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ゆるやかにつながる社会

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「2014年度関西大学大学院院生合同学術研究大会」における「心理学研究科院生協議会主催講演会(2014年12月6日)」で使用したスライド(一部)です。スライドだけではわかりづらい点が多々あるかと思いますが,雰囲気だけでもどうぞ。

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ゆるやかにつながる社会

  1. 1. ゆるやかにつながる社会 子どものフリースペースをめぐって 押江隆(山口大学教育学部)
  2. 2. 今日お話しすること 1.This is me. 2.コミュニティプレイセラピーの事例 3.新しい「つながり方」 4.ゆるやかにつながる社会
  3. 3. 1.This is me.
  4. 4. This is me.(1/5) ● 学位・資格 – 博士(心理学) – 臨床心理士 ● 専門領域 – 地域臨床心理学 – グループアプローチ – パーソンセンタードアプローチ ● 一般人 ● 一般人 – 大事なことなので2回言いました
  5. 5. This is me.(2/5) 学歴 ● 関西大学社会学部 ● 関西大学大学院社会学研究科(博士課程前期 課程) ● 関西大学大学院心理学研究科(博士課程後期 課程) ● お世話になりました ● 再来年で創立130周年 なんですね
  6. 6. This is me.(3/5) 関西での仕事 ● 株式会社栄光 栄光ゼミナール長岡校教務主任 ● 関西大学学生センターリサーチ・アシスタント ● 株式会社イトーキ健康管理室カウンセラー ● 大阪市スクールカウンセラー など
  7. 7. This is me.(4/5) 山口での仕事 ● 山口大学教育学部講師 ● 山口大学大学院教育学研究科附属臨床心理セ ンター相談指導員 ● 山口大学は来年で創基200周年! – 70年勝った ● 山口県警察本部被害者支援カウンセラー
  8. 8. This is me.(5/5) 地域臨床 ● 臨床心理士と精神科ソーシャルワーカーによる他 職種間エンカウンター・グループ ● 定時制高校におけるエンカウンター・グループ ● コワーキングスペースにおけるワークショップ ● 臨床心理士のネットワーキングワークショップ ● 新しい事例検討法「PCAGIP 法」を体験する ● 地域臨床研究会によるコミュニティ運営
  9. 9. 子どものフリースペースのこと ● 不登校や発達障害などにより学校に困難を抱え ている子どものフリースペース(押江, 2009 ) をX市とY市で運営 ● 月1 回(土曜または日曜)に2時間( 14時〜 16時)開室 ● 1回につき4〜10人の子どもと1〜2人のファ シリテーター, 4〜6人のボランティアスタッフ (大学生や社会人などの地域住民)が参加
  10. 10. X市( 2007年5月〜)
  11. 11. Y市( 2012年9月〜)
  12. 12. フリースペースの趣旨 ● 学校への適応やコミュニケーション能力の獲得と いった目標を設定しない ● 何をするかはすべて子どもの主体性や自発性に 任せる ● 遊びを指示しない。子どもが一人遊びを始めても 集団で遊ぶよう指示しない。子どもたちは何を してもよいし,何もしなくてもよい (押江, 2009 )
  13. 13. 子どもの様子 ● 一人で黙々と持ち込んだ携帯ゲームを遊ぶ ● 複数人でのボール遊びが始まる ● 一緒に遊びを楽しむ子ども ● 他の子どもやボランティアスタッフの様子を楽し そうに眺めている子ども (押江, 2009 )
  14. 14. ボランティアスタッフの様子 ● 寝ている ● 本を読んでいる,絵を描いている ● 子どもや他のスタッフとテレビゲームやボードゲー ムをしている ● 子どもとチャンバラをする(やられ役? ) ● 子どもと外でキャッチボールをする (押江ら, 2014 )
  15. 15. 保護者待合室 ● Y市ではファシリテーターを配置し,毎回1〜5 名程度の利用者(三浦, 2014 ) ● 保護者の様子 – 子育て相談 – 保護者が持参したみかんをみんなで食べる – ストレス発散のアイデアを互いに出し合う – 共通の趣味の話で盛り上がる
