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病気に強い作物を作るために

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京都農販さん主催の勉強会で話した病気に強い作物にするための話
肥料の与え方に着目して、ストレスを減らすことで病気に強い作物に近づくという発想で話しています

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病気に強い作物を作るために

  1. 1. 病気に強い作物を作るために
  2. 2. 目次 1.プロフィール 2.病気にかかりにくくするために 3.作物の健康は土壌環境から 4.肥料の効率的な効かせ方 5.微生物の活動
  3. 3. プロフィール
  4. 4. プロフィール 齋藤 毅 神奈川県横浜市出身 大学まで神奈川県にいました 大学院への進学と同時に奈良へ引越し 現在は京都に住んでいます(開発室は京都で畑は奈良)
  5. 5. 経歴(大学) 農学部農学科 作物遺伝育種学研究室 研究内容 メロンの巻きひげ発生に関与する遺伝子の解析 巻きひげが発生せず 本来巻きひげが発生する 箇所が花になる 左:正常株 右:TLが欠失した株 http://chikyu-no-cocolo.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-3123.html
  6. 6. 経歴(大学院) バイオサイエンス研究科 細胞生物学専攻 形質発現植物学講座 研究内容 双葉展開時に関与する遺伝子の解析 朝日新聞出版 植物の生存戦略 一章 植物と動物 p27
  7. 7. 経歴(職歴) 大学院博士前期課程2年時、 株式会社日本情報化農業研究所立ち上げに参画 技術伝承可能な汎用的栽培法の研 究開発のため、 京都府京丹後市の自然耕房あおき の研修生となる 写真: NHKテレビテキスト やさいの時間 2011年1月号 p48
  8. 8. 経歴(職歴) 2年後、大学院の頃の同期が奈良県桜井市でセレクトファームを 立ち上げ。その際に調査レポートを渡して立ち上げに協力 京丹後で野菜の販売に関わっていたときに、 農業においてITの活用がほとんどされていない現状を感じ、 栽培からOSS開発者(プログラマ)に転身 物販用オープンソースソフトウェア SOY Shopのプロジェクトを開始する セレクトファームの業務システムの大半は 農場長の西前を含め、自分たちで開発したものを使っています。
  9. 9. プロフィール詳細 西前 厳一(現農場主) 学部 : 森林生態学 大学院 : 原核生物分子遺伝学 齋藤 毅(現システム) 学部 : 育種学 大学院 : 形質発現植物学 ※非農家です
  10. 10. セレクトファーム立ち上げ2年目 産業廃棄物である剪定枝大量利用と鶏糞使用の栽培方法が NHKテレビテキスト やさいの時間2011年1月号で取り上げられる NHKテレビテキスト やさいの時間 2011年1月号 p52
  11. 11. 都市圏の食料品店で高級野菜として販売されています
  12. 12. 2012年より神奈川県にある養鶏農家株式会社コトブキ園と共に 高品質な鶏糞堆肥の製造を開始し、 神奈川県トリ研究会で鶏糞堆肥製造の勉強会を行う 鶏糞処理場
  13. 13. 現在は株式会社日本情報化農業研究所を退職し、農機具メーカー や肥料メーカー、生産法人向けに栽培(主に化学)の話をしています 写真:こと京都さんの社員ブログから引用
  14. 14. 経歴(栽培実績) ブロッコリ:剪定枝+鶏糞 ブロッコリ:比較区 一年目のキャベツ エンドウ
  15. 15. 病気にかかりにくくするために
  16. 16. 作物が病気にかかりにくくするためには 〇病気の原因となるカビや細菌が作物の周りに少なければ良い 〇作物が病原菌に負けない様に健康になればいい 人の健康管理でも同じです。 理想的な栽培環境を作れば、農薬の使用量は減る
