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仮想通貨エコシステム試論(20140401公開版)

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勉強会で使用したバージョンから何枚か落としてありますが、趣旨は伝わると思います。

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仮想通貨エコシステム試論(20140401公開版)

  1. 1. 仮想通貨エコシステム試論 A Preliminary Analysis on the Cryptocurrency Ecosystem 九州大学 実積寿也 Toshiya Jitsuzumi, Kyushu University jitsuzumi@econ.kyushu-u.ac.jp 2014年4月1日版
  2. 2. 経済効率性の観点からの基本的判断 • 代替的な機能を果たす選択肢は多いに越したことはない。 • ビットコインは決済手段に特化した「貨幣」的なもの • 利用者が合理的に選択できる限りOK • 利用コストと利用メリットの比較衡量 • 使わない自由は常に存在する。 • 価値保蔵手段 • 取引の決済手段 • 他の財物の価値尺度 貨幣の役割 2
  3. 3. ビットコインのエコシステム http:/ / images.sodahead.com/ polls/ 003257199/ 3 036685408_Trading_post_Jiffy_western_edition_ psd48563_xlarge.png http:/ / s.cghub.com/ files/ Image/ 507001- 508000/ 507091/ 384_max.jpg https:/ / d13uygpm1enfng.cloudfront.net/ article- imgs/ en/ 2014/ 03/ 05/ AJ201403050090/ AJ201403050091M.jpg http:/ / www.cr yptocoinsnews .com/ wp- content/ uploa ds/ 2013/ 09/ r ed-fury-bitcoin- usb-miner.jpg ユーザー マイナー 関連機器メーカー 取引認証サービス 取引所 交換・両替サービス 金融仲介サービス 利用可能店舗 財・サービスとの交換 金融機能を果たす主体は 現時点において公式には 存在していない。 3
  4. 4. ビットコインという決済手段のメリット(日経電子版[2014/3/6]にコメント付与) 1. 決済コスト(手数料)が安い ⇔希薄化を引き起こすシニョレッジや時間コスト、価値変動コストの評価に依存 2. 取引スピードが速い ⇔約10分という時間コストをどう評価するかに依存 3. 匿名性が高い 「仮名性+mixing service+他通貨との取引」で事後的に獲得した特質 4. 相場の上昇が期待できる ⇔当然、暴落も期待できてしまう 5. スマホで簡単に利用できる 6. 海外でも使える 7. 預金の逃避先にも使える 流動性が高いので経済危機の際に自衛手段として重宝される 個人で保管している限り第三者による口座凍結のリスクが尐ない 4
  5. 5. 安価な決済コスト? • ビットコインの決済はblockchainの相互監視を通じて保証される。 • 相互監視はマイナー集団によって実行され、その報酬の大部分はシニョレッジ (貨幣 発行益)として付与される。 • 円やドルなどの現金が動かないために無料に見えるが、実際には、希薄化コスト(インフ レコスト)としてビットコイン利用者全体で広く分担 0% 20% 40% 60% 80% 100% 0 4,000,000 8,000,000 12,000,000 16,000,000 20,000,000 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 累積発行枚数 希薄化度 • 将来的に決済手数料で相互監視 費用が賄われるようになって初 めてコストがビットコイン利用 者に具体的に認識されるように なる。 • クレジットカードや銀行送金、 他の仮想通貨の決済コストとの 相互競争を通じ均衡水準に収束 • 加えて、10分間程度の時間コス トおよび決済終了までの価値変 動によるコストが発生 5
  6. 6. 決済手段としてのpositioning【妄想途中につき注意】 コスト・リスク 利便性 現金 銀行預金、 クレジットカード、 デビットカード 理想の仮想 通貨 現実の仮想 通貨 6
  7. 7. ビットコインのリスク・コスト • サイバー攻撃への脆弱性 • システム管理主体、市場の番人が明確でないというリスク • 既存の銀行システムをバイパスできるというメリットの反面 • システム改善と整備は世界中に散らばる匿名の技術者 • アルゴリズムに欠陥がみつかった場合に対処可能か? • マイニングバブルへの対処 • 想定以上に注目が集まったことに対する調整機能の欠如 • 不正取引に利用される可能性⇒コイン全体の評価ダウン • 仮名制+ミキシングサービスが提供されているために不正取引に利用されやすい • 正規の通貨をもとにした取引ではないため、規制の対象外であった • 犯罪者やテロ集団に用いられ、国家が統御できなくなる可能性 • Mt.Gox事件で見られたような取引所運営の不透明性 • 取引機能と保管機能、金融機能の混在 7
