Successfully reported this slideshow.
We use your LinkedIn profile and activity data to personalize ads and to show you more relevant ads. You can change your ad preferences anytime.

自然災害のリスク評価を支援するツール開発に向けたマルチハザード同定手法

637 views

Published on

2015年10月10-11日 地理情報システム学会大会 in 慶應義塾大学三田キャンパスの発表資料です。

Published in: Technology
  • Be the first to comment

自然災害のリスク評価を支援するツール開発に向けたマルチハザード同定手法

  1. 1. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject 自然災害のリスク評価を支援する ツール開発に向けた マルチハザード同定手法 12015年10月10-11日 地理情報システム学会大会 in 慶應義塾大学三田キャンパス ○ 田口 仁1 島崎 敢1 ・李 泰榮1 ・臼田 裕一郎1 1国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害リスク研究ユニット
  2. 2. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject  研究の背景 » 平時からの自主的・自律的な地域防災活動(自助・共助)の重要性。 • 地域の災害ハザードを理解し、リスクを評価し、対応・許容すべきリスクレベ ルを決定して対策をとるサイクルである「リスクマネジメント」が重要 • リスクマネジメントのプロセスはISO31000(Risk management - Principles and Guidelines)で標準化されている(下図)。 » リスクにつながるハザード情報 を客観的な情報として適切に 提供し、活動地域で起こりうる 災害ハザードの理解(ハザード の同定)を助けることが大切。 » GISを用いた支援ツール開発 の可能性(田口ら, 2013)  本発表の内容 1)GISを用いてハザードの同定のための基礎的要件の提案 2)基礎的要件に関するアンケートの実施:環境整備、アンケート実施、考察など はじめに 2 リ ス ク 特 定 リ ス ク 分 析 リ ス ク 評 価 リ ス ク 対 応 状 況 の 確 定 コミュニケーションおよび協議 対象領域
  3. 3. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject 基礎的な要件の提案  1) マルチハザードでの情報提供 » 特定の自然災害に限定せずに情報提供が行えるツールで あること。  2) 地域単位ごとの情報提供 » 実践者が活動を行う地域単位で情報が提示されるツールで あること。  3) 客観的な情報提供 » 情報が可能な限り定量的で、実践者が判断しやすい情報を 提供できるツールであること。 3
  4. 4. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject アンケートの実施  前提として… » 提案した基礎的要件の妥当性を示すためには、ハザード情報自体の課 題、ハザード情報の提示方法の課題など、課題は数多いと考えられる( 後述)。  そこで… » 文献等からハザードに関するGISデータを作成し、一般の人に情報を提 示できる環境を構築し、印象の変化についてアンケートを実施する。 » 特に、ツールとして見せることを考えた場合、 1)地図による表示 2)地域ごとの値の抽出結果(表) という2種類あると考え、マルチハザードで居住地のGISデータの地図と 表を示すことの主観的な変化を考察する方針とした。  本研究の流れ 4 ハザード情報 (GISデータ)作成 アンケートの 実施 結果の分析・ 考察