  17. 17. 作物が病気にかかりにくくするためには しかし、理想的な環境なんて作れたら苦労はしない 小さなことをコツコツやって、理想的な環境に近づけて いくしかない。
  18. 18. 作物が病気にかかりにくくするためには 〇理想的な環境にするために ・病原性のカビや細菌のことを知って、病原菌  にとって苦手な環境にする ・作物にとって少ないストレスで多くの肥料  成分を吸収できる環境にする 作物が強くなって、病原菌を弱くすることで、 少しずつ病気の要因を減らしていきましょう
  19. 19. 作物の健康は土壌環境から
  20. 20. 土壌の発達1
  21. 21. 土壌の発達2-1 土のはじめは川底の様な砂地(鉱物)から始まり、様々な 植物が根付くことによって土壌へと変化する。
  22. 22. 土壌の発達2-2 石灰石:苦土石灰の中に入っている炭酸石灰のこと (鞍馬川上流で撮影) 写真:http://ja.wikipedia.org/wiki/炭酸カルシウムより引用
  23. 23. 土壌の発達2-3 黒雲母:バーミキューライトの原料で、土壌中でマグネシウム    とカリウムの供給源となる 写真:http://ja.wikipedia.org/wiki/黒雲母より引用
  24. 24. 土壌の発達3 植物の死骸が腐植に変わって、砂地(鉱物)と混ざることで、 より大きな植物が生育できる土壌へと変化する。
  25. 25. 土壌の発達4 砂(鉱物)と腐植がちょうどいいバランスで混ざると 栽培にとって良い土だと言われる。
  26. 26. 土壌の発達5 〇鉱物の役割 植物の根から酸が分泌されて いるのですが、鉱物はその酸 に触れることで徐々に小さく なりながら、ミネラルを放出 する。 他に保肥力(CEC)を高めます。 ※粘土(モンモリロナイトも含む)は鉱物として扱われます ※粘土は砂よりも小さな鉱物
  27. 27. 土壌の発達6 〇鉱物の欠点 土壌で鉱物が多いと、土が締まって根が伸長しにくく なる。 根が伸長しにくいことで、水や養分の吸収が弱まり、 全体的に株が弱る。 強い肥料を与えると壊れる。 壊れるとCEC、排水性と保水性が下がる。
  28. 28. 土壌の発達7 〇腐植の役割 根が柔らかくなり、伸長し やすくなり、肥料の効率が 上がります。他に排水性や 保水性が高まり作業効率も 高まる。 米ぬかや糖蜜と併用することで、植物に有益な微生物の 増殖のための住処となる。 ※バーク堆肥が腐植に当たる
  29. 29. 土壌の発達8 〇腐植の欠点 しっかりと発酵していない状態で土と混ぜると、未熟な 有機物内で植物に害を与える微生物が繁殖する。 (窒素飢餓) 未熟な腐植を入れた方 葉色が落ちた。 何も入れてない
  30. 30. 土壌の発達9 〇腐植の欠点 腐植を入れすぎると、微量要素の欠乏が発生することが ある。 ※腐植入れすぎという状況になることはなかなかない ※炭素循環型農法を行う時は注意です 微生物の活動によって小さくなる。 活発な土壌であればある程、小さくなるスピードが速く なる
  31. 31. 肥料の効率的な効かせ方
  32. 32. カリウム(K) 〇浸透圧の調整 各所、特に根に多く蓄積し、根からの吸水に関わる 根の浸透圧を高めることで、 土から根への水の流れを発生 させて吸水する ※他に細胞内の酵素の働きに関与  するが省略
  33. 33. カリウム(K) 〇浸透圧(補足)
  34. 34. カリウム(K) 根の中が土よりも濃度が 高ければ、土から水を吸水 できる 根から水が吸えなければ、 養分も吸えなくなるので、 土壌のイオン濃度(EC値) も吸水時に重要になる
  35. 35. カリウム(K) 〇カリウム欠乏 水を吸うことに関わる要素のため、 カリウムが欠乏すると葉が萎れて、 葉色も薄くなる。特に下の葉から 症状が現れ始める。 ※葉色が薄く→黄色っぽくなる 吸水力の低下と養分吸収が下がる