  16. 16. コミュニティプレイセラピー ● そのままでいられる場(押江, 2009 ) – 「子どもが他者の意図や期待にとらわれることな く,自分が自分のままでいられる雰囲気を醸成」 – 「子どもがそのままの状態でいられることを保障」 ● 「ありのままの自分自身の受容」は子ども中心プ レイセラピーの目標(Freire, 2001) ● コミュニティアプローチによるプレイセラピー (押江ら, 2014 )
  17. 17. 2.コミュニティプレイセラピーの 事例
  18. 18. 23 ①かくれんぼ  (押江, 2009 )
  19. 19. “この玩具は、ボタンを押すと光と音を発するもの で、押した回数だけ得点が加算される。また、横 のリセットボタンを押すと得点がリセットされて0 点へと戻る仕組みになっている。” (押江, 2009 )
  20. 20. 25 ②仮装大賞  (押江, 2009 )
  21. 21. 26 ③体当たり  (押江, 2009 )
  22. 22. 27 ④けん玉  (押江, 2012 )
  23. 23. 28 ⑤作り笑顔  (押江, 2012 )
  24. 24. 29 ⑥「自分の心の声が届かない」  (押江・足立, 2013 )
  25. 25. 3.新しい「つながり方」
  26. 26. フリースペースの「つながり方」 ● 子どもたちの「つながり方」 ①かくれんぼ ②仮装大賞 ③体当たり ● スタッフの「つながり方」 ④けん玉 ⑤作り笑顔 ● ファシリテーターの仕事 ⑥「自分の心の声が届かない」
  27. 27. 32 遊び媒介ネットワーク(押江, 2012 ) 子ども子ども子どもスタッフ 一個人 としての 参加 ファシリ テーション 機能の二重性
  28. 28. ゆるやかなつながり ● 一緒に遊びたいときには一緒に遊び,一人で遊 びたいときは一人になる ● 関係に開かれている ● 一人遊びであっても子どもに孤独感のようなもの はみられない ● 運動会などの学校行事で求められるような「高い 凝集性」や「一致団結」などとは対照的
  29. 29. 現代型不登校当事者の支援 ①「自己領域」が守られること ②「自己領域」を大事にし合える周囲との関係 ③その関係に支えられて,自分から動けること (大石, 2009 )
  30. 30. 社会実験としてのフリースペース ● 遊び媒介ネットワーク ● ゆるやかなつながり ● フリースペースは,「みんな同じ」や「一致団結」と はまったく異なる,新しい「つながり方」を示唆
  31. 31. 新しい「支援」のあり方 ● どの事例でも「つながった」のはすべて本人が自 ら動き出したとき ● ファシリテーターの仕事は「つなげる」ことではな く「つながる可能性の提供」
  32. 32. ファシリテーターの仕事(1/3) ファシリテーターと子どもとの関わり ①パーソン・センタード・アプローチの中核条件の 提供とプレゼンス ②子どもの実現傾向への信頼 ③「場」の力の信頼 (押江・足立, 2013b )
  33. 33. ファシリテーターの仕事(2/3) ファシリテーターとボランティアスタッフとの関わり ①必要な制限を加えることで,ボランティアスタッフ を守ること ②ミーティングでボランティアスタッフの相談に応 じ,その気持ちを丁寧に聴き取り,全員と共有 する場を設けること ③場全体を見渡しながら子どもやボランティアス タッフの背景や心情,関わり等を読み取り,ミー ティングで言葉にして伝えること
  34. 34. ファシリテーターの仕事(3/3) ④ボランティアスタッフの自己成長力を信頼し,促 進すること ⑤雰囲気づくりや子どもへの必要な配慮について 適宜話し合う機会を設けること (押江・足立, 2013a ;押江ら, 2014 )
  35. 35. 4.ゆるやかにつながる 社会
  36. 36. 現代はつながり希求時代 ● 「つながり」,「絆」 ● ソーシャル・ネットワーキング・サービス – LINE – Facebook – Twitter
  37. 37. “つながり強迫” http://goo.gl/gcW6DN http://goo.gl/830wUd 「ぼっち席」「既読無視」
  38. 38. 「転校で大切なのは?」 忍: そういえば,綾ちゃんは転校経験者なんですよ。 陽子: 中1の時にこっちに引っ越してきたんだよな。 綾: う,うん。 カレン: オー,先輩デース! クラスの子と仲良くなるア ドバイス,お願いしマス! 綾: そ,そうね……,一番大切なのは……,空気を 読むこと! カレン: ワー,風見鶏デスネー! 綾: 風じゃないわ,空気よ! TVアニメ『きんいろモザイク』3話より (©原悠衣・芳文社/きんいろモザイク製作委員会)