  8. 8. システムに内在するバブルの原因 • ビットコインの規模の小ささに由来するvolatilityの高さ • 1BTC=10万円としても、最終的なビットコインの「時価総額」は2兆1000億円。流 通しているのはその半分(日経情報ストラテジー 2014/1/29)に過ぎず、外国為替 市場(1日当たり平均取引高で500兆円超)等と比べて極小 • 公式の価値安定化メカニズムがないので、ファンダメンタルズの裏づけが なく、価値は純粋にその場その場のフローとテクニカルのみで決定 • 中央銀行や、国際金融機関などによる安定化措置がない。 • 法定通貨でないビットコインの保有理由は投機的需要が大半 • 現時点では使用可能局面が尐ないため、取引需要は尐ない • 流通貨幣としての信用が市場でほとんど確立されていない 山口浩のSYNODOS論文(http://synodos.jp/society/7564)およびMurray Hill Journal (http://wholekernel.blogspot.jp/2014/01/blog-post_25.html、http://wholekernel.blogspot.jp/2014/02/blog-post_18.html) を参考に作成 8
  9. 9. ビットコインが既に果たした意義 • 既存システムの規律向上 • 財政・金融当局への規律付け • ビットコインは野放図な財政金融政策に対する一時的な資金退避先を国民に提供 • 金融業界への競争圧力 • 護送船団方式に守られた金融決済システムが提供するサービスに対する代替手段 • 安価な決済手段によるフロンティア拡大 • 為替や決済費用がハードルとなってきた事業を採算に乗せ、育てていくインフラに なる • 決済制度が未整備な新興国では大きな存在意義 • 犯罪組織にとっても大きな価値あり • 類似技術の発達(ethereumなど) • 既存システムと逆相関を持つリスク資産の提供 • 機関投資家向けのリスク回避手段 9
  10. 10. 我々に突きつけられた課題 10 http://i.gzn.jp/img/2009/07/10/average_american_spend_money/1164832_51299081.jpg
  11. 11. 需要面から見たビットコインのsustainability • 小川英治教授(一橋大学商学研究科)の見解(プレジデント 2014/3/17) • 持続可能性は、交換機能(=決済機能)を十分提供できるか否かに依存。 • 交換機能発揮の前提となるのが、貨幣の一般受容性を人々が認識しているか否か。 • 一般受容性は、取引相手となる他の経済主体がその貨幣を貨幣としてどれほど受け取るか どうかに依存する。すなわち、言語と同様にネットワーク外部性が作用するために、実際 にその貨幣が交換手段として流通している量に依存して、交換手段としての機能の多寡が 決まる。 • また、異時点間に貨幣の価値が減尐していくことになれば、このような貨幣的交換は行う ことが困難となる。そのために、貨幣の価値貯蔵手段としての機能も交換手段としての機 能に関連して重視される。 金本位制時代とその後の変遷をみる限り、金兌換というような即物的な仕掛けがなくても、「貨幣 価値を支えるという約束」さえあれば銀行券の価値は揺るいでいないようです。これは、金本位制 と現代の貨幣制度とが「約束」に支えられる制度だという点で、ある種の共通点を持っていること を示唆するものでもあります。(『貨幣の経済学』岩村充、集英社、p.35) 11
  12. 12. ネットワーク効果発揮の条件 • 十分なインストールベースの獲得 • 既に確立している他のネットワークとの接続 • 現金ネットワークとの接続を保証する安定的な取 引所の存在が肝(⇒携帯電話の成功戦略) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1911 1914 1917 1920 1923 1926 1929 1932 1935 1938 1941 1944 1947 1950 1953 1956 1959 1962 1965 1968 1971 1974 1977 1980 1983 1986 人 口 1 0 0 人 当 た り 電 話 機 数 アメリカ スウェーデン スイス フランス ドイツ 日本 クリティカルマスを 超えてしまえば、自 律的に発展 取引所の安全性・透明 性に関する規制の導入 は必須 利用可能局面を増やす ことでクリティカルマ スを引き下げる努力が 必要 強制通用力があれば一気 にクリア 12
  13. 13. 強制通用力(政府答弁書(2014/3/18)より抜粋・整理) • 強制通用力(強制通用の効力) • 金銭債務の債権者が当該効力を有する媒体を用いて弁済をした場合に、債権者がそ の弁済の受領を拒むことができず、当然にその弁済が有効となるとの効力 • 国内の根拠規定 • 通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律 第7条 • 日本銀行法 第46条第2項 • 強制通用力を担保する主体 • 主権を有する国家又はこれに準ずるもの • 外国の通貨とは、ある外国が自国における強制通用力を認めている通貨をいい、我 が国における強制通用力が認められているものではない。ビットコインについては 強制通用力を認めている外国が存在しない限り、ビットコインが外国の通貨と同様 の性質を持つと解することは困難。 13