  36. 36. カルシウム(Ca) 〇細胞壁の強化 株の硬さを得るためにカルシウムは 使われる。 植物繊維のセルロースの間にカルシ ウムが入り込んで、繊維が硬くなり、 茎や葉も頑丈になる エックボックス説 セルロース セルロース 他にカルシウムが十分にあると老化が 遅くなる 茎が硬くなり、 株全体で安定する
  37. 37. カルシウム(Ca) 〇カルシウム欠乏 新しく出てくる葉(上の方の葉)が不調 になり、ひどい時は枯死する 新しく出てくる葉に問題ありで、古い 葉(下の方の葉)には深刻な症状はなし
  38. 38. マグネシウム(Mg) 〇葉緑素の中心にある要素 光合成を行う葉緑素はマグネシウム を中心にすることで働く様になる マグネシウムが入ることで葉が緑色 になる 左のヘムという構造の中心がマグネ シウム以外の分子が入ると別の働き になる http://ja.wikipedia.org/wiki/クロロフィル
  39. 39. マグネシウム(Mg) 〇マグネシウム欠乏 下の葉が黄化する。葉の外側から黄 化し、葉脈は最後 マグネシウム欠乏が軽微の場合は 上の葉は正常に展開する 下の葉が黄化する。葉の外側から黄 化し、葉脈は最後 光合成に支障が出る
  40. 40. 植物の根から吸水 光合成をしっかりと行う 為、葉が根から水を吸い 上げる圧力を高める 根の浸透圧を高める ことで土からの吸水 力が高まる 肥料成分は根から吸い上げるため、 吸水力を高める要素はしっかりと施用する
  41. 41. マグネシウムの吸収時の注意点 財団法人職業訓練教材研究会 植物学概論 72ページ
  42. 42. マグネシウムの吸収時の注意点 土壌中にカルシウムが多いとマグネシウムとカリウム の吸収力が下がる マグネシウムとカリウムを施肥しても、肥効が期待通り にならない現象がある カルシウム系の肥料の過剰施用で作物は不健康になる ※カルシウム過多で作物の吸水力が落ち、カルシウムも  吸えなくなるという現象も発生する
  43. 43. マグネシウムの吸収時の注意点 カルシウムはいつ施用する? ・栽培を開始する前にpH調整の為の石灰 カルシウムの用途は多岐にわたるため ついつい過剰施用になってしまう ・追肥や葉面散布で水溶性のカルシウム等 ・酸素供給剤にも入っていたりする
  44. 44. マグネシウムの吸収時の注意点 実は鶏糞の中にもカルシウムが大量に含まれている http://www.kyodo-shiryo.co.jp/product/product_01.html 鶏は卵の殻を硬くするために、給餌の中に大量にカルシウム を入れ、ほとんど消化せずに鶏糞の成分となる
  45. 45. マグネシウムの吸収時の注意点 炭酸カルシウム 熟成鶏糞 飼料由来の炭酸カルシウムやリン酸カルシウムの他、 卵の殻(これも炭カル)も鶏糞に含まれる
  46. 46. マグネシウムの吸収時の注意点 pH調整の為に石灰を使い、養分補給で鶏糞は 作物にとって最悪の組み合わせ 病気を減らすために pH調整で石灰を使うなら、鶏糞は使わない 鶏糞を使いたければ、石灰でpH調整は行わない ※鶏糞の中にある炭酸カルシウムは苦土石灰の成分で  若干ではあるが鶏糞にもpHを調整できる
  47. 47. マグネシウムの吸収時の注意点 pHは石灰でなくても調整することができる ・水マグ  く溶性の苦土(マグネシウム)  苦土石灰の中にある炭酸石灰と  同じ働きをしつつpH調整後に残  るのがカルシウムではなく、  マグネシウム ・炭酸カリ  水溶性のカリウム  水に溶けた瞬間にpHを調整する
  48. 48. マグネシウムの吸収時の注意点 カルシウム過多になったら、カリウムやマグネシウムを 追肥で補充すれば良いという発想は危険。 カルシウムとマグネシウムが同時に過多になると、微量 要素成分が吸収できなくなる。(詳細は割愛) 土壌中のカルシウム量を減らすという意識が大事
  49. 49. マグネシウムの吸収時の注意点 土壌中のカルシウム量を減らすという意識が大事 カルシウムを除去する方法もあるが、その方法は今回は 割愛する
  50. 50. 微生物の活動