  39. 39. 「コミュニティを問いなおす」
  40. 40. コミュニティを問いなおす(1/4) 農村型コミュニティ ● “共同体に一体化する(ないし吸収される)個人” ● それぞれの個人が,ある種の情緒的(ないし非言 語的な)つながりの感覚をベースに,一定の「同 質性」ということを前提として,凝集度の強い形で 結びつくような関係性
  41. 41. コミュニティを問いなおす(2/4) 都市型コミュニティ ● “独立した個人と個人のつながり” ● 個人の独立性が強く,またそのつながりのあり方 は共通の規範やルールに基づくもので,言語に よる部分の比重が大きく,個人間の一定の異質 性を前提とする
  42. 42. コミュニティを問いなおす(3/4) “現在の日本の状況は,「空気」といった言葉がよく 使われることにも示されるように,集団の内部では 過剰なほど周りに気を遣ったり同情的な行動が 求められる一方,一歩その集団を離れると誰も助 けてくれる人がいないといった,「ウチとソト」との 落差が大きな社会になっている。” “このことが,人々のストレスと不安を高め,(中略), 生きづらさや閉塞感の根本的な背景になっている のではないだろうか。”
  43. 43. コミュニティを問いなおす(4/4) “したがって,日本社会における根本的な課題は, 「個人と個人がつながる」ような,「都市型のコ ミュニティ」ないし関係性というものをいかに作っ ていけるか,という点に集約される。” (広井, 2009 )
  44. 44. 「ゆれ動く若者と家族」
  45. 45. ゆれ動く若者と家族(1/4) “現代芸術をとおして,近代性をもった個人や家族 をながめてみますと,個人や家族・社会は大きくゆ れ動き,きわめて多様な個人や家族・社会が出現 してきたことが分かります。” “多様な個性や価値観をもった近代の個人は,しだ いに個人の中にもさまざまな価値観や個性がある ことに気づいたのです。(中略)” “また,近代家族は,血は水よりも濃いことを基盤と してきました。しかし,現代芸術を介してみると,こ れからの家族のあり方は,愛が血よりも濃いこと を示唆しています。”
  46. 46. ゆれ動く若者と家族(2/4) “現代芸術が示唆してくれていることは,私たちが 多様な価値観や情報を共有し,共生し,共働でき る柔軟性を養うことだと思います。” “この世界には,さまざまな知性と感性をもつ個人 が生活していて,しかもその個人は,自らのうちに 多様な個性(自我アイデンティティ)をもっていて, 状況に応じて表現される行動や思考パターンが 異なってくることがあることを現代芸術は認めてき ました。”
  47. 47. ゆれ動く若者と家族(3/4) “また,家族は,単に血縁だけではなく,愛情と信頼 感を結ぶことのできる人たちから構成されていて, そこでの関係性が個人を安らかにしてくれる場を 提供する方向性に向かっていることを現代芸術は 教えてくれています。”
  48. 48. ゆれ動く若者と家族(4/4) “そして, 1930年代以降の芸術が告発し,顕に なったことは個人や家族は,社会や国家に奉仕 し,犠牲になるための存在ではなく,逆に社会や 国家が,個人や家族のためにサービスを提供する 機関であり,場であることだったのです。” (飯田, 2002 )
  49. 49. PCAグループ PCA: Person-Centered Approach
  50. 50. PCAグループのグループ観(1/3) はじめに個人ありき ● グループは個人個人がつくり出しているものであ り,人間は一人ひとり違う存在である ● 一人ひとりのあり方の尊重が何よりも優先される ● 自分のいまのありのままの気持ちでいられ,個人 のペースが尊重される
  51. 51. PCAグループのグループ観(2/3) バラバラで一緒 ● メンバー一人ひとりがお互いの違いを尊重しな がら,グループとしてつながれる雰囲気を目指 す ● 強力な「一体感」よりも「連帯感」を大切にする ● 「みんな同じ」,「一致団結」ではなく「別々であり ながらつながれる感覚」
  52. 52. PCAグループのグループ観(3/3) 自発性の発揮 ● 安心感やありのままの自分を保証されると,自然 と自分から動けるようになる ● 必修授業のグループでは特にやらされる感じが 強いので,自発的に動きやすい環境を整える必 要がある (村山, 2014 )
