • 枚方つーしん • ならマガ とか • 地域ポイントと提携 絞り込み:びわ湖水草ポータル(仮称) を呼び水にして、水草問題への意識を高める • 地域の話題の中に 水草を入れ込む • 水草あったで (通報窓口) • 水草で〇〇してみた • 駆除イベントに参加した • 堆肥にしてみた • 堆肥で野菜を作ってみた • ハーバリウム作ってみた とか • 地域のライター育成 → 研究者もできるかも (地域共在型研究者)
  33. 33. トラブル発生! 倫理的不衡平に要注意 研究機関の謝金支給基準が、ビジネスの相場に比べて 著しく低く、制度自体が非対称(搾取)の構造になって いる。 研究者・行政 学生・市民参加者 労働力、知識、アイディアなど 謝金(定額)、知識、楽しさ
  34. 34. 立ち止まって考えてみよう 〈やりがい〉や〈楽しみ〉を提供する という名目で、 参加者の労働力や知識・アイディアを 〈搾取〉していませんか?
  35. 35. 市民参加のはしご Ladder of Citizen Participation (Arnstein 1969) 8 市民主導 実質的な参加7 (一部の)権限委譲 6 パートナーシップ 5 懐柔 形式的な参加4 意見聴取 3 情報提供 2 「ガス抜き」 参加とは いえない 1 世論操作  科学への参加にも応用可能 出典: http://www.citizenshandbook.org/arnsteinsladder.html
  36. 36. シチズンサイエンスのレベル (Haklay 2013) レベル4「エクストリームなシチズンサイエンス」 • 共同研究:課題の設定、データの収集・分析 レベル3「参加型研究」 • 課題設定とデータ収集への参加 レベル2「分散知能」 • 基礎的インタープリターとしての市民 • 思考するボランティア レベル1「クラウドソーシング」 • センサーとしての市民 • コンピュータに入力するボランティア
  37. 37. 市民から見たデータ公開 ワークショップ「社会との協働が切り拓くオープンサイエンスの未来」 (2017年1月、地球研)のグループ対話セッションに出てきた言説 • シチズンサイエンスが、専門的知識をもつ研究 者が市民に対して優越し、市民を労働力として 用いるという「上流-下流構造」になっている。 • シチズンサイエンスにはデータ基盤の共同構築 と社会転換のためのアクションという2つの役割 がある。 – ここでいうデータ基盤とは、第一義的には研究者と 市民が協働するためのプラットフォームを意味する が、公開データを保存する場も想定される。 近藤・林 (2018.11) https://doi.org/10.15108/dp163
  38. 38. プロジェクト 研究者側の 目論見 研究者側から 提供するもの 市民側から 提供するもの Haklayの分類 びわ湖の水草 社会転換 謝金 アイディア 情報 3. 参加型 2. 分散知能 みんなで翻刻 データ基盤 くずし字の 知識 楽しさ データ 2. 分散知能 1. 入力者 オーロラ4D データ基盤 場づくり 楽しさ 謝辞への 記載 データ 楽しさ 2. 分散知能 1. センサー 雷雲 データ基盤 謝辞への 記載 楽しさ データ 2. 分散知能 1. センサー ナメクジ 捜査網 データ基盤 科学的知識 データ 1. センサー KYOTO OPEN SCIENCE 勉強会に関係する プロジェクトを点検してみましょう Ono et al. 2018 を参考に、報告者の主観で判断
  39. 39. 余談:これもある意味、搾取なのでご注意を
  40. 40. Take Home Message 立ち止まって考えてみよう 〈やりがい〉や〈楽しみ〉を提供する という名目で、 参加者の労働力や知識・アイディアを 〈搾取〉していませんか?

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