  14. 14. 供給面での調整機能←マイニングの経済 http:/ / siliconangle. com/ files/ 2013/ 0 7/ 05915708- photo-bitcoin.gif http:/ / blog.prolecto.com/ wp- content/ uploads/ 2013/ 05/ fo rex-samples.jpeg http:/ / btcmag.9wizards.netdna-cdn.com/ wp-content/ uploads/ 2013/ 12/ gloryshot_11.png http:/ / www.lbl.gov/ Science- Articles/ Archive/ assets/ images/ 2005/ Feb- 02/ chp_electric_power_lines_1.jpg http:/ / www.datacenterknowledge.com/ wp- content/ uploads/ 2014/ 01/ bitcoin-allied-asicminer.jpg 電力 資本投入 利益確定 取引所 http:/ / www.remit2home.com / remittance/ images/ R2H- other-TransfFees.jpg マイナーによる取引 認証システムが正常 に運営されているこ とによりビットコイ ンの信用力が担保さ れ、交換市場が成立 ビットコインとaltcoinは生産資源を相争う立場 ⇒効率的な仮想通貨の産出が期待 14
  15. 15. 仮想通貨のエコシステム • 仮想通貨は各種 生産資源の投入 効率を実物市場 と争い、また、 決済手段として の利便性を他の 決済手段と争う • 長期的には合理 的裁定が働くこ とが期待できる Source: Wikibrains (http://wikibrains.com/map/532add45e4 b0dbbf379c4fef#.Uy5mzfl_t8E) http:/ / www.lbl.gov/ Science- Articles/ Archive/ assets/ images/ 2005/ Feb- 02/ chp_electric_power_lines_1.jpg http:/ / www.datacenterknowledge.com/ wp- content/ uploads/ 2014/ 01/ bitcoin-allied-asicminer.jpg 電力 資本投入 http:/ / blog.prolecto.com/ wp- content/ uploads/ 2013/ 05/ fo rex-samples.jpeg http://www.commerce.wa.gov .au/consumerprotection/Imag es/Business/goods-and- services.jpg http:/ / siliconangle. com/ files/ 2013/ 0 7/ 05915708- photo-bitcoin.gif http:/ / btcmag.9wizards.netdna-cdn.com/ wp-content/ uploads/ 2013/ 12/ gloryshot_11.png 取引所 15
  16. 16. マイニングバブル • ビットコイン価値の高騰に引きずられたマイニングバブルの発生 • マイナーに与えられるシニョレッジは、現在、総流通量の約11%に相当 • 希薄化速度は円の二倍超(円のストック増大速度は直近でM1で5.35%、現金で3.41%) • 設計者の意図を想像するに、現在のシニョレッジ水準はビットコインの普及を狙っ たものであり、ビットコインに対するこれほどの注目は想定外 • 注目が集まりすぎたためにマイニングが過熱化 週刊東洋経済2014/2/15 16
  17. 17. 2013年4月時点で一日15万ドル相当の電力コスト 17 http://techcrunch.com/2013/04/13/th e-cost-of-a-bitcoin/
  18. 18. マイニング経済における長期均衡状態 • 長期均衡状況とは? • 決済手数料がマイナーへの主要な報酬となるフェーズに • 手数料の適正化 • 一方で、現在のマイニングバブル(およびそれに伴う過当競争)によりマ イニングプールの寡占化は進行 18
  19. 19. 悪意をもったマイナーの行動 • マイニングプールを支配できたマイナーが合理的だと仮定する。 • 方法が二重支払でblockchainを分岐させることだとすれば.. • 搾取したビットコインを現金化する取引市場は搾取への対応が遅れると仮定 • マイニングプールを支配したマイナーの認証が他に優越する確率を100%と仮定 • 一方、利用者が支払う手数料割合をαとすると、β日後に当該マイナーが得られたで あろう手数料収入は 10分間の平均取引金額 X 二重支払によって当該マイナーが得る不当利得= 10分間の平均取引金額 X ×6×24×α×β=144αβX 仮に手数料は0.1%としても、7日後にはより大きな収入を確保できるのであれば、支 配的マイナーがシステムを崩壊させる危険を冒して利益確保に走る可能性はほぼ無視 できる水準ではないか? 19