  53. 53. フリースペースと社会(1/2) コミュニティを問いなおす(広井, 2009 ) ● 同質性より異質性 ● 個人と個人がつながる ゆれ動く若者と家族(飯田, 2002 ) ● 私たちが多様な価値観や情報を共有し,共生し, 共働できる柔軟性を養う ● 愛情と信頼感を結ぶことのできる人たちとの関係 性が個人を安らかにしてくれる場を提供する ● 社会や国家が,個人や家族のためにサービスを 提供する機関であり,場である
  54. 54. フリースペースと社会(2/2) PCAグループのグループ観(村山, 2014 ) ● はじめに個人ありき ● バラバラで一緒 ● 自発性の発揮
  55. 55. PCA と社会(1/3) “個人は自分自身のなかに,自分を理解し,自己概 念や態度を変え,自己主導的な行動をひき起こす ための巨大な資源を持っており,そしてある心理 的に促進的な態度についての規定可能な風土が 提供されさえすれば,これらの資源は働き始める” (Rogers, 1986)
  56. 56. PCA と社会(2/3) ● 人が変わるのは,自分自身の力によってである ● 誰かが人を変えるのではない。その人自身が変 えるのだ ● その人が自分自身の力を発揮できる風土や関係 性を提供するのがセラピストの仕事
  57. 57. PCA と社会(3/3) “厳しい社会の中を生き抜いていける個人をつくる” vs “個人一人ひとりが生きやすい社会をつくる”
  58. 58. (例)「コミュ力」の育成? あなたはどちらを選びますか? “ 「コミュ力」が高くないと生きていけない社会” vs “ 「コミュ力」が低くても生きていける社会”
  59. 59. 大人が変わらなければ “最近の子どもや若者は危機的状況にあるとはいく らでも云えますが,最近の世の中をしきっている大 人たちの有り様こそが危機的であり,大人社会に 蔓延している追従型(服従型)を追放しなければ ならないと叫んでも,当の大人たちの大抵は他人 ごとにしか認知できないのです。” “そのことが21世紀の大問題だと思います。” (飯田, 2002 )
  60. 60. ゆるやかにつながる社会に向けて ● 我々の社会の「つながり方」はいま,大きな転換 点を迎えている ● 個人を変えるアプローチだけでなく,社会を変え る視点が必要 ● 「一致団結」しなくても,「空気を読ま」なくても, 多様な個人がゆるやかにつながる社会のあり 方を,フリースペースは示唆しているといえる ● 我々一人ひとりに課された課題
  61. 61. 文献 広井良典(2009): コミュニティを問いなおす──つながり・都市・日本社会の未来, 筑摩 書房. 飯田紀彦(2002): ゆれ動く若者と家族──現代芸術からのメッセージ, 関西大学出版 部. 三浦啓子(2014): 学校に困難を抱えた子どものフリースペースの保護者待合室における 実践的研究, 山口大学大学院教育学研究科修士論文. 村山正治(2014): PCAグループの理論と実践, 村山正治(編著) 「自分らしさ」を認める PCAグループ入門──新しいエンカウンターグループ法, 創元社, pp.12-26. 押江隆(2009): 地域における無目的志向のフリースペースの意義──「そのままでいら れる場」としてのフリースペース, 人間性心理学研究, 27(1 ・2), 45-56. 押江隆(2012): 相互援助コミュニティの心理臨床モデルに関する実践的研究──パーソ ンセンタードアプローチの新たな展開としてのコミュニティアプローチ, 関西大学大学 院心理学研究科博士論文. 押江隆・足立芙美(2013a): 学校に困難を抱えた子どもの居場所活動における心理臨床 家の果たす役割──ボランティアとの関わりに着目して, 日本心理臨床学会第32回 大会発表論文集, 224. 押江隆・足立芙美(2013b): 学校に困難を抱えた子どもの居場所活動に関する研究 (I)──心理臨床家の子どもとの関わりに着目して, 日本人間性心理学会第32回大 会発表論文集, 120-121. 押江隆・足立芙美・三浦啓子・水戸部準(2014): コミュニティプレイセラピー, 日本人間 性心理学会第33回大会発表論文集, 94-95.

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