  5. 5. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject 既存文献およびGISデータによるハザード情報の作成 5 No 災害 種別 評価内容 使用したデータ データ加工方法・データ形式(メッシュ・ポリゴン) 1 地震 30年以内に震度6弱 が起きる確率 地震ハザードステーション(防災科学 技術研究所)「30年以内に震度6弱に 見舞われる確率(2014年度版)」 左記サイト公開資料の共通の区分を採用・250mメッシュ 2 地震による揺れやすさ 国土地理院「土地条件図」 国土地理院(2007)「土地条件図の数値データを使用し た簡便な災害危険性評価」表2-7の区分を採用・ポリゴ ン 3 液状化 液状化現象の起こり やすさ 地震ハザードステーション(防災科学 技術研究所)「微地形区分図」 若松加寿江他(2005)「日本の地形・地盤デジタルマップ」 の表2.4を参考に区分を設定・250mメッシュ 4 液状化現象の起こり やすさ 国土地理院「土地条件図」 国土地理院(2007)「土地条件図の数値データを使用し た簡便な災害危険性評価」表2-9の区分を採用・ポリゴ ン 5 津波 自宅から海岸線まで の距離 国土数値情報(国土交通省)「海岸 線」 海岸線からの距離のメッシュデータを生成・250mメッ シュ 6 洪水 浸水のしやすさ 国土地理院「土地条件図」 国土地理院(2007)「土地条件図の数値データを使用し た簡便な災害危険性評価」表2-2の区分を採用・ポリゴ ン 7 浸水想定区域 国土数値情報(国土交通省)「浸水想 定区域図」 全河川の浸水想定区域ポリゴンをマージし浸水の有無 を示すポリゴンデータへ加工・ポリゴン 8 洪水の危険性 地震ハザードステーション(防災科学 技術研究所)「微地形区分図」 若松加寿江他(2005)「日本の地形・地盤デジタルマップ」 の表2.1を参考に区分を設定・250mメッシュ 9 土砂 土砂災害危険箇所 国土数値情報(国土交通省)「土砂災 害危険箇所」 データをそのまま使用・ポリゴン 10 火山 自宅から最も近い火 山までの距離 気象庁「日本活火山総覧(第4版)」の 活火山一覧表 リストのデータをGISデータへ加工・ポイント 11 最も近い火山の名前 12 豪雪 豪雪地帯の指定 国土数値情報(国土交通省)「豪雪地 帯」 豪雪地帯の指定は市町村単位。データをそのまま使 用・ポリゴン
  6. 6. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject 既存文献およびGISデータによるハザード情報の作成 6 No 災害 種別 評価内容 使用したデータ ハザード情報としての区分・表現 1 地震 30年以内に震度6弱 が起きる確率 地震ハザードステーション(防災科学 技術研究所)「30年以内に震度6弱に 見舞われる確率(2014年度版)」 「0.1%以下」・「0.1〜3%」・「3〜6%」・「6〜26%」・「26〜 100%」 2 地震による揺れやすさ 国土地理院「土地条件図」 「小」・「中」・「やや大」・「大」 3 液状化 液状化現象の起こり やすさ 地震ハザードステーション(防災科学 技術研究所)「微地形区分図」 可能性「小」・「中」・「大」 4 液状化現象の起こり やすさ 国土地理院「土地条件図」 「なし」・「小さい」・「大きい」・「非常に大きい」 5 津波 自宅から海岸線まで の距離 国土数値情報(国土交通省)「海岸 線」 数値(単位km) 6 洪水 浸水のしやすさ 国土地理院「土地条件図」 「可能性なし」・「低い」・「中程度」・「高い」 7 浸水想定区域 国土数値情報(国土交通省)「浸水想 定区域図」 「含まれている」・「含まれていない」 8 洪水の危険性 地震ハザードステーション(防災科学 技術研究所)「微地形区分図」 「危険性なし」・「小」・「中」・「大」 9 土砂 土砂災害危険箇所 国土数値情報(国土交通省)「土砂災 害危険箇所」 危険箇所が「含まれている」・「含まれていない」 10 火山 自宅から最も近い火 山までの距離 気象庁「日本活火山総覧(第4版)」の 活火山一覧表 数値(単位km) 11 最も近い火山の名前 自由入力 12 豪雪 豪雪地帯の指定 国土数値情報(国土交通省)「豪雪地 帯」 豪雪地帯に「指定されている」・「指定されていない」
  7. 7. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject アンケートの流れと内容  「主観的理解度」(1,2,3) » 災害種別ごとの主観的な理解の程度を回答(6段階)  「ハザード評価」 » 災害種別ごとに前スライドの表に示したハザード情報の区分や表現を回答  「順位付け」(1,2,3) » 災害種別ごとに居住地において重要な災害を上位3位までを指定  「印象変化」 » 地図を提示された段階で、提示以前の印象と比べてどう思ったか回答(5段階)  「順位付け自信度」(1,2,3) » 直前に行った順位付けをどの程度自信を持って行ったか回答(10段階) 7
  8. 8. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject 作成したハザード情報の地図と表の提示例 8