  20. 20. 政府介入の方向性:リスク軽減策 • 消費者保護のための安全性・透明性の向上 • 自己責任の前提となる情報開示・監視機能の整備は必須 • 税制の整備 • 保有者と非保有者不公平性への対処 • 自国通貨建て取引が減尐⇒税収喪失のリスク • 犯罪行為(マネーロンダリング)への対処 • 国際連携の結果、擬似匿名性は失われる可能性がある。 • インターネット通信を禁止しない限り、ビットコインを含む仮想通貨自体は規制 不可 ⇒中国は例外? 20
  21. 21. 政府介入の方向性:産業育成 • 取引所間、仮想通貨間の競争環境の整備 • 安全かつ透明な値決め・決済ルール • 仮想通貨システムに対する最終的な保証の提供 • 国際仮想通貨銀行? トランザクション(取引)を分散型管理で き、運用コストが安く、投機対象とならない よう利息も決済コストも限りなくゼロの仮想 通貨一一。実通貨だけでなく、ネット世界で も実社会でも安心・安全に使える、利便性に 富んだ世界共通の仮想通貨を作るべき時期が 来ているのかもしれない。(三淵啓自、日経新聞電 子版セクション 2014/3/14) 価値を安定させるために、中央銀行のような組織を設 置し、マネーサプライをコントロールさせるという既 存通貨と似た運営を行うのであれば、もともと特定の 管理者を置かずに供給量を制約するために採用した暗 号通貨という手法自体の必然性は減尐する。…スタビ ライザー的な金融政策を自動的に行うしくみを実装で きるのであれば、非常にイノベーティブな仮想通貨シ ステムといえるだろう。…しかし…現在の流れは、… 尐なくともビットコインの取引に関して何らかの制度 的な枠をはめ、利用者の自由の一部を制約する方向へ と向かっているようだ。(山口浩 「ビットコインをめぐる共 同幻想と同床異夢」SYNODOS) 21
  22. 22. 各国政府による対応 http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/ee/Legal_status_of_bitcoin.png 出典:http://www.slideshare.net/masanork/bitcoin-20140317glocom 凡例 明確に位置づけ 合法 制限あり 禁止 各国政府による対応の違いはregulatory shoppingをもたら す 22
  23. 23. 仮想通貨の将来 • 擬似世界通貨シナリオ • 取引所への規制を前提に、金融インフラが不十分である国に対して、代替的決済手 段を提供するという可能性 • 仮想通貨エコシステム内に需給調整を支援する「金融機能」を設置することが必須 • ニッチシナリオ • 低廉な決済コストという特質を活かして、(国際)送金市場において生き残る。 • Western Unionや郵便為替(Money Order)の競争相手として • 超ニッチシナリオ • 「政府の関与を受けないことを最重要視する人々にとって、ビットコインが魅力的 なものであり続けるために必要なのは、むやみにユーザー数を拡大することなく、 国家経済や国際経済に影響を与えないごく小規模の存在として目立たない状態を保 つことであったろう。…ギークのような人々であれば、そうした新しい暗号通貨を 次々と乗り換えつつ、政府の目をかいくぐって自由な資金移動の手段を保ち続ける というのが現実的な対応なのではなかろうか。」(山口浩) 23
  24. 24. Old soldiers never die; they just fade away. • 最悪のケースとして、ネット民がボランティアとして支えつつ、非公式経 済(Informal economy)等で生き残る道は残されている。 http://12shigra.files.wordpress.com/2010/10/mario-miranda-black-market.jpg 非公式経済(“informal economy”)とは、法律 や行政当局が定める財産関係・商業免許・労働 契約・不法行為・金融信用・社会保障などの ルールについて、それらのコスト回避やベネ フィットや権利を除外した形での経済活動。非 公式経済の規模は、その経済主体が非公式に 行った活動の収入である。非公式経済セクター は非課税経済の一つと定義され、公式経済セク ターと違い、いかなる政府機関も指導されず GNPのどこにも含まれない。先進国において 典型的な非公式経済セクターは非報告雇用であ る。これは国家の税制・社会保障・労働法制か らは除かれているが、それ以外の面においては 合法である。(Wikipedia日本語版) 24
  25. 25. 仮想通貨ワールドにビットコインの居場所はあるか? • 適者生存 • 問題は過剰慣性(excess inertia) http://www.tubagra.com/uploads/wp-content/uploads/2011/09/019.jpg 25
  26. 26. 仮想通貨エコシステム試論 A Preliminary Analysis on the Cryptocurrency Ecosystem 九州大学 実積寿也 jitsuzumi@econ.kyushu-u.ac.jp 2014年4月1日版

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