  51. 51. 菌:カビやキノコ 写真とイラスト:http://ja.wikipedia.org/wiki/コウジカビより引用 菌はカビやキノコといった多細胞生物が大半を占める 作物の病気はカビ由来が多い 作物にとって有益な物質や毒素を出せるものがいる
  52. 52. 菌:カビやキノコ キノコはこう見えて、カビの仲間(担子菌や子嚢菌)
  53. 53. 細菌:乳酸菌、大腸菌や軟腐病菌 By Credit: Rocky Mountain Laboratories, NIAID, NIH [Public domain], via Wikimedia Commons 細菌の大半は単細胞生物 作物にとって有益な物質や毒素を出せるものがいる
  54. 54. ウィルス:ネギ萎縮ウィルス等 By Los Alamos National Laboratory [Public domain or Public domain], via Wikimedia Commons ウィルスは生物? 自己増殖することができないので非生物として扱われる こともある
  55. 55. 細菌とウィルスの違い 細菌は細胞分裂で増えることができる By Credit: Rocky Mountain Laboratories, NIAID, NIH [Public domain], via Wikimedia Commons 細菌:
  56. 56. 細菌とウィルスの違い ※ウィルスは細菌だけでなく、人や植物の細胞にも感染する
  57. 57. 細菌とウィルスの違い 写真:http://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/d/d4/Virus_growth_curve.pngを引用 細菌は2倍ずつ増えるが、ウィルスは突然爆発的に増加する
  58. 58. 微生物が有機物を分解するまで
  59. 59. 微生物が有機物を分解するまで 小さい微生物程、分解できる物質が少ない。 周りに分解できる物質が少なくなると、一部の優秀な個体 のみ休眠を行い、他は死んで様々な微生物が利用できる有 機物となる 土壌の場合は団粒構造の成分となる
  60. 60. コロニー 住環境や餌の条件が整うことで、特定の菌が爆発的に増えること コロニーができたら他の菌は入れない
  61. 61. コロニー例 稲わらと良質な大豆たんぱくがあることで納豆菌が優勢種 になる ※納豆菌は細菌 http://www.kyotogakuen.ac.jp/~microbio/news/2012/12/000187.html
  62. 62. 日和見菌(細菌) 日和見菌群 有 益 菌 群 有 害 菌 群 (作物にとって)有益でも有害でもない大多数の菌群 有益、有害のどちらかの菌群が活発になると、それを加担する 様に動き出す菌群のことを指す
  63. 63. 根こぶ病菌(カビ?)で考えてみる 先に無害、もしくは有益な菌がたくさんいるとわかっている 堆肥が根の周りにあれば、根こぶ病で深刻な事態になること は避けられる そんな良い堆肥なんてあるのか? そもそも有益な菌はどこにいるのか?
  64. 64. 有益な微生物一例 枯草菌の仲間で植物の根の発根に良い影響を与える細菌がいる 枯草菌の仲間で窒素固定を行う細菌がいる 根こぶ病菌を抑えつつ、上記の細菌の協力を得たい 読んで字のごとく枯れた草で発見された細菌で、 植物性の有機物でできた熟成堆肥を入れると病気を抑えられる
  65. 65. 有益な微生物一例 落ち葉や夏草の堆肥が理想だが、量が確保できない 無害な菌による発酵が終了している 資材として廃菌床がある 安価なものでバークもある
  66. 66. まとめ ・畑に腐植を入れて、より大きく育てる環境を目指す ・カルシウムの過剰施肥を避けることで、全ての肥料要素の  吸収効率を高め、作物を健康的にする ・特定の菌だけが増殖できる環境を避ける 病気の発症率を下げることで、農薬の散布量は減らせる

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