  9. 9. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject アンケートについて  アンケート環境 » Googleフォームを使ってアンケート » Web-GISはeコミマップ Ver 2.4.1(防災科学技術研究所, 2009)を使用。表につい ては田口ら(2013)のツールを使用して生成。  呼びかけ方法 » アンケートの呼びかけは一般の方(非防災専門家)へFacebook等で呼び掛け( まずは草の根的に)  回答者の流れ » 前半 • 呼び掛けの際に公開したURLのアンケートへアクセス ► 前半1:地図や表を見る前の印象を入力 ► 前半2:居住地域を入力して地図を参照、メールアドレス、居住地(町丁目単位) を入力 » 後半 • 前半回答者に町丁目におけるハザード情報の値の抽出結果(表)をメールで送付 • 同時に後半のアンケートのURLを知らせ、アンケートにさらに入力してもらう  分析対象 » 有効回答が得られた29名(うち男性19名)が対象 9
  10. 10. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject [結果1] ハザード評価  回答結果と客観的な結果の差  No.2 地震による揺れやすさ » 過大評価者よりも過小評価者が有意に多かった。  No.5 自宅から海岸線までの距離 » 回答者は実際よりも海岸線から遠いと考えていた。 10 No 災害 種別 評価内容 回答結果 統計的検定 1 地震 30年以内に震度6弱が起きる 確率 妥当19名,過小評価8名,過大評価2名 χ2(6)=5.6, p=.469 2 地震による揺れやすさ 妥当3名,過小評価12名,過大評価0名 χ2(12)=30.3, p=.002 3 液状化 液状化現象の起こりやすさ 妥当4名,過小評価15名,過大評価3 χ2(12)=20.2, p=.063 4 液状化現象の起こりやすさ 未実施 5 津波 自宅から海岸線までの距離 回答者は実際よりも有意に海岸線から遠いと考えていた。 t(28)=2.45, p=.021 6 洪水 浸水のしやすさ 妥当1名,過小評価11名,過大評価3名 χ2(8)=8,57, p=.379 7 浸水想定区域 妥当24名,過小評価3名,過大評価2名 未実施 8 洪水の危険性 妥当10名,過小評価2名,過大評価2名 未実施 9 土砂 土砂災害危険箇所 妥当25名,過小評価3名,過大評価1名 未実施 10 火山 自宅から最も近い火山までの 距離 回答者との差に統計的に有意な差はみられなかった。 t(27)=1.61, p=.118 11 最も近い火山の名前 正しい人は9名,間違っていた人,わからなかった人は20名 ― 12 豪雪 豪雪地帯の指定 妥当29名 未実施 ※期待度数5以下の場合は検定は未実施
  11. 11. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject  地図を提示した際の印象変化  地震と津波 » 地図を見る前と比べて思っていたよりも危険であると評価  土砂災害 » 地図を見る前と比べて思っていたよりは安全と評価  それ以外の災害は有意な印象の変化はなかった [結果2] 印象の変化 11 平均値はゼロであるという帰無 仮説に基づくt検定 ・地震 t(28)=2.92, p=.007 ・津波 t(28)=3.21, p=.003 ・土砂災害 t(28)=2.77. p=.009 →以下の3つが帰無仮説を棄却 したため、有意な変化があり ※丸記号は平均値,エラーバーは標準偏差 ★ ★★
  12. 12. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject  情報提示条件(A,B,C)の違いによる 主観的理解度の変化  地図の提示によっても,表の提示によっても災害を理解できた と感じるようになることがわかったが、その効果は表の提示よ りも地図の提示の方が大きい可能性が示された。 [結果3] 主観的理解度の変化 12 情報提示条件と災害種別を要因、 理解度を従属変数の2要因の分 散分析 ・情報提示条件 F(2,503)=34.62, p<.001; ・災害種類 F(5,503)=3.61, p=.003 ・有意な交互作用は無し (F(10,503)=1.13, p=.340 →それぞれ主効果は有意 どの組み合わせで有意な変化が見られたかを明らかにするためにholm法による多重比較 ・「情報なし」と「地図」、「情報なし」と「地図と表」の組み合わせ:0.1%水準の有意差あり ・「地図のみ」と「地図と表」の組み合わせ:5%水準の有意差がみられた。 ※丸記号は平均値,エラーバーは標準偏差
  13. 13. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject [結果4] 順位付自信度  情報提示条件により順位付けを どの程度自信を持って行ったか  地図のみでは順位付けの自信度は変化しないが、 表を見せたことで自信を持って順位付けが行えた。 13 情報提示条件を要因とした分散分析 F(2,83)=3.49, p=.035 →有意な主効果が見られた holm法による多重比較 ・「地図のみ」と「地図と表」 p=.035 ・「情報なし」と「地図と表」 p=.007 →有意差あり ・「情報なし」と「地図のみ」 p=.326 →有意差なし
  14. 14. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject 考察  地図の提示によって主観的理解度が高まる  地図の提示ではハザードに対する順位付け自信度は上がらず  地図の情報をシンプルな形で集約した表を見せた段階で順位 付け自信度が上昇  つまり、知識の獲得を狙うのであれば適切で十分な量の情報 を提示すればよいが、ハザードの順位付けのように判断を伴う 課題の実行を促すためには、重要な情報のみを取捨選択して 示した方が良い可能性がある。  本アンケートに関しての今後の課題 » サンプルをもっと増やす » 居住地域別の検討(ばらけて実施するか、地域特定にするか) » 「理解度」は主観的なものであるため、回答者が本当に理解できている かをどう測るか? 14
  15. 15. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject 自然災害のハザード及びリスクを理解するための課題  ハザード情報の充実化 » 頻度であるとか確率などを示す情報が少ない → 今のところ地震くらい  ハザード情報の適切な提示方法 » 情報の提示の仕方で受けての印象は大きく変わる • 地図上のシンボル(形、色、大きさ)の適切な提示方法。 • 連続値を示すデータの区分方法  リスクに変換するための脆弱性等を示す社会統計データの利 用と指標化  ハザードやリスクを適切に理解するための専門知の整備およ び提供方法  防災対策実践者によるハザード(あるいはリスク)認知を客観 的に評価する指標の確立 15
  16. 16. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject 【今後の展開】リスクマネジメント手法への組み込み  標準化されたリスクマ ネジメントのプロセス を地域防災活動のス テップとして構造化・ 手順化中  専門家がハザード情 報を作成・加工して提 供して、住民がハザー ドとリスクを理解し、関 係者とリスクレベルを 決定し、対策をとる方 法論を確立させたい。 16 ハザード・社会統計など 災害リスク情報流通環境 ST1 確認する 地域の災害と被害を確認。 地域協力リスト ST4 活用する 防災に関する会合や活動 に活用。 課題の選択災害時の事態の流れ ST2 調査する 災害時に地域で心配な課 題を調査。 災害対応 シナリオ 災害対応 マップ 目的に 応じた 対応検討 ST3 検討する 災害時の課題に対する対 策を検討。 リ ス ク 特 定 リ ス ク 分 析 リ ス ク 評 価 リ ス ク 対 応 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン お よ び 協 議 地 域 リ ス ク ガ バ ナ ン ス 構 造 の 再 編
  17. 17. NIEDBOSAI-DRIP NationalResearchInstituteforEarthScienceandDisasterPrevention,DisasterRiskInformationPlatformProject 参考文献  山田文彦,柿本竜治, 山本幸, 迫大介, 大本輝憲(2008):水害に対する地域 防災力向上を目指したリスクコミュニケーションの実践的研究, 自然災害科 学, 27(1), pp.25-43.  田口仁, 李泰榮, 臼田裕一郎, 長坂俊成(2013):地域防災を支援する情報 システム「地域防災キット」の開発, 地理情報システム学会第22回学術研究 発表大会, CD-ROM.  国土地理院(2007):土地条件図の数値データを使用した簡便な災害危険性 評価, 国土地理院技術資料 D-1, No.479.  若松加寿江, 松岡昌志, 杉浦正美, 久保純子, 長谷川浩一(2005):日本の地 形・地盤デジタルマップ, 東京大学出版会, 104p. 使用ツール・データ  防災科学技術研究所:eコミマップ, http://ecom-plat.jp/  防災科学技術研究所:地震ハザードステーション(J-SHIS), http://www.j- shis.bosai.go.jp/  国土交通省国土情報課:国土数値情報ダウンロードサービス, http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/  国土地理院:数値地図25000(土地条件図), CD-ROM